ドル円見通し 一時149円に迫り11月15日高値156.74円以降の安値更新、下落基調続く(24/12/3)

日銀追加利上げへの警戒感や中東情勢、トランプ次期政権の保護主義政策姿勢、仏政局不安によるユーロ安等から円買い優勢となり3日未明には149.07円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 一時149円に迫り11月15日高値156.74円以降の安値更新、下落基調続く(24/12/3)

一時149円に迫り11月15日高値156.74円以降の安値更新、下落基調続く

〇昨日のドル円、午後にかけ150.74まで戻してから3日未明149.07へ下落
〇日銀追加利上げへの警戒感、トランプ次期大統領の政策対するリスク回避感から円高ドル安優勢の流れ
〇ウォラー理事等のハト派発言で12月FOMCでの追加利下げ見込みと利下げペース鈍化への懸念高まる
〇今週は本日の米JOLTS求人件数、週末の雇用統計をはじめ重要指標発表相次ぐ
〇149.07割れからは148円前後への下落を想定
〇150.20超えからは強気転換注意として12/2午後高値150.74試しとする

【概況】

ドル円は先週末に149.46円へ下落し、週明けの2日早朝にも同値を付けたが安値更新を回避したことでいったん買い戻し優勢となり、2日午後に150.74円まで戻した。しかし勢いは続かず、日銀追加利上げへの警戒感や中東情勢、トランプ次期政権の保護主義政策姿勢、仏政局不安によるユーロ安等から円買い優勢となり3日未明には149.07円まで安値を切り下げた。
30日のメディア・インタビューで植田日銀総裁が追加利上げ姿勢を強調したことに対する市場反応は限定的だったが、トランプ次期米大統領が中国やロシアなどのBRICSによる脱ドル化や新基軸通貨導入を進めるなら「100%の関税を課す」と自身のSNSで投稿したことが来年の貿易戦争激化への懸念を高めた。
フランスでは野党が内閣不信任決議案を提出して4日にも可決される見通しとなり政局不安が増した。
イスラエルとレバノンのヒズボラは停戦合意にもかかわらず12月2日も両軍による攻撃が続いていると報じられ、停戦合意が早期に破棄されるのではないかとの懸念も強まった。ロシアによるウクライナへの攻勢も激化しており、有事拡大リスクが再び上昇している。

12月2日夜のS&Pグローバルによる11月米製造業PMI確報値が49.7となり速報の48.8から上方修正されて10月確定値の48.5を上回ったこと、米ISMの11月製造業景況指数も10月の46.5から48.4へ上昇して市場予想の47.6を上回ったことは米長期債利回りの一時的上昇を招いてドル高に寄与したが、ISM製造業景況指数の50割れは8か月連続のため、ドル円の反応は鈍かった。
ドル円は前述の各種リスクに対する回避先としての円買いに加え、再来週の日銀金融政策決定会合における追加利上げへの警戒感もあり、ドル・ストレートでのドル高よりも円高が勝ったことでクロス円全般の下落と共にドル円も一段安を強いられたようだ。
12月3日は JOLTS(雇用動態調査)求人件数、4日のADP非農業部門民間雇用者数、ISM非製造業景況指数、 パウエルFRB議長の討論会での発言、5日に 中村日銀審議委員講演と会見、6日に米雇用統計と重要イベントが続く。12月17〜18日の米FOMC、12月18〜19日の日銀金融政策決定会合を控えて年末から年明けへの方向性を探る展開が続く。

【日銀の植田総裁は追加利上げに意欲示すも判断はまだ先か】

日銀の植田総裁は日経紙のインタビュー記事で「経済データは日銀の想定通りに推移していることで追加利上げのタイミングが近づいている」とする一方で、「トランプ次期大統領の政策を含めて米経済の先行きを見極めたい」、利上げ判断には「25年の春闘がどういうモメンタムになるか、それは見たい」とした。
基本的には異次元金融緩和からの脱却と正常化を進める上で利上げ継続を基本姿勢としつつ、来年1月後半からのトランプ政権発足後の動向や春闘を見定めたいという印象だった。ただ、為替については「一段の円安になればリスクが大きい、場合によっては対応が必要になる」と円安けん制姿勢を示した。

