『タカ派なFRB・ECB、ハト派なBOJのコントラストでドル円・クロス円急伸』
〇今週のドル円、139.01まで下落後、タカ派なFOMC結果等で週末海外時間にかけ、高値141.89まで上昇
〇ユーロドル、ECBのタカ派スタンスに週末にかけ、1.0970まで急伸
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも、日米、日欧金利差拡大観測強まり、ドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー143.50、(EURUSD):1.0850−1.1150
今週のレビュー(6/12−6/16)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初139.40で寄り付いた後、(1)米金利低下に伴うドル売り圧力や、(2)重要イベントを控えたポジション調整、(3)米5月消費者物価指数(結果+0.1%、予想+0.3%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(4)上記3を背景とした米国のインフレ沈静化期待(米FRBによる金融引き締め打ち止め観測の再燃)が重石となり、翌6/13にかけて、週間安値139.01まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)米主要株価指数の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)や、(6)米FOMCのタカ派的な結果(政策金利の据え置きが全会一致で決定されつつも、同時に発表されたドットチャートが予想よりタカ派的な結果→2023年末時点の予想中央値が前回の5.1%から5.6%へ上方修正、2024年末時点の予想中央値が前回の4.3%から4.6%へ上方修正、2025年末時点の予想中央値が前回の3.1%から3.4%へ上方修正)、(7)上記6を背景とした米長期金利の急上昇、
(8)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(5/30に記録した直近高値140.95を上方ブレイク→短期筋のストップBUY誘発)、(9)日銀金融政策決定会合での政策修正見送り決定(現状維持決定)、(10)植田日銀総裁による「持続的・安定的な物価目標2%にはまだ達していない」との無難な発言(サプライズなし)、(11)上記9、10を背景とした対主要通貨での円売り圧力(円キャリートレード再開の思惑)が支援材料となり、週末海外時間にかけて、週間高値141.89(昨年11/22以来、約7カ月ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/17午前3時50分現在)では、141.80前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0751で寄り付いた後、早々に週間安値1.0733まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ドイツ6月ZEW景況感指数(結果▲8.5、予想▲13.0)の市場予想を上回る結果や、(2)ユーロ圏4月鉱工業生産(結果+1.0%、予想+0.8%、※前月比)の力強い結果、(3)欧州株の堅調推移、(4)ECB理事会での8会合連続利上げと、声明文における「ECB理事会は今後の決定においてインフレ率を目標の2%へ戻すため政策金利が十分に制約的な水準になるよう確実にする」との追加利上げを示唆する記述、(5)ラガルドECB総裁による「7月利上げの可能性は極めて大きい」「ECBはインフレ見通しに満足していない」「利上げ見送りや停止は議論していない」とのタカ派的な発言、
(6)スロベニア中銀バスレ総裁による「漸進的な引き締めの継続が必要になる」「7月も再利上げを予想」とのタカ派的な発言、(7)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「夏休み後も利上げ継続が必要」とのタカ派的な発言、(8)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「9月より後も利上げは必要な可能性」とのタカ派的な発言、(9)上記4、5、6、7、8を背景としたECBの金融引き締め打ち止め観測の後退(金融引き締め長期観測の再燃)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0970(5/11以来、約1カ月ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間6/17午前3時50分現在)では、1.0943前後で推移しております。尚、ユーロ円相場は心理的節目155円台を回復し、2008年9月以来の高値圏へと急伸しました。
来週の見通し(6/19−6/23)
<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した安値129.65をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約7カ月ぶり高値となる141.89(昨年11/22以来の高値圏)まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となりつつあります(日米欧の金融政策イベント通過でドル買い・円売りトレンド再開)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週発表されたドットチャートが予想外の大幅上方修正→年内2回の追加利上げが織り込まれる展開)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(今週開催された日銀金融政策決定会合で緩和修正の見送りを決定→岸田首相が解散を否定したことで政策修正のチャンスがあったにも係わらず日銀は動かず→円独歩安の流れが再開)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード再開の思惑、(4)日本とその他各国との金利差拡大(オーストラリア中銀、カナダ中銀、欧州中銀が利上げ実施→来週は英中銀、ノルウェー中銀、スイス中銀、トルコ中銀が利上げに踏み切る公算大→日本とその他各国との金利差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(目先は昨年11/21に記録した高値142.27を突破できるか否かに注目)。
尚、来週は米国経済指標(米5月住宅着工件数、米5月中古住宅販売件数、米6月PMI速報値)の発表に乏しいものの、ブラックアウト期間明けの米当局者発言(セントルイス連銀ブラード総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、パウエルFRB議長議会証言、シカゴ連銀グールズビー総裁、ウォラーFRB理事、ボウマンFRB理事、クリーブランド連銀メスター総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁)が急増するため、市場参加者の関心は米当局者発言に移っています(米当局者の見解を探る展開)。タカ派なコメントが相次ぐ場合には、米金利上昇→米ドル買いの経路で、ドル円に更なる上昇圧力が加わりそうです(政府・当局による介入警戒感が燻っているものの、昨年10月に記録した高値151.95までまだ距離が残っているため、このタイミングで早まって介入に踏み切る可能性は乏しく、また口先介入効果も限定的なものに留まる見込み)。
来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー143.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/31に記録した安値1.0634をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約1カ月ぶり高値となる1.0970(5/11以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲下限、21日線、90日線)を上抜けした他、強い上昇トレンド入りを示唆する「強気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。目先は、(A)日足ローソク足が雲上限を突破し、強い買いシグナルを示唆する「三役好転」が実現するか否か、(B)21日線と90日線のゴールデンクロスを通じて、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」が点灯するか否か、(C)4月中旬から5月初旬にかけて抵抗帯として機能した1.1100レジスタンス(4/14高値1.1077、4/26高値1.1096、5/4高値1.1092)を突破できるか否かに注目が集まります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、ECBによる金融引き締め長期化観測(今週発表されたECB理事会で25bpの利上げに踏み切った他、声明文やラガルドECB総裁記者会見、その後の欧州当局者発言でもタカ派的な発言が相次いだ)が再燃するなど、米国と欧州の金利差縮小の観点で、ユーロドルに上昇圧力が加わりそうです(ユーロ円相場が2008年9月以来の高値圏へ急伸していることも、ユーロ円上昇→ユーロドル連れ高の経路でユーロドルを下支え)。
以上(テクニカル的な強さ+ECBによるタカ派スタンス)を踏まえ、当方ではユーロドル相場の見通しをベアからブルへと変更いたします。尚、来週は、欧州経済指標(ユーロ圏6月消費者信頼感速報値、ユーロ圏6月PMI速報値)や、欧州当局者発言(フランス中銀ビルロワドガロ総裁、フィンランド中銀オッリレーン総裁、シュナーベルECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁)など、重要イベントが目白押しとなるため、ユーロドル相場・ユーロ円相場のボラティリティ拡大に引き続き注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1150
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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