『市場の関心は米国の金融政策・債務上限・金融システム不安の3つ』
〇ドル円、米CPI、PPIの鈍化で133.74まで急落後、期待インフレ上昇に135円台後半に急伸
〇ユーロドル、週末にかけ1.08台半ばまで急落、上値の重さを嫌気した見切り売りが主導か
〇ドル円主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも点灯、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大観測再燃し、ドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー138.00
今週のレビュー(5/8−5/12)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.82で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル買いの流れの継続(5/5に発表された米4月雇用統計の力強い結果→米FRBによる追加利上げ観測再燃→米長期金利上昇→米ドル買い)や、(2)本邦輸入企業の実需のドル買い(本邦ゴールデンウィーク明けの輸入企業のドル買い・円売り)、(3)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレは依然として高すぎる」「適切なら追加引き上げを実施する」「年内利下げの理由は見当たらない」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週央にかけて、一時135.49まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)米4月消費者物価指数(結果+4.9%、予想+5.0%、※前年比)の市場予想を下回る結果や、(5)米新規失業保険申請件数(結果26.4万件、予想24.5万件)の冴えない結果、(6)米4月生産者物価指数(結果+2.3%、予想+2.5%、※前年比)の伸び率鈍化、(7)米債務上限問題に絡む不確実性の高まり、(8)米地銀を巡る金融システム不安の再燃(米パックウェスト・バンコープの株価が急落→リスク回避の円買い再開)、(9)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週後半にかけて、週間安値133.74(5/4以来の安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(10)短期筋のショートカバーや、(11)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「インフレは低下したが依然として目標を上回っている」とのタカ派的な発言、(12)対欧州通貨や対オセアニア通貨でのドル買い圧力(リスク回避のドル買い圧力)、(13)米5月ミシガン大消費者信頼感指数速報値の内訳の期待インフレ率(1年先が市場予想4.4%に対して結果4.5%、5−10年先が市場予想2.9%に対して結果3.2%)の市場予想を上回る結果(米金利上昇に伴うドル買い再開)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値135.76まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5/13午前2時15分現在)では、135.67前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1033で寄り付いた後、早々に週間高値1.1055まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ドイツ3月鉱工業生産(結果▲3.4%、予想▲1.4%、※前年比)の冴えない結果や、(2)ユーロ圏5月投資家信頼感指数(結果▲13.1、予想▲7.5)の市場予想を下回る結果、(3)米地銀を巡る金融システム不安の高まり(市場心理悪化→リスク回避ムード再開)、(4)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「利上げは最終段階に入りつつあるだろう」とのハト派的な発言、(5)ポルトガル中銀センテノ総裁による「ECBの利上げサイクルはピークに達している」とのハト派的な発言、
(6)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBが利上げでカバーすべき距離は残りわずか」とのハト派的な発言、(7)スペイン中銀デコス総裁による「ECBは利上げサイクルの最終段階に近づいている」とのハト派的な発言、(8)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(9)米5月ミシガン大消費者信頼感指数速報値の内訳の期待インフレ率(1年先が市場予想4.4%に対して結果4.5%、5−10年先が市場予想2.9%に対して結果3.2%)の市場予想を上回る結果(米金利上昇に伴うドル買い再開)、(10)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売りが重石となり、週末にかけて、週間安値1.0848まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5/13午前2時15分現在)では、1.0853前後で推移しております。
来週の見通し(5/15−5/19)
<ドル円相場>
ドル円は3/24に記録した安値129.65をボトムに反発に転じると、5/2に一時137.78まで急伸しましたが、3/8に記録した年初来高値137.92トライに一歩届かず失敗すると、今週後半にかけて、一時133.74まで反落する動きとなりました。但し、週末にかけて再び135円台後半へと持ち直す動きを見せていることや、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表雲上下限、一目均衡表基準線、転換線、21日移動平均線、90日移動平均線、ボリンジャーミッドバンドなど)の上側で推移していること、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド(※)」が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(※4/26に記録した安値133.01を下回らない限り上昇トレンド継続)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利下げ観測の後退(今週発表された米CPI・米PPIは共に市場予想を下回ったものの、週末に発表された期待インフレ率が市場予想を上回ったことで、次回6月FOMCでの追加利上げ観測が再浮上)や、(2)日銀による金融緩和の継続観測(植田日銀総裁は当面の間、金融緩和政策を続ける公算大)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大に伴う円キャリートレード再開の思惑)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。米地銀の連鎖破綻懸念や、米債務上限問題など、不確実要素は燻っていますが、これらの材料はいずれも「リスク回避のドル買い」「リスク回避の円買い」を促すことから、ドル円相場にはニュートラルに作用すると考えられます(ドルと円が共に引っ張り合う状態)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米国側では米5月ニューヨーク連銀製造業景況指数(5/15)や、米4月小売売上高(5/16)、本邦側では第1四半期GDP速報値(5/17)や、全国4月消費者物価指数に注目が集まります。また、米当局発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、クックFRB理事、クリーブランド連銀メスター総裁、バーFRB副議長、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ダラス連銀ローガン総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、ジェファーソンFRB理事、ボウマンFRB理事、パウエルFRB議長など)も複数予定されております。米経済指標が市場予想を上回る場合や、米当局者よりタカ派的な発言が見られる場合、本邦のGDP速報値やCPIが市場予想を下回る場合には、円キャリートレード再開を通じて、ドル円が5/2に記録した直近高値137.78に向けて急伸するシナリオもあり得ることから、来週はドル円相場のアップサイドリスクに注意を要する時間帯が続きそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):134.00ー138.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/15に記録した安値1.0516をボトムに反発に転じると、4/26に一時1.1096(昨年3/31以来、約1年1カ月ぶり高値圏)まで急伸しましたが、心理的節目1.1100トライに失敗すると(4/26高値1.1096→5/3高値1.1092→5/4高値1.1092と計3回に亘って上値トライに失敗すると)、今週末にかけて、1.0848まで急落しました。
この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャーチ形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利下げ観測の後退(米CPI・米PPIは市場予想を下回ったものの、週末に発表された期待インフレ率が市場予想を上回ったことで、次回6月FOMCでの追加利上げ観測が再浮上)や、(2)ECBによる金融引き締め打ち止め観測の台頭(今週は複数のECB当局者より利上げサイクルが最終局面に入っていることを滲ませる発言あり)、(3)上記1、2を背景とした欧米金利差拡大観測、(4)世界的に広がる金融システム不安など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は欧州委員会経済見通し(5/15)や、ドイツ5月ZEW景況感指数(5/16)に加えて、ドイツ連銀ナーゲル総裁講演(5/15)や、アイルランド中銀マクフーフ総裁講演(5/16)、ラガルドECB総裁講演(5/16)、シュナーベルECB専務理事講演(5/19)などに注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0675−1.0975
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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