来週の為替相場見通し:『下落トレンドの継続を想定。来週は米当局者発言と本邦CPIに注目』(3/25朝)

ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90(昨年12/15以来、約3ヵ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて、2/3以来の安値となる129.65まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『下落トレンドの継続を想定。来週は米当局者発言と本邦CPIに注目』(3/25朝)

『下落トレンドの継続を想定。来週は米当局者発言と本邦CPIに注目』

〇今週のドル円、金融システム不安後退とそれに伴うリスクオン再開に週央にかけ133.01まで上昇
〇週末にかけてはFOMC後の米金利先高観後退、米主要株価指数の冴えない動き等に一時130円割れ
〇ユーロドル、米長期金利低下に1.0931まで上昇後ドイツ銀行の株価急落等に1.0760レベルに下落
〇ドル円、テクニカルの地合い悪化ファンダメンタルズも金融信用不安くすぶり金利差縮小もドル円の重石
〇危険避難通貨中、米ドル、スイスフランが金融不安の震源となり、消去法的に円が買われやすい地合いか
〇引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):128.25ー132.25、(EURUSD):1.0600−1.0950

今週のレビュー(3/20−3/24)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初132.49で寄り付いた後、(1)UBSグループによるクレディ・スイス救済買収合意報道や、(2)主要6中銀(FRB・ECB・BOJ・BOC・BOE・SNB)によるドル資金供給に関する支援策発表、(3)イエレン米財務長官による「他の中小金融機関で預金の大量流出が発生した場合は連邦政府が再び介入する可能性がある」との米銀行協会会合でのポジティブ発言、(4)上記1、2、3を背景とした世界的な金融システム不安後退とそれに伴うリスクオン再開(市場心理改善→欧米株急反発)、(5)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(6)短期筋のショートカバーが支援材料となり、週央にかけて、週間高値133.01まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)注目された米FOMCにて25bpの利上げが決定されつつも、声明文から複数回の利上げを示唆する「継続的な利上げ(ongoing increases)」との文言が削除されたことや、(8)ドットチャートで2023年末の中央値が5.1%で据え置かれたこと、(9)パウエルFRB議長による「利上げ休止も検討した」とのハト派的な発言、

(10)上記7、8、9を背景とした米長期金利の急低下(利上げサイクル終了が近いとの見方が浮上→米2年債利回りは4.25%から3.56%へ急低下、米10年債利回りは3.64%から3.29%へ急低下)、(11)イエレン米財務長官による「預金保険の適用範囲について大幅な拡大は検討していない」との上記3の発言に対する火消しコメント、(12)米主要株価指数の冴えない動き(リスクオフ再開)、(13)米2月新築住宅販売件数の市場予想を下回る結果、(14)短期筋のロスカット(心理的節目130.00割れに伴う仕掛け的なドル売り・円買い)が重石となり、週末にかけて、週間安値129.65まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/25午前3時00分時点)では、130.70前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0697で寄り付いた後、早々に週間安値1.0631まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)UBSによるクレディ・スイス救済買収合意報道や、(2)主要6中銀によるドル資金供給に関する支援策発表、(3)上記1、2を背景とした世界的な金融システム不安の後退、(4)欧州株の堅調推移、(5)ドイツ2月生産者物価指数の市場予想を上回る結果、(6)ラトビア中銀カザークス総裁による「基本シナリオが継続するなら利上げは完了していない」とのタカ派的な発言、(7)ラガルドECB総裁による「ユーロ圏の銀行部門は底堅く、十分な資本および流動性を有している」との楽観発言、(8)スペイン中銀デコス総裁による「ECBは金融市場を安定させる準備が整っている」「ECBは金融システムに流動性を提供する様々な方法を有している」との楽観発言、(9)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「インフレとの戦いはまだ終わっていない」「予想通りインフレが昂進すれば更なる利上げが必要」とのタカ派的な発言、

(10)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(11)注目された米FOMCでのハト派的な結果(声明文の中から「継続的な利上げ」を示唆する文言が削除された他、パウエルFRB議長からも「利上げ休止も検討した」とのハト派的な発言あり)、(12)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0931まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(13)欧州株の全面安(金融システム不安が再燃するとの警戒感→ドイツ銀行の株価が急落)や、(14)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(15)短期筋のロスカット、(16)フランス・ドイツ・ユーロ圏の3月製造業PMI速報値の市場予想を下回る結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間3/25午前2時30分時点)では、1.0760前後まで値を崩す展開となっております。尚、今週発表されたドイツ3月ZEW景況感指数(結果+13.0、予想+15.0)は市場予想を下回る冴えない結果となりました。

