ドル円週間見通し 米雇用統計から急伸、5月3日を起点とした三段目の上昇期入りを試す

7日夜の米雇用統計が予想を上回る就業者増加数となりインフレ指標の平均時給伸び率が4月から伸びを加速させたことを強気サプライズとして7日深夜高値157.07円へ急伸した。

ドル円週間見通し 米雇用統計から急伸、5月3日を起点とした三段目の上昇期入りを試す

米雇用統計から急伸、5月3日を起点とした三段目の上昇期入りを試す

〇先週のドル円、日銀の国債買入れ減額見通し報道や米指標悪化で6日深夜安値154.54まで急落
〇週末米雇用統計の好調に157円台に急伸、156円台後半で越週
〇米5月雇用統計、NFP27.2万人の大幅増、平均時給の伸びも加速
〇今週のFOMCでは2024年3回利下げ想定を下方修正か
〇156円台を維持するうちは一段高余地あり、6/7高値157.07超えからは157.70前後への上昇を想定
〇156円割れからは155円台中盤試しとするが、155.50以下は反騰注意
〇155.11円を割り込み、6/4深夜安値154.54も割れた場合は153円以下を目指す下落期に入る

【概況】

ドル円は5月31日の米4月PCE統計を前後した乱高下から6月3日午後に157.47円まで戻して5月3日安値151.85円以降の最高値である5月30日未明高値157.70円へ迫っていたが、日銀の国債大量買入れ減額見通し報道や6月3日夜の米5月ISM製造業景況指数の悪化、4日夜の米4月JOLTS求人件数の大幅減少等による米長期債利回り低下で6日深夜安値154.54円まで急落した。
急落後の買い戻しでは156.50円手前が壁となり7日夕刻には155.11円までいったん下げていたが、7日夜の米雇用統計が予想を上回る就業者増加数となりインフレ指標の平均時給伸び率が4月から伸びを加速させたことを強気サプライズとして7日深夜高値157.07円へ急伸した。その後の156.50円割れも買われて156円台後半を維持して週を終えた。

【米雇用統計強く、FOMCは年内1、2回利上げへ見通し修正か】

6月7日に米労働省が発表した5月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比27万2000人増となり4月の016万5000人から大幅に伸びて市場予想の18万5000人を上回った。
失業率は4月の3.9%から4.0%へ悪化したものの、インフレ指標である平均時給伸び率は前月比0.4%(4月0.2%、予想0.3%)、前年同月比は4.1%(4月4.0%、予想3.9%)と加速した。
FRBは6月11−12日にFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)を開くが、昨年12月と今年3月の会合で示された2024年3回利下げ想定を下方修正するとみられている。参加者による利下げ予想回数が年内1回となるのか2回なのか注目される。金利先物市場における利下げ期待度は、9月利下げについては米雇用統計発表前に7割まで上昇していたところから5割強へ低下し、年内2回利下げへの期待度は雇用統計発表前の7割弱から5割へ低下している。

【米長期債利回りは急反騰】

6月7日の米長期債利回りは米雇用統計を受けて総じて急上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.15%上昇の4.44%で週を終えた。5月30日から6月5日まで5営業日連続の低下となり5日に4.28%をつけて5月16日の4.31%を割り込んで4月25日に付けた昨年末以降のピークである4.74%以降の最低を更新したが、6日は大幅低下一服で様子見だったものの7日は米雇用統計から急伸した。

30年債利回りは前日比0.12%上昇の4.56%、2年債利回りは前日比0.16%上昇の4.89%となった。
日本の10年債(374回債)利回りは5月23日に1.0%を超えて5月29日に1.075%まで上昇したもののその後は低下に転じて6月6日に0.955%とし、7日は前日比0.015%上昇の0.970%で週を終えており、日米長期金利差拡大による円安バイアスが強まっている。
一方で米長期債利回り急上昇を嫌って6月7日のNYダウは前日比87.18ドル安、ナスダック総合指数は39.99ポイント安と下げたが、ダウは3連騰後の上昇一服でナスダックは5日に終値の史上最高値を更新して6日に取引時間中の最高値を更新した後であり、7日の下落は株高継続感を壊す程ではなかった印象だ。

【二重の三段上げへ挑戦中】

二度の市場介入による4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円までの下げ幅は8.31円であり、昨年1月から11月にかけての上昇期における3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円までの下げ幅8.28円や6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円までの下げ幅7.82円とほぼ同規模のため、それらと同様の中間調整を消化して5月3日安値から上昇を再開していると思われる。
昨年12月28日安値140.24円を起点とした長期的な上昇については、2月13日高値150.88円までを一段目(上昇幅10.64円)とし、3月11日安値146.46円から4月26日高値160.16円までを二段目(上昇幅13.70円)とし、5月3日安値を起点として三段目の上昇期に入っている可能性がある。そしてその三段目の上昇もまた短期的な三段上げ型へと発展しつつあり、5月14日までを一段目、5月30日未明までを二段目とし、6月4日から三段目に入っている可能性がある。