【12月FOMCでの追加利下げ見込みと利下げペース鈍化への懸念】

FRBのウォラー理事は2日に、次回FOMCについて「追加利下げか、見送りかを決めるのは、今後公表される経済指標次第」としたが、「現時点では利下げ支持に傾いている」と述べた。同理事は現行の政策金利依然として十分に景気抑制的だとし、「中立的な金利水準まで引き下げ余地がある」としたが、「インフレ鈍化と景気減速の見通しが間違っていることを示すなら金利据え置きを支持するだろう」とも述べ、12月FOMCでは来年末の政策金利見通しが上方修正される可能性があるとし、「利下げが複数回見送られる公算が大きい」とも述べた。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は2日、政策金利を「より中立な政策に持ってゆくことが適当」として追加利下げの必要性を支持した。
アトランタ連銀のボスティック総裁は2日、今後の金融政策決定には労働市場の動向が重要とし、「重要なのは労働市場の減速が想定よりも著しいかどうかだ」とし、「雇用が予想より悪化すれば金融緩和を続ける可能性が強まり、さらに積極的な緩和を議論する」との姿勢を示した。

【米長期債利回りはまちまち、ナスダックとS&P500は最高値更新】

12月2日の米長期債利回りはまちまちの動き。ISM製造業景況指数が改善したところで上昇したもののリスク回避的な材料も相次いだために勢いに欠けた。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.01%上昇の4.19%。29日に4.18%へ低下して11月18日に付けた年初来ピークである4.51%以降の最低としたが、12月2日は一時4.25%へ上昇してから低下して29日の高安レンジ内に留まった。
30年債利回りは先週末比0.01%低下の4.36%、2年債利回りは一時4.23%まで上昇してから低下して先週末比0.01%上昇の4.18%となった。総じて下げ一服で横ばいの動きといえる。
一方でNYダウは先週末に史上最高値を更新したが、週明けの2日は利食い先行で先週末比128.65ドル安と反落した。ナスダック総合指数が一時19436.92を付けて取引時間中の最高値を更新し、先週末比185.78ポイント高と上昇して終値の最高値も更新した。S&P500指数は先週末比14.77ポイント高と続伸して取引時間中及び終値の最高値を2日連続で更新した。
トランプ次期政権の保護主義政策が強調されているものの、米国経済に有利な展開と株式市場は受け止めている印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は11月28日未明安値150.46円を目先の底として反騰したが、28日夕高値151.94円まで戻してから失速したために29日午前時点では戻り一巡により28日夕高値を起点として下落期に入ったとし、28日未明安値を割り込む場合は12月3日未明から5日未明にかけての間への下落を想定するとした。
12月3日未明へ一段安しているのでまだ下落余地ありとするが、150.20円超えからは強気転換注意として150.0円台後半への上昇を想定し、2日午後高値150.74円超えからは上昇継続とみて3日夜から5日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では2日午後の上昇では先行スパン下限に上値が抑えられ、3日未明への下落で遅行スパンが再び悪化しているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下落再開とするが、先行スパンへ潜り込み始めるところを強気転換注意とし、先行スパンを上抜くところから反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は2日午後の上昇時に60ポイントに到達してから30ポイント割れへ反落し、その後は40ポイント近辺にとどまっている。次の30ポイント割れからは10ポイント台への低下を想定するが、50ポイント超えからは反騰継続とみて60ポイントに迫る上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月3日未明安値149.07円を下値支持線、150.20円を上値抵抗線とする。
(2)150.00円から150.20円までを戻り売り有利とし、149.07円割れからは148円前後への下落を想定する。148円以下は反発注意とするが、150円を下回っての推移か、直前安値から1円を大幅に超える反騰がみられない場合は4日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)150.20円超えからは強気転換注意として2日午後高値150.74円試しとし、高値更新からは反騰継続とみて151円台前半への上昇を想定する。150.74円を超えた後も150.0円以上で推移するなら4日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

12/3(火)
24:00 (米) 10月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (9月 744.3万件、予想 747.5万件)
26:35 (米) クーグラーFRB理事、講演
29:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、会議挨拶

12/4(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4‐6月 0.2%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4‐6月 1.0%、予想 1.1%)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 52.0、予想 52.4)
17:55 (独) 11月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 49.4、予想 49.4)
18:00 (欧) 11月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
18:30 (英) 11月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 50.0、予想 50.0)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 -0.6%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 -3.4%、予想 -3.3%)

22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (10月 23.3万人、予想 16.5万人)
22:45 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 57.0)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 56.0、予想 55.5)
24:00 (米) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.3%)
27:45 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、討論会
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)


注:ポイント要約は編集部

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