ドル円見通し3月24日以降の底上げ基調を維持、5月2日からの下落に対する半値戻しを超える(週報5月第三週)

ドル円は13日早朝には135.75円を付けて、5月10日午後高値を超えたことにより5月5日未明安値を起点とした上昇が二段上げ型に発展した。

ドル円見通し3月24日以降の底上げ基調を維持、5月2日からの下落に対する半値戻しを超える(週報5月第三週)

3月24日以降の底上げ基調を維持、5月2日からの下落に対する半値戻しを超える

〇ドル円、12日のミシガン大調査による5年先期待インフレ率の上昇等をきっかけに135円台後半へ急伸
〇13日早朝には135.75を付けて5/5未明にかけての下げ幅4.30円に対する半値戻しラインを超える
〇日米欧英の金融政策会合通過し、当面のドル売り材料消化、円安感が回復してきた印象
〇米10年債利回りは持ち合い、米銀の新たな経営危機報道、米債務上限問題等でNYダウは5営業日続落
〇136円台到達から続伸の場合5/2からの下げに対する3分の2戻し136.33から136.50台への上昇を想定
〇136.60を超える場合137.22や3/8日高値137.91と5/2高値137.76によるダブル天井ラインへの挑戦へ
〇135円割れから続落の場合は134円台中盤への下落を想定
〇新たな米銀破綻や米連邦政府のデフォルト不可避でドル安ぶり返しの場合には5/11夜安値133.74を試す

【概況】

ドル円は5月4日未明の米FOMCを通過して5月5日未明安値133.46円へ下落、4月28日の日銀金融政策現状維持からの急伸で直前安値133.36円から5月2日高値137.76円までの上昇をほぼ解消したが、4月26日夜安値133.01円割れを回避して買い戻しに入り、5月10日午後には135.48円へ戻し、5月5日未明にかけての下げ幅4.30円に対する半値戻し135.61円に迫った。
5月10日夜の米4月CPIと11日夜PPIが予想を下回る鈍化となり、ドル安がぶり返したために11日夜には133.74円まで反落した。しかしここでも5月5日未明安値割れには至らずに3月24日安値以降の底上げ基調を維持し、当面のドル売り材料消化として135円に迫り、12日夜のミシガン大消費者調査による5年先期待インフレ率の上昇等をきっかけに135円台後半へ急伸、13日早朝には135.75円を付けて半値戻しラインを超え、5月10日午後高値を超えたことにより5月5日未明安値を起点とした上昇が二段上げ型に発展した。

【日米欧英の金融政策会合を通過、当面のドル売り材料消化】

4月28日の日銀金融政策決定会合ではマイナス金利やYCC(長短金利操作)における長期金利ゼロ%誘導の許容上限0.50%等が据え置かれ、前総裁時代からの金融緩和政策に対する検証を今後1年から1年半かけて行うとしたため、当面は日銀の金融緩和政策が継続して大きな修正はないと受け止められたためにドル円は4月28日から5月2日へ上昇した。
5月4日未明の米FOMCでは0.25%利上げが決定されたが、声明文における「追加の金融引き締めが適切」との文言が削除されたことにより米国の利上げ打ち止めが意識されてドル全面安となりドル円は5月5日未明安値133.46円まで下落し、4月28日からの上昇をほぼ解消した。

5月5日の米雇用統計が予想以上の就業者増加で失業率が改善して平均時給の伸びも高止まりとなったことで、FOMC後にパウエルFRB議長が「利上げ停止を決定したわけではない」と述べたことが再認識されたためにドル円は反騰に転じて5月10日午後高値へと戻した。その後は10日夜の米4月CPIと11日夜の米4月PPIが共に鈍化傾向を示したことでドル安が再燃して失速したわけだが、6月FOMCでの利上げ見送りはほぼ確実としても7月のFOMCにおける再利上げの可能性はまだ残るとしてドル円は反騰に転じて10日午後高値も上抜く上昇となった。
ECBは5月4日夜に0.25%利上げを決定して追加利上げ姿勢も示したが大幅利上げを継続するようなタカ派姿勢とまでは言えず、5月11日の英中銀MPCにおいても0.25%利上げが決定されたものの全会一致ではなく、9名中2名の現状維持支持があったことや今後の積極的利上げ姿勢に欠ける状況だった。

