ドル円週間見通し 昨年末からの上昇トレンドを維持しつつ米FOMCへ向かう(週報1月第五週)

ドル円は上昇一服に入っているものの147円割れを買われて高止まりしている。

ドル円週間見通し 昨年末からの上昇トレンドを維持しつつ米FOMCへ向かう(週報1月第五週)

昨年末からの上昇トレンドを維持しつつ米FOMCへ向かう(週報1月第五週)

〇先週のドル円、日銀植田総裁のハト派発言等に146円台に下落する場面もあったものの148円台で越週
〇今週は1/30-31の米FOMC、2/2の米1月雇用統計控え、米利下げ時期への思惑巡り上下動しやすいか
〇東京都区部CPIは2%割れ、マイナス金利解除等を急ぐ根拠やや後退
〇米PCEデフレーターは2年10ヶ月ぶり低水準、インフレ鈍化は顕著だが米個人消費、GDPは堅調
〇FOMC後の米長期金利動向が注目される
〇147.37を上回るうちは上昇余地あり、148.35超えからは1/24高値148.69及び1/19高値148.80円試し
〇147.37割れからは下落期入り、1/24安値146.65試しとし、底割れからは146.00前後への下落を想定

【概況】

ドル円は1月23日の日銀金融政策決定会合での金融緩和政策現状維持発表と当日午後の植田総裁会見におけるマイナス金利解除への言及により148.54円へ上昇してから146.99円まで急落し、総裁会見への反応がやや過剰だったことと米長期債利回りの上昇を見て24日未明高値148.69円まで切り返した。しかし1月19日高値148.80円には届かず、米長期債利回りの上昇一服によるドル安により24日深夜には146.65円を付けて23日安値を割り込んだ。
1月24日深夜の147円割れを買い戻された後は148円手前で売られながら25日深夜の反落時は147.07円に留まってしっかりし、26日は夕刻に148.08円を付けてから米PCE統計発表後に147.37円まで反落したところを買われて27日未明には148.19円まで戻した。

1月19日高値148.80円と24日未明高値148.69円により149円手前に抵抗感があるものの、1月24日深夜への下落時は昨年末以降の主要な安値を結ぶ上昇トレンドの下値支持線を維持して持ち直している。今週は1月30−31日の米FOMCが最大の焦点となるが2月2日夜の米1月雇用統計に向けてISM景況指数やJOLTS求人件数等の重要指標発表も相次ぐため、米国の利下げ開始期への思惑が交錯して上下に大きく動く可能性があり、米国の利下げ先送り感や利下げを開始しても緩やかな利下げペースとなる可能性が高まれば149円手前の抵抗を突破して一段高へ進みやすく、米国の早期利下げ期待が再び強まるなら昨年末以降の上昇トレンドから転落して下落感が強まりやすくなると思われる。春へ向けた重要局面として注目したい。

【東京都区部CPIは2%割れ】

1月26日朝発表の1月東京都区部消費者物価指数の上昇率は生鮮食品を除いて前年同月比1.6%となり12月の2.1%から鈍化して市場予想の1.9%を大幅に下回った。日銀の物価目標である2.0%を割り込むのは20か月振りで、昨年末にかけて続いてきた円安による食料品等の値上げラッシュが落ち着いたことを反映している。
日銀は長期化してきた金融緩和政策からの脱却へ向かいインフレ目標実現と賃上げ情勢を見てマイナス金利解除やYCC(イールドカーブコントルール=長短金利操作)の撤廃を目指したいところだが、インフレが頭打ちとなり賃上げが冴えないものに留まるならマイナス金利解除等を急ぐ根拠が薄れる。政府による電気ガス代支援策の影響もあるため支援策が切れれば再び物価上昇感が強まるとの見方もあるが、日銀が出口へ急がない状況が続き、米国の利下げ開始が先送りされて利下げ開始後のペースも緩やかとの見方が優勢となれば日米金利差面でのドル高円安感が継続する可能性もあるだろう。

