日銀会合後の上昇幅解消、米国の来春利下げ予想によるドル安での下落基調
〇先週のドル円、週初の高値144.95から一時141円台後半に下げる
〇米インフレ指標の鈍化傾向鮮明化によりFRBの3月利下げ実施への思惑が優勢に
〇週末発表のミシガン大消費者信頼感指数は大幅改善から、ドル円は142円台半ばに戻して越週
〇ドル円、11/13高値151.90からの下げ幅は10.91に拡大、調整の域を超える
〇141.87割れを回避するうちは戻りを試す可能性あり、143円超えからは143円台半ばへの上昇想定
〇141.87割れからは140.99試し、割り込んだ場合には年末にかけ140円を試す展開か
【概況】
ドル円は日銀会合後の円売りが一巡して12月19日高値144.95円から下落に転じたが、円安の修正としての円高に加え、米国のインフレ鈍化が顕著となりFRBが来年3月には利下げに踏み切るのではないかとの思惑が優勢となり、12月21日夜の米GDP確報値の下方修正と四半期コアPCEデフレーターの伸び率が前年同期比2.0%まで低下したことで22日午前には141.87円まで安値を切り下げた。
12月22日夜の米11月PCEデフレーターも予想以上に鈍化したことで深夜にかけてはドル安となり、ドル円も22日午後に142.54円まで戻してから22日深夜に141.88円まで下げたが、142円割れに対する売られ過ぎ警戒感もあって午前安値割れを回避し、ミシガン大消費者信頼感指数が前月から大幅に改善したことでドル安が一服したために23日未明には142.65円まで戻し、23日早朝の取引終了時は142.45円として週を終えた。
【米11月PCEデフレーターは予想以上に鈍化】
12月22日に米商務省が発表した11月PCE(個人消費支出)デフレーター伸び率は前年同月比2.6%となり2か月連続の鈍化で10月の3.0%を大幅に下回り市場予想の2.8%も下回って2021年2月以来の低水準となった。コアPCEデフレーター伸び率は前月比0.1%で10月の0.2%から鈍化して市場予想の0.2%を下回り2020年4月以来の低水準となり、前年同月比は3.2%で10月の3.5%から大きく鈍化して市場予想の3.3%も下回った。
12月21日に発表された7-9月期GDP統計確定値では四半期PCEデフレーターが全体で2.6%となり改定値の2.8%から下方修正され、コアPCEデフレーターは改定値の2.3%から2.0%へ下方修正されFRBの目標である2%に到達した。
米ミシガン大による12月消費者調査では、12月消費者信頼感指数確報値は69.7となり速報の69.4から上方修正されて11月確報値の61.3から大幅に改善した。インフレ指標として注目度が高まっている消費者の期待インフレ率は1年先が3.1%で11月の4.5%から大幅に鈍化し、5年先も2.9%となり11月の3.2%から鈍化した。景気が減速してもリセッションに陥らずインフレも落ち着くとの内容だった。
米商務省による11月の新築一戸建て住宅販売件数(年換算)は前月比12.2%減の59万戸となり2か月連続の減少だったが前年同月比は1.4%増、販売価格中央値は前月比4.7%上昇して43.47万ドルだった。
米商務省による11月耐久財受注は前月比5.4%増で10月の5.1%減から回復して市場予想の2.2%増を大幅に上回った。設備投資の先行指標である航空機除く非国防資本財受注は前月比0.8%増で市場予想の0.2%増を上回った。
【米長期債利回りはまちまち、ダウは反落で最高値更新へ進めず】
12月22日の米長期債利回りは10年債と30年債が上昇したが2年債利回りは低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%上昇の3.90%で終了した。21日は一時3.83%まで低下して10月23日に付けた5.02%以降の最低としてから反発して前日比0.04%上昇としていたが、22日は3.92%まで戻してから上げ幅を削ったものの2連騰とした。週間では12月15日の3.92%から0.02%低下だった。
30年債利回りは前日比0.03%上昇の4.06%で終了した。12月20日に3.98%まで低下して10月23日に付けた5.18%以降の最低としたが、21日は0.04%上昇とし、22日も続伸して下げ渋りの様相だ。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.02%低下の4.33%で終了した。14日に一時4.28%まで低下して10月19日に付けた5.26%以降の最低とし、いったん戻してからの反落で21日には一時4.30%へ低下し、22日は安値更新を回避したものの日足終値ベースでは10月19日以降の最低を更新している。
一方で12月22日のNYダウは前日比18.38ドル安と小幅低下した。12月20に37641.30ドルの高値を付けて史上最高値を更新してから反落したが、21日に322.35ドル高と戻し、22日も小幅安ながら高値圏を維持している。ナスダック総合指数は29.11ポイント高と上昇したが、20日に付けた年初来高値15069.29ポイント超えには至らず高止まりの様相となっている。
【円の独歩高リスクは後退したがドル安基調は継続】
ドル円は12月に入ってから乱調な推移が続いている。
(1)12月7日の日銀総裁国会答弁をきっかけとした円買いで12月6日夜高値147.49円から12月8日未明安値141.67円まで急落(下げ幅5.82円)、
(2)日銀関係者の話として出口へ急いでいないとの報道で揺れ返しの円安となり12月12日未明高値146.58円へ上昇(上げ幅4.91円)、
(3)12月14日早朝の米FOMCが来年3回利下げ想定としたことによるドル全面安で14日午後安値140.99円へ一段安(12日未明高値からの下げ幅5.59円)、
(4)12月19日の日銀金融政策での現状維持と総裁会見で出口戦略への姿勢があいまいだったとした円売りで19日夜高値144.95円へ上昇(14日安値からの上げ幅は3.96円)、
(5)円売り一巡とドル安継続感で失速する中で12月21日の米7−9月期GDPと個人消費が下方修正されて四半期コアPCEデフレーターが2%まで低下したことによるドル安で12月22日午前安値141.87円まで失速した。
12月8日未明への急落は円買い材料による円高での下落あり、14日はドル売り材料による下落と内容は変わっているものの、12月6日夜高値147.49円と12月12日未明高値146.58円及び12月19日夜高値144.95円はほぼ1直線で下降トレンドの上値抵抗線を形成しており、右肩下がりの下落基調が続いている。日銀の出口戦略に関する思惑での急激な円独歩高としての急落リスクはひとまず落ち着いているが、来年の米国利下げを睨んだドル安基調は継続しているという印象だ。
