ドル円見通し 信用不安の払拭できず円高進行、年初来の上昇幅大半を解消(週報3月第四週)

1月16日安値を割り込む場合、昨年10月21日高値を頭、昨年7月14日高値を左肩、今年3月8日高値を右肩とする三尊天井の形成となることも考えられる。

ドル円見通し 信用不安の払拭できず円高進行、年初来の上昇幅大半を解消(週報3月第四週)

ドル円見通し 信用不安の払拭できず円高進行、年初来の上昇幅大半を解消

〇ドル円、週末にかけドイツ銀株が一時急落、信用不安継続で130円を割り込み129.63まで安値切り下げ
〇25日早朝にかけ130円台前半を回復するも、ドル円は戻り高値を切り下げつつ一段安を繰り返している
〇FRBの利上げ休止見込みと信用不安からの米国債買いに、米長期債利回りは低下傾向
〇1/16安値127.21を割り込む場合、三尊天井の形成も考えられ、底割れ回避で踏みとどまれるか試される
〇131円下回るうちは一段安警戒、129.63割れからは129.00円、128.50円等下値を順次試す下落を想定
〇131円超えからは132円を試す上昇を想定するが、132円手前は戻り売りにつかまりやすいか

【概況】

ドル円は1月16日安値127.21円から3月8日高値137.91円まで戻したが、3月10日の米シルバーゲート銀の自主精算やシリコンバレー銀の破綻、米中堅ファーストリパブリック銀株の暴落、3月13日朝のNY州の地銀シグネチャー銀の破綻報道により3月13日夜安値132.27円へ下落した。
3月15日夕高値135.09円まで戻したもののクレディ・スイス株暴落による欧州への飛び火懸念で売られ、3月17日には米シリコンバレー銀行の親会社であるSVBファイナンシャル・グループが連邦破産法11条(民事再生)の適用を申請したことで破綻の連鎖不安が拡大したため、3月20日安値で130.55円へ一段安した。

スイス中銀の資金供給とUBSのクレディ・スイス買収による救済見通しや日米欧等主要6中銀によるドル資金供給強化を受けて3月22日夜には132.99円まで持ち直していたが、3月23日未明のFOMCが0.25%利上げを決定したもののあと1回で利上げを停止するとしたことで23日昼には130.42円へ安値を更新した。
3月24日には米司法省がロシア制裁に絡んでクレディ・スイスとUBSを調査との報道でドイツ銀株等が一時急落するなど信用不安に絡むネガティブ材料が続いたことで130円を割り込んで129.63円まで安値を切り下げた。25日早朝にかけては130円台前半を回復して週を終えたが、3月10日の米銀破綻をきっかけとした信用不安が払拭できない中でドル円は戻り高値を切り下げつつ一段安を繰り返している。

【暫く信用不安を払拭できない状況での円高続く】

3月16日に欧州中銀(ECB)はクレディ・スイス株暴落による信用不安は金融危機には発展せず、それよりもインフレ抑制が重要として0.50%利上げを決定、次回会合でも利上げ継続姿勢を示して米銀破綻からの欧州金融機関への飛び火に対する市場不安の払拭に努めた。米FRBも米銀破綻前には0.50%利上げの可能性があったところから0.25%利上げに留めたものの金融危機には陥らないとし、イエレン米財務長官が預金者保護姿勢を強調したことや複数の米大手金融機関がファーストリパブリック銀への預金提供等による救済姿勢を示して市場を落ち着かせようとした。しかし3月24日にドイツ銀株が急落し、欧米の大手金融機関株も月初からは大幅安の水準にある。

米シリコンバレー銀行の経営破綻においてはツイッター等SNSによる情報拡散が預金の取り付け騒ぎを加速させたとされるが、現時点で健全な資金力を保持していても風評の連鎖で市場心理が悪化することで集中的に売られ、金融株全般へと連鎖してゆくのが金融危機における市場行動の特徴であり、ひとたび疑心暗鬼に陥るとそこから抜け出すのは容易ではない。セントルイス連銀のブレード総裁は3月24日に米国の銀行部門は非常に良い状況で確りしていると金融システムは脆弱ではないと強調したが、シリコンバレー銀の破綻については「予想外だった」と吐露している。