【米12月PCEは鈍化、個人消費は強い】

1月26日に米商務省が発表した昨年12月の個人消費支出(PCE)は前月比0.7%増で11月の0.4%増及び市場予想の0.4%増を大幅に上回り消費の堅調さを示した。FRBがインフレ指標として最重視しているPCEデフレーターの上昇率は全体の前年同月比が2.6%で11月と変わらず予想と一致したが2021年2月以来2年10か月振り低水準となった。食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターの上昇率は前月比が0.2%で予想と一致したものの11月の0.1%を上回り、前年同月比は2.9%で11月の3.2%から鈍化して市場予想の3.0%を下回った。
インフレの鈍化傾向は顕著だが、個人消費が堅調で前日発表の10−12月期米GDP速報値が予想の2.0%を大幅に上回る3.3%だったことを踏まえれば、FRBとしては利下げを急ぐ必要にはさほど迫られず、利下げを先延ばしすることによる景気への悪影響リスクを踏まえて慎重に時期を探るという姿勢を取りやすい状況と思われる。

【米10年債利回りは頭打ち傾向、ダウは最高値更新】

1月26日の米長期債利回りは米12月個人消費の強さを反映して概ね上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%ポイント上昇の4.14%となった。早期利下げ期待を背景に昨年10月23日の5.02%から12月27日の3.78%まで大幅低下したが、FRB高官らの早期利下げけん制発言が相次いだことや米経済指標が利下げを急ぐ必要性を高めなかったことで上昇再開に入った。ただ、1月19日に4.20%をつけた後は上昇が頭打ちであり、週間では1月19日終値の4.13%からわずかな上昇に留まった。
30年債は前日比変わらずの4.37%、週間では1月19日終値4.34%から0.03%上昇にとどまり1月24日に4.42%をつけた後は頭打ちの様相だ。

2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.35%で終了し、週間では1月19日終値4.39%から0.04%低下し、1月12日に4.12%まで大幅低下してから1月19日に4.42%をつけた後は低下傾向にある。
一方でNYダウは利下げ時期が先送りされたとしても年内利下げ開始見込みは変わらないことと景気後退懸念が薄れていることによる先高期待で買われており、1月26日は前日比60.30ドル高と上昇し、史上最高値を38215.31ドルへ伸ばした。ナスダック総合指数は55.14ポイント安と下げたが1月24日に15629.07を付けて2022年10月以降の最高値を更新した後も高値圏を維持している。
米国株高傾向は円安に寄与するが、肝心なところは米長期債利回り動向であり、FOMC後に米長期債利回りが一段と上昇するのか低下するのか注目される。

【日足サイクル・一目均衡表分析】

【日足サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は昨年12月28日安値140.24円を起点として1月19日高値148.80円まで8.56円の上昇幅となり、その後は上昇一服に入っているものの147円割れを買われて高止まりしている。概ね3か月から4か月前後の底打ちサイクルにおいては12月28日安値を底とした上昇期にあり、11月13日高値151.90円からの下げ幅11.66円に対しては73%を戻している。
1月24日安値146.65円を上回るうちは12月28日を起点とした上昇の継続性があり、1月19日高値を超えれば150円台及び2022年10月21日高値151.94円と昨年11月13日高値151.90円による152円手前の抵抗水準を試すことも考えられる。米FOMCや米雇用統計等をきっかけとして高値切り上げヘ進む場合はこのケースとするが、152円手前の抵抗はかなり厳しいと思われ、11月13日高値とのダブルトップ形成に終わる可能性に注意したい。

1月24日安値146.65円を割り込む場合、12月28日からの上昇幅に対する3分の1押しラインの145.95円、半値押しラインの144.52円を試して行くのではないかと思われる。昨年3月6日からの反落時等は、前日比1円前後規模の下落で続落するところから大幅下落へ進んでいるため、現状においても前日比1円前後規模の下落となる日足陰線の出現からは上昇一巡後の修正安入りとなる可能性に注意したい。

日足の一目均衡表では、9日転換線を目先の下値支持線とし、26日基準線及び先行スパンを上回り、遅行スパンが好転した状況を維持しているので、転換線前後で買われるうちは上昇余地ありとするが、日足終値で転換線を割り込んでから続落し、転換線自身が下降し始める場合は下落期入りの可能性に注意する。中勢の弱気転換は26日基準線割れと遅行スパンの悪化からとし、先行スパンへ潜り込む場合はその下限を試し、先行スパンから転落する場合は12月28日安値に迫ってゆく規模の下落を想定する。

