FOMCの金利見通し次第でどちらにも動きうる
〇先週のドル円、前半は日銀の国債購入額減額報道をきっかけに円買い戻しが先行
〇米雇用統計が予想大幅に上回りドルが上昇、ほぼ週初の水準へと戻して引ける
〇今週のFOMC(水曜)、日銀会合(金曜)はどちらも現状維持予想
〇FOMC、年末時点の金利水準が1回利下げに後退するか、ドットプロットが最大の注目材料
〇日銀会合にて国債購入額の減額が検討の場合、先週初と同様に円買いの動きに
〇テクニカルには、4月高値からのレジスタンスラインをFOMC前に上抜ける可能性高い
〇今週は155.75レベルをサポートに、157.75レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、週前半は日銀会合で国債購入額の減額が検討されるとのはなしをきっかけに、テクニカルに前日安値を下抜けたことから円買い戻しが先行しました。その後は米国雇用統計までは上下に動きながらももみあいが続いていましたが、雇用統計は前月並みでやや弱いという見方がコンセンサスとなる中で予想よりもかなり強い結果となりドルが上昇、ほぼ週初の水準へと戻しての引けとなりました。
先週のECB理事会はすべてが織り込み済みという動きに終わりましたが、今週は注目のFOMCが水曜、日銀会合が金曜に行われます。どちらも金融政策自体は現状維持で確定的ですが、FOMCでは併せて発表されるドットプロット(金利見通し)において年末時点の金利水準が前回3月の3回利下げから1回利下げに後退するのかが最大の注目材料となります。
市場参加者のコンセンサスをFF先物の取引状況から見ると、強い米国雇用統計の結果を受けて利下げ開始は11月まで後退し、12月FOMC後の金利水準もそのまま5.0〜5.25%と1回利下げとなっています。ただ1回利下げが59%、2回利下げが41%と比較的近い状況にあることから、今後の経済指標によってはこれまでのように2回利下げがコンセンサスとなる可能性もあります。
今回の金利見通しが最近のFRB関係者によるタカ派コメントを受けて1回となれば現状のコンセンサス通りではあるものの、流れとしては米金利が底堅く推移してドルを下支えすることとなりそうですし、もし2回であればそこまでタカ派ではないと考えられてドルの上値を重くするという見方で良いかと思います。ただ、FRBは急な政策や見通しの変化を好まない傾向もあり、9月にももう1回見通しが示されることを考えると、2回という可能性も低いですがありうる流れです。
サプライズとしては、年末時点で利下げがゼロという見通しがもし出てくれば金利上昇によるドル高を招きそうですが、逆に緩和が無いことを嫌気して米国株に売りが広がる可能性もあり、そうなるとリスクオフで円買いという見方もできそうで、可能性は低いもののこのシナリオも念の為考えておく必要はありそうです。
そして金曜の日銀会合ですが、今回果たして国債購入額の減額が検討されるのかどうかは気になるところです。FRBは緩和の前段階として6月からQTのペースダウンに動きましたが、日銀も追加利上げの前にQTに動く可能性は十分にあります。ただでさえ日銀が購入してきた国債は巨額でしたから、検討の可能性はあり、その場合は先週初の動き同様に円買いに動くと予想されます。また何も無かった場合には、やや円売りに動くというところだと思われます。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
これまでの平行上昇チャンネル(ピンク)を下抜け、現在は4月高値からのレジスタンスラインと5月安値からのサポートラインによるトライアングル(青)内での動きとなり、金曜の上昇でレジスタンスラインに接する値動きとなってきました。このままレジスタンスを上抜けると直近高値の5月29日高値の157.70レベルを試しに行く展開でしょうし、抜けなければサポートライン(現在155.10水準)への反落が考えられます。
基本的にはFOMC待ちではあるものの、現状のドルの底堅さを考えるとFOMC前に上抜ける可能性のほうが高そうです。そうなると最近のレンジからは現行水準から下にも1円程度の動きを考えるとよさそうですので、今週は155.75レベルをサポートに、157.75レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
6月10日(月)
**:** 豪州、中国、香港市場休場
08:50 本邦4月貿易収支
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
20:00 オーストリア中銀総裁講演 ☆
6月11日(火)
10:30 豪州5月企業景況感
15:00 英国5月失業率
16:10 フランス中銀総裁講演 ☆
20:05 レーンECB理事講演 ☆
6月12日(水)
10:30 中国5月CPI・PPI
15:00 ドイツ5月CPI
15:00 英国4月鉱工業生産、貿易収支
21:30 米国5月CPI ☆
22:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果公表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆
6月13日(木)
08:01 英国5月住宅価格
10:30 豪州5月失業率
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
21:30 米国5月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
25:00 NY連銀総裁講演 ☆
**:** G7サミット(〜15日)
6月14日(金)
12:00頃 日銀会合結果発表 ☆
15:30 植田日銀総裁会見 ☆
15:45 フランス5月CPI
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
21:30 米国5月輸入物価
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
26:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
27:00 (シカゴ連銀総裁講演)
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月3日(月)
週明けのドル円は東京前場では動かず、後場に先週金曜高値を上抜け157.47レベルの高値をつけましたが157円台半ばでは戻り売りも見られたこと、また米金利と日経平均の上値が重たいことからすぐに反転、後場以降はじりじりと水準を下げる流れが続きました。NY市場では弱い米国経済指標に反応して一段安、ストップも巻き込んで一時155.95レベルの安値をつけ、安値圏でもみあいのまま引けました。
6月4日(火)
ドル円は連日の円買いの動きが強まりました。金融政策ウィークを控えて膨らんでいた円売りポジションの調整が主要因ですが、一部で来週の日銀会合で国債買い入れ金額の減額が検討されるのではないかという見方も円買いを加速させる要因となりました。ただテクニカルに前の日の安値を下抜けストップがストップを呼んだというのがここ2日の動きと言えそうでした。
6月5日(水)
ドル円は週初からの下げに対して調整の買い戻しが入り、欧州市場序盤には156円台乗せとなりました。その後は基本的に156円台前半でのもみあいが続き、NY市場で156.48レベルと若干の高値更新を見ましたが、どちらかというと上値が重く戻り売りを考える向きが多そうな引けとなりました。
6月6日(木)
ドル円は155円台後半を中心として大きくうねりながらも方向感がはっきりしない横方向の値動きを続けました。ECB理事会も利下げは織り込み済みであったことから、雇用統計待ちといった一日でした。
6月7日(金)
ドル円は米国雇用統計を控えてNY市場までは155円台半ばを中心として若干上値が重たい程度のもみあいが続きました。雇用統計は失業率こそ4.0%となったものの、非農業部門雇用者数は予想を大きく上回る27.2万人、平均時給も増加していたことを受け、米10年債利回りは4.43%台へと上昇、ドル円も一時157.07レベルの高値をつけました。引けにかけては156円台後半でもみあいのまま引けました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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