【米長期債利回りは低下傾向で日米金利差では円高圧力続く】

米長期債利回りの低下傾向が続いている。FRBが先のFOMCで0.25%利上げとあと1回で利上げ停止する見通しを示したことに加え、米銀破綻や欧州銀への飛び火不安が解消できずにいるために安全資産としての米国債買いが利回り低下を招いている。
長期金利指標の10年債利回りの3月24日は0.04%低下の3.37%で終了したが、一時は3.29%まで低下して3月2日の4.09%以降の最低としたが昨年10月21日に付けた2020年以降の最高値4.34%以降の最安値も更新している。
30年債利回りは0.04%低下の3.64%で終わったが、3月13日に3.53%まで低下した後は下げ渋り程度の動きとなっている。

利上げに敏感な2年債利回りは0.05%低下の3.77%で終了したが、一時は3.56%まで低下して3月8日に付けた2020年以降の最高値5.08%以降の最安値としており、終値ベースでは3営業日連続の低下となった。
3月24日のNYダウは前日比132.28ドル高と上昇、23日の75.14ドルからの続伸となったが、一時は300ドル安まで下げる乱調な展開で3月22日の前日比530.49ドル安を解消できずにいる。ナスダック総合指数は36.56ポイント高と上昇して23日の117.44ポイント高からの続伸となり、米長期債利回り低下がプラスに影響しているようだが、3月22日に12013.99ポイントを付けた後は上値が抑えられている。

【昨年10月21日天井からの二段下げへと進むか試される】

ドル円は昨年10月21日高値151.94円から今年1月16日安値127.21円まで24.73円の大幅下落となったが、その後の反騰で3月8日高値137.91円まで10.70円の上昇となった。しかし3月24日安値で129.63円を付けてこの間の下げ幅は8.28円と拡大しており1月16日からの上昇幅の大半を解消している。
日足の一目均衡表では上昇中の下値支持線となる26日基準線を割り込み、遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し始めている。昨年10月21日天井からの下落時においても26日基準線を割り込み、遅行スパンが悪化したところから急落に転じており、その後は26日基準線が短期的な戻りの抵抗となって一段安を繰り返したため、今回も同様の展開で続落となり1月16日安値を割り込んでゆく可能性が警戒される。

ただし、1月16日安値割れを回避するうちは26日基準線を上抜き返すことで上昇再開へと進む目も残る。昨年は5月24日安値から7月14日高値まで13.04円の上昇後に基準線割れから遅行スパンの悪化と先行スパンからの若干の転落を見てこの間の下げ幅は9.00円となったが、その後の反騰で26日基準線を上抜き返して上昇再開に入り、遅行スパンの再好転、先行スパン突破へと向かい10月21日天井形成へと進んでいる。現状から同様の展開を見せれば1月16日安値からの上昇は二段上げへと発展して140円台を目指す可能性も出てくると思われるが、そのためには金融市場の信用不安問題の解消と米長期債利回りの再上昇が必要であり、なかなか難しいのではないかと思われる。

【三尊の右肩形成の可能性と当面のポイント】

【三尊の右肩形成の可能性と当面のポイント】

3月24日は130円割れをひとまず買い戻されたが、再び130円割れで安値更新を続ける場合には今年1月16日安値試しとなり、底割れからは二段目の下げとして3月8日への戻り幅の倍返しとなる116.51円へと下値目途が切り下がってゆくことが考えられる。信用不安が現状よりも悪化するならその可能性は高まると思われる。
1月16日安値を割り込む場合、昨年10月21日高値を頭、昨年7月14日高値を左肩、今年3月8日高値を右肩とする三尊天井の形成となることも考えられる。ドル円としては底割れ回避で踏みとどまれるか、長期的な下落の第二期に入ってしまうのか試されるところだ。
3月8日高値からの下落基調の中にあって、リバウンドは3月13日夜安値132.27円から15日夜高値135.09円まで2.82円の戻り幅、3月20日夕安値130.55円から22日夜高値132.99円までは2.44円の戻り幅であり、いずれも凡そ2日間で3円に満たない戻りに終わって一段安している。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、129.63円を下値支持線、131.00円を上値抵抗線とみる。
(2)131円を下回るうちは一段安警戒とし、129.63円割れからは129.00円、128.50円、128.00円を順次試して行く下落を想定する。
(3)131円超えからはいったん戻しに入るとみて132.00円を試す上昇を想定する。132円手前は3月10日以降の戻り高値を結ぶ上値抵抗線が来ているので戻り売りにつかまりやすいとみるが、132円超えから続伸の場合は132.50円前後へ上値目途を引き上げる。ただし、直前高値から1円を超える反落からは下げ再開を警戒し、1.50円を超える下落からは下げ再開とみて128円を目指す下落期入りと考える。

