トルコリラ円見通し ドル円の波乱に巻き込まれるも5日ぶり反発(23/7/31)

トルコリラ円の7月28日は概ね5.25円から5.12円の取引レンジ、29日早朝の終値は5.25円で前日終値の5.17円からは0.08円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円の波乱に巻き込まれるも5日ぶり反発(23/7/31)

ドル円の波乱に巻き込まれるも5日ぶり反発

〇トルコ円、日銀金融政策後のドル円乱高下で5.23へ反騰から5.12へ急落、7/29早朝5.25まで戻す展開
〇7/29早朝への上昇により日足は5日ぶりの反発で陽線引け
〇対ドル、7/29早朝終値は26.90、週間では7/21終値26.97から0.07のドル安リラ高
〇6月貿易収支は51.6億ドルの赤字、5月からは減少するも構造的な赤字状態が長期的に続く
〇8/3トルコ7月CPI発表予定、事前予想は全体前月比が6月3.92%から9.10%へと大幅に加速の見通し
〇5.20以上での推移中は上昇余地ありとし、5.25超えからは5.27前後への上昇を想定
〇5.20割れからは5.15前後を目指す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の7月28日は概ね5.25円から5.12円の取引レンジ、29日早朝の終値は5.25円で前日終値の5.17円からは0.08円の円安リラ高だった。週間では7月21日終値5.26円から0.01円の円高リラ安だった。
ドル/トルコリラにおけるリラ安がやや落ち着いている中でトルコリラ円はドル円の騰落を追いかける展開となっているが、7月28日の日銀金融政策決定会合を巡る見込み報道に振り回された。
ドル円は7月14日安値137.24円から21日夕高値141.94円までの間は金融緩和継続見込みを優先して上昇したが、その後は軌道修正への懸念から下落に転じ、27日未明のFOMCを通過して139円台前半へ下げたところから米GDP好調により27日夜に141.31円までいったん戻したものの、日経電子版がYCCの修正見込みを報じたことで139円割れへ急落していた。

日銀が28日の金融政策決定会合において、マイナス金利等を維持しつつもYCCにおける長期金利変動許容上限を引き上げたことでドル円は乱高下に見舞われ、一時141.03円まで反騰してから138.06円へ急落したが、日銀の今後を思惑した売り買いの交錯が一巡すると円安再開へと進み、29日早朝には141円台序盤へ戻した。
トルコリラ円は7月18日に5.08円まで史上最安値を大幅に更新してから円安を頼りに7月21日に5.27円まで戻したが、FOMCを通過してのドル円の下落により27日午前には5.19円へ下落、27日深夜にドル円が反騰した局面で5.24円まで戻したもののドル円が一転して急落したことで28日5.15円へ下落した。日銀金融政策発表後にドル円が乱高下したためにトルコリラ円も5.23円へ反騰してから5.12円へ急落し、29日早朝に5.25円まで戻す波乱の展開となった。しかし、29日早朝への上昇により日足は5日ぶりの反発で陽線引けしている。

【対ドルでは史上最安値更新がやや落ち着くも最安値近辺】

ドル/トルコリラの7月28日は概ね27.19リラから26.70リラの取引レンジ、29日早朝の終値は26.90リラで前日終値の26.94リラからは0.04リラのドル安リラ高だった。週間では7月21日終値26.97リラから0.07リラのドル安リラ高だった。
5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選による先行き不安をきっかけとしたリラの暴落が6月22日のトルコ中銀による8.5%から15.0%への利上げを不服として一段と深刻化して7月19日には27.16リラまで史上最安値を更新したが、7月20日にトルコ中銀が2会合連続の利上げで政策金利を17.5%へ引き上げた上で今後も利上げを継続する姿勢を示したためにその後は新たな最安値更新を回避している。

しかし、7月21日に26.48リラへ戻したところを売られて7月21日終値26.97リラを終値ベースの史上最安値とし、7月19日安値と21日高値のレンジ内での持ち合いを続けており、徐々にレンジを狭める三角持ち合いの様相であり、徐々に持ち合いが煮詰まって上下いずれかへ放れやすい印象だ。持ち合いは強弱の力関係が均衡していることを反映しているので上下のどちらかへ放れるのかは五分だが、下落途中の持ち合いは下落トレンド継続中の小休止にとどまって持ち合い下放れから下げ足が速まる傾向も多い。

【トルコの6月貿易赤字は51.6億ドル】

トルコ統計局が発表した6月の貿易収支は51.6億ドルの赤字だった。5月の125.5億ドルからは減少したものの構造的な赤字状態は長期的に続いている。今年1月に142.7億ドルの最大赤字を計上して2月には83.5億ドルまで減少したものの5月に再び100億ドルを超えるなど、月次の変動はあるものの赤字拡大基調は続いている印象だ。
6月の輸出は209億ドルで5月の216.5億ドルから減少して前年同月比は10.5%減、輸入は5月に342億ドルで過去最大としたところから6月は260.4億ドルへ減少して前年同月比は17.5%減となった。
7月3日に貿易省による通関ベースの速報値がすでに発表されており、速報ベースでは54億ドルの赤字、輸出が209億ドル、輸入が263億ドルだっため、7月28日の統計局の確報については市場の反応も限定的だった。8月2日に貿易省による7月分の速報が発表予定だが今週中の発表ということで予定とずれることもある。

