来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開か』(7/29朝)

ドル円は日銀によるサプライズ的な緩和微修正を受けて一時138.07まで急落するも、すぐに140円台後半へと値を戻す力強い動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開か』(7/29朝)

『日米金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開か』

〇今週のドル円、週初141.82まで上昇後FOMC、日銀会合通過後週末にかけ一時138.07まで急落
〇パウエルFRB議長の9月利上げ見送りの可能性示唆、日銀のYCC修正等が背景
〇その後、日銀は当面追加的な金融緩和政策の変更を行わないとの思惑等から141円前後に急反発   
〇ユーロドル、ECBの金融引き締め休止観測に週末1.0943まで反落、引けにかけ1.10台を回復
〇ドル円、90日移動平均線や「雲」下限にサポートされ、買いシグナルも維持、地合い崩れず
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード再開の思惑がサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):139.50ー143.50、(EURUSD):1.0850−1.1150

今週のレビュー(7/24−7/28)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初141.68で寄り付いた後、早々に週間高値141.82まで上昇しました。しかし、心理的節目142.00をバックに伸び悩むと、(1)急ピッチな上昇に対する反動売り(重要イベント前のポジション調整)や、(2)米6月シカゴ連銀全米活動指数(結果▲0.32、予想▲0.13)の市場予想を下回る結果や、(3)国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストであるピエールオリビエ・グランシャ氏による「日本の物価には上振れリスクがあるため、日銀は現在のYCC政策から脱却すべき」との提言発表、(4)米6月新築住宅販売件数(結果69.7万件、予想72.5万件)の市場予想を下回る結果、(5)パウエルFRB議長による「9月は利上げ見送りの可能性もある」との慎重な発言、(6)上記5を背景とした米FRBによる金融引き締め休止観測(米金利低下に伴うドル売り圧力)、

(7)日銀金融政策決定会合でのサプライズ的な金融緩和の微修正発表(これまで0.5%程度としてきた長期金利の変動幅上限を市場の動向に応じて超えることを容認→YCCの事実上の撤廃→金融緩和脱却に向けた前進との見方)や、(8)上記7を背景とした円キャリートレード解消の動き(円金利上昇→日米金利差縮小→ドル売り・円買い)が重石となり、週末にかけて、週間安値138.07まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(9)植田日銀総裁による「基調的な物価2%へ距離があるとの判断は変えていない」「物価上振れが顕在化してからの対応は後手に回り混乱する」「今回の決定は金融緩和の持続性を高めるための措置」との慎重な発言や、

(10)市場参加者による「日銀は当面、追加的な金融緩和政策の変更を行わない」との見方の浮上(円キャリートレード再開の思惑)、(11)短期筋のショートカバーが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/29午前2時50分現在)では、140.90前後まで持ち直す動きとなっております。(編集部注:終盤141.18まで上昇)尚、今週発表された米経済指標(米7月製造業PMI速報値、米7月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米7月リッチモンド連銀製造業指数、米新規失業保険申請件数、米第2四半期GDP速報値、米6月耐久財受注、米6月住宅販売保留指数)は総じて力強い結果となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1127で寄り付いた後、(1)フランス7月製造業PMI(結果44.5、予想46.0)および同7月非製造業PMI(結果47.4、予想48.5)の市場予想を下回る結果や、(2)ドイツ7月製造業PMI(結果38.8、予想41.0)および同7月非製造業PMI(結果52.0、予想53.1)の市場予想を下回る結果、(3)ユーロ圏7月製造業PMI(結果42.7、予想43.5)および同7月非製造業PMI(結果51.1、予想51.6)の市場予想を下回る結果、(4)スペインを巡る政局不透明感(7/23に実施されたスペイン総選挙で中道右派の野党・国民党が第1党となったものの、極右政党の協力を得ても尚、議会下院の過半数を確保できず)、

(5)ドイツ7月IFO景況感指数(結果87.3、予想88.0)の冴えない結果、(6)米経済指標の力強い結果、(7)ラガルドECB総裁による「9月以降の決定はオープン」「短期的な景気見通しは悪化」「サービス業の勢いは減速し製造業も弱い外需によって抑制されている」との慎重な発言、(8)上記7を背景としたECBによる金融引き締め休止観測(ラガルドECB総裁は追加利上げの可能性を示唆せず)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0943まで反落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、引けにかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間7/29午前2時50分現在)では、1.1020前後で推移しております。

来週の見通し(7/31−8/4)

<ドル円相場>
ドル円は日銀によるサプライズ的な緩和微修正を受けて一時138.07まで急落するも、すぐに140円台後半へと値を戻す力強い動きとなりました。日足ローソク足が90日移動平均線や一目均衡表雲下限にサポートされていることや、強い買いシグナルを示唆する強気のパーフェクトオーダーが成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていないと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で次回9月FOMCの利上げ有無はデータ次第との見方を強調→直近で発表された米経済指標は軒並み力強い結果→次回9月FOMCでの追加利上げ観測再燃→米金利上昇→米ドル買い)や、

(2)日銀による金融緩和の長期化観測(日銀は金融緩和の微修正を発表するも、YCCを完全に撤廃したわけでは無いため、円金利急騰は阻止される公算大。また、日銀は今回の措置で時間稼ぎができることから次の一歩まで相応に時間が空く可能性あり)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード再開の思惑など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。株式市場がグローバルに堅調さを維持していることも、リスク選好の円売りの観点からドル円を下支えしそうです。

こうした中、来週は上記1を見極める意味で、米7月ISM製造業景況指数や、米7月ISM非製造業景況指数、米6月JOLTS求人件数、米7月ADP雇用統計、米7月チャレンジャー人員削減数、米7月雇用統計などの米経済指標に注目が集まります。パウエルFRB議長は今後の利上げ有無はデータ次第と述べている為、上記米経済指標が市場予想を上回る場合には、「米追加利上げの織り込み再開→米金利急上昇→米ドル買い」の経路でドル円に強い上昇圧力が加わりそうです。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):139.50ー143.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時1.0943まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線、50日移動平均線を下抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECBによる金融引き締め休止観測(今週開催されたECB理事会で25bpの利上げが決定されるも、追加利上げの可能性は示唆されず。ラガルドECB総裁からもハト派的な発言が増加→欧州債利回り低下→ユーロ売り)や、(2)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は次回利上げの有無はデータ次第とのスタンスを強調→直近の米経済指標が力強い結果→米FRBによる追加利上げ観測再浮上→米金利上昇→米ドル買い)、

(3)上記1、2を背景とした欧米金利差拡大とそれに伴うユーロ売り・ドル買い圧力など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記1を確認する目的で、ユーロ圏4−6月期GDP速報値と、ユーロ圏7月HICP速報値に注目が集まります。GDP、HICPが共に市場予想を下回る結果となれば、欧州経済の先行き不安と、欧州圏のインフレ鈍化が組み合わさることから、「次回ECB理事会での追加利上げ見送り観測→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の経路でユーロドルに強い下落圧力が加わる展開が想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドルの続落を来週のメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1150

注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開か』

ドル円日足

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