来週の見通し(3/27−3/31)

<ドル円相場>
ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90(昨年12/15以来、約3ヵ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて、2/3以来の安値となる129.65まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要サポートポイントを軒並み下抜けした他(市場参加者に意識されていた心理的節目130.00も下方ブレイク)、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっております。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)世界的な金融システム不安の継続(UBSによるクレディ・スイス救済買収や主要中銀によるドル資金供給を経て足元で信用不安が一時的に後退しているが、本質的な解決には至っておらず、一巡後のリスクオフ再開に要警戒。事実、週末にかけては信用不安の飛び火が意識されてドイツ銀行株やソシエテ・ジェネラル株、バークレイズ株等が急落)や、(2)米FRBによる金融引き締め休止観測(ハト派な米FOMCを受けて米長期金利が急低下→CMEが提供するFedWathツールによると、次回5月FOMCでの据え置きが90%近く織り込まれている状況)、

(3)日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレード解消懸念など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。特に上記1については、一般的にリスク回避局面で買われる通貨として「日本円」「米ドル」「スイスフラン」が挙げられますが、今回は金融システム不安の震源地が「米国」と「スイス」であるため、消去法的に「日本円」が選好されやすい地合いとなっている点に留意が必要でしょう。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米国側では、ブラックアウト期間明けの米当局者発言(ジェファーソンFRB理事、バーFRB副議長、ボストン連銀コリンズ総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ウォラーFRB理事、クックFRB理事など)、日本側では、3/31に予定されている東京都区部のCPIに注目が集まります。

特に後者については、コアコア(エネルギーと生鮮食品を除いた数字)が一段と上昇すれば、植田日銀体制下の初陣となる4月BOJでの政策修正観測が高まる恐れもあるため、円買いでの反応に注意が必要でしょう(状況次第では1/16に記録した年初来安値127.22を割り込む可能性もあり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):128.25ー132.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、3/15に一時1.0516(1/6以来の安値圏)まで下げ幅を広げましたが、今週は一転して買い戻しが優勢となり、週後半にかけて1.0931(2/3以来の高値圏)まで反発する展開となりました。日足・ローソク足が主要テクニカルポイントを上抜けしたことや、ダウ理論の上昇トレンドが継続していること(1/6安値1.0483が死守されたことで上昇から下落へのトレンド転換に失敗)等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)UBSグループによるクレディ・スイス救済買収(欧州の金融システム不安がひとまず後退)や、(2)ECB当局者による相次ぐタカ派発言(金融引き締めスタンス継続を示唆)、(3)米FRBによる金融引き締め休止の思惑(米FOMCで利上げ幅縮小が決定された他、声明文やドットチャートで利上げサイクルの終了が近いことを示唆)、

(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違いなど、ユーロドル相場のアップサイドリスクを連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。一方、メインシナリオに対するリスクシナリオ(ユーロドル相場が予想に反して下落するシナリオ)としては、クレディ・スイス「AT1債」の全損扱いに絡む問題が尾を引くケース(大規模な訴訟問題に発展するケース)や、クレディ・スイスショックが他の欧州金融機関に飛び火するケース(3/24はドイツ銀行の株価が急落)、欧州経済のピークアウト論が台頭するケース、ECBによる利上げ休止観測が高まるケース等が想定されます。来週はドイツ3月IFO景況指数や、ユーロ圏3月HICP速報値が予定されているため、上記で示した3つ目と4つ目の要因を見極める動きとなりそうです。

仮にこれらの経済指標が市場予想を下回る結果となれば、今週発表されたドイツ3月ZEW景況感指数や、欧州各国の3月製造業PMI速報値の下振れも相俟って、欧州経済のピークアウト論が急浮上し、それに伴って「ECBによる金融引き締め休止観測→欧州債利回り低下」の経路でユーロドルに強い売り圧力が加わる恐れもあるため、念のため、ダウンサイドリスクにも注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0600−1.0950

注:ポイント要約は編集部

『下落トレンドの継続を想定。来週は米当局者発言と本邦CPIに注目』

ドル円日足

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