12月22日午前の史上最安値更新後は下げ渋る
〇トルコ円、12/23早朝の終値は4.85、週間では12/15終値4.90から0.05の円高リラ安
〇対ドル、12/22は概ね29.36から28.96の取引レンジ。4営業日連続で取引時間中の史上最安値更新
〇中銀の追加利上げ挟んで再びリラ安の勢いが増し、1ドル=30リラへ向けた流れ続く
〇ユルマズ副大統領、金融未来サミットにて「再来年下半期までにインフレ率大幅に低下」と見通し表明
〇大手格付け会社の評価もポジティブに変わりつつあるが、リラの底値買いはまだ見られず
〇4.90を下回るうちは一段安警戒とし、4.85割れからは4.80前後への下落を想定する
〇4.90手前は売られやすいとみるが、4.90超えからは4.93前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の12月22日は概ね4.89円から4.85円の取引レンジ、23日早朝の終値は4.85円で前日終値の4.87円からは0.02円の円高リラ安だった。
対ドルでトルコリラが4営業日連続で取引時間中の史上最安値を更新する中、ドル円の下落基調も続いているためにトルコリラ円はリラ安と円高の両面から圧されている。
ドル円は12月14日早朝のFOMCが来年3回の利下げ想定を示したことによるドル全面安で14日午後に140.99円まで下落して11月13日高値151.90円以降の最安値としたが、19日の日銀金融政策決定会合が金融緩和の現状維持を決定して出口戦略へ向けた前傾姿勢を示さなかったことにより19日夜には144.95円まで反騰した。しかし円売り一巡後は米国の来春利下げへの期待感による全般ドル安の流れで下落を再開し、21日の米GDP確報値の下方修正等により22日午前には141.87円へ下落、その後も142円割れを繰り返しつつ143円に届かない下げ渋りのまま週を終えた。
トルコリラ円は日銀会合後の円安により19日夜高値4.98円まで上昇したものの、ドル高リラ安とドル円の下落再開により20日夜に4.92円へ下落、21日午前には4.90円を割り込み、22日午前には4.85円まで史上最安値を更新した。その後は最安値更新を回避しているものの22日午後の4.89円や23日未明の4.88円を売られて反騰入りへ進めずに安値圏のまま週を終えた。週間では12月15日終値4.90円から0.05円の円高リラ安だった。
【対ドルでは4営業日連続で史上最安値更新】
ドル/トルコリラの12月22日は概ね29.36リラから28.96リラの取引レンジ、23日早朝の終値は29.20リラで前日終値の29.11リラからは0.10リラのドル高リラ安だった。
12月21日にトルコ中銀は市場予想通りに2.5%追加利上げを決定して政策金利を42.5%としたが、CPI前年比で60%を大幅に上回るインフレ率に対して実質マイナス金利状態の解消には程遠いとして追加利上げ催促的なリラ売りが加速しており、12月19日から22日まで4営業日連続で取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでは12月18日に29リラ台に初めて到達してから5営業日連続で史上最安値を更新した。
週間では12月15日終値28.95リラから0.25リラのドル高リラ安であり、12月前半はややドル高リラ安のペースが鈍っていたものの、中銀の追加利上げを挟んで再びリラ安の勢いが増し始めており、1ドル=30リラへ向けた流れが続いている印象だ。
【リラの底値買いはまだ見られず】
12月22日にイスタンブールにおいてトルコ金融界要人が結集した金融未来サミット(Future of Finance Summit)が開催された。この会合にはユルマズ副大統領、シムシェク財務相、カブジュオール銀行規制監督庁長官、アシャン財務局長や大手銀行トップが参集した。
ユルマズ副大統領は「大統領選挙後は従来型の政策決定を受け入れ、インフレ高騰の阻止、貿易赤字の削減、外貨準備の再建、トルコリラの安定を目的とした積極的な金融引き締めを実施してきた」とし、「不確実性が排除されて予測可能性が確保されており、2024年下半期までにはインフレ率が大幅に低下する」との楽観的見通しと自信を表明した。
エルドアン大統領三選後のトルコ中銀による大胆な連続利上げや外貨準備高の増加政策など、再選前と政策スタンスががらりと変わり、それが短期的ではなく12月時点でも継続していることは再選直後には想像されていなかったことだ。大手格付け会社による評価もネガティブからポジティブに変わりつつあり、来年はまだ厳しいとしても再来年のトルコ経済の発展を先取りしようと外資の注目度も上がっている。
しかし、米国が2年かけた利上げでようやくインフレ鎮静化が見えてきたようにインフレ鎮静化には時間がかかる。特にトルコは60%を超える高インフレであり、42.5%まで引き上げられた政策金利の現状でも実質マイナス金利状態の解消には遠い。中銀はインフレ鎮静化と利上げサイクルが近い将来に終了するとの見通しを示しているが、3月には地方選挙もあるため、エルドアン大統領が地方選を挟んで現在の政策スタンスを維持できるのかどうか試金石になるとの見方もあるようだ。
欧米のインフレが鎮静化し始めるなら、リラ安が落ち着けば通貨インフレによる余計な高インフレ率も低下し、金融引き締めを続けられれば経常収支や財政収支の改善と、海外投資家によるトルコ経済発展への投資意欲を呼び込み、リラ安が底打ちしてゆくプロセスも期待したいが、今のところはまだ底打ちには不足としてドル/トルコリラやトルコリラ円における史上最安値更新が落ち着いていない状況だ。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、12月21日午前に弱気転換目安とした4.91円を割り込んだために12月19日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして22日午前から26日午前にかけての間への下落を想定した。
22日午前に4.85円まで史上最安値を更新してから4.89円まで戻し、その後も安値更新を回避しているので22日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて22日午前安値を直近のサイクルボトムとする。底割れ回避中は25日の日中から26日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして27日午前から29日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では12月22日午前安値からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯しているが先行スパンからの転落は解消されていない。先行スパンを上抜くところからは上昇が勢い付くとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜けないうちは22日午前安値割れからの一段安警戒とし、底割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月21日夜から22日午前にかけての下落時に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて戻しているので、40ポイントを上回るうちは60ポイント台への上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下向きとし、22日午前安値割れからは20ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.85円を下値支持線、4.90円を上値抵抗線とする。
(2)4.90円を下回るうちは一段安警戒とし、4.85円割れからは4.80円前後への下落を想定する。4.80円以下は反騰注意とするが、4.85円を割り込んでからも4.87円以下での推移なら26日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.90円手前は売られやすいとみるが、4.90円超えからは4.93円前後への上昇を想定する。4.93円以上は反落注意とするが、4.90円を超えた後も4.87円以上での推移なら26日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月26日
16:00 12月 製造業景況感指数 (11月 100.2)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.0%)
12月28日
16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 95.3)
20:30 週次 外貨準備高 12月22日時点 グロス (12月15日時点 954.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12月22日時点 ネット (12月15日時点 371.8億ドル)
12月29日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -65.2億ドル)
1月2日
16:00 12月 イスタンブール製造業PMI (11月 47.2)
1月3日
16:00 12月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (11月 3.28%)
16:00 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 61.98%)
16:00 12月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (11月 2.81%)
16:00 12月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (11月 42.25%)
注:ポイント要約は編集部
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