【当面の主な予定】

3/27(月)
08:50 (日) 2月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.7%)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・改定値 (速報 96.5)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・改定値 (速報 96.1)
17:00 (独) 3月 IFO企業景況指数 (2月 91.1、予想 91.0)
24:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
26:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
26:00 (米) 財務省2年債入札

3/28(火)
米上院銀行委員会、最近の銀行破綻と連邦当局の対応巡る公聴会
06:00 (米) ジェファーソンFRB理事、金融政策について講演
09:30 (豪) 2月 小売売上高 前月比 (1月 1.9%、予想 0.1%)
17:45 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、シリコンバレー銀行破綻関連で証言
21:30 (米) 2月 卸売在庫 前月比 (1月 -0.4%)
22:00 (米) 1月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (12月 -0.1%)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (12月 4.7%、予想 2.4%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 (2月 -16、予想 -8)
23:00 (米) 3月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (2月 102.9、予想 101.5)
26:00 (米) 財務省5年債入札

3/29(水)
米下院金融委員会、最近の銀行破綻への対応巡りFRBとFDIC幹部が議会証言
09:30 (豪) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 7.4%、予想 7.2%)
15:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -30.5、予想 -29.5)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 8.1%、予想 -2.3%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前年同月比 (1月 -22.4%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省7年債入札

3/30(木)
06:45 (NZ) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 -1.5%)
09:00 (NZ) 3月 ANZ企業信頼感 (2月 -43.3)
18:00 (欧) 3月 消費者信頼感・確定値 (速報 -19.2)
18:00 (欧) 3月 経済信頼感 (2月 99.7、予想 99.8)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)速報値 前月比 (2月 0.8%、予想 0.6%)
21:00 (独) 3月 消費者物価指数(CPI)速報値 前年同月比 (2月 8.7%、予想 7.3%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 1.4%、予想 1.5%)
21:30 (米) 10-12月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 4.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.1万件、予想 19.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.4万人)
25:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
25:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演

3/31(金)
08:30 (日) 3月 東京区部消費者物価指数(CPI)・生鮮食品除く 前年同月比 (2月 3.3%、予想 3.1%)
08:30 (日) 2月 失業率 (1月 2.4%、予想 2.4%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産・速報値 前月比 (1月 -5.3%、予想 2.7%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (1月 -3.1%、予想 -2.1%)
08:50 (日) 2月 小売業販売額 前年同月比 (1月 6.3%、予想 5.9%)
10:30 (中) 3月 国家統計局製造業PMI (2月 52.6、予想 51.8)
14:00 (日) 2月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (1月 6.6%、予想 -0.5%)

15:00 (英) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 10-12月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (英) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -194億ポンド、予想 -175億ポンド)
15:00 (英) 3月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (2月 -0.5%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 -1.2%、予想 -1.0%)
15:00 (独) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.5%)
15:00 (独) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -4.6%、予想 -5.1%)
16:55 (独) 3月 失業率 (2月 5.5%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 2月 失業率 (1月 6.7%、予想 6.6%)
18:00 (欧) 3月 消費者物価指数(HICP)・速報値 前年同月比 (2月 8.5%、予想 7.1%)
18:00 (欧) 3月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (2月 5.6%、予想 5.7%)

21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 個人消費支出(PCE) 前月比 (1月 1.8%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 PCEデフレーター 前年同月比 (1月 5.4%、予想 5.1%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前月比 (1月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (1月 4.7%、予想 4.7%)
22:45 (米) 3月 シカゴ購買部協会景況指数 (2月 43.6、予想 43.6)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 63.4、予想 63.4)
24:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、発言
23:00 (米) バーFRB副議長、下院金融サービス委員会で議会証言
28:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
29:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
30:45 (米) クックFRB理事、講演

注:ポイント要約は編集部

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