短期調整局面入りの可能性(週報2016年11月第四週)

金曜のドル円高値113.90までで9日大統領選開票日の安値101.19から既に12円71銭ものドル上昇となり、

短期調整局面入りの可能性(週報2016年11月第四週)

短期調整局面入りとなる可能性

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値     高値     安値    終値

ドル円  110.94    113.90   110.27    113.08
ユーロ円 117.42   120.15   117.31   119.72
ユーロドル 1.0583   1.0658   1.0518   1.0587
日経平均 18024.21   18482.94  17967.41  18381.22

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。


前週の概況

11月21日(月)

週明けの東京市場もドル高の流れは継続しましたが、111円台では既に大統領選開票日の安値から10円ものドル高円安水準ということもあり、短期筋の売りも出てNY市場まで111円台前半と110円台半ばとの往復となっていました。NY後場に日中高値を更新し111.36レベルを示現したものの引け間際に起きた福島沖地震を警戒し、急速に値を下げ一時110.46レベルと日中安値も更新する動きとなりました。その後は落ち着きを取り戻しましたが、新高値からの急反落を見たことで、上値の重たい地合いでの引けとなりました。

11月22日(火)

東京市場休場を前に111円台前半を中心とした高値圏でのもみあいを続けました。NY市場では前日高値と同じ111.36レベルで上値を抑えられたこともあって、高値もみ合いではあるものの方向感に欠ける引けとなりました。

11月23日(水)

アジア市場から欧州市場前場までは全くの動意薄、111円台前半の狭いレンジで膠着していました。しかしNY市場に入り、米国市場の休場を控えて油断していたこともあったのでしょうか、強い経済指標に反応して111.36高値を上抜け。長期金利も一段高となる中でストップオーダーを巻き込みながら、一気に112.97レベルまでドルが買われる動きとなりました。ユーロドルでもドル買いの動きとなり、1.0526レベルと昨年12月安値にほぼ並ぶ水準を見て、引けにかけては利食いも出てのクローズとなりました。

11月24日(木)

材料自体には変化なくドル高と円安の動きが継続。東京、NYの休場も関係なくどの水準でも押し目ではドルが買われる展開が続き上値の目途がつけにくい流れとなりました。ドル高値は、ドル円が113.53レベル、ユーロも1.0518レベルと着実にドル買いの動きが強まっていることに加え、ユーロ円も119.77レベルまで上昇し特に円安が目立つ動きとなりました。

11月25日(金)

東京市場ではこれまで同様にリスクオンの動きから株高と円安が進行、日経平均株価が一段中となる動きの中でドル円も高値113.90レベルと114円近い水準へと直近高値を更新しました。しかし、その後は株価に調整の動きが入ったことからドル円の売りも強まり、欧州市場と重なる時間帯には112.55レベルまで水準を切り下げました。海外市場ではNY市場が短縮取引となることもあって動意薄の展開が続き113円前後で方向感の無いまま週末クローズとなりました。ユーロドルもドル円同様の動きとなりましたが、安値を更新することは無く1.0628レベルまで買いが強まり、引けにかけてやや押してのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月28日(月)
19:00 OECD経済見通し公表
22:10 クーレECB理事講演
23:00 ドラギECB総裁議会証言
24:30 米国11月ダラス連銀製造業活動指数

11月29日(火)
08:30 本邦10月失業率、有効求人倍率
16:45 フランス7〜9月期GDP改定値
19:00 ギリシャ7〜9月期GDP確報値
19:00 ユーロ圏11月消費者信頼感確報値
22:00 ドイツ11月CPI速報値
22:30 米国7〜9月期GDP改定値
23:00 米国9月ケースシラー住宅価格指数
23:15 NY連銀総裁講演
24:00 米国11月消費者信頼感指数
26:40 パウエルFRB理事講演

11月30日(水)
**:** OPEC総会
09:00 NZ11月ANZ企業信頼感
09:01 英国11月GFK消費者信頼感
17:55 ドイツ11月失業率
19:00 ユーロ圏11月CPI速報値
21:00 南ア10月貿易収支
21:30 ドラギECB総裁講演
22:00 (ダラス連銀総裁講演)
22:15 米国11月ADP全国雇用者数
22:30 米国10月個人所得、消費支出
23:45 米国11月シカゴ購買部協会景気指数
24:30 米国週間原油在庫
25:45 パウエルFRB理事講演
28:00 ベージュブック

