円安再開も先週のレンジ内での動き
〇先週のドル円、5/29債務上限問題の合意が好感され、140.92レベルの高値をつける
〇デフォルト回避で悪材料はなくなったが、本邦の三者会談・米要人のハト派発言がドルの上値を抑える
〇米金利政策、一旦現状維持とした上で、7月の利上げは経済指標等を見ながら判断というスタンスか
〇日米の株価がリスクオンの円安要因、当面は下落でドル買い、ただし先週の高値圏では警戒感も
〇今週は米国5月ISM非製造業指数、米国新規失業保険申請数等に注目
〇6/2雇用統計前の安値圏138.75レベルをサポートに、140.85レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、債務上限問題が合意に達し米国のデフォルトは予想通り避けられたことでひとつ悪材料は無くなりましたが、日本では当局による三者会談が行われ、米国ではFOMCを控えて複数のFRB関係者が現状維持を支持と、どちらかというとドルの上値を抑える大きな材料が出てきたと言えます。いっぽうで週後半は日米の株高、強い雇用統計とそれまでのドル売り材料を打ち消す材料も出て、下値も見たという値動きになりました。
まず日本の財務相、金融庁、日銀による三者会談ですが、すぐに介入に繋がるものではありませんが、140円の大台乗せで会談が実施されたことから、これ以上の円安進行は黄信号の領域にあるという見方は間違っていないでしょう。昨年9月の介入前にも8日に三者会談、15日にレートチェック、22日に介入というステップを踏んで行ましたので、今回の三者会談はある意味これ以上の円安には気を付けた方がいいよ、というシグナルを市場参加者に発したと考えた方が自然に思えます。先週のドル円の高値140.92レベルは短期的には強いレジスタンスになり得る水準だと思います。
そして6月14日のFOMCを前に利上げに対する見方は週替わりで変わっています。3週間前までは現状維持、2週間前は0.25%利上げ、先週は再び現状維持がコンセンサスとなっていますが、3週前の現状維持ではターミナルレートに到達したという見方が多かったのに対して、今回の現状維持は7月の利上げ含みという点に違いがあります。実際に先週のFRB関係者の発言も利上げ停止ではなく、観察期間を長めに取って一旦現状維持とした上で、7月にどうするか、それまでの経済指標等を見ながら判断するというスタンスに思えます。
そうなると7月FOMCまでの数字が重要ということになりますが、まだだいぶ時間がありますし、先週の雇用統計は良かったものの来月の数字がどうなるかは全くわかりません。しかも、それ以上に重要なCPIが2回発表されることとなると、しばらくは現状維持も利上げもどちらもあり得るという構えで行くしかありません。ただ6月FOMCでは強い雇用統計にも関わらず、利上げ織り込み度は下がったままですから、少なくとも6月FOMCでは現状維持という市場との対話がうまく行われたと見てよさそうです。
そうなってくると、もちろん米金利の動きは重要ですが、改めて強くなっている日米の株価がリスクオンの円安要因として効いてきます。当面は下がったとおころではドル買い、ただし先週の高値圏では警戒感も出てくるという地合いにあります。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
テクニカルなターゲットであった昨年高値と今年安値の半値戻し139.57を達成後、61.8%戻しの142.49を視野に入れようとしたところで三者会談というのはタイミングとしては出来過ぎている気もします。61.8%戻しと昨年高値から下げた後の11月戻り高値とが一致していることから、もしここを上抜けたら目立ったレジスタンスは大台150円くらいしか無いとい流れに変わります。
そうした狙われやすい水準の前に三者会談を行い、試しに行ったら次はレートチェックとなりそうですし、うまいタイミングです。今週も上値は先週高値圏がレジスタンスとなりますが、下値も139円割れでは押し目買いが出やすい流れになってきたと見られます。
今週は雇用統計前の安値圏138.75レベルをサポートに、先週高値のやや手前となる140.85レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
6月5日(月)
**:** NZ市場休場
10:45 中国5月MarkItサービス業PMI ☆
15:00 ドイツ4月貿易収支
16:00 トルコ5月CPI
16:50 フランス5月サービス業PMI
16:55 ドイツ5月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI
17:30 英国5月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏4月PPI
22:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
22:45 米国5月サービス業PMI
23:00 米国5月ISM非製造業指数 ☆
23:00 米国4月製造業新規受注
23:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
26:30 (クリーブランド連銀総裁講演)
6月6日(火)
08:01 英国5月小売売上高
13:30 豪中銀政策金利発表 ☆
15:00 ドイツ4月製造業新規受注
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏4月小売売上高
18:30 南ア1〜3月期GDP
6月7日(水)
08:25 豪中銀総裁講演 ☆
10:30 豪州1〜3月期GDP ☆
**:** 中国5月貿易収支
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
15:45 フランス4月貿易収支
16:50 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:10 パネッタECB理事講演 ☆
21:30 米国4月貿易収支
23:00 カナダ中銀政策金利発表 ☆
23:30 週間原油在庫統計
6月8日(木)
07:45 NZ1〜3月期製造業売上高
08:01 英国5月住宅価格
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
08:50 本邦4月貿易収支(国際収支)
10:30 豪州4月貿易収支
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
18:00 南ア1〜3月期経常収支
21:30 米国新規失業保険申請数 ☆
23:00 米国4月卸売売上高
6月9日(金)
10:30 中国5月CPI ☆・PPI
16:00 トルコ4月鉱工業生産
17:00 デギンドスECB副総裁講演
19:45 スペイン中銀総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月29日(月)
週明けの東京市場は週末に米国の債務上限問題の協議が合意に達したこと好感して株高・円安でスタートし140.92レベルの高値をつけました。しかし英国、米国ともに休場となることもあってその後はじりじりと水準を下げ、NY朝方には140.11レベルまで下げ、引けにかけてやや戻す動きとなりました。
5月30日(火)
ドル円は朝方こそ上値が重たかったもの後場に改めてドル買いが強まり140.93レベルと前日高値をわずかに超える水準となりました。その後、財務省、日銀、金融庁の三者会談を実施とのニュースが入り反落。会談では特定の水準は考えないことや急激な変動は問題があることに言及し、あらゆるオプションと介入も想定している内容となりました。NY市場では139.57レベルまで調整が入りやや戻して引けました。
5月31日(水)
ドル円は東京市場では139円台後半でしばらく動かずの状態でしたが、株価の下げに遅れて東証引け間際から円高へと動き139.32レベルへと下値を切り下げました。その後欧州市場では買い戻され再び139円台後半でのもみあいを継続後に予想よりも強い求人件数に反応し140.42レベルの高値をつけました。大台超えでは戻り売りを考える向きも多く、複数のFOMCメンバーから6月利上げ見送り支持の発言とともに139.23レベルへと反落し、安値圏での引けとなりました。
6月1日(木)
ドル円は終日米金利の動きに沿った動きとなりました。東京市場では米金利上昇によるドル買い戻し、海外市場に移ってからは米金利低下により改めてドル売りに転じました。NY市場朝方に強いADPに反応して一時的に買いも見られましたが、米金利低下とともに前日安値を下回り138.42レベルの安値をつけ、引けにかけてやや戻す流れとなりました。
6月2日(金)
ドル円は米国雇用統計を控えて様子見が続きました。雇用統計のNFPが予想18万よりもかなり強い33.9万人となったことを受け米金利が上昇、為替市場もドル高となり140円の大台乗せ後に若干押して引けました。
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