ドル円見通し 米雇用統計通過後に急落、26日移動平均線を試す攻防(週報3月第二週)

当面のポイントとなるのは3月14日の米2月CPI上昇率の内容だ。

ドル円見通し 米雇用統計通過後に急落、26日移動平均線を試す攻防(週報3月第二週)

ドル円見通し 米雇用統計通過後に急落、26日移動平均線を試す攻防

〇先週末のドル円、失業率悪化、平均時給の伸びが予想下回り、雇用統計発表後は135円割れへ
〇米10年債利回りは前日比0.21%低下の3.70%、NYダウは前日比345.22ドル安、SVBの経営破綻が重石
〇今週3/14発表の米2月CPI要注視、結果次第でドル円の上下動のトリガーとなるか
〇135.30-135.70は戻り売りにつかまりやすいが、CPI後上昇勢い付く場合136円超えから137円目指す
〇134.10割れからは3/8高値で年初からの上昇が一巡しての下落期入りとなった可能性高まる

【概況】

ドル円は3月7日深夜と8日深夜におけるパウエルFRB議長上下院議会証言が予想以上にタカ派姿勢で大幅利上げの可能性にも言及したことによるドル買いで3月8日高値137.91円へ上昇、年初来高値を更新したが、イベント通過と3月10日昼の日銀金融政策決定会合及び夜の米2月雇用統計を控えたポジション調整で売り先行となり、3月10日午前には135.80円まで下げていた。
黒田総裁体制で最後となる日銀金融政策決定会合は政策現状維持とされたが、一部で黒田総裁退任前に政策修正の追加があるのではないかとの見方もあった為、現状維持の安心感から買い戻されて10日夜には136.99円まで持ち直していた。

3月10日夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が予想を大幅に超える堅調さを示す一方で、予想外に失業率が悪化し、インフレ指標である平均時給の伸びが予想を下回るなどまちまちの内容となったが、FRB議長証言でのタカ派姿勢に対するやや過剰な懸念はひとまず落ち着くと受け止められて発表後はドル安反応へ向かった。シリコンバレー銀行の破綻報道が先行き不安を煽ったことでNYダウが大幅下落し、株売り債券買いの裁定が働いたことも重なり米長期債利回りが大幅低下、議長証言からの急伸を一挙に解消したこともドル安要因となった。

【米2月雇用統計はまちまち、大幅利上げ判断は3月14日の米2月CPI内容次第に】

米労働省が発表した2月雇用統計では、非農業部門就業者数は前月比31.1万人増となり、市場予想の22.5万人増を大幅に上回ったが、1月の50.4万人増(当初の51.7万人増からは下方修正)程ではなかった。感染拡大の影響が落ち着いて持ち直しに入っている娯楽・接客で10.5万人増と増えたが、情報産業は2.5万人減少した。
2月の失業率は3.6%となり、1月の3.4%から予想外に悪化したが、2022年11月以来の高さとなった。
インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比0.2%で1月の0.3%から鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は4.6%、1月の4.4%から伸びが加速したものの市場予想の4.7%を下回った。
昨年12月と今年1月の非農業部門就業者数は合計で当初発表より3.4万人下方修正された。
米雇用統計の発表を受けて市場では3月21-22日のFOMCにおける利上げ幅については、FRB議長発言により0.50%の可能性が5割を超えていたところから4割に低下、中心予想は0.25%利上げ見通しに落ち着いている。

【米2年債利回りは急低下続き、NYダウは4日続落】

米長期債利回りは米雇用統計とNYダウ大幅続落により大幅低下した。長期金利指標の米10年債利回りは前日比0.21%低下の3.70%で3月9日の0.09%低下から大幅続落となった。30年債利回りは0.14%低下の3.71%で3月9日の0.05%低下から続落した。利上げに敏感な2年債利回りは3月7日に前日比0.12%上昇で5.01%をつけ、8日には0.07%上昇で5.08%を付けて2007年以来の高水準に達したが、3月9日は急伸に対する修正に加えて株売り債券買いからの圧力により0.21%の大幅低下で4.87%まで下げ、3月10日はさらに0.28%低下の4.59%へと急降下した。

