来週の為替相場見通し:『ドル円相場は乱高下。来週は米CPIとECB理事会がメインイベント』(3/11朝)

ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90(昨年12/15以来、約3ヵ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて、134.13まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円相場は乱高下。来週は米CPIとECB理事会がメインイベント』(3/11朝)

『ドル円相場は乱高下。来週は米CPIとECB理事会がメインイベント』

〇ドル円、週前半パウエル議長のタカ派の議会証言等に週央にかけ、年初来高値137.90まで上昇
〇その後議長の火消し的発言、米雇用統計での失業率の上昇と平均時給の低下に週末一時134.13まで下落
〇週末米シリコンバレーバンク(SVB)の経営難に金融市場にリスク回避ムード広がる
〇ユーロドル、雇用統計発表後、週間高値1.0701まで反発
〇ドル円、テクニカルの地合い未だ崩れず、ファンダメンタルズもドル円相場の上昇を連想させる材料揃う
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):133.75ー137.25、(EURUSD):1.0500−1.0800

今週のレビュー(3/6−3/10)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初135.88で寄り付いた後、(1)パウエルFRB議長による「最新の経済データは予想以上に強く、最終的な金利水準が従来の予想よりも高くなる可能性が高いことを示唆」「データ全体が引き締めペースの加速を正当化すれば、利上げペースを加速させる用意がある」とのタカ派的な発言(米上院銀行委員会での半期に一度の議会証言)や、(2)上記1を背景とした米長期金利の急上昇(3/21ー3/22に開催される次回FOMCでの50bp利上げを織り込む動き→米2年債利回りが2007年7月以来となる5%の大台突破)、(3)短期筋の大規模ロスカット(200日移動平均線突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り)が支援材料となり、週央にかけて、年初来高値137.90(昨年12/15以来の高値圏)まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)短期間で急騰した反動や、(5)米2年債利回りが米10年債を上回る逆イールド発生(米経済のリセッション懸念)、

(6)パウエルFRB議長による「利上げペースについては何も決定していない」との前日の火消しとも受け止められる下院金融委員会でのハト派的な議会証言、(7)米2月失業率(結果3.6%、予想3.4%)の冴えない結果、(8)米2月平均時給(結果4.6%、予想4.8%)の市場予想を下回る結果、(9)上記6、7、8を背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは僅か1日で4.01%から3.68%へ急低下)、(10)米シリコンバレーバンク(SVB)の持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの経営難に端を発した伝統的金融市場のリスク回避ムードが重石となり、週末にかけて、週間安値134.13まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/11午前4時40分時点)では、134.75前後で推移しております。尚、注目された黒田総裁最後の日銀金融政策決定会合は、サプライズ修正の見送り(現行政策の継続)で幕を閉じました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0619で寄り付いた後、(1)レーンECB専務理事による「現在の情報は3月以降の利上げ継続を示唆」とのタカ派的な発言や、(2)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「3月、5月、6月、7月に50bpの利上げを行うべき」とのタカ派的な発言、(3)米金利低下に伴うドル売り圧力、(4)ドイツ1月製造業新規受注(結果▲10.9%、予想▲12.5%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、翌3/7にかけて、一時1.0695まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)パウエルFRB議長による半年に一度の議会証言でのタカ派的な発言や、(6)上記5を背景とした米長期金利の急上昇が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0524まで反落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(7)急ピッチな下落の反動や、(8)ドイツ1月鉱工業生産(結果3.5%、予想1.5%)の力強い結果、(9)パウエルFRB議長による「利上げペースについては何も決定していない」との火消しとも受け止められる下院金融委員会でのハト派的な議会証言、(10)米2月失業率の冴えない結果、(11)米2月平均時給の市場予想を下回る結果、(12)米金利低下に伴うドル売り再開が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0701まで反発しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間3/11午前4時40分時点)では、1.0637前後で推移しております。

来週の見通し(3/13−3/17)

<ドル円相場>
ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90(昨年12/15以来、約3ヵ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて、134.13まで急落しました。但し、日足ローソク足が一目均衡表雲上限や90日移動平均線にサポートされていることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」「21日移動平均線と90日移動平均線のゴールデンクロス」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(足元の下落は上昇トレンドの過程で見られるやや大きめのポジション調整)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め再加速の思惑(3/19−3/20FOMCでの50bp利上げ観測が残存)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(黒田総裁最後の日銀会合でサプライズ修正の見送りを決定)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴う円キャリートレード継続期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は上記(1)を確かめる上で、3/14に予定されている米2月消費者物価指数や、3/15の米2月生産者物価指数に注目が集まります。市場予想を上回る結果となれば、米インフレ加速懸念→米FRBによる金融引き締め再加速の織り込み再開→米金利上昇→米ドル買いの経路でドル円に強い上昇圧力をもたらすシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(週末にかけての急落劇の早期巻き戻しを想定)。尚、来週は上記以外にも、米3月ニューヨーク連銀製造業景況指数や、米2月小売売上高、米3月NAHB住宅市場指数、米2月住宅着工件数、米2月建設許可件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米2月鉱工業生産、米3月ミシガン大消費者信頼感指数など重要イベント目白押しとなります。また、来週より米国が「夏時間」に入ることから、米国経済指標の発表時間は軒並み一時間前倒しとなります。

来週の予想レンジ(USDJPY):133.75ー137.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、一時1.0524(1/6以来、約2ヵ月ぶり安値圏)まで急落しましたが、週末にかけては持ち直し、現在は1.06台半ばで推移しております。日足ローソク足が年初来安値1.0483を死守できていること(ダウ理論の上昇トレンドが継続していること)や、強い買いシグナルを示唆する強気のパーフェクトオーダーが継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECBによる金融引き締め長期化観測(先週発表されたユーロ圏各国のCPIは軒並み強い結果→総合ではなくコアの加速が持続している点がポイント)や、(2)欧州経済の復調期待(中国経済の回復期待やエネルギー供給不安後退が背景)、

(3)欧米金融政策におけるターミナルレートの引き上げ余地の違い(米国のターミナルレート引き上げ余地に比べて、欧州のターミナルレート引き上げ余地の方が大きい→米国・欧州共に金融引き締め再加速の思惑が燻っているが、伸びしろの観点で、ユーロに軍配が上がる公算大)など、ユーロドル相場の反発を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では、引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週はECB理事会に注目が集まります。50bpの政策金利引き上げは既に織り込まれているため、市場の関心はその先の政策パスに移っています。3/2に公表されたECB議事要旨の中で、ECB当局者がコアインフレ率を重視する構えを見せていることから(コアインフレについての言及が昨年12月会合時の2倍に増加)、注目すべきは最新の経済見通しにおけるコアインフレ率の配置となりそうです。当方は前回12月会合時に示された前年比+4.2%が上方修正されるシナリオをみているため、来週はECBによる金融引き締め再加速の思惑→欧州債利回り上昇→ユーロ買いの経路でユーロドルにもう一段上方圧力が加わるシナリオを想定いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0800

注:ポイント要約は編集部

『ドル円相場は乱高下。来週は米CPIとECB理事会がメインイベント』

ドル円日足

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