ドル円 ドル高継続も動きは鈍くなっていく(週報8月第4週)

先週のドル円はパウエル議長の講演がFOMC議事録同様にタカ派な内容となったことで、講演後には一時年初来高値をわずかに更新し、そのまま高値圏での引けとなりました。

ドル円 ドル高継続も動きは鈍くなっていく(週報8月第4週)

ドル高継続も動きは鈍くなっていく

〇先週のドル円、最大の注目材料のJホールでのパウエル議長講演がタカ派内容で一時年初来高値更新
〇金利差によるドル買い続く流れ、介入警戒感は後退しているが当局からヒントとなる発言があるか注意
〇今週は月末実需の動きや週末の米国雇用統計に向けた思惑での上下に注目
〇材料的には中国発の景気後退に要注意、中国の景気動向からもしばらくは目が離せない
〇米経済指標として個人消費支出とISM製造業景況指数も注目される
〇今週は144.75レベルをサポートに147.00レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は基本的に米金利の上下に合わせてドル買い、ドル売りを繰り返し、最大の注目材料であったジャクソンホールのパウエル議長の講演がFOMC議事録同様にタカ派な内容となったことで、講演後には一時年初来高値をわずかに更新し、そのまま高値圏での引けとなりました。市場参加者としては、イベント経過で現状の日米金利差を考えるとドル買いに動くしか無いと判断していると言えるでしょう。

今週は月末月初でまずは月末に向けて実需の動きが出てくるかどうか、また金曜の米国雇用統計に向けて週半ば以降は連日雇用関連の経済指標が出てきますので、雇用統計本番に向けての思惑で上下することも出てきそうです。他にも個人消費支出と雇用統計後ではありますがISM製造業景況指数も注目される数字となっています。

ジャクソンホールは想定内かつFOMC議事録に沿った内容となったことでサプライズは無く、基本的には以前の絶対的な金利差を考えたドル買い・円売りの動きが続く流れと見られます。問題は今のところ警戒感が後退している介入が出るのかどうか、介入が出なければドル高・円安進行は避けられないでしょうから、今週は当局からヒントとなるような発言があるのかどうかも気になるところです、日柄的にも先週後半から今週後半にかけては特にボラティリティが上昇しやすい時間帯に入っていますので、予想からズレた経済指標であるとか、当局筋からの発言であるとか、気を付けておいた方がよいでしょう。

また、パウエル議長発言後の株式市場の動きを見ると直後こそ金利上昇・株安で反応したものの、逆に利上げはあっても年内あと1回であり、引き締めも終わりに近いとの楽観的な見方から、引けにかけては買い戻される動きとなりました。このあたりは株式市場特有の楽観とも見えますが、長期金利上昇は債券安であり、そこから株安の動きにつながる場合、リスクオフの程度にもよりますが、ドル売りへというミニトリプル安状態が起きないとも限りません。

材料的には中国発の景気後退に注意が必要そうなので、中国の景気動向からもしばらくは目が離せない状況です。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

8月高値をわずかとはいえ上抜けたことで、8月安値からの上昇N波動を考えると、最初のフィボナッチ・エクスパンションのターゲットとして50%エクスパンションの147.05をターゲットとする流れにありそうです。147円台は今以上に介入警戒感が高まるでしょうから、今週のところ上値追いはそれほど大きくはならないのではないかと考えています。ただ重要な経済指標も多く、数字次第では一気に上抜けすることも想定しておくべきでしょうか。

いっぽうで下値については先週安値を下抜けることは難しそうで、145円を割れる水準では押し目買いが出てくると見られます。今週は144.75レベルをサポートに147.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル高継続も動きは鈍くなっていく

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月28日(月)
**:** LDN市場休場
10:30 豪州7月小売売上高
21:00 ドイツ連銀総裁 ☆、スペイン中銀総裁、オーストリア中銀総裁講演
25:30 バーFRB副議長講演 ☆

8月29日(火)
08:30 本邦7月失業率・有効求人倍率
15:00 ドイツ9月消費者信頼感
15:45 フランス8月消費者信頼感
16:00 トルコ7月貿易収支
22:00 米国6月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国7月JOLTS求人件数 ☆
23:00 米国8月消費者信頼感

8月30日(水)
**:** トルコ市場休場
07:45 NZ7月住宅建設許可
10:30 豪州7月住宅建設許可
15:00 ドイツ7月輸入物価
18:00 ユーロ圏8月消費者信頼感
21:00 ドイツ8月CPI速報値 ☆
21:15 米国8月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国4〜6月期GDP改定値 ☆
21:30 米国7月卸売在庫
23:00 米国7月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計

8月31日(木)
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 中国8月製造業PMI ☆
15:45 フランス8月CPI速報値 ☆、7月PPI
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値
16:00 トルコ4〜6月期GDP
16:15 (アトランタ連銀総裁講演)
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏7月失業率
18:30 南ア7月PPI

20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
20:30 シュナーベルECB理事講演
20:30 米国8月チャレンジャー人員削減数
21:00 南ア7月貿易収支
21:30 米国7月個人所得・消費支出 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
22:00 (ボストン連銀総裁講演)
22:45 米国8月シカゴ購買部協会景気指数
25:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆

9月1日(金)
10:45 中国8月MarkIt製造業PMI ☆
15:00 英国8月住宅価格
16:00 トルコ8月製造業PMI
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
17:30 英国8月製造業PMI
19:00 (アトランタ連銀総裁講演)
21:30 米国8月雇用統計 ☆
22:45 (クリーブランド連銀総裁講演)
22:45 米国8月製造業PMI
23:00 米国8月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国7月建設支出

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月21日(月)
週明けのドル円は米金利(10年債利回り)と全く同じ動き、ミラー相場の一日となりました。東京市場では多少の上下はあったものの米金利は底堅い動きとなり、欧州市場以降は急速に上昇しNY昼前には4.354%と昨年10月の水準を抜け、2007年11月以来の利回りとなりました。ドル円も一時146.40レベルまで上昇し、若干押して引けました。

8月22日(火)
ドル円は米10年債利回りが緩やかに低下するとともに日本の10年債利回りが上昇し2014年以来の水準まで上昇したことが重なり、ドル売り・円買いの流れが続きました。欧州市場昼頃には145.49レベルまで水準を下げたものの145円台前半では押し目買いも根強く、146円台を回復後にやや押して引けました。

8月23日(水)
ドル円は東京市場では若干上値が重い程度の小動き、欧州市場に入り発表されたPMI速報値が軒並み弱かったことをきっかけにユーロが対円でも売られドル円も下げました。その後NY市場まではもみ合いとなりましたが、米国PMI速報値も弱くドル売りとなり144.54レベルまで売られた後に144円台後半へと戻して引けました。

8月24日(木)
ドルが全般に強い一日となりました。ジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長講演を前にドル円は前日の下げに対する調整が入り、2日かけての行って来いとなりました。東京市場で底堅い株価、海外市場に移ってからは米金利上昇を背景としたドル買いの動きとなりましたが、講演内容にかかわらず絶対的な日米金利差があることで、ドルが下がれば押し目買いと考える参加者は多い様子で、NY市場では145.96レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

8月25日(金)
ドル円はジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長講演を前に146円前後の狭い値幅でのもみあいが続きました。議長講演では追加利上げは慎重に判断するものの必要な場合には実施すると、FOMC議事録同様にタカ派な内容となりました。講演直前のミシガン大消費者信頼感が弱く米金利低下、ドル安の動きから講演直後には米金利上昇、ドル高となり一時146.63レベルと年初来高値を更新、若干の押しは入ったものの底堅い地合いのまま週末を迎えました。

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