イベント経過で横方向のもみあいに
〇先週のドル円の動きは乱高下だったが、予想に反し円の長期金利上昇にも関わらず為替は最終的に円安に
〇先週はFOMC・ECB理事会・日銀会合と金融政策イベント続き、FOMCと日銀会合がドル円に影響与える
〇FOMCでは予想通り0.25%利上げを決定、おそらく9月の利上げは見送り、それ以降に利上げ余地は残す
〇日銀、YCCは変動拡大を容認し1%を連続指値オペの水準とすることを決定
〇日銀会合直後、大きく円安に振れ141円台乗せ、その後に138円目前まで下げと乱高下
〇当面は140円の大台を挟みの、横方向のもみあい相場入りとなる可能性高いか
〇今週も140.00レベルをサポートに142.25レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週はFOMC、ECB理事会、日銀会合と主要三極の金融政策イベントが続きましたが、ドル円に影響を与えたのはFOMCと日銀会合です。FOMCでは予想通り0.25%の利上げが行われましたが、次回以降はデータ次第とおそらくは9月の利上げは見送り、それ以降に利上げ余地は残したものの、今回の利上げで打ち止めとする市場参加者の見方は変わりませんでした。
そして日銀会合の結果発表を控えた前日NY市場で、日経がイールドカーブコントロール(YCC)の変動幅拡大の議論という速報を流したことで大きく円高に振れることとなりました。結果は速報通りで0.5%の上限を超えることを容認、連続指値オペの水準を1.0%とすることで、YCCの修正という今月7日に内田日銀副総裁がYCCの修正に言及した方向へと動くこととなりました。
その後、内田副総裁の発言を否定するかのような発言を植田総裁がG20で述べましたが、後から考えると余計な会見だったと思います。今回の日銀会合前にYCCの修正について何らかの検討があったことから内田副総裁の発言になったと見られますが、そうであるならばYCCの修正も含めて無いと取られる誤った情報は日銀総裁としては出すべきでは無かったでしょう。内田副総裁の発言以降は肯定も否定もしないで今後議論するといった程度のぼかした発言が望ましかったと言えます。
今回の政策変更はYCCにおける連続指値オペの水準を1%としたことが金融市場参加者としては重要ですが、1%と言う水準は総裁が言うようにすぐに到達するような水準ではありません。以下の日本の10年国債の利回り(青)を見るとよくわかりますが、今回の決定でこれまでの0.5%は超えているものの、15年債の利回り(水色)を超えることは考え難く、15年債が1.0%以下であることから、今後は15年債の利回り水準を見ながらということになるでしょう。
より厳密には15年債(水色)と7年債(オレンジ)から計算される10年債の利回り理論値(赤)と実際の10年債利回りはこれまでは乖離していましたが、今後はほぼ一致してくると考えられます。現状は理論値0.62%と実際の水準0.61%は一致しています。この週報では今後はこの理論値と見ながら日本の長期債利回りを見て行くこととします。
さて為替の動きは乱高下としか言いようがありませんでしたが、予想に反して円の長期金利上昇にも関わらず為替は最終的に円安に動きました。あらためて絶対的な日米金利差の拡大がドル買いに動いたこと、また株式市場で買いが目立ったことが円安を支えたと言えそうです。ただ、142円台で当局による円安けん制発言が出たことも忘れてはなりません。当面は140円の大台を挟んで横方向のもみあい相場入りとなる可能性がもっとも高いように思えます。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
上値は引き続き6月高値から7月安値への下げに対して61.8%戻しの142.07がレジスタンスとなりますし、目先は140円の大台割れは買いが出てくると見られます。今週も大台140.00レベルをサポートに142.25レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
7月31日(月)
10:00 豪州7月企業信頼感
10:30 中国7月製造業PMI ☆
15:00 ドイツ6月小売売上高、輸入物価
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値 ☆
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値 ☆
21:00 南ア6月貿易収支
22:45 米国7月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
8月1日(火)
07:45 NZ6月住宅建設許可
08:30 本邦6月失業率・有効求人倍率
