ドル円見通し 152円の壁高く、米インフレ鈍化で149円台へ失速(週報11月第三週) 

ドル円は11月3日安値149.20円を11月17日夜安値149.19円でわずかに割り込んだことで底上げ基調が崩れつつある。

ドル円見通し 152円の壁高く、米インフレ鈍化で149円台へ失速(週報11月第三週) 

ドル円見通し 152円の壁高く、米インフレ鈍化で149円台へ失速

〇先週のドル円、週初151.90まで上げ年初来高値を更新するも、週末にかけ149.19まで急落
〇米10月CPIとPPIがともに予想以上に鈍化、新規失業保険申請件数や鉱工業生産も悪化
〇インフレ鈍化傾向が顕著となり、利上げ打ち止めと来年夏までの利下げ観測強まる
〇米長期金利指標の10年債利回りは週末一時4.38%まで低下の後、4.44%で終了
〇150円以下での推移中は一段安余地あり、149.19割れからは10/30深夜安値148.80試し
〇150円台を回復・維持し始める場合は戻りに入るとみて150円台中盤を試すとみる

【概況】

ドル円は11月13日に151.90円を付けて年初来高値としたが、昨年10月21日高値151.94円に一歩届かずに下落に転じた。11月14日の米10月CPIと15日の米10月PPIがともに予想以上に鈍化したこと、16日の週間新規失業保険申請件数や米10月鉱工業生産が悪化したこと、17日夕刻には米10年債利回りが一段と低下したことをきっかけとして11月15日安値150.05円を割り込み149.19円まで安値を切り下げた。149円割れはひとまず回避したがNY時間の戻りは149.87円にとどまり150円台回復に至らなかった。
11月17日夜に発表された10月の米住宅着工件数(年換算)は前月比1.9%増の137万2000戸となり、2か月連続のプラスで市場予想の135万戸を上回り、住宅着工許可件数も前月比1.1%増の148万7000戸で予想の145万戸を上回ったが、市場の反応は鈍かった。

【米インフレ鈍化で米長期債利回りは低下傾向に入る】

先週は米国のインフレ鈍化傾向が顕著となり、市場は利上げがすでにピークとなり来年夏までには利下げに入るのではないかとの見方を強めた。
10月の米CPI上昇率は全体の前月比が0.0%で9月の0.4%から大きく鈍化して前年比も9月の3.7%から3.2%へ鈍化した。コア指数の前年比も9月の4.1%から4.0%へ鈍化した。
10月の米PPI上昇率は全体の前月比がマイナス0.5%となり、9月の0.4%から大幅に鈍化、前年比は9月の0.2%から0.0%へ鈍化した。コア指数の前年比も9月の2.7%から2.4%へ鈍化した。
10月の米輸入物価指数は前月比マイナス0.8%となり、9月の0.5%から大幅に鈍化、輸出物価指数も前月比マイナス1.1%で9月の0.5%から大幅に鈍化した。

米FRBがインフレ指標として重視するPCE(個人消費支出)デフレーターの発表は11月30日であり、次回FOMC(12月12-13日)もまだ先だが、当面する米経済指標がサプライズ的に強い数字を続けることにならなければ市場の見立て通りに年内の利上げはなく、早ければ来年3月19-20日の会合や6月11-12日の会合で利下げ議論となるのではないかという市場の期待感も増して行く可能性がある。

【FRB高官は市場に慎重さを求める】

11月17日にサンフランシスコ連銀のデイリー総裁は追加利上げの是非を判断する前に経済指標を見極めるとし、従来の「追加利上げの可能性を排除しない」との表現を採らなかったが、「早過ぎる政策判断のリスクは現実的にある」、「時期尚早な宣言は予想の誤りにとどまらず政策の誤り」、「待つことへの大胆さが必要だ」と述べ、早期利下げへの期待に釘を刺しつつも利上げ打ち止め感も示した。
ボストン連銀のコリンズ総裁も「インフレ率を2%に戻すためには忍耐強く、断固とした態度で臨まなくてはならない」と述べたが、これも早期利下げ期待をいさめるものと思われる。

シカゴ連銀のグールズビー総裁も「インフレ率を2%に戻すためにあらゆる必要な措置を実施する」とし、「インフレを巡る状況は改善しているもののなお高すぎる」と述べた。
バーFRB副議長は政策金利は「ピークにあるか、それに近いところにある」と述べて利上げサイクルの終了期に来ている認識を示したが追加利上げ余地に含みを持たせている。
11月16日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が今後は「データ次第」とし、クックFRB理事も「インフレ率を2%へ低下させる上で十分に景気抑制的なスタンスを追求する必要がある」と述べ、クリーブランド連銀のメスター総裁も「インフレ率が2%に向かって低下することを確信できるようなより多くの証拠を必要としている」と述べている。

【米長期債利回りは低下傾向、ダウは続伸】

11月17日の米長期債利回りはまちまちだった。長期金利指標の10年債利回りは前日と変わらずの4.44%で終了した。11月14日の米CPI鈍化をきっかけに前日比0.19%低下し、15日は急低下後の反動で0.08%上昇だったが、16日は0.09%低下となり前日の反発分を解消した。17日は一時4.38%まで低下してから戻したが、10月23日の5.02%をピークとした低下傾向を継続している。
30年債利回りは前日比0.03%低下の4.59%で終了した。14日に0.13%低下、15日に0.07%上昇と戻したが、16日は0.08%低下で前日の上昇幅を解消し、17日は一時4.57%をつけて10月23日の5.18%をピークとした低下傾向を続けた。

