売り材料くすぶるが、リスクはドル高方向か
〇先週のドル円、レンジは狭いが週央以降は荒れ相場を辿りドルの高値圏135.70-75で越週
〇米経済指標に右往左往しつつも、足もとでは引き締め継続思惑優勢でドルの支援要因に
〇「米債務上限問題」とくすぶり続ける「米金融不安問題」が依然として潜在的ドルの売り材料
〇今週は、米4月小売売上高や5月フィラデルフィア連銀景況指数等の経済指標発表予定
〇ドル高円安方向、フィボナッチポイント136.10-15を超えると前回高値137.78もうっすら視界内
〇21日線近くの135円めぐる攻防に注目、下回ると133円台まで下落の危険性も
〇今週のドル/円予想レンジは、134.00-137.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は最終的にドル強含み。ただ、週間を通した値動きは約2円にとどまるなど、全体的な動意に乏しかった。
前週末は、英国で国王の戴冠式が行われたが、中国から副主席が出席したとして一部で話題に。ちなみに、ロシアなどは招待されなかったもよう。一方、9日の戦勝記念日までの戦果を目指し、ロシアがウクライナのバフムトに対し大規模攻撃を開始した。
そうした状況下、ドル/円は134.80-85円で寄り付いたのち、しばらくは揉み合い。週央以降に予定されている次の材料をにらみつつ135円±50銭といった値動きをたどっていた。しかし、そののち前述したレンジの下限を割り込むと週間安値の133円半ばまでドルは続落。下値機運が高まったと市場で警戒感が取り沙汰されたものの、安値示現後はドルが逆行高となり週間高値の135.76円まで急騰した。週末NYはそのままドルの高値圏、135.70-75円で取引を終え越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米国情勢」について。
大きく3つにわけられそうで、まずひとつ目は前週イエレン米財務長官が「6月1日にも行き詰まる」可能性を示唆し物議を醸した米債務上限問題について。9日にバイデン大統領と議会指導部による協議が実施されたものの、特段進展なし。それもありバイデン氏が、協議の行方次第では今月開かれるG7サミットを含む外交日程をキャンセルすることもありうると発言するなど、先行きの懸念がさらに広がっていた。今週改めて再会談が実施される予定だが、上記した期限切れとされる6月1日までに妥結することは出来るのだろうか。
ふたつ目は米金融政策であり、先週発表された米経済指標のうち消費者物価指数が期待を裏切る内容となり、その後のブルームバーグも「米金融当局に利上げ停止の余地を与える可能性がある」などと報道。ドルの売り材料となった。しかし、週末に発表された5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値のうちの「5-10年期待インフレ率」の上昇を市場が好感すると、逆に追加利上げ期待へと繋がるとドルの買い要因に。
最後3つ目は、米金融不安の再燃懸念について。米カリフォルニア州地銀のパックウエスト・バンコープが、今月5日時点の預金残高が前週比で1割減ったと明らかにしたことが嫌気され、同社の株価は11日の取引だけで20%程度も下落した。週末にかけては再び沈静化しているが、折に付け金融市場で思惑が台頭するなど、今週以降も同様のニュースなどには注意を払いたい。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円はレンジこそ決して大きくなかったが、なかなかの乱高下。とくに週央以降は結構な荒れ相場をたどっていた。最終的には135円の壁をしっかりと超え、前回高値の137.78円も薄っすらとだが再び視界内へと捉えられている。ドルの続伸を期待する向きが少なくないようだ。なお、その前回高値を起点とした下げ幅の半値戻し(135.65円)を超えており、次のターゲットは61.8%戻しの136.10-15円になる。
市場で喫緊の課題とされているものは、「米債務上限問題」と依然くすぶり続ける「米金融不安問題」。それらが潜在的なドルの売り材料として寄与している。しかし、5月2-3日に実施されたFOMC後も米金融情勢への関心は高く、発表される米経済指標に右往左往しつつも、足もとでは引き締め継続思惑が優勢でドルの支援要因となっている。売り材料を抱え予断を許さないものの、4月の米小売売上高などの指標が好数字となれば、ドルはさらに買い進められる可能性も否定できない。一方、それとは別に週末から開催される
G7サミットやそれと合わせた二国間首脳会議などにも一応要注意。
テクニカルに見た場合、先週のドル/円は移動平均の200日線も位置する137円レベルがなかなか強い抵抗で「しっかり」超えることが出来なかった。しかし、週末には135.76円まで値を上げ、そのまま高値引けとなっている。非常にダマシの多い相場ではあるものの、今回ばかりはさすがに「本物」の動きか。ドルの続伸を期待したい。しかし、早いタイミングで135円割れを記録した場合にはドル高トレンドを疑う必要があり、133円半ばに向けたドルの続落も。
そうしたなか今週は、4月の小売売上高や5月のフィラデルフィア連銀景況指数などの米経済指標の発表が相次ぐ。また中国経済指標の発表も多く、米地区連銀総裁による講演などの発言機会も週間を通して多い。要人発言も波乱要因として注意しておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、134.00-137.50円。ドル高・円安については、フィボナッチポイントにあたる136.10-15円が最初の抵抗で、超えれば137円乗せを目指す。仮に137円を抜ければ前回高値137.78円などが視界内に。
対してドル安・円高方向は、これまで抵抗となっており、近くに21日線も位置する135円をめぐる攻防に注目。下回ると134円台にももちろんサポートはあるが、133円台まで下落する危険性がありそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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