ドル円見通し 日銀の金融緩和継続で急伸、年初来高値更新(週報6月第三週)

ドル円は6月16日に年初来高値を更新した。

ドル円見通し 日銀の金融緩和継続で急伸、年初来高値更新(週報6月第三週)

ドル円見通し 日銀の金融緩和継続で急伸、年初来高値更新

〇先週のドル円、FOMCが年内2回の追加利上げ姿勢を示したことで15日夕刻141.50まで上昇
〇一旦139.81に失速するも、週末日銀の大規模緩和継続決定に141.91まで年初来高値を切り上げる
〇日銀、マイナス金利とYCC等を現状維持、政策修正への前向き感無し
〇追加利上げ余地のあるユーロやポンド、豪ドルの上昇が対ドル、対円での上昇顕著
〇141円台で日本の当局に動き無く、米国か日本を為替報告の監視対象から除外、当局の牽制薄まる
〇株式市場は、景気減速はソフトランディング、FRBの利上げもせいぜいあと1回との楽観的な見方優勢
〇ドル円、昨年10月高値からの下げ幅24.73円の半値戻し139.58を超え、3分の2戻し143.71に迫る印象
〇142円超えからは142.50試しを想定、超えれば143.00、143.50、144.00等順次試すか
〇141円割れから続落に入る場合は140円台中盤(140.65から140.35)への下落とその後の反騰を想定

【概況】

ドル円は6月15日未明の米FOMCが予想通りに利上げを停止しつつも年内2回の追加利上げ姿勢を示したことで14日深夜安値139.28円から140円台序盤へ急伸し、15日夕刻には141.50円へ続伸して5月30日高値140.92円を超えて年初来高値を更新した。
当面のドル買い材料を消化したことと15日夜のECB利上げから揺れ返しの下落となり16日午前には139.81円へ失速したが、16日の日銀金融政策決定会合での大規模金融緩和継続決定により反騰入りし、17日早朝には141.91円まで年初来高値を切り上げた。
FOMCが年内2回の利上げ見通しを示したことに対してはあと1回程度ではないかとの楽観的な見方もあるものの、リッチモンド連銀のバーキン総裁が16日に追加利上げ支持姿勢を示したことで米長期債利回りが上昇してドル円の反騰に寄与した。またメジャー通貨に対するクロス円の大幅上昇による円安感が強まったことも円の全面安としてドル円を押し上げた。

【日銀金融政策決定会合、マイナス金利とYCC等を現状維持】

日銀は6月16日の金融政策決定会合でマイナスの短期金利やYCCによる長期金利ゼロ%誘導のための変動許容上限の0.50%等を据え置き、黒田総裁時代からの大規模金融緩和政策の継続を決定した。声明文では「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ粘り強く金融緩和を継続し、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」とした。
植田総裁は「食品などの値上げが続いているものの、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰していく」として「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比は今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく」との見方も維持した。YCCについては「政策効果と副作用の比較衡量で決定する」と述べて修正の可能性について含みを持たせたものの政策修正への前向き感を示すことはなかった。

【クロス円の全面高】

米FRBが年内2回の利上げ見通しを示し、ECBも15日に0.25%利上げを決定した上で7月の追加利上げ姿勢を強く示唆し、豪中銀が6月6日に現状維持予想に反して利上げを決定し、6月7日にはカナダ中銀も現状維持予想に反して利上げを決定しており、主要中銀が追加利上げへ向かう中で日銀の金融緩和継続姿勢との差がクロス円の上昇を勢い付かせている。
豪ドル円は3月24日安値86.06円以降の高値を97.56円へ伸ばして昨年9月13日高値98.43円に迫り、ユーロ円は155.26円を付けて2012年7月の94.11円以降の最高値を更新、ポンド円も182.04円を付けて2020年3月の123.34円以降の高値を更新している。

ドルストレートにおいてもユーロドルは5月31日安値からの反騰を継続して3月後半から4月26日高値へ上昇した時に近い動きを見せ、ポンドドルも2022年9月底以降の最高値を更新しており、追加利上げ余地のある中でユーロやポンド、豪ドルの上昇が顕著となってきている。このためドル円としては日米金利差によるドル高円安に加え、ユーロやポンド、豪ドル等に対する円安感がドル円の上昇にも波及する展開と思われる。
また141円手前へ上昇した5月30日に日銀・金融庁・財務省の三者会談が行われたことで141円台到達に対する高値警戒感も出やすいところだったが、日本の当局サイドからの牽制的な動きは見られず、米財務省は6月16日の半期為替報告書において日本を「監視対象」から除外しており、円安の進行に対する米国側からの牽制感が薄まっていることもドル円の上昇を助長した。