10:30 豪州6月住宅建設許可
10:45 中国7月MarkIt製造業PMI ☆
13:30 豪中銀政策金利発表 ☆
16:00 トルコ7月製造業PMI
16:50 フランス7月製造業PMI
16:55 ドイツ7月製造業PMI
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI
17:30 英国7月製造業PMI
18:00 ユーロ圏6月失業率
22:45 米国7月製造業PMI
23:00 米国6月JOLTS求人件数 ☆
23:00 米国7月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国6月建設支出
8月2日(水)
07:45 4〜6月期NZ失業率
08:50 日銀会合(6月)議事要旨公表
21:15 米国7月ADP全国雇用者数 ☆
23:30 週間原油在庫統計
8月3日(木)
10:30 豪州6月貿易収支
10:45 中国7月MarkItサービス業PMI ☆
15:00 ドイツ6月貿易収支
16:00 トルコ7月CPI
16:50 フランス7月サービス業PMI
16:55 ドイツ7月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI
17:30 英国7月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI ☆
20:00 英中銀MPC結果発表、議事要旨公表 ☆
20:30 英中銀総裁会見 ☆
20:30 米国7月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国4〜6月期単位労働コスト速報値 ☆
22:45 米国7月サービス業PMI
23:00 米国7月ISM非製造業景況指数 ☆
23:00 米国6月製造業新規受注
8月4日(金)
10:30 豪中銀四半期金融政策報告 ☆
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
15:45 フランス6月鉱工業生産
17:30 英国7月建設業PMI
18:00 ユーロ圏6月小売売上高
21:30 米国7月雇用統計 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月24日(月)
週明けのドル円は金曜に142円手前で上値が重くなった動きを受け、朝方からじり安の動きを続け、NY市場前場には140.73レベルまで1円強円高の動きとなっていました。しかし米国PMIのうち製造業は予想よりも強かったことから底打ちにつながり、引けにかけては141円台半ばへと戻しました。
7月25日(火)
ドル円は3日連続の金融政策イベントを前にNY市場までは米金利上昇にも関わらず、141円台前半での小動きが続きました。NY市場では米金利が低下に転じた動きとともにドル売りとなり、ユーロ円の下げも手伝って140.85レベルまで下げて安値引けとなりました。
7月26日(水)
米国FOMCに向けて東京市場は小動き、欧州市場序盤に米金利低下の動きもあって全般にドルがやや売られる流れでFOMC待ちとなりました。FOMCは予想通りに0.25%乗り上げとなったものの、9月以降についてはデータ次第で会議ごとに決定と利上げ余地は残しましたが、タカ派とも取れずドル売りで反応。140円の大台割れ後に若干戻して引けました。
7月27日(木)
ドル円は仲値後に前日安値を下回り一時的に円買いが強まったものの、その後は円売りへの流れへと戻しました。NY市場までは若干底堅い程度の動きでしたが、米国GDP速報値が予想よりも強く米金利上昇とともにドル買いが強まり、ユーロドルの下げもドル買いとなりました。一時141.32レベルと前日高値を上回りましたが、NY後場の日経速報で金融政策の枠組みは変えないものの長期金利の一時的な上昇を容認することを議論と流れ一転急落。引け間際には138.76レベルの安値をつけ、やや戻して引けました。
7月28日(金)
日銀会合に向けて139円台前半で細かく上下に振れる展開でしたが、結果は日経速報通りに金利は現状維持、イールドカーブ・コントロール(YCC)は変動拡大を容認し、1%を連続指値オペの水準とするものでした。この発表を受け初動は円高に動いたものの直後に大きく円安に振れ141円台乗せ、その後に138円目前まで下げと乱高下。しかし、当面の材料が出尽くしたこと、短期の日米金利差拡大は変わらないことから、NYの引けにかけては141.18レベルまで再度買われて高値引けとなりました。
ディスクレーマー
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