利上げ動向に敏感な2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.89%で終了した。14日に0.20%の大幅低下、15日に0.08%上昇と戻して16日は0.08%低下、17日も4.80%まで低下したがその後にプラス圏まで戻して下げ渋りとした。
2年債利回りは利上げ状態がまだ続くことで下げ渋りがみられるものの、10年債や30年債の利回りは低下傾向が顕著となってきている。ただし、ドル円としては日米10年債利回り格差の縮小が短期的な円高要因となりえるものの、格差の絶対水準は大きなままであり、利回り格差の確保を目指した円のキャリートレードが活発化することで円売りドル買いが続くとの見方も根強い。

11月17日のNYダウは前日比1.81ドル高とわずかに上昇したが、8月1日の年初来高値35679.13ドルから10月27日安値32327.20ドルまで下げたところから反騰入りして35000ドル台に到達しており、米長期債利回り低下傾向と米国景気の底固さへの期待が優先している。ナスダック総合指数も11.81ポイント高と小幅上昇だったが、7月19日の年初来高値14446.55から10月26日安値12543.86まで下げたところから切り返して14000台に到達しており、ダウとともに楽観的先高期待が増している印象だ。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月3日安値147.41円を起点として底上げ基調で推移しつつ高値を切り上げてきたが、11月3日安値149.20円を11月17日夜安値149.19円でわずかに割り込んだことで底上げ基調が崩れつつある。
10月30日安値割れを回避して151円台中盤へ戻すなら、149円前後を下値支持線として152円手前を上値抵抗線とした持ち合い相場となり、持ち合い上放れにより152円台へ進む可能性も残るとみるが、10月30日安値を割り込む場合は11月13日高値を当面のピークとした下落期入りとして年末にかけて下落基調を続けやすくなると思われる。

日足の一目均衡表では11月17日の下落で遅行スパンが悪化しやすい位置に来ており、26日基準線も割り込んでいる。遅行スパンが悪化するところからは下落期入りとみて先行スパンへ潜り込んで行くとみる。先行スパンの下限では買われやすいとみるが、先行スパンへ潜り込んだ後は再び上抜き返せないうちは下落継続の可能性ありと注意する。

日足の相対力指数は8月以降の高値更新に対して指数のピークが切り上がらない展開が続いてきたが、17日の下落で50ポイントを割り込んでいるため、11月17日安値を割り込む場合は30ポイント台前半への低下を伴う下落を想定する。上昇再開には早期に60ポイント台を回復する必要があると考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月17日夜安値149.19円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)150円以下での推移中は一段安余地ありとし、149.19円割れからは10月30日深夜安値148.80円試しとし、安値更新からは148円台前半への下落を想定する。148.25円以下は反騰注意とするが、直前安値から1円を超える反騰を見せないうちは戻り売り優勢の展開で下落期が長引く可能性があると注意する。
(3)150円台を回復・維持し始める場合は戻りに入るとみて150.0円台中盤(150.35円から150.65円)を試すとみる。150.50円以上は反落警戒とし、戻り幅の半値を解消するところからは下げ再開と考えるが、円安を助長する材料を伴って急伸する場合は151円台を目指す可能性も出てくるのではないかと考える。

【当面の予定】

11/20(月)
休場 メキシコ
16:00 (独) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 -0.2%)
24:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (9月 -0.7%、予想 -0.6%)
27:00 (米) 財務省20年債入札
27:45 (英) ベイリー英中銀総裁、講演

11/21(火)
06:45 (NZ) 10月 貿易収支 (9月 -23.29億NZドル)
08:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、パネル討論会
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
19:15 (英) ベイリー英中銀総裁、議会証言
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算 (9月 396万件、予想 390万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -2.0%、予想 -1.5%)
25:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省変動利付2年債、インフレ指数連動10年債入札
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

11/22(水)
17:35 (豪) ブロック豪中銀総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.5万人)
22:30 (米) 10月 耐久財受注 前月比 (9月 4.6%、予想 -3.3%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (9月 0.4%、予想 0.3%)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 60.4、予想 60.5)
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感・速報値 (10月 -17.9)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計

11/23(木)
休場 日本、米国(株式・債券市場休場)
17:30 (独) 11月 製造業PMI・速報値 (10月 40.8)
17:30 (独) 11月 サービス業PMI・速報値 (10月 48.2)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・速報値 (10月 43.1)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・速報値 (10月 47.8)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・速報値 (10月 44.8)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI・速報値 (10月 49.5)

11/24(金)
米国は株式・債券市場で短縮取引
06:45 (NZ) 7-9月期 小売売上高 前期比 (4-6月 -1.0%、予想 -0.6%)
08:30 (日) 10月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 3.0%、予想 3.4%)
08:30 (日) 10月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (9月 2.8%、予想 3.0%)
08:30 (日) 10月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (9月 4.2%、予想 4.0%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -30)
14:00 (日) 9月 景気一致指数CI・改定値 (速報 114.7)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI・改定値 (速報 108.7)

16:00 (独) 7-9月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.1%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 -0.3%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP・改定値・季調前 前年同期比 (速報 -0.8%)
18:00 (独) 11月 IFO企業景況感指数 (10月 86.9)
19:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、独連銀イベント参加
21:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI・速報値 (10月 50.0、予想 49.9)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI・速報値 (10月 50.6)

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