【今後の米インフレ指標の推移を見守りつつドル円の高値試しは続くか】

6月16日に発表された米ミシガン大の6月消費者信頼感指数は63.9となり、5月の59.2から上昇して市場予想の60.0を上回ったが、同時に発表された消費者の期待インフレ率は1年先が5月の4.2%から3.3%へ低下、5年先が5月の3.1%から3.0%へと低下しており、景気の底堅さを示しつつインフレが緩やかに鈍化している印象を示した。
今後の米PCE(個人消費支出)デフレーター、6月の米雇用統計、6月の米CPIとPPI等が順次検証されてゆく中で、米インフレの鈍化が一層顕著になれば年内2回ではなく1回の利上げにとどまるとの見方が優勢となってドル円の上昇を抑える可能性はあるが、高止まり感が強まりFRB高官や地区連銀総裁らが追加利上げ支持発言を繰り返すようならドル円の高値追及も続きやすくなる。

リッチモンド連銀のバーキン総裁は6月16日に「インフレはピークから低下しているものの依然として高すぎる」「インフレ率2%が我々の目標だ」として追加利上げ支持姿勢を強調し、ウォラーFRB理事は米銀破綻による信用不安が融資条件の厳格化が進めば少なくともいくらかの追加金融引き締めの必要性を減らし得る」と述べており、FOMCメンバーとしては信用不安とインフレの高止まりの間で政策判断の模索が続くところだ。6月22日にパウエル米FRB議長の下院金融委員会証言が予定されており、金融政策姿勢の強弱に注目が集まる。

【米長期債利回りは上昇、NYダウは続落】

6月16日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.77%となった。6月14日夜にPPIの鈍化により3.77%へ低下してからFOMC後に3.85%へ急伸し、その後に再び低下して14日は前日比0.03%低下の3.79%となり、15日も0.07%低下したが、16日は一時3.81%まで上昇するなど持ち直した。30年債利回りは0.01%上昇の3.85%、利上げに敏感な2年債利回りは0.07%上昇の4.72%となり6月1日からの上昇基調を維持している。
一方でNYダウは前日比108.94ドル安と下落して15日の428.73ドル高から反落したが5月25日以降の上昇基調の範囲にあり、ナスダック総合指数も93.25ポイント安と下げたものの高値では13864.06ポイントを付けて昨年10月13日安値以降の最高値を更新している。株式市場は信用不安問題を警戒しつつも金融引き締めによる景気減速はソフトランディングし、FRBの利上げもせいぜいあと1回程度との楽観的な見方が優勢のようだ。

【昨年10月天井からの下落幅に対する3分の2戻しに挑戦】

【昨年10月天井からの下落幅に対する3分の2戻しに挑戦】

ドル円は6月16日に年初来高値を更新した。1月16日安値を起点とした上昇は3月8日高値までの2か月弱で10.70円の上昇幅となり、3月24日安値129.63円を起点として二段目の上昇に入ってきたが、既に2か月半を超えて上昇幅も6月16日高値141.91円まで12.28円へ拡大した。
5月29日高値140.91円と5月30日高値140.92円によるダブルトップ型の上値抵抗線を突破しての一段高であり、5月30日からの持ち合いを経て一段高しているので三段目の上昇期に入っていることも考えられる。
上昇角度は昨年3月から10月にかけての大上昇期と比較すれば緩やかではあるが、既に昨年10月高値から今年1月安値までの下げ幅24.73円に対する半値戻し139.58円を超え、3分の2戻しとなる143.71円へ迫ってきている印象だ。

