未消化材料も多いが目先はドル高(週報11月第二週)

大統領選の結果はまさかのトランプ新大統領誕生でした。

未消化材料も多いが目先はドル高(週報11月第二週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値     高値    安値     終値

ドル円  103.96   106.95   101.19   106.69
ユーロ円 115.39   116.58   113.72   115.88
ユーロドル 1.1099  1.1300    1.0831   1.0862
日経平均 17126.03  17621.73   16111.81  17374.79

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

11月7日(月)

週明け早朝の市場では、FBIがクリントン候補にメール問題での訴追を求めないと発表したことから全面的にリスクオンの動きとなり、ドル高そして株式市場がスタートしてからは株高と大統領選投票日を前に急速にトランプリスクが後退する動きとなりました。ドル円は欧州市場で104.63レベルまで上昇し、いったんは調整の下押しも見られたもののNYダウが大幅高となったことから再び上昇、ドル高地合いでのクローズとなりました。ユーロドルも朝から大幅安となりNY市場で1.1028レベルまで水準を下げ、こちらもドル高地合いで引けました。

11月8日(火)

前日に続きクリントン候補優勢との判断からリスクオンの動きとなり、株高、ドル高となりました。米国大統領選挙の出口調査(クリントン候補優勢)も手伝って早朝はドルが一段高、ドル円は105.24レベル、ユーロドルも1.1006レベルのドル高値をつけました。その後は短期筋の利食いも出てドル売りの動きも見られましたが、海外市場では大統領選結果待ちの様子が強まりました。

11月9日(水)

まさかのトランプ大統領誕生を見ることになりましたが、英国国民投票の時とまったく同じで、今回の大統領選では一般大衆白人層の不満がメディアの報道以上に強く、民主党地盤と考えられていた州でもトランプ支持につながりました。しかし、マーケットの動きは想定外、これまでトランプリスクとして言われていた動きからの急反転、NYダウも為替(ドル)も前日終値よりも高い水準で一日を終わりました。

11月10日(木)

東京市場では久しぶりの105円台後半を見たことで朝方から実需のドル売りが目立ちました。前場に一時的に105円を割り込む場面も見られましたが、そこまで。引き続き大統領選後のドル高地合いには根強いものがあり、欧州市場に入ると朝方の高値を上抜け106円台乗せ、その後もNY市場ではダウが史上最高値を更新するなど全面的なリスクオンの動きとなり、ドル円は106.95レベル、ユーロドルも1.0865レベルのドル高値を見て、やや調整が入って引けました。

11月11日(金)

週末の東京市場では、大統領選後の短期筋の利食いと輸出を中心とした実需筋のドル売りに押されたものの、欧州市場序盤に106円目前まで押した程度で再びドル買いの動きに戻りました。NY市場が休場ということもあり動きは鈍かったもののユーロドルが直近安値を割り込み1.0831レベルまで下落、それにつられドル円も上昇しましたがドル円は前日高値を超えることは無く、高値圏で動きにくそうな週末クローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月14日(月)
08:50 本邦7〜9月期GDP速報値
10:00 黒田日銀総裁挨拶
11:00 中国10月小売売上高、鉱工業生産
17:30 コンスタンシオECB副総裁講演
19:00 ギリシャ7〜9月期GDP速報値
27:20 (ダラス連銀総裁講演)

11月15日(火)
07:00 (リッチモンド連銀総裁講演)
08:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
09:30 豪中銀理事会(1日)議事録公表
16:00 ドイツ7〜9月期GDP速報値
16:00 トルコ8月失業率
17:15 豪中銀総裁講演
17:30 ラウテンシュレーガーECB理事講演
18:00 イタリア7〜9月期GDP速報値
18:30 英国10月CPI、PPI
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP速報値
19:00 ドイツ11月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏11月ZEW景気期待指数
19:00 英中銀総裁議会証言
21:30 ボストン連銀総裁講演
22:30 米国11月NY連銀製造業景況指数
22:30 米国10月小売売上高
22:30 米国10月輸入物価指数
23:05 タルーロFRB理事講演
24:00 米国9月企業在庫
27:00 オーストリア中銀総裁講演
27:30 フィッシャーFRB理事講演
27:30 (ダラス連銀総裁講演)

11月16日(水)
17:00 セントルイス連銀総裁講演
18:30 英国10月失業率
21:45 (ミネアポリス連銀総裁講演)
22:30 米国10月PPI
23:15 米国10月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 米国11月NAHB住宅市場指数
24:30 米国週間原油在庫
30:45 NZ7〜9月期PPI