一方でNYダウは前日比345.22ドル安と下落し、500ドルを超える下落を2度挟んで3月7日から4営業日続落となった。ナスダック総合指数も199.46ポイント安で前日の237.64ポイント安からの続落となった。
地方銀行SVBファイナンシャル・グループ傘下でIT企業を主要顧客とするシリコンバレー銀行の経営破綻が株売り材料とされており、9日にもSVB系列の仮想通貨関連業者を顧客とするシルバーゲート銀行が自主廃業を決定したことで関連株の大幅下落が発生しており、金融市場全般への不安感を募らせるものとして株売り・債券買い(利回り低下)反応が見られる。

【上昇38日間からの反落で26日移動平均を試す】

ドル円の1月16日安値127.21円からの上昇は3月8日高値137.91円まで数えで38営業日、上昇幅は10.70円となったが、3月9日と10日の反落により10日安値で134.10円をつけて26日移動平均(現在134.39円)を一時割り込んだ。
26日移動平均は上昇トレンドの下値支持線として機能することが多く、昨年8月2日安値からの上昇時には今回と同じく上昇38日目の9月22日に日銀による大規模市場介入が発生して直前高値145.89円から140.34円まで5.55円の下落幅となり26日移動平均(当時140.73円)を一時割り込んだが、翌日からの反騰で昨年10月21日天井へと一段高している。しかし昨年10月21日天井後の下落で10月27日に26日移動平均を割り込んでからの持ち直しは続かずに11月10日の米CPIが予想以上の下ブレとなる「逆CPIショック」によるドル安で一段安へ進んでいる。

昨年5月24日安値からも38日間の上昇で7月14日高値に到達した後では、7月22日に26日移動平均を割り込んでから揉み合いを挟んで8月2日安値へと一段安したが、この間の下げ幅は9.00円で2021年1月以降の大上昇途中の調整安としては最大級の下落だった。

今回も26日移動平均到達まで下げたところを押し目形成として3月8月からの下げ幅に対する半値戻し136.00円を超えれば上昇再開の可能性が浮上し、137円台へ乗せれば3月10日の日足大陰線(高値136.99円)を解消して一段高へ進む可能性が高まると見るが、26日移動平均に絡んだ揉み合い程度にとどまるか、10日の日足大陰線を解消できない程度の戻りにとどまる場合には次に26日移動平均を割り込むところから一段安値へ進むことが懸念される。またさほど戻せずに3月13日以降を続落してゆく場合は1月16日からの上昇一巡による下落再開入りとして52日移動平均132.39円、心理的節目の130円、1月16日安値127.21円を順次試してゆく流れへ進みやすくなると考える。

【当面のポイント、米2月CPIによる正逆ショック発生の可能性】

【当面のポイント、米2月CPIによる正逆ショック発生の可能性】

当面のポイントとなるのは3月14日の米2月CPI上昇率の内容だ。3月7日と8日のパウエルFRB議長による上下院議会証言で「大幅利上げの可能性」が示唆されたことでドル全面高となり、イベント通過で落ち着いたところで3月10日の米2月雇用統計が強弱まちまちだったことで議長証言をきっかけとしたドル高反応が過剰だったとして巻き戻しのドル安反応となったわけだが、まだ今後のインフレ指標次第では3月FOMCでの大幅利上げや今後の利上げ回数の増加、利上げピーク水準の切り上がり、利上げ状態継続期間の長期化という問題が再浮上しかねない。