2月後半からはECB等の追加利上げ継続期待と米国の利上げ終了期待を背景にドル安基調で推移してきたが、ユーロドルは4月26日高値で上昇が頭打ちとなり5月4日のECB利上げを通過して下落に転じ、英ポンドも5月10日高値で昨年9月底以降の最高値としたものの5月11日の英中銀利上げ後は下落に転じている。
日銀金融政策、米FOMC、ECB理事会、英中銀金融政策委員会がいずれも0.25%利上げを決定したものの今後についてはインフレの高止まりと信用不安や景気後退感を天秤にかけて判断をしてゆく方向性であり、しばらくは金融緩和政策の修正による円高圧力はかからないだろうとの見方が優勢となったことでドル円は4月26日安値から5月5日未明安値、そして5月11日夜安値を結ぶ下値支持線がほぼ1直線でやや切り上がり円安感が回復してきた印象だ。

【米10年債利回りは中勢の持ち合い、NYダウは5営業日続落で上値重い】

米10年債利回りは5月12日に前日比0.08%上昇の3.47%で終了、週間では5月4日の3.44%から若干の上昇となったが、3月2日の4.09%から4月6日の3.25%まで下げ、いったん4月19日に3.64%まで戻した後は3.30%前後を支持線としつつ右肩下がりの展開が続いており、中勢としては持ち合いの様相で方向感に欠ける。
2年債利回りは5月12日に前日比0.08%上昇の3.99%となり5月5日の3.92%からは若干上昇したが、も3月8日の5.08%から3月24日の3.56%まで下げた後は4%台序盤を抵抗として安値圏での持ち合いであり、4月19日の4.29%からは右肩下がりの展開となっている。

NYダウは5月12日に前日比8.89ドル安と小幅な下落だったが5月2日から4日まで4営業日続落し、5月5日に546.64ドル高と反騰したものの8日から12日までは5営業日続落で上値が重くなっている。米銀破綻関連でも新たな経営危機が報じられ、米連邦債務上限問題が暗礁に乗り上げて早ければ6月1日にも資金ショートが発生しかねないという一時的デフォルト懸念が強まっていること、FRBの利上げ停止感は根強いものの早期の利下げ期待は後退していること、中国の経済指標が軒並み軟調な数字で世界規模景気回復への期待感が削がれていること等が上値を重くしている。

【FRBの利上げサイクル終了感を探る】

今週はFRB高官や米地区連銀総裁らの発言が相次ぐ。5月15日はアトランタ連銀総裁やミネアポリス連銀総裁、リッチモンド連銀総裁らの発言、16日はクックFRB理事やバーFRB副議長(下院金融サービス委員会証言)、NY連銀総裁、ダラス連銀総裁らの発言、17日はシカゴ連銀総裁とアトランタ連銀総裁の公開討論、18日はジェファーソンFRB副議長やダラス連銀総裁講演とバーFRB副議長(上院銀行委員会証言)、19日はNY連銀総裁、ボウマンFRB理事、パウエルFRB議長とバーナンキ元FRB議長の討論会と続く。
インフレの高止まりに対して再利上げの可能性を担保しつつ、景気減速感と銀行破綻からの信用不安問題における火種がくすぶり続けている状況と銀行の貸し渋りによる実質的な金融引き締めの悪影響についてFRBの認識が問われる。

【ダブル天井破りへ挑戦できるか試される】

【ダブル天井破りへ挑戦できるか試される】

ドル円は昨年10月21日高値で151.94円を付けたところで歴史的な大上昇(円安)が一巡して今年1月16日安値127.22円まで24.73円の下げ幅となった。2021年1月6日安値102.56円から49.37円の上昇幅に対する凡そ半値を削ったわけだが、今年3月7日高値137.91円まで10.70円高の上昇では半値戻しには届いていない。
3月7日高値137.91円に対して5月2日高値137.76円で届かずに5月5日未明へと大幅下落したために1月16日安値からの戻しはダブル天井形成に終わる懸念が強まっていたところ、5月10日高値を超えて5月5日未明安値からの上昇が二段上げ型に発展したことにより、ダブル天井破りへ向かう可能性も浮上してきたのではないかと思われる。ただしそのためには136円台に乗せてから137円に迫る勢いを見せる必要があり、135円割れから続落してしまうと勢いが失せて再び底上げ基調にある下値支持線を試す流れへと進みかねない。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、135.00円を下値支持線、136.00円を上値抵抗線とする。
(2)136円手前では戻り売りも出やすいとみるが、136円台到達から続伸の場合は5月2日からの下げ幅に対する3分の2戻しラインの136.33円から136.50円台への上昇を想定する。ドル全面高が勢い付いて136.60円を超える場合は5月10日高値から11日夜安値への下げ幅1.74円に対する倍返しとなる137.22円を目指し、3月8日高値137.91円と5月2日高値137.76円によるダブル天井ラインへの挑戦へ進む可能性が出てくると考える。
(3)135円前後は押し目買いされやすいとみるが、135円割れから続落の場合は134円台中盤への下落を想定する。ただし、新たな米銀破綻や米連邦政府のデフォルトが不可避となりドル安がぶり返す場合は5月11日夜安値133.74円を試す下落を想定し、3月24日以降の底上げ基調が崩れる可能性に注意する。