11月17日(木)
**:** 安倍首相トランプ時期米国大統領と会談
07:30 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
09:30 豪州10月失業率
17:10 メルシュECB理事講演
18:30 英国10月小売売上高
19:00 ユーロ圏10月CPI確報値
22:30 米国10月CPI
22:30 米国10月住宅着工、建設許可件数
22:30 米国11月フィラデルフィア連銀製造業指数
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 イエレンFRB議長議会証言
26:00 スイス中銀総裁講演
26:30 ブレイナードFRB理事講演
30:45 プラートECB理事講演

11月18日(金)
17:00 ドラギECB総裁講演
18:00 ユーロ圏9月経常収支
19:30 セントルイス連銀総裁パネル参加
23:30 カンザスシティ連銀総裁講演
24:00 米国10月景気先行指数
27:30 (ダラス連銀総裁講演)

11月19日(土)
 11:45 パウエルFRB理事講演
**:** APEC首脳会

今週の週間見通し

先週の週報では「既にクリントン大統領誕生後を見据える動きが始まっていると言えそう」と書いたのですが、大統領選の結果はまさかのトランプ新大統領誕生でした。根強い支持層がいた半面、女性や白人以外からの得票は低く米国独特の勝者総取り方式の結果、得票率では下回ったものの選挙人の数では大差での勝利となりました。

開票速報でトランプ候補の優勢が広がっていくとともに、株式市場も為替市場もそれまで懸念されていたトランプリスクが現実化するとの見方から急速にリスクオフが進み、ドル円は一時101.19レベルまで円高が進行したのですが、その後の動きはトランプ大統領誕生以上のサプライズで、NY終値は早朝のクリントン候補当選期待による円安の動きをあっさりと超え、高値引けという動きです。

きっかけは、本邦当局(財務省、金融庁、日銀)の緊急会議もありましたが、おそらくは下げと同様にアルゴリズムトレードによる急反転が直接的な原因ではないかというのが、FX羅針盤のコラムにも書きましたが私の考えです。とてもトレーダーには心理的にこうした動きは出来るものではありません。良くてついていく、悪ければ流れに巻き込まれて損失を出してしまうというところです。そういう私も最近の大相場の中では珍しく結構やられてしまいました・・

さて、トレーダーとしては今の流れがどうであれ、すぐに転換してついていかないと収益機会を失いますので、ここまでのリスクオンについて正しい、正しくないは別として考えてみることとします。この大統領選後のリスクオンは、一言で言えば減税(法人税の20%引き下げ)や1兆ドルのインフラ投資を含めた新たな政策に期待しての株高と円安となります。

しかし、政策を実現するための財源が必要になることから米国債が売られ(長期金利は上昇し、それも為替市場ではドル高要因とされた)、公約にもあった通りTPPに反対し保護主義を前面に出すなど輸入物価の上昇を招き、成長を鈍化させる可能性もあるわけです。今のところ負の面(財政問題と保護主義)については、市場は目をつぶっているとしか思えません。当面はリスクオンの動きが続くものと見られますが、インフレ、財政問題、保護主義、何がきっかけとなるかはわかりませんが、どこかで梯子を外されるリスクも常に考えておかなくてはならないということになるでしょう。

そして、為替相場に関しては中長期的には保護主義による輸入物価の上昇を相殺させるとなるとドル安誘導という可能性が出てきますが、これについてもトランプ新大統領は人民元を中心にアジア通貨の通貨安競争は認めない立場であることは間違いのないところです。トランプ新大統領がより現実的な路線での妥協も見せないと、長期的には米国売りへと流れが変わるかもしれません。

また年内のことも色々とシナリオの再構築が必要です。既に新興国から米国への資金還流も見られ始め12月FOMCにおける利上げがあるのかどうか再考しなくてはならない可能性があります。年末に向けていったん市場参加者が冷静になり、リスクオンの巻き返しといった動きにも対応できるようにと目先のリスクオンがどこで調整が入るか、週が明けて神経質な相場展開になってきそうです。

テクニカルな観点では、7月高値の107.49レベルをまずは試す流れにあること、そして大統領選後の翌日の押し104.97レベルがサポートとなっていると考えられます。市場を取り囲む諸材料はいまだ消化不良気味ではありますが、今週は105.50レベルをサポートに、108.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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