昨年11月10日と今年1月12日は予想以上にCPIの伸びが低下したことを「逆CPIショック」としてドル安円高が勢い付いた。逆に2月14日の1月米CPIは予想外の上ブレとなったことでドル円の上昇を勢い付かせ、2月16日の2月米PPI、2月24日の2月米PCEデフレーターの上ブレが続いたことで3月8日への上昇を勢い付かせている。
米2月CPI上昇率についての市場予想は、全体の前月比が0.4%で1月の0.5%から若干鈍化、前年同月比は6.0%で1月の6.4%から大きく鈍化、コア指数の前月比は0.4%で1月と変わらず、前年同月比は5.5%で1月の5.6%から若干鈍化と見込まれている。予想以上の上ブレとなれば「CPIショック」でドル円は一段高を試す上昇へ進み、予想を下回る鈍化なら「逆CPI」ショック型でドル円を一段安へ向かわせるトリガーとなるのではないかと思われる。またその後に続く米PPIや小売売上高等がドル高を助長する内容となれば2月14日からの上昇時と同様にドル高を継続しやすくなり3月21、22日のFOMCまでドル高基調が続くことも考えられ、逆に2月CPIからドル安の場合もFOMCまでその傾向を続けやすくなると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月10日深夜安値134.10円を下値支持線、136円を上値抵抗線とする。
(2)135.30円から135.70円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみるが、米CPI等で上昇が勢い付く場合は136円超えから137円を目指す上昇を想定する。米CPIを上昇反応の後も米経済指標が強めならそのまま高値試しを続けてゆきやすいと思われる。
(3)134.10円割れからは3月8日高値で年初からの上昇が一巡しての下落期入りとなった可能性が高まると注意し、米CPI等から続落する場合は133円、132円を順次試して行く下落を想定する。

【当面の主な予定】

3/13(月)
北米夏時間入り
米英豪首脳会談、ユーロ圏財務相会合、米韓年次軍事演習(3/23まで)、中国全人代閉幕
08:50 (日) 1-3月期 大企業全産業業況判断指数(BSI) (10-12月 0.7)
08:50 (日) 1-3月期 大企業製造業業況判断指数(BSI) (10-12月 -3.6)

3/14(火)
OPEC月報
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 78.5)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 18)
16:00 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 3.7%、予想 3.8%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (1月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 6.4%、予想 6.0%)
21:30 (米) 2月 CPIコア指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 CPIコア指数 前年同月比 (1月 5.6%、予想 5.5%)

3/15(水)
06:45 (NZ) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -102.05億NZドル、予想 -76.75億NZドル)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(1月17-18日開催分)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -1.8%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 1.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -1.7%、予想 0.3%)

21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 -5.8、予想 -8.0)
21:30 (米) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.0%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 2.3%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (1月 0.7%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 6.0%、予想 5.4%)
21:30 (米) 2月 PPIコア指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 PPIコア指数 前年同月比 (1月 5.4%、予想 5.2%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.3%、予想 0.0%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 42、予想 41)
23:30 EIA週間石油在庫統計

3/16(木)
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 2.0%、予想 -0.2%)
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 6.4%、予想 3.3%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 1.6%、予想 1.5%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前年同月比 (12月 -6.6%、予想 -3.5%)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調前 (1月 -3兆4966億円、予想 -1兆1414億円)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調済 (1月 -1兆8213億円、予想 -1兆4592億円)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 -1.15万人、予想 5.00万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 3.7%、予想 3.6%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -4.6%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.3%)
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -1.1%)

21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 -0.2%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算 (1月 130.9万件、予想 131.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -4.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算 (1月 133.9万件、予想 135.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 0.1%、予想 0.8%)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 -24.3、予想 -14.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 171.8万人)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 3.00%、予想 3.50%)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、記者会見

3/17(金)
OECD経済見通し
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP)・改定値 前年同月比 (速報 8.5%、予想 8.5%)
19:00 (欧) 2月 HICPコア指数・改定値 前年同月比 (速報 5.6%、予想 5.6%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.0%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.3%、予想 78.5%)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (2月 67.0、予想 67.0)


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る