12月1日(木)
10:00 中国11月製造業、非製造業PMI
10:45 中国11月MarkIt製造業PMI
17:50 フランス11月製造業PMI確報値
17:55 ドイツ11月製造業PMI確報値
18:30 英国11月製造業PMI
19:00 ユーロ圏10月失業率
19:00 イタリア7〜9月期GDP確報値
21:30 米国11月チャレンジャー人員削減予定数
22:00 (ダラス連銀総裁講演)
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 クリーブランド連銀総裁講演
23:45 米国11月MarkIt製造業PMI確報値
24:00 米国11月ISM製造業景況指数
24:00 米国10月建設支出

12月2日(金)
15:45 スイス7〜9月期GDP
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI
22:30 米国11月雇用統計
22:45 ブレイナードFRB理事講演
27:00 タルーロFRB理事講演

12月4日(日)
 **:** イタリア憲法改正国民投票

今週の週間見通し

金曜のドル円高値113.90までで9日大統領選開票日の安値101.19から既に12円71銭ものドル上昇となり、これまでせいぜい1円強の調整しか挟んでいませんでしたが、今朝の段階では約1円50銭とそれほど差は無いものの調整としては最も大きい動きを見せています。

FX羅針盤の大統領選後のコラムで書いた通り、開票直後こそトランプリスクの動きはあったもののその後は新政権の政策期待とその財源が国債増発となる可能性が高いと考えられることから米国債が売られ長期金利が0.5%以上も上昇、為替市場では12月FOMCの利上げと来年以降の利上げペースが速まるとの思惑も重なり、ドル買い一色の相場となりました。

コラムの繰り返しになりますが、トランプリスクから急転リスクオンのシナリオへと転換させたシナリオライターがいることも間違いのないところだと思っています。そんな中で個人投資家をはじめ市場参加者の多くが翻弄された動きですが、短期的には今週末の雇用統計か14日のFOMCを前に短期的な調整局面入りとなる可能性も高まっています。

まず値幅的に13円近い動きの中で調整らしい調整が無いこと、また現在の当面のターゲットとして2015年高値125.86と2016年安値99.02の61.8%戻し115.60(日足チャート参照)に着実に近づいていること、また12月に入ると欧米のディーラーはクリスマスシーズンと重なり徐々に取引が手控えられていくこともその理由です。

まだドル高トレンドが始まって半月程度と相場の経過が若いことから長期的なトレンド自体には変化は無いものの、短期的にはいったん調整が入る可能性は高いと見ています。その場合、ターゲットを求めるとすると、開票日安値と先週高値をベースにフィボナッチ・リトレースメントを考えることになりますが、その場合は最も小さな押しとなる23.6%=110.91が限界となりそうです。(日足チャート参照)

それでも先週高値から考えれば3円の値幅となりますので、ドル高トレンドの中での一時的な押しとしては十分です。さらに大きな調整があるとすれば、FOMC後か大統領就任(1月20日)後という時期になってくるものと見ています。今週は110.90レベルをサポートに、先週高値113.90をレジスタンスとする調整の週になる流れを見ておきます。

ひとつだけ注意が必要なのは30日のOPEC総会です。これまで減産合意という流れで来ていましたが、サウジアラビアが本日からの非OPEC加盟国との会合に参加しないことや、OPEC加盟国内でも減産の最終調整がいまだまとまっていない様子で、NY原油先物が金曜の海外市場から2ドル以上下げてきています。減産合意が流れたりすると、一時的にリスクオフの高まりにつながり、その場合には為替市場も一時的にドル売りの動きとなる可能性があるでしょう。

また、今週末にはイタリアで国民投票があります。今回の国民投票は以前から計画されていたもので、上院の権限縮小に関する憲法改正の是非を問うものですが、英国の国民投票や米国大統領選を経て野党人気が上昇しているため、結果次第では首相辞任も含めイタリアの政局が流動的なものとなります。その場合にはユーロ売りの材料となりますが、これは投票が終わった後、来週以降の材料として気に留めておきたいイベントとなります。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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