【当面の主な予定】

5/15(月)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前月比 (3月 0.0%、予想 0.0%)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前年同月比 (3月 7.2%、予想 5.6%)
15:00 (独) 4月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (3月 0.2%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 1.5%、予想 -2.5%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 2.0%、予想 0.9%)
18:00 (欧) 欧州委員会、経済成長予測
21:10 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (4月 10.8、予想 -2.5)
21:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、金融市場関連会合挨拶
22:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
25:00 (英) ピル英中銀理事、講演
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

5/16(火)
06:00 (米) クックFRB理事、カリフォルニア大学でスピーチ
09:30 (豪) 5月 ウエストパック消費者信頼感指数 (4月 85.8)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 10.6%、予想 22.0%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 3.9%、予想 10.3%)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 4.1、予想 -5.5)
18:00 (欧) 5月 ZEW景況感 (4月 6.4)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 -1億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調前 (2月 46億ユーロ)

21:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -1.0%、予想 0.8%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 -0.8%、予想 0.5%)
21:55 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.4%、予想 0.0%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 79.8%、予想 79.7%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 45、予想 45)
23:00 (米) ラガルドECB総裁、講演
23:00 (米) バーFRB副議長、下院金融サービス委員会証言
25:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、公開討論
28:15 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、討論会司会

5/17(水)
休場 ノルウェー
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、グールズビー・シカゴ連銀総裁、公開討論
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 0.0%、予想 0.2%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値・年率換算 (10-12月 0.1%、予想 0.8%)
10:30 (豪) 1-3月期 賃金指数 前期比 (10-12月 0.8%、予想 0.9%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 0.8%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -0.7%)
13:30 (日) 3月 設備稼働率 前月比 (2月 3.9%)

18:00 (欧) 4月 HICP(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 7.0%、予想 7.0%)
18:00 (欧) 4月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 5.6%、予想 5.6%)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算 (3月 142.0万件、予想 140.0万件)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数 前月比 (3月 -0.8%、予想 -1.4%)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算 (3月 141.3万件、予想 143.0万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数 前月比 (3月 -8.8%、予想 0.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
26:00 (米) 財務省20年債入札

5/18(木)
休場 ノルウェー、スイス、インドネシア
07:45 (NZ) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (10-12月 0.9%)
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調前 (3月 -7545億円、予想 -6000億円)
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調済 (3月 -1兆2099億円、予想 -1兆786億円)
10:30 (豪) 4月 新規雇用者数 (3月 5.30万人、予想 2.50万人)
10:30 (豪) 4月 失業率 (3月 3.5%、予想 3.5%)
16:45 (英) ピル英中銀理事、講演

21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.4万件、予想 25.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 181.3万人、予想 181.5万人)
21:30 (米) 5月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (4月 -31.3、予想 -20.0)
22:05 (米) ジェファーソンFRB理事、講演
22:30 (米) バーFRB副議長、上院銀行委員会証言
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数・年率換算 (3月 444万件、予想 429万件)
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 前月比 (3月 -2.4%、予想 -3.5%)
23:00 (米) 4月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (3月 -1.2%、予想 -0.5%)
23:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札

5/19(金)
休場 トルコ
G7サミット 広島市、5/21まで
07:45 (NZ) 4月 貿易収支 (3月 -12.73億NZドル)
08:01 (英) 5月 GFK消費者信頼感 (4月 -30、予想 -27)
08:30 (日) 4月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.2%、予想 3.5%)
08:30 (日) 4月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (3月 3.1%、予想 3.4%)
08:30 (日) 4月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (3月 3.8%、予想 4.2%)
13:30 (日) 3月 第三次産業活動指数 前月比 (2月 0.7%、予想 0.3%)
15:00 (独) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -2.6%、予想 -0.5%)

21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:00 (米) ボウマンFRB理事、バンカーズコンベンション参加
22:55 (欧) シュナーベルECB理事、講演
24:00 (米) パウエルFRB議長、バーナンキ元FRB議長、討論会参加
28:00 (欧) ラガルドECB総裁、デコス・スペイン中銀総裁、ブラジル中銀主催会議参加

注:ポイント要約は編集部

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