5月30日未明高値157.70円から6月4日深夜安値154.54円までの下げ幅は3.16円であり、5月14日高値156.75円から5月16日安値153.60円までの下落幅3.15円とほぼ同規模だったが、6月7日深夜高値157.07円まで2.53円の上昇となり直前の下げ幅に対して8割を戻したため、6月4日深夜安値を押し目底として三段目入りを伺う位置に付けている。
5月30日高値を超えれば5月3日からの上昇が三段目に入るとともに、4月29日高値160.16円超えに挑戦して長期的な上昇の三段目入りを確認する流れへ進むという見方もできると思う。

【三度目の介入を警戒しつつ米日金融政策決定会合へ向かう】

【三度目の介入を警戒しつつ米日金融政策決定会合へ向かう】

5月2日早朝に二度目の市場介入をした時の直前高値157.58円を5月30日未明への上昇で超えているため、政府日銀による三度目の市場介入ターゲットは一度目の介入があった4月29日高値160.16円に続く160円到達時点と思われる。
6月13−14日の日銀金融政策決定会合がドル円によって弱気サプライズとなるか、想定より早く三度目の市場介入があれば急落商状に陥ることも警戒されるが、6月11−12日の米FOMCを強気で通過しながら日銀会合を弱気サプライズ無く三度目の介入がみられない場合には5月30日未明高値157.70円を超えて158円台前半、159円台前半を順次試して160円を目指す声も高まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、156.00円を下値支持線、6月7日深夜高値157.07円を上値抵抗線とする。
(2)156円台を維持するうちは一段高余地ありとし、157.07円超えからは5月30日未明高値157.70円前後への上昇を想定する。157.50円以上は反落警戒とするが、FOMCを通過して騰勢を維持する場合は週末に向けて158円台へ向かい、日銀会合から円安が加速する場合は158円台後半へ向かう可能性もあるとみる。
(3)156円割れからは155円台中盤試しとするが、155.50円以下は反騰注意とし、その後に156円台前半を回復するところから上昇再開とする。
(4)6月7日夕安値155.11円を割り込む場合は6月4日深夜安値154.54円を起点とした上昇が発展できずに一段安へ進む可能性があると注意し、6月4日深夜安値割れからは153円以下を目指す下落期に入ると考える。

注:ポイント要約は編集部

【当面の予定】

6/10(月)
休場、中国、オーストラリア、香港、台湾
08:50 (日) 4月 経常収支・季調前 (3月 3兆3988億円、予想 1兆6935億円)
08:50 (日) 4月 経常収支・季調済 (3月 2兆106億円、予想 2兆550億円)
08:50 (日) 4月 貿易収支・国際収支ベース (3月 4910億円、予想 -3665億円)
08:50 (日) 1-3月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.5%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP・改定値 年率換算 (速報 -2.0%、予想 -2.0%)
14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー現状判断 (4月 47.4、予想 48.5)
14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー先行き (4月 48.5)
26:00 (米) 財務省3年債入札

6/11(火)
米FOMC(連邦公開市場委員会)初日、OPEC月報
08:50 (日) 5月 マネーストックM2 前年同月比 (4月 2.2%)
10:30 (豪) 5月 NAB企業景況感指数 (4月 7)
15:00 (英) 4月 失業率・ILO方式 (3月 4.3%)
20:05 (欧) レーンECB理事、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札

6/12(水)
休場 フィリピン、ロシア、イスラエル
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 2.0%)
10:30 (中) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 0.3%)
10:30 (中) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 -2.5%)
15:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.1%)
15:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.4%)
15:00 (英) 4月 月次GDP 前月比 (3月 0.4%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.2%)
15:00 (英) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 0.5%)
15:00 (英) 4月 貿易収支・物品 (3月 -139.67億ポンド)
15:00 (英) 4月 貿易収支 (3月 -10.98億ポンド)

21:30 (米) 5月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (4月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 3.4%、予想 3.4%)
21:30 (米) 5月 コアCPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (4月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 コアCPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (4月 3.6%、予想 3.5%)
22:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米FOMC(連邦公開市場委員会)政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 2095億ドル)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、記者会見

6/13(木)
日銀金融政策決定会合初日
G7首脳会議(6/15迄)
08:50 (日) 4-6月期 大企業全産業業況判断指数(BSI) (1-3月 0.0)
08:50 (日) 4-6月期 大企業製造業業況判断指数(BSI) (1-3月 -6.7)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 3.85万人、予想 2.25万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 4.1%、予想 4.0%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.6%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -1.0%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 0.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 2.2%)
21:30 (米) 5月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (4月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (4月 2.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.2万人)
25:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イエレン財務長官、討論会
26:00 (米) 財務省30年債入札

6/14(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
13:30 (日) 4月 第三次産業活動指数 前月比 (3月 -2.4%、予想 0.3%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (3月 -1.0%)
13:30 (日) 4月 設備稼働率 前月比 (3月 1.3%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 173億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 241億ユーロ )
18:00 (欧) レーンECB理事、講演
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.9%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 0.5%、予想 0.2%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (5月 69.1、予想 73.0)
26:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
27:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、談話会

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