『材料出尽くし感から市場の関心は再び日米金利差と株式市場に回帰』
〇今週のドル円、週初年初来高値147.38まで上昇後、週末に144.44まで急落
〇米8月失業率の大幅悪化、平均時給の市場予想を下回る結果が背景
〇売り一巡後はISM製造業指数等の米指標の好調に146円台前半に戻し越週
〇ユーロドル、週央にかけ1.0947まで上昇後ECBのハト派姿勢に1.0795まで軟化
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合いの強さ継続
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違い、株価の堅調推移等がサポート
〇引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー148.00、(EURUSD):1.0600−1.0900
今週のレビュー(8/28−9/1)
今週のドル円相場は、週初146.43で寄り付いた後、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は先週開催されたジャクソンホール会議でタカ派的な見解を維持)や、(2)米8月ダラス連銀製造業活動指数(結果▲17.2、予想▲19.0)の市場予想を上回る結果、(3)日米金融政策の方向性の違いに着目した円キャリートレードの継続期待、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(5)心理的節目147.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、翌8/29にかけて、年初来高値147.38(昨年11/7以来の高値圏)まで急伸しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(6)米7月JOLT雇用動態調査(結果882.7万件、予想950.0万件)のネガティブサプライズ(約2年ぶり低水準)や、(7)米8月ADP雇用統計(結果17.7万人、予想19.5万人)の市場予想を下回る結果、(8)米4ー6月期実質GDP改定値(結果+2.1%、予想+2.4%)の市場予想を下回る結果、(9)アトランタ連銀ボスティック総裁による「過度な引き締めは無用な害を及ぼす」とのハト派的な見解発表、(10)米8月失業率(結果3.8%、予想3.6%)の大幅悪化、(11)米8月平均時給(結果+0.2%、予想+0.3%)の市場予想を下回る結果、(12)米長期金利の急低下が重石となり、週末にかけて、週間安値144.44(8/11以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(13)米8月製造業PMI確報値(結果47.9、予想47.0)の市場予想を上回る結果や、(14)米7月建設支出(結果+0.7%、予想+0.5%)の市場予想を上回る結果、(15)米8月ISM製造業景況指数(結果47.6、予想47.0)の市場予想を上回る結果、(16)米8月ISM支払価格(結果48.4、予想44.0)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間9/2午前0時20分現在)では、146.15近辺まで急速に持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0801で寄り付いた後、(1)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(3)ドイツ9月GFK消費者信頼感指数(結果▲25.5、予想▲24.5)の市場予想を下回る結果が重石となり、翌8/29に、週間安値1.0782まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)米7月JOLT雇用動態調査の市場予想を下回る結果や、(5)米8月ADP雇用統計の市場予想を下回る結果、(6)上記4、5を背景とした米長期金利の急低下、(7)短期筋のショートカバー、(8)ドイツ8月HICP速報値(結果+6.4%、予想+6.3%)の市場予想を上回る結果、(9)上記8を背景としたECBによる金融引き締め長期化観測が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.0947まで上昇しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(10)ECB理事会議事要旨(7/27開催分)における「次回9月理事会で追加利上げを実施する必要はないとの主張が一部あり」とのハト派的な見解発表や、(11)タカ派と目されるシュナーベルECB専務理事による「ユーロ圏の成長率が数カ月前の予測より低下している」との慎重な発言、(12)上記10、11を背景としたECBによる金融引き締め休止観測、(13)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、(14)米長期金利の反転上昇が重石となり、本稿執筆時点(日本時間9/2午前0時20分現在)では、1.0795前後まで軟化する動きとなっております。
来週の見通し(9/4−9/8)
<ドル円相場>
ドル円は8/29に記録した年初来高値147.38をトップに反落に転じると、一時144.44まで下押しする場面も見られましたが、引けにかけては再び146円台を回復するなど、結果として下値の堅さを再確認する1週間となりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週発表された米JOLT雇用動態調査、米ADP雇用統計、米失業率、米平均時給が市場予想を下回ったことで、米労働市場のひっ迫懸念後退→米インフレ鈍化期待→米利上げ観測後退→米金利低下→米ドル売りの流れが強まりましたが、インフレの先行指標として注目されている米ISM支払価格が市場予想を大幅に上回ったことで週末にかけて追加利上げ観測が再燃)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(日銀は指値オペを通じて円金利の上昇を抑制するスタンスを継続→本邦10年債利回りが事実上の上限である1%に到達するまでには相応の時間を要するとの見方がコンセンサス)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大を見越した円キャリートレードの継続期待)、(4)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
政府・日銀による介入観測が上値を抑制する可能性はあるものの、実弾介入に踏み切るのは、昨年10/21に記録した高値151.95を抜けてからと考えられるため、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は週明け月曜日(9/4)がレーバーデーで米国祝日となる他、9/6に予定されている米ISM非製造業景況指数やベージュブック以外に目立った経済イベントが予定されていないため、市場の関心は、ブラックアウト期間入り直前の米当局者発言(ボストン連銀コリンズ総裁、ダラス連銀ローガン総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁など)と、それに伴う米長期金利、米主要株価指数の動向に集中しそうです(米長期金利上昇+米主要株価指数上昇の組み合わせが続く場合は、ドル円が年初来高値147.38に向けて一気に急伸する可能性あり)。
来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー148.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、8/25に約2カ月半ぶり安値1.0766(6/13以来の安値圏)まで急落しました。今週は幾分持ち直す動きとなりましたが、戻りの鈍い状況が続いています。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表基準線、転換線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(直近で発表された欧州経済指標は冴えない結果)や、(2)欧州圏におけるインフレ鈍化期待、(3)上記1、2を背景としたECBによる金融引き締め休止観測(今週はECB理事会議事要旨のハト派的な内容や、タカ派と目されるシュナーベルECB専務理事による慎重な発言あり)、(4)欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買い圧力(当方は9/14に開催されるECB理事会で利上げが見送られると予想)、(5)スペインを巡る政局不透明感など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。事実、通貨オプション市場ではリスクリバーサルのユーロPUTオーバーが拡大するなど、ユーロドル相場の更なる下落を織り込む動きが広がっています(バンクオブアメリカやJPモルガンチェースもユーロドル相場の見通しを大幅に下方修正)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(目先は5/31に記録した安値1.0634を試すシナリオを想定。同水準を下抜けられれば、次は3/15に記録した安値1.0516や、1/6に記録した年初来安値1.0483がターゲットに)。尚、来週は9/5に発表されるユーロ圏7月生産者物価指数や、9/6のドイツ7月製造業受注、ユーロ圏7月小売売上高、9/7のドイツ7月鉱工業生産、ユーロ圏第2四半期GDP確報値、9/8のドイツ8月HICP確報値に注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0600−1.0900
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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