ドル上値は重そう、むしろ続落に要注意か
〇先週のドル円、年初来高値更新し151.92まで上昇するも週末は安値149.20を示現
〇ユーロ円、ポンド円、豪ドル円なども年初来高値を更新、さながら円全面安といった様相
〇米CPI、市場の上方修正期待に反し悪化。PPIも予想下回り、米金利低下とドル売りの要因に
〇ドル高・円安方向、先週下回ってきた21日線が最初の抵抗。超えれば151円半ばを再び目指す展開も
〇ドル安・円高方向は先週安値149.20が強いサポートだが、割り込むとドル安の加速に注意
〇今週のドル円予想レンジは、148.00-151.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが弱含み。週初に年初来高値を更新し152円に迫るも続かず、週末に掛けては逆にドル売りに押されている。
前週末は、ジョンソン米下院議長が新たなつなぎ予算案を提示したとして話題に。ただ反対論も根強く、成立するか否かは微妙なところとされていた。一方、15日に実施された米中首脳会談などに関する報道も複数観測され、思惑を呼んでいたもよう。
そうした状況下、ドル/円は151円半ばで寄り付いたのち、10月末に記録した年初来高値を更新する151.92円まで上昇。しかし、152円にはとどかず上げ渋るなか、週末にかけては逆にドル売りが優勢に。かなりの底堅さを感じた150円も割り込むと、週間安値の149.20円を示現し、週末NYはそのまま149円台で取引を終え、越週している。
なお、前記したようにドル/円が一時年初来高値を更新しただけでなく、ユーロ/円やポンド/円、豪ドル/円なども、年初来高値を更新する局面が観測された。一時はさながら円全面安といった様相も。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「国際情勢」と「米通貨政策」について。
前者は、経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合やAPEC首脳会議といった重要な国際会議が相次ぎ開催され、そこで議論された内容などとともに二国間協議も断続的に実施され話題に。そうしたなか、とくに思惑を呼んだのは15日に実施された米中首脳会談。中国の習国家主席がバイデン氏に「米中関係は世界で最重要」と述べるなど和やかムードで進み、バイデン氏からも「確かな進展」とした成果を強調するコメントが聞かれている。しかし、その一方で習主席は台湾問題で譲歩せず、武力を行使する可能性のある条件についても言及。反面、バイデン氏も会談後に「習氏が事実上の独裁者という見方は変わっていない」と述べるなど、微妙なしこりは残す結果となったようだ。
対して後者は、14日に注目の米消費者物価が発表される前に、ブルームバーグが「10月から医療保険料の算出方法が変更され、短期的には総合CPIに上昇圧力をかけると広く予想されている」−−などと報道。一部では上方修正期待も取り沙汰されるなか、明らかとなった結果はまさかの悪化に。また、翌15日の米生産者物価も予想を下回る内容になったうえ、サンフランシスコ連銀総裁からは「データは一段のインフレ減速を示唆している」、クリーブランド連銀総裁はインフレについての懸念を示す一方で、経済見通しをめぐって「多くの不確実性がある」として警戒感を示すなど、市場では徐々に弱気ムードが勢力を増し、週末に掛けての米金利低下、そしてドル売り要因となっていた。
<< 今週の見通し >>
ドル/円相場は週初に高値151.92円を示現するも続かず、週末には149.20円まで一時値を崩している。NYクローズも149円台だ。つまり、目先高値から2.7円ほどの下押しが入っただけでなく、NYクローズではおおむねドルの下支えとして寄与してきた移動平均の21日線を「しっかり」下回ってきたことは非常に気掛かり。単なるドルの上値トライ仕切り直し、といった動きだけでなく、場合によっては基調転換の可能性も否定できず、情勢をまずはキチンと見極めたい。
引き続き日米欧の金融政策会合が注目されるなか、先でも取り上げたように先週は発表される米経済指標や米通貨当局者発言が市場の波乱要因となることが少なくなかった。そんな米金融政策は弱気ムードが足もと再び勢いを得ているものの、一方で日本についても同様に弱気ムードがまん延している。たとえば、先週15日に発表された7-9月期の日本のGDP速報値は年率マイナス2.1%、また実質賃金もマイナスを堅持するなど、日銀の政策修正は当面見込みにくいとする向きが大勢だ。そのため、クロスを含めた円全面安の流れへと、再び回帰するといった見方も取り沙汰されていた。
テクニカルに見た場合、ドル/円は基本的なドル高リスクに依然として変化がないと考えるが、上値トライは仕切り直しかつドルの頭はしばらく重い展開か。先週末にかけて割り込んできた移動平均の21日線は週間を通して150円半ばレベルで推移すると見られるなか、強気派としてはなるべく早く21日線の回復を期待したいところだがどうなるか。
逆に先週安値149.20円を割り込むと148円台へ。10月30日安値148.81円、一目均衡表の先行帯の雲の上限などを目指す展開で、さらなるドル安進行も。
そうしたなか今週は、11月のミシガン大消費者信頼感指数確報値や同製造業PMI速報値などの米経済指標が発表されるほか、10月31日-11日1日開催のFOMC議事要旨も公表される予定だ。また、材料ではなく週末にかけて日米市場の休場も予定されており、ポジション調整を含めた需給要因を警戒する声も聞かれていた。
そんな今週のドル/円予想レンジは、148.00-151.50円。ドル高・円安については、先週下回ってきた21日線が最初の抵抗。超えれば151円台を回復し、151円半ばを目指す展開も。
対してドル安・円高方向は、先週安値の149.20円もなかなか強いサポートか。ただ、それだけに逆に割り込むとドル安が加速する危険もある。その場合には、一目の雲の上限をめぐる攻防に注目だ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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