『ドル円は日銀会合後の上げ幅を吐き出す展開。続落リスクに要警戒』
〇今週のドル円、日銀政策決定会合と植田総裁のハト派姿勢受け、12/19に144.96まで上昇
〇買い一巡後は、米指標の不冴えからの米長期金利低下を受け、週末にかけ一時141.87まで急落
〇ユーロドル、週末にかけ週間高値1.1041まで急伸、ECB関係者のタカ派発言、米金利低下が背景
〇ドル円、主要テクニカルポイントを下抜け、強い売りシグナルも継続、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの逆流懸念等が重石に
〇来週は植田日銀総裁講演と、日銀金融政策決定会合の「主な意見」に注目集まる
〇引き続きドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー143.50、(EURUSD):1.0900−1.1150
今週のレビュー(12/18−12/22)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初142.15で寄り付いた後、(1)急ピッチな下落に対する反動買い(先週開催された米FOMC以降のドル売り・円買いの反動)や、(2)シカゴ連銀グールズビー総裁による「市場の利下げ織り込みは我々の想定よりも大きく困惑している」との牽制発言、(3)クリーブランド連銀メスター総裁による「来年の早期利下げを織り込む金融市場は少し先走っている」との牽制発言、(4)日銀金融政策決定会合のハト派的な結果(大規模金融緩和+イールドカーブ・コントロール+ETF買い入れ措置の現状維持)、(5)植田日銀総裁による「賃金と物価の好循環が実現するかなお見極めていく必要がある」「チャレンジング発言は一段と気を引き締めてという意味で用いた」「FRBが利下げに踏み切る前に日銀が利上げするというような考え方は不適切」「1月会合での政策修正の可能性はそこまでに入ってくる情報次第だがそんなに多くはない」とのハト派的な発言、
(6)上記4、5を背景とした円ロングの巻き戻し(市場に燻っていた政策修正期待が後退→円金利急低下→ドル円急伸)が支援材料となり、翌12/19にかけて、週間高値144.96まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)リッチモンド連銀バーキン総裁による「予想通りインフレ率が低下すればFRBは適切に利下げの対応をする」とのハト派的な発言や、(8)米金利低下に伴うドル売り圧力、(9)米7ー9月期実質GDP確報値(結果+4.9%、予想+5.2%)の市場予想を下回る結果、(10)米12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果▲10.5、予想▲3.0)の大幅悪化、(11)米7ー9月期コアPCE(結果+2.0%、予想+2.3%)の伸び率鈍化、(12)米7ー9月期個人消費(結果+3.1%、予想+3.6%)の冴えない結果が重石となり、週末にかけて、週間安値141.87まで急落しました。
引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間12/23午前5時00分現在)では、142.50前後で推移しております。尚、週末に発表された米11月PCEデフレータ(結果2.6%、予想2.8%)および、同コアデフレータ(結果3.2%、予想3.3%)は共に市場予想を下回りましたが、ドル売りでの反応は限られました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0903で寄り付いた後、早々に週間安値1.0891まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)スロバキア中銀カジミール総裁による「性急な利下げは長すぎる引き締めのリスクよりも重大」との牽制発言や、(2)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「早すぎる利下げはインフレが再発する危険性がある」との牽制発言、(3)リトアニア中銀シムカス総裁による「マーケットの利下げ見通しは過度に楽観的」との牽制発言、(4)ラトビア中銀カザークス総裁による「金利はしばらく現在の水準にとどまる必要がある」「インフレに対する勝利宣言は時期尚早」との牽制発言、(5)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「利下げが近いと予測している全ての投資家に対して言いたい。注意しなさい。以前にも誤算があった」との牽制発言、(6)ユーロ圏11月消費者信頼感速報値(結果▲15.1、予想▲16.3)の良好な結果、
(7)ドイツ1月GFK消費者信頼感指数(結果▲25.1、予想▲27.0)の市場予想を上回る結果、(8)ユーロ圏10月経常収支(結果338億ユーロ黒字、予想312億ユーロ黒字)の市場予想を上回る結果、(9)デギンドスECB副総裁による「最近のデータは良好に見えるが金融引き締め政策を変更するには十分ではない」「利下げについて議論するのは時期尚早」との牽制発言、(10)米経済指標(米7ー9月期実質GDP確報値、米12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米7ー9月期コアPCE、米7ー9月期個人消費、米11月PCEデフレータ、米11月PCEコアデフレータ)の冴えない結果、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.1041(8/10以来の高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間12/23午前5時00分現在)では、1.1010前後で推移しております。
