慎重な日銀姿勢で円安に振れるも、植田総裁の円安配慮発言でドルは小動きに
【今回のポイント】
〇 国債買い入れ減額する方針を決定し7月会合で決定する
〇 ハト派と捉えられ一時158円台つけるも植田日銀総裁は円安配慮発言
〇 7月会合で国債買い入れ減額の具体案を決定し、追加利上げは最短で9月会合か
【日銀会合の結果】
今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは12時23分頃だった。「国債買い入れを減額する方針を決定」し、具体的な金額やスケジュールなどの決定は次回7月会合に持ち越した。今年に入って4回連続で12時台に公表されており、植田日銀総裁が最初の日銀会合だった昨年4月を除くと全てランチタイム(11時30分から12時30分)に公表されている。
15時30分から16時30分ほどまで開催された植田和男日銀総裁の記者会見でのコメントは下記の通りである。
「市場状況確認したうえで国債買い入れの減額方針を決定」
「国債買い入れ減額は、相応の規模になる、相応という詳細に関しては次回会合にて」
「為替相場は経済・物価に大きな影響を与える」
「為替変動、過去に比べて物価に影響することを意識することが必要」
「最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上、十分注視する」
「国債買い入れ減額を次回の7月会合で決定するのは、市場の意見を聞き丁寧に進めるためである」
「市場とのコミュニケーションは丁寧に伝えることに尽きる」
「国債買い入れ減額、望ましい超過準備の到達はかなり先になる」
「7月に経済・物価のデータ次第で短期金利を引き上げること当然ありうる」
【市場の反応】
日銀会合の結果は、具体的な金額やスケジュールなどの決定は次回7月会合に持ち越したことから、市場が想定していた1兆円程度の段階的な国債買い入れ減額と比べると「ハト派」な結果と捉えられた。長期金利の指標とされている新発10年物国債利回りは一時0.915%まで低下し、為替は1ドル158円台まで円安ドル高が進行した。
一方、15時30分からスタートした植田日銀総裁の記者会見での円安けん制的な発言は、事前にある程度想定されていたこともあり、為替を大きく動かす要因とはならなかった。前回会合後のように、記者会見の発言をきっかけに円安が加速するという事態は回避された。記者会見の終盤で「時間稼ぎ」などとやや語気を荒げる記者の質問もあったが、淡々といつも通りのポーカーフェイスで対応していた。
【今後、円はどう動く?】
ドル・円は158円台まで買われる場面が見られたが、ドル・インデックスは105水準で推移しており目立ったドル買いは観測されていない。一方、欧州政治不安の高まりが、投機筋の円安ポジション構築を手控えさせるだろう。結果として、ドル・円は非常に動きにくい状況にあると考える。
今後の市場の関心は、7月会合での「国債買い入れ減額」と「追加利上げ」の同時決定があるかどうかだ。
植田日銀総裁の記者会見の際、「国債買い入れ減額計画の具体策決定を7月に先送りしたことで、同じ7月のタイミングで追加利上げが行われる可能性が下がった」との見方が強まったことから円安が進んだ、といった記者の指摘があった。
植田日銀総裁は、「国債買い入れ減額を次回の7月会合で決定するのは、市場の意見を聞き丁寧に進めるためである」「短期金利の引き上げは2%の物価目標達成の確度の変化で決まるのに対して、国債買い入れ減額は、そのような経済、物価動向を踏まえた金融政策決定ではないため、両者の決定は別々に行われる」と説明し、「7月に国債買い入れ減額計画の決定と追加利上げを同時に行うこともある」と発言した。可能性がゼロではないことを匂わせた。
実際、この2点を同時に行うのは難しいと考える。今回の会合で国債買い入れ減額の具体的な決定を回避したのは、市場関係者の意見を捉え市場にインパクトを与えないよう慎重に行うことを重要視したからである。大きな金融政策の修正を同時に2つ実施することには、金融市場安定の観点からリスク大である。次回7月会合では、追加利上げは見送られ、最短で今年9月に実施されると考える。
【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】
以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。
【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%をメドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持
【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時28分終了、マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月26日(金)・・・12時15分終了、現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ
6月14日(金)・・・12時16分終了、国債買い入れ額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安の展開
6月13日−14日・・・国債買い入れ額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・想定通り政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
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