3月8日高値から3月24日安値までの下落幅8.28円の倍返しなら上値計算値は146.19円と計測されるが、年初来高値を更新し、日経平均がバブル崩壊後の最高値を目指す強気な市場心理状況を踏まえれば、株高円安の継続感により142円台へ乗せれば143円台、145円試し、さらに146円を目指してゆく可能性も徐々に強まるのではないかと思われる。
短期的には直前高値から1円を超える急落から一段高へ切り返すような乱調な展開が続いていることに注意し、年初来高値更新後の反動安にも注意がいると思われるが、突っ込んだところは買い拾われて次の上昇期の起点になりやすいと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、141円を下値支持線、142.50円を上値抵抗線とする。
(2)141円台序盤へ下げる場面あれば押し目買い有利とし、142円超えからはまず142.50円試しを想定する。142.50円手前ではいったん売りも出やすいとみるが、142.50円超えからは143.00円、143.50円、144.00円を順次試してゆく流れと考える。
(3)141円を一時的に割り込んでも早々に切り返すうちは上昇継続とみるが、141円割れから続落に入る場合は140円台中盤(140.65円から140.35円)への下落とその後の反騰を想定し、141円超えからは上昇再開と高値更新を試す流れへ進むのではないかと考える。

【当面の主な予定】

6/19(月)
休場 米国(奴隷解放記念日)
23:00 (米) 6月 NAHB住宅市場指数 (5月 50、予想 51)

6/20(火)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
12:30 (豪) ブロック豪中銀副総裁、講演
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.4%)
13:30 (日) 4月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -0.3%)
13:30 (日) 4月 設備稼働率 前月比 (3月 0.8%)
15:00 (独) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 0.3%、予想 -0.7%)
17:00 (欧) 4月 経常収支・季調済 (3月 312億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 -2.4%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 -1.5%)
19:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、会議プレゼン
21:30 (米) 5月 住宅着工件数・年率換算 (4月 140.1万件、予想 140.2万件)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 前月比 (4月 2.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 5月 建設許可件数・年率換算件数 (4月 141.6万件、予想 142.5万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 前月比 (4月 -1.5%、予想 0.6%)
24:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加

6/21(水)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
15:00 (英) 5月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (4月 1.2%、予想 0.5%)
15:00 (英) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 8.7%、予想 8.4%)
15:00 (英) 5月 CPIコア指数 前年同月比 (4月 6.8%、予想 6.8%)
15:00 (英) 5月 RPI(小売物価指数) 前月比 (4月 1.5%、予想 0.6%)
15:00 (英) 5月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (4月 11.4%、予想 11.3%)
22:45 (欧) シュナーベルECB理事、ナーゲル独連銀総裁、講演
23:00 (米) パウエル米FRB議長、下院金融委員会証言
23:00 (米) 米上院銀行委員会、FRB副議長・理事人事の公聴会
25:25 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省20年債入札
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

6/22(木)
中国、香港、台湾
07:45 (NZ) 5月 貿易収支 (4月 4.27億NZドル)
16:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.50%、予想 1.75%)
17:00 (ノ) ノルウェー中銀 政策金利 (現行 3.25%、予想 3.50%)
17:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 8.50%、予想 20.00%)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.75%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.2万件、予想 26.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 177.5万人、予想 178.5万人)
21:30 (米) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -2068億ドル、予想 -2182億ドル)
22:55 (米) ボウマンFRB理事、講演

23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数・年率換算 (4月 428万件、予想 425万件)
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数 前月比 (4月 -3.4%、予想 -0.7%)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 -0.6%、予想 -0.8%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感・速報値 (5月 -17.4、予想 -17.0)
23:00 (米) パウエル米FRB議長、上院銀行委員会証言
23:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 11.25%、予想 11.25%)
29:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

6/23(金)
中国、台湾
08:30 (日) 5月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 3.5%、予想 3.2%)
08:30 (日) 5月 全国CPI・生鮮食品除く 前年同月比 (4月 3.4%、予想 3.1%)
08:30 (日) 5月 全国CPI・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (4月 4.1%、予想 4.2%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.5%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -3.0%、予想 -2.6%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 0.8%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 -2.6%、予想 -2.0%)

16:30 (独) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 43.2、予想 43.5)
16:30 (独) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 57.2、予想 56.2)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 44.8、予想 44.8)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 55.1、予想 54.4)
17:30 (英) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 47.1、予想 46.8)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 55.2、予想 54.9)
18:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、会議プレゼン
21:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
22:45 (米) 6月 製造業PMI・速報値 (5月 48.4、予想 48.5)
22:45 (米) 6月 サービス業PMI・速報値 (5月 54.9、予想 54.0)
26:40 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

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