『史上最安値圏で上値重く推移。リラ売りトレンドの継続を想定』
〇今週のトルコ円、早々に5.29まで上昇後、週末にかけ5.11まで反落、5.22レベルで越週
〇ドル円の動きに左右されるが、トルコ中銀の運営正常化への期待も
〇トルコ円、全てのテクニカルポイントの下側で推移、売りシグナルも継続、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズもトルコ経済の先行き不透明感、大統領の政策変更リスク等が重石
〇引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):5.00ー5.40
今週のレビュー(7/24−7/28)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初5.26円で寄り付いた後、早々に週間高値5.29円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)トルコ7月景気動向指数(結果104.9、前回105.7)の冴えない結果や、(2)トルコ7月経済信頼感(結果99.3、前回101.1)の冴えない結果、(3)日銀金融政策決定会合でのサプライズ的な金融緩和の微修正発表(これまで0.5%としてきた10年物国債金利の変動幅上限を市場動向に応じて超えることを容認すると共に、連続指し値オペの利回りを1.0%に引き上げることを決定→市場は事実上の金融緩和修正と解釈)、(4)上記3を背景とした本邦長期金利の急上昇(対主要通貨での円買い圧力)が重石となり、週末にかけて、週間安値5.11円まで反落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(5)7/18に記録した史上最安値5.09円を背にした押し目買い圧力や、(6)植田日銀総裁によるハト派的な発言、(7)上記6を背景とした日銀による金融緩和の長期化観測(円ロングの巻き戻し→円キャリートレード再開期待→ドル円・クロス円反発→トルコリラ円連れ高)、(8)トルコ中銀によるインフレ見通しの大幅上方修正(トルコ中銀は年末時点のインフレ見通しを従来予想の22.3%から58.0%へ大幅上方修正→従来のような楽観的な予測を改め、投資家からの信頼強化につなげる構え)、(9)トルコ中銀エルカン総裁による「インフレ見通しの大幅な改善が実現するまで、必要に応じて段階的に金融引き締めを強化していく」とのタカ派的な発言、(10)トルコ中銀による副総裁3名の交代発表(3名の内の1人は米ニューヨーク連銀での勤務経験のあるエコノミストのカラハン氏→トルコ中銀による正統派路線への転換期待)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/29午前2時00分現在)では、5.22円前後まで持ち直す動きとなっております。
尚、トルコ中銀は7/25に、金融引き締め政策の支援を目的に、リラ建て企業向け融資(除く輸出・投資・農業向け)の月間伸び率上限を従来の3.0%から2.5%に引き下げることを発表しました。また、自動車ローンの伸び率上限についても、従来の3.0%から2.0%に引き下げると共に、クレジットカードによる現金引き出しと当座借越勘定に適用される月利上限を2.89%に引き上げました。シムシェキ財務相はこうした一連の措置について、経常赤字とインフレを中期的に抑制することが狙いだと説明しました。
来週の見通し(7/31−8/4)
トルコリラの対円相場は、年初来安値圏での冴えない動きが続いております。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感(今週発表されたトルコ7月景気動向指数、トルコ7月経済信頼感は共に冴えない結果)や、(2)エルドアン大統領の政策転換リスク(政府・中銀は経済政策および金融政策の正当化路線への転換を志向しているが、エルドアン氏の一言でこうした方向性が180度覆る潜在的なリスクあり)、(3)リラ売り抑制策の撤廃観測(これまでリラ売り圧力を抑制する目的で導入されてきた資本規制や為替介入が撤廃されるとの思惑→これらは正当化路線への転換の過程で被る代償となるため、当面はトルコリラの下押し要因として燻り続ける公算大)など、トルコリラ円相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はトルコ7月製造業PMIや、トルコ7月消費者物価指数、トルコ7月生産者物価指数に注目が集まります。
来週の予想レンジ(TRYJPY):5.00ー5.40
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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