日足の相対力指数は60ポイント台まで上昇しており、50ポイント以上を維持するうちは70ポイント超えから75ポイント前後を目指す可能性があるとみる。ただし、50ポイント割れからは下落期入りを警戒し、45ポイント割れからは30ポイント前後への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月26日夜反落時安値147.37円を下値支持線、148.35円を上値抵抗線とする。
(2)147.37円を上回るうちは上昇余地ありとし、148.35円超えからは1月24日未明高値148.69円及び1月19日午後高値148.80円試しを想定する。148.60円以上は反落注意とし、その後に148円を割り込む場合は下げ再開を警戒するが、148円台を維持しての推移なら30日も高値試しへ向かいやすいとみる。米FOMCを通過して上昇が勢い付く場合は150円試しへ上値目途を引き上げる。
(3)147.37円割れからは24日深夜からの戻り一巡による下落期入りとみて1月24日深夜安値146.65円試しとし、底割れからは146.00円前後への下落を想定する。146円以下は反騰注意とするが、米FOMCを通過して下落が勢い付く場合は145円台中盤へ下値目途を引き下げる。

【当面の予定】

1/29(月)
06:45 (NZ) 12月 貿易収支 (11月 -12.34億NZドル)
22:10 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

1/30(火)
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
08:30 (日) 12月 失業率 (11月 2.5%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 12月 小売売上高 前月比 (11月 2.0%、予想 -1.5%)
18:00 (独) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7−9月 -0.1%)
18:00 (独) 10-12月期 GDP・速報値 前年同期比 (7−9月 -0.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感・確定値
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 96.4)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7−9月 -0.1%、予想 -0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・速報値 前年同期比 (7−9月 0.0%)
23:00 (米) 11月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (10月 0.3%)
23:00 (米) 11月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (10月 4.9%)
24:00 (米) 1月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (12月 110.7、予想 111.6)
24:00 (米) 12月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (11月 879.0万件)

1/31(水)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合・主な意見(1月22-23日分)
08:50 (日) 12月 小売業販売額 前年同月比 (11月 5.3%、予想 5.4%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産・速報値 前月比 (11月 -0.9%、予想 2.5%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (11月 -1.4%、予想 0.3%)
09:00 (NZ) 1月 ANZ企業信頼感 (12月 33.2)
09:30 (豪) 10-12月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (7−9月 1.2%、予想 0.8%)
09:30 (豪) 10-12月期CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (7−9月 5.4%、予想 4.3%)
09:30 (豪) 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 4.3%、予想 3.6%)
10:30 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 49.0)
14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -8.5%、予想 -7.0%)
14:00 (日) 1月 消費者態度指数・一般世帯 (12月 37.2、予想 37.8)

17:55 (独) 1月 失業者数 前月比 (12月 0.5万人)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.9%)
22:00 (独) 1月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
22:00 (独) 1月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (12月 3.7%、予想 3.0%)
22:15 (米) 1月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (12月 16.4万人、予想 13.5万人)
22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (7−9月 1.1%、予想 1.0%)
23:45 (米) 1月 シカゴ購買部協会景気指数 (12月 46.9、予想 48.1)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会)・政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
28:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見

2/1(木)
休場 マレーシア
09:30 (豪) 10-12月期 輸入物価指数 前期比 (7−9月 0.8%)
09:30 (豪) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 1.6%)
10:45 (中) 1月 財新製造業PMI (12月 50.8)
17:55 (独) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 45.4)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 46.6)
18:30 (英) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 47.3)
19:00 (欧) 1月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (12月 2.9%、予想 2.8%)
19:00 (欧) 1月 コアHICP・速報値) 前年同月比 (12月 3.4%、予想 3.4%)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 6.4%)

21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%。予想 5.25%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・速報値 (7−9月 5.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 10-12月期 単位労働コスト・速報値 (7−9月 -1.2%、予想 3.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.3万人)
23:45 (米) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 50.3)
24:00 (米) 1月 ISM製造業景況指数 (12月 47.4、予想 47.3)
24:00 (米) 12月 建設支出 前月比 (11月  0.4%、予想 0.6%)

2/2(金)
06:45 (NZ) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 -10.6%)
08:50 (日) 1月 マネタリーベース 前年同月比 (12月 7.8%)
09:30 (豪) 10-12月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (7-9月 1.8%)
09:30 (豪) 10-12月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (7−9月 3.8%)
22:30 (米) 1月 非農業部門雇用者数 前月比 (12月 21.6万人、予想 16.8万人)
22:30 (米) 1月 失業率 (12月 3.7%、予想 3.8%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前月比 (12月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前年同月比 (12月 4.1%、予想 4.1%)
24:00 (米) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 2.6%、予想 0.5%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 78.8、予想 78.8)


注:ポイント要約は編集部

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