【トルコの7月CPIは再加速予想】

8月3日にトルコの7月CPI(消費者物価指数)の発表がある。CPI上昇率についての事前予想では全体の前月比が6月の3.92%から9.10%へと大幅に加速し、前年同月比も6月の38.21%から47.30%へと加速する見通しだ。
トルコ政府はインフレによる生活コスト上昇に対処するために最低賃金の引き上げや公務員給与と年金支給の引上げを行ってきたがこれらは賃金インフレ要因となる。エルドアン大統領再選や中銀の利上げを不服としたリラの大幅下落が通貨インフレを深刻化させている。7月に入ってからは財政悪化対策として増税ラッシュが発生しており、付加価値税の引き上げや金融機関等の法人税引上げ等が新たな物価上昇要因となっている。
トルコのCPI前年同月比は昨年10月に85.51%まで上昇した後はベース効果により鈍化傾向に入って6月はこの間の最低となる38.21%まで下がってきたが、前月比の上昇基調が鮮明になりベース効果も解消して高インフレ状態が再びクローズアップされてくると思われる。

トルコ中銀は大幅利上げでインフレ抑制に挑戦しているものの、CPI上昇率と比較すれば大幅なマイナス金利状態にあり、リラの暴落が一服しているもののリラ安へ風向きは変わっていない。トルコ中銀が実質マイナス金利状態からの脱却を宣言するようなタカ派姿勢を示さない限りはインフレの悪化がリラ売りを招き、リラ安が貿易収支や経常収支および財政収支の悪化を招く悪循環から抜け出せないのではないかと思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は乱高下に見舞われたものの7月28日の日足は下ヒゲを付けた大陽線となり日銀金融政策の一部修正を消化して上昇しているために7月28日安値を起点として新たな上昇期に入る可能性がある。トルコリラ円も7月28日の日足を5日ぶりの陽線としたことで目先はドル円とともに反騰を試しやすい局面と思われる。ただし、YCCの許容変動上限が事実上引き上げられたことにより国内長期債利回りが上昇するようだと円の全面安へ進めない可能性もある。トルコリラ円は当面はドル円の騰落を慎重に追いかけつつ、ドル/トルコリラが現状の持ち合いから下放れて史上最安値更新へ進む可能性にも注意してゆく必要がありそうだ。

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月27日深夜へいったん急伸してから底割れしたために28日午前時点では27日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとしたが、日銀金融政策発表を巡り乱高下となり28日午後安値から29日早朝へ急伸したため、28日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は7月29日早朝高値を含めて8月3日深夜にかけての間と想定する。
ただし、乱高下が続く可能性と、7月28日午後安値を中心に逆三尊を形成する場合はいったん右肩形成の下落に入る可能性もあると注意し、5.20円割れからは31日午後から8月3日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7月29日早朝への反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも大きく上抜いているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、5.20円割れからは下げ再開注意として先行スパン試しとし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は7月29日早朝への上昇で60ポイント台後半へ上昇したがその後の反落で50ポイントを試している。50ポイントを割り込んでも早々に回復するうちは60ポイント超えから70ポイント台を目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下向きとして30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.20円を下値支持線、5.25円を上値抵抗線とする。
(2)5.20円以上での推移中は上昇余地ありとし、5.25円超えからは5.27円前後への上昇を想定する。5.27円以上は反落注意とするが、5.20円を上回っての推移なら8月1日午前も高値試しへ進む可能性があるとみる。
(3)5.20円割れからは5.15円前後を目指す下落を想定する。5.15円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、5.20円以下での推移なら8月1日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7月31日
 16:00 4-6月 四半期観光収入 (1-3月 86.9億ドル)
 17:00 6月 海外観光客数 前年同月比 (5月 16.2%)
8月1日
 16:00 7月 イスタンブール製造業PMI (6月 51.5)

8月3日
 16:00 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 3.92%、予想 9.10%、予想レンジ 6.4〜10.6%)
 16:00 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 38.21%、予想 47.30%、予想レンジ 43.5〜49.4%)
 16:00 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 3.8%)
 16:00 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 47.3%)
 16:00 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 6.50%)
 16:00 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 40.42%)
 20:30 週次 外観準備高 7月28日時点 グロス (7月21日時点 716.8億ドル)
 20:30 週次 外観準備高 7月28日時点 ネット (7月21日時点 136.8億ドル)
8月7日
 23:30 7月 財務省現金残高増減 (6月 -2063.3億リラ)


注:ポイント要約は編集部

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