尚、今週発表されたドイツ12月IFO現況指数(結果88.5、予想89.5)や、ドイツ12月IFO期待指数(結果84.3、予想85.6)、ドイツ12月IFO景気動向指数(結果86.4、予想87.7)、ドイツ11月生産者物価指数(結果▲7.9%、予想▲7.5%)はいずれも市場予想を下回る結果となりましたが、ユーロ売りでの反応は限られました。
来週の見通し(12/25−12/29)
<ドル円相場>
ドル円は11/13に記録した年初来高値151.91をトップに反落に転じると、12/14にかけて、約4カ月半ぶり安値となる140.97(7/31以来の安値圏)まで急落しました。今週はハト派な日銀金融政策決定会合を受けて一時144.96まで持ち直す場面も見られましたが、週末にかけて再び値を崩すなど(安値141.87)冴えない動きが続いています。
日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)の下方ブレイクに成功したことや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「21日移動平均線と90日移動平均線のデッドクロス」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる早期利下げ観測の台頭(先週開催された米FOMCは総じてハト派→CMEが提供するFed Watchツールによると来年3月の利下げ確率は74.1%まで急上昇)や、(2)日銀による金融緩和の修正観測(今週開催された日銀金融政策決定会合および植田日銀総裁記者会見は総じてハト派的な結果となったが、日銀がマイナス金利解除に踏み切るのは時間の問題)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの逆流懸念など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記2を見極める目的で12/25に予定されている植田日銀総裁講演と、12/27に公表される日銀金融政策決定会合の「主な意見」に注目が集まります。植田日銀総裁よりタカ派的な発言(マイナス金利解除のタイミングを示唆する発言)が出てくる場合や、「主な意見」で出口に向けて踏み込んだ議論が見られる場合には、日銀によるマイナス金利解除観測再燃→円金利上昇→円買い再開の経路で、ドル円に強い下押し圧力が加わる恐れもあるため、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(年末・年始で市場参加者の減少が見込まれることも、フラッシュ・クラッシュ的なドル円急落に繋がる恐れあり)。尚、来週は米国側では、12/28に予定されている新規失業保険申請件数や、12/29の米12月シカゴ購買部協会景気指数に注目が集まります。
来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー143.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/8に記録した約3週間ぶり安値1.0723をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約4ヵ月半ぶり高値となる1.1041(8/10以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)を軒並み上方ブレイクしたことや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること、日足のみならず4時間足でも強い買いシグナルが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「強い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的にも見ても、先週の米・欧中銀イベント(FOMCおよびECB理事会)を経て、「予想よりハト派なFRB」vs「予想よりタカ派なECB」のコントラストが浮き彫りとなっているため、目先はユーロ買い・ドル売りトレンドの継続が見込まれます。但し、中長期的な視点で見れば、欧州経済の先行き不透明感(先週発表されたフランス・ドイツ・ユーロ圏のPMI速報値が軒並み市場予想を下回った他、今週発表されたドイツ12月IFO指数も冴えない結果)や、欧州圏のインフレ鈍化懸念(今週発表されたドイツ11月生産者物価指数は市場予想を大幅に下回る結果)、上記を背景としたECBによる早期利下げ観測の再燃リスクなど、ユーロドル相場の「一巡後の反落」を連想させる材料も残っています。以上を踏まえ、当方では短期的なユーロドル上昇、中長期的なユーロドル下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0900−1.1150
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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