日銀会合(7月30-31日開催)のポイント: 追加の利上げ実施の有無がポイント(24/7/29)

今回、可能性は非常に低いと考えるが、利上げ実施がサプライズとなろう。

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日銀会合(7月30-31日開催)のポイント: 追加の利上げ実施の有無がポイント(24/7/29)

追加の利上げ実施の有無がポイント

【今回のポイント】

〇 国債買入額の減額スケジュールを発表
〇 追加の利上げの議論は実施するも利上げ実施は見送り
〇 利上げ実施見送りであれば、やや円安に振れるか

【市場コンセンサスは何?】

7月28日17時時点の日銀会合のコンセンサスは下記の通りである。

・国債買入額の段階的な減額スケジュールを発表
・追加の利上げの議論は実施するも利上げ実施は見送り

大規模緩和の一環として進めてきた国債買入を減額する具体的な計画を決めるほか、経済・物価の情勢を踏まえて追加の利上げをすべきかどうか議論することが見込まれている。日銀は現在、月間6兆円程度としている国債の買入を減額する方針を示していて、今会合では今後1年から2年程度の具体的な計画を決定する。既に債券市場参加者会合を開催しており、意見交換済なのである程度コンセンサスは固まっているだろう。日銀会合開催中にも、金額とスケジュールは出る可能性は十分にある。

ただ、追加の利上げの議論は紛糾する可能性がある。まだ実質賃金のマイナスが続いており、個人消費が伸び悩んでいることから消費動向を見極めたいとする声がある。一方、物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇する確度が高まりつつあることから、金融正常化に踏み出すべき、といった意見も出そうだ。

なお、政府・与党内から利上げを巡る発言が相次いだが、基本的な日銀の独立性を考慮すると、さほど日銀に対するプレッシャーになっていないと考える。

【何がサプライズになる?】

今回、可能性は非常に低いと考えるが、利上げ実施がサプライズとなろう。為替市場で、投機筋が円売りポジションを大幅に減少させた背景も、日銀が今会合で利上げを実施するかもしれないといった思惑が根底にある。今のところ、政府・与党内からのプレッシャーは、日銀内よりも市場関係者に大きな影響を与えているイメージだが、仮に政府・与党内からのプレッシャーを背景に、日銀が利上げ実施に踏み切った場合、海外投資家は日本の金融政策に対する懐疑的な思いを強め、「日本離れ」の原因の一つになると考える。

【では、円はどう動く?】

市場コンセンサス通り、国債買入額の減額スケジュールが発表されて、利上げは議論のみ実施という内容であれば、日米金利差縮小が後ずれするという思惑から、やや円安に振れると考える。投機筋による円売りポジションの解消が進んでいたことから、多少、円売りポジションを組む、もしくは円買いポジションを解消する動きは入りそうだ。ただ、政府・日銀が頻繁に円買いドル売り介入を実施していることなどから、ドル・円が150円台後半、ユーロ・円が170円台といった円全面安の地合いは難しいだろう。

一方、利上げ実施した場合、為替市場では円が主要通貨に対して買われる地合いが再び強まるだろう。ドル・円であれば、25日につけた151円94銭割れを試す展開を想定する。「金融政策の正常化」に踏み出したことを評価する流れが強まることが想定される一方、「政府・与党内からの利上げプレッシャーによって利上げ実施とか、「円安を是正するために利上げ実施」といった話が植田日銀総裁の記者会見などから出てきた場合、話は変わる。円安というよりも「日本売り」の地合いとなるかもしれない。「国債安、株安、円安」といったトリプル安だ。さすがに慎重な植田日銀総裁がこのような選択は取らないと考えるが、5月上旬の岸田首相との会談後、植田日銀総裁の発言において、円安に配慮する発言がやや増えたことから念のため注意しておきたい。

【最近の日銀会合関係者の発言は?】

ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。

7月26日、神田財務官
「(G20会合で)投機がもたらす過度な為替変動には一層の注意が必要と指摘」
「為替レートの無秩序な動きは経済に悪影響を与えると確認」
「為替合意に沿った適切な対応が必要と発言」

7月25日、林官房長官
「為替はファンダメンタルズを反映し、安定推移が重要」
「引き続き緊張感をもって株式市場の動向を注視」

7月25日、神田財務官
「(G7会合で)為替について特段の議論は行われなかった」

7月25日、鈴木財務相
「為替の水準、動きについてはコメント控える」

7月24日、茂木自民党幹事長
「日本経済再生で強くて安定した円を作ることが必要」

7月19日、河野デジタル相
「日銀に直接利上げを求めたわけではない」
「デジタル収支の赤字などの中で、金利が上がれば円高になるという理論を申し上げただけだ」

7月19日、岸田首相
「円安を背景とした物価上昇に警戒」

7月19日、鈴木財務相
「(河野デジタル相の発言について)市場に与える不測の影響というものを考えるなら、発言は慎重であってほしいと思っている」
「日銀の独立性を尊重しなければならない」

7月18日、林・官房長官
「(河野デジタル相発言について)具体的手法は日銀に委ねられるべき」
「市場の動向をしっかり注視」
「日銀の金融政策は為替誘導を目的としたものではない」

7月18日、神山・日銀大阪支店長
「次の決定会合、非常に重要な会合だと思っている」
「できるだけ緩和的な金融環境を維持していきたい」

7月17日、河野デジタル相
「円の価値を高め、エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるように(日銀に)求める」

7月17日、神田財務官
「投機による過度な変動あれば、適切に対応していくしかない」

7月13日、神田財務官
「介入・レートチェックについては申し上げない」
「ドル円以上にクロス円の動きの方が激しいという見方は多い」

7月12日、神田財務官
「変動相場制で介入がまれであるべきとのイエレン氏の発言はまっとう」
「過度の変動や無秩序な動きには適切に対応」
「(介入の有無)政府関係者が話したとは考えられない」
「足元、1カ月で5%も動いていて、かなり動いている」
「最近は金利差が縮小しており、円安の動きは投機と考えるのが自然」

【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】

日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行といえる。

そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。
以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。

 追加の利上げ実施の有無がポイント

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【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時28分終了、マイナス金利の解除等金融政策の枠組みを見直し
4月26日(金)・・・12時15分終了、前回会合の方針を維持
6月14日(金)・・・12時16分終了、国債買入額を引き下げる方針を決定

【2024年スケジュール】

【2024年スケジュール】

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