『日米金利差拡大を背景にドル円はトレンド転換実現か?』
〇今週のドル円、週明け131.30まで下落後、週末にかけて135.12まで上昇後134円台前半で越週
〇米国サイドはインフレ指標、小売売上高等の指標好調とFRB関係者から相次いだタカ派発言がドルを支持
〇日本サイドは次期日銀総裁候補植田氏が中立的であることから過度の緩和修正期待後退で円売りに
〇ユーロドルは1.06-08の広めのレンジで方向感に欠ける動き
〇ドル円、テクニカルには注目された一目均衡表雲下限および1/6高値134.79を上方ブレイク、地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大観測と円キャリートレード再開期待がサポート
〇ドル円相場見通しをベアからブルへと変更
〇来週の予想レンジ(USDJPY):132.00ー136.00、(EURUSD):1.0400−1.0800
今週のレビュー(2/13−2/17)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初131.40で寄り付いた後、早々に週間安値131.30まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)対主要通貨での円売り再開(日銀総裁人事に係わるイベント消化→植田次期総裁候補がタカ派的でもハト派的でも無い中立派であることに対する安堵感→過度な金融緩和の修正期待が後退)や、(2)前週末金曜日(2/10)に発表された米2月消費者信頼感指数における1年先の期待インフレ率上昇、(3)ボウマンFRB理事による「インフレ目標の2%に戻すために利上げを継続する」とのタカ派的な発言、(4)米1月消費者物価指数および米1月消費者物価コア指数の市場予想を上回る結果、(5)リッチモンド連銀バーキン総裁による「我々が望まない高インフレ継続の可能性」とのタカ派的な発言、(6)ダラス連銀ローガン総裁による「必要であれば予想以上に長く利上げを続ける用意がある」とのタカ派的な発言、(7)市場参加者に意識されていた一目均衡表雲下限突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、
(8)米1月小売売上高の力強い結果、(9)米2月ニューヨーク連銀製造業景況指数の予想比大幅改善、(10)米2月NAHB住宅市場指数の市場予想を上回る結果、(11)米新規失業保険申請件数の良好な結果、(12)米1月生産者物価指数および米1月生産者物価コア指数の市場予想を上回る結果、(13)クリーブランド連銀メスター総裁による「金利は5%超の水準で暫くとどまる必要性がある」「前回のFOMCでは50bpの利上げでも説得力があった」とのタカ派的な発言、(14)セントルイス連銀ブラード総裁による「前回FOMCでは50bpの利上げを主張」「3月FOMCでの50bpの利上げを支持する可能性を排除しない」とのタカ派的な発言、(15)米長期金利の急上昇(米10年債利回りは昨年11/10以来の高水準となる3.92%へ急上昇)、(16)ダウ理論の下落トレンド崩壊(市場参加者に注目されていた1/6高値134.79突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値135.12(昨年12/20以来の高値圏)まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、米国の3連休を控えたポジション調整が重石となり、本稿執筆時点(日本時間2/18午前2時45分現在)では、134.20前後まで反落する動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0679で寄り付いた後、(1)欧州委員会による2023年の実質成長率の上方修正や、(2)上記1を背景とした欧州株の堅調推移、(3)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(4)短期筋のショートカバーが支援材料となり、翌2/14にかけて、週間高値1.0805まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米1月消費者物価指数および米1月消費者物価コア指数の市場予想を上回る結果や、(6)スペイン中銀デコス総裁による「ユーロ圏のインフレ率はこれまでの想定よりも早く低下する可能性がある」とのハト派的な発言、(7)ユーロ圏12月鉱工業生産の冴えない結果、(8)ユーロ圏12月貿易収支の赤字幅拡大、(9)米経済指標力強い結果、(9)米当局者による相次ぐタカ派発言、(10)米長期金利の急上昇が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0613まで下落しました。
もっとも、引けにかけては、米3連休前のポジション調整も相俟って持ち直し、本稿執筆時点(日本時間2/18午前2時45分現在)では、1.0690前後で推移しております。尚、今週はラガルドECB総裁による「3月理事会で50bpの利上げを実施する見込み」「基調的なインフレ率は依然として高い」とのタカ派的な発言や、ドイツ連銀ナーゲル総裁による「政策金利はまだ制限的な水準にはない」「早過ぎる金融緩和は誤り」とのタカ派的な発言が見られましたが、ユーロ買いでの反応は限定的となりました。
来週の見通し(2/20−2/24)
<ドル円相場>
ドル円は1/16に記録した約7カ月半ぶり安値127.22をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、昨年12/20以来、約2ヵ月ぶり高値となる135.12まで急伸しました。ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線)を上抜けしたことや、市場参加者に意識されていた一目均衡表雲下限および1/6高値134.79を上方ブレイクしたこと、ダウ理論の下落トレンドが終焉したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週発表された米CPI・米PPIが共に市場予想を上回った他、米当局者からもタカ派的な発言のオンパレード→米金利先物市場は3月、5月、6月の連続利上げを織り込む展開→政策金利のターミナルレートは5.25%ー5.50%へ上方修正→米金利上昇・米ドル買い)や、(2)日銀による金融緩和の早期修正観測後退(植田次期総裁は2/10に「当面は金融緩和を続ける必要がある」と発言→対主要通貨での円売り安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米名目金利差拡大観測とそれに伴う円キャリートレード再開期待など、ドル円相場のアップサイドリスクを意識させる材料が増えつつあります。
尚、来週は米国側ではFOMC議事要旨や米当局者発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、ジェファーソンFRB理事、クリーブランド連銀メスター総裁、ボストン連銀コリンズ総裁、ウォラーFRB理事)および米1月PCEデフレータに注目が集まります。FOMC議事要旨や米当局者発言でタカ派的なスタンスが示される場合や、米1月PCEデフレータが市場予想を上回る場合などには、米金利上昇→米ドル買いの経路でドル円にもう一段強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。一方、日本側では、2/14に予定されている本邦1月消費者物価指数や衆院議院運営委員会での植田次期日銀総裁の所信聴取および質疑に注目が集まります。本邦CPIが市場予想を下回る場合や、植田次期日銀総裁の発言がサプライズ無く(出口戦略等について言及する可能性は乏しい)終わる場合には、早期政策修正への期待感後退を通じて、円売り安心感が高まるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では、ドル円相場見通しをベアからブルへと変更いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):132.00ー136.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、今週末にかけて、1/6以来の安値となる1.0613まで急落しました。ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線、一目均衡表雲上限)を軒並み下抜けしたことや、4時間足で強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォーク)が成立したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。目先は1/6に記録した安値1.0483を下抜けられるか否かに注目が集まります。同水準を下抜けられれば、ダウ理論の上昇トレンド崩壊に繋がることから、昨年9月から続いた上昇トレンドに終止符が打たれ、本格的な下落トレンドに突入するシナリオが浮上します。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、昨年後半以降、ユーロドル相場を支えてきた欧米金融政策の方向性の違い(利上げ長期化が見込まれる欧州と、利上げ最終フェーズに入ってきている米国との政策格差)が、足元で逆転(ECBが5月会合で利上げサイクルを休止するとの見方が浮上する一方、米FRBは3月、5月に続いて、6月の利上げも織り込む展開)するなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が整いつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はユーロ圏2月消費者信頼感指数や、ユーロ圏2月製造業PMI速報値、ドイツ2月ZEW景況感調査、ドイツ2月IFO景況感指数など、欧州の最新の景況感データが相次いで発表されます。市場予想を下回る場合には、ECBによる早期ハト派転換への想起を通じて、ユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わると見られることから、来週もダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(1/6安値1.0483を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0400−1.0800
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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