11月13日高値151.90円から12月14日安値140.99円までの下げ幅は10.91円に拡大し、3月や7月の下落時に8円前後の下落幅だったレベルを超えており、昨年10月21日高値151.94円から今年1月16日安値127.22円までの下落時(下げ幅24.73円)における前半戦に近い印象だ。昨年10月21日高値からの下落は日銀の大規模介入がきっかけではあったが、11月10日の10月米CPIが大幅に鈍化したことで米国の利上げペースが緩むとの見方が急激に高まったことをCPIショックとして下落したものであり、現状もインフレ指標の顕著な鈍化とFOMCによる来年利下げ想定回数の引上げが主因となっているために下落環境は類似している。
戻り高値を切り下げてから一段安を繰り返しているため、短期的な反発レベルを超えて上昇再開ヘ進むには戻り高値切り上げ=12月19日高値144.95円を超える必要があり、できないうちは越年も含めて一段安警戒と考える。
12月25日は欧米等がクリスマス休場となり年末も迫っていることで市場参加者も減る時期だが、利食いや損切及び飛びつきのための事前指値も多くなれば、売り買いの注文連鎖で大きく動いてしまうケースもあり得ると注意したい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月22日安値141.87円を下値支持線、143.00円を上値抵抗線とみる。
(2)141.87円割れを回避するうちは戻りを試す可能性ありとみる。143円手前は売られやすいとみるが、143円超えから上昇が勢い付く場合は143円台中盤(143.35円から143.65円)への上昇を想定する。ただし143.50円以上は反落警戒とし、その後に142.50円を割り込むところからは下げ再開と一段安入りを警戒する。
(3)141.87円割れからは下落継続とみて12月14日安値140.99円試しを想定する。141円前後は買われやすいとみるが、140.99円割れから続落の場合は年末にかけて140円割れを試す下落を想定する。
【当面の予定】
12/25(月)
休場 米国、カナダ、英、仏、独、スイス、豪、NZ、香港、シンガポール、南ア、メキシコ、ノルウェー
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会会議 12/29まで
13:00 (日) 日銀植田総裁、講演
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI・改定値 (速報 115.9)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI・改定値 (速報 108.7)
12/26(火)
休場、英、独、カナダ、スイス、南ア、豪、NZ、香港
08:30 (日) 11月 失業率 (10月 2.5%、予想 2.6%)
08:50 (日) 11月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (10月 2.3%)
23:00 (米) 10月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (9月 0.6%)
23:00 (米) 10月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (9月 3.9%)
12/27(水)
14:00 (日) 11月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (10月 -6.3%)
24:00 (米) 12月 リッチモンド連銀製造業指数 (11月 -5)
27:00 (米) 財務省5年債入札
12/28(木)
08:50 (日) 11月 小売業販売額 前年同月比 (10月 4.2%)
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前月比 (10月 1.3%)
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (10月 1.1%)
22:30 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 20.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 186.5万人)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前月比 (10月 -1.5%、予想 1.0%)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前年同月比 (10月 -6.6%)
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省7年債入札
12/29(金)
16:00 (英) 12月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (11月 0.2%)
23:45 (米) 12月 シカゴ購買部協会景況指数 (11月 55.8、予想 50.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.12.25
東京市場のドルは157円台で推移、植田日銀総裁の余波は弱く一段の円安は回避か(24/12/25)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、植田日銀総裁の発言を受けて、やや円安ドル高に振れ一時157円50銭台まで上昇した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.12.25
ドル円157円台前半、主要市場のクリスマス休暇入りで市場閑散 (12/25午前)
25日午前の東京市場でドル円は小動きに終始。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.12.25
ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)
ドル円は、157円割れを買われつつ25日未明に157.37円まで高値を若干切り上げて確りしている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2023.12.25
ドル円、週足陰線途切れるも上値は重くドル上げ渋り(週報12月第4週)
先週のドル/円相場は、ドルが小高い。週間を通して乱高下を繰り返し、難しい相場展開だったが、終わってみれば週足は辛うじて陽線引けだった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2023.12.23
来週の為替相場見通し:『ドル円は日銀会合後の上げ幅を吐き出す展開。続落リスクに要警戒』(12/23朝)
今週はハト派な日銀金融政策決定会合を受けて一時144.96まで持ち直す場面も見られましたが、週末にかけて再び値を崩すなど冴えない動きが続いています。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。