為替相場見通し『日銀ショックでドル円暴落。ついに開かれた円キャリートレード逆流の扉』(12/24朝)

週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点では132円台後半で推移しております。

為替相場見通し『日銀ショックでドル円暴落。ついに開かれた円キャリートレード逆流の扉』(12/24朝)

『日銀ショックでドル円暴落。ついに開かれた円キャリートレード逆流の扉』

〇今週のドル円、週前半、松野官房長官の政府日銀共同声明改定否定等に137.48まで上昇
〇買い一巡後は日銀の政策修正サプライズにわずか16時間で約7円暴落130.60をつける
〇その後は自律反発の動きや米指標の好調に132円台後半で越週
〇ユーロドルは1.06を挟んでのもみ合いに終始
〇ドル円、テクニカルの地合い極めて弱く、目先は8/2安値130.40を試すシナリオか
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小と円キャリートレード解消の思惑が重石に
〇ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):130.50ー134.50、(EURUSD):1.0450−1.0850

今週のレビュー(12/19−12/23)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初136.05で寄り付いた後、(1)米金利上昇に伴うドル買い圧力や、(2)松野財務長官による共同通信が週末に報じた「岸田政権が安定的な経済成長を実現するための政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めた」「2%の物価上昇目標の達成時期を見直すなどして金融政策の幅を広げる方向で検討する」とのヘッドラインの否定発言、(3)上記2を背景とした短期筋のショートカバー(共同通信の報道を材料に円ロングを構築していた向きによるロスカット)が支援材料となり、翌12/20にかけて、週間高値137.48へと上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)日銀金融政策決定会合でのサプライズ的なイールド・カーブ・コントロールの見直し決定(10年物国債金利の許容変動幅を従来の±0.25%から±0.50%へ拡大)や、(5)上記4を背景とした円金利の急上昇(日米名目金利差縮小に伴うドル売り・円買い)、(6)円キャリートレード解消に伴う大規模ロスカットが重石となり、同日海外時間に、週間安値130.60(8/2以来、約4カ月半ぶり安値圏)まで急落しました(僅か16時間で約7円の暴落劇)。もっとも、8/2に記録した直近安値130.40をバックに下げ渋ると、(7)大暴落後の自律反発や、(8)米7ー9月期GDP確報値(結果3.2%、予想2.9%)の力強い結果、(9)米新規失業保険申請件数(結果21.6万件、予想22.0万件)の良好な結果、(10)米11月PCEコアデフレータ(結果+4.7%、予想+4.6%、※前年比)の市場予想を上回る結果、(11)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間12/24午前4時20分現在)では、132.90前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0591で寄り付いた後、(1)ドイツ12月IFO企業景況感指数(結果88.6、予想87.5)の力強い結果や、(2)リトアニア中銀シムカス総裁による「来年2月の50bp利上げを確信」とのタカ派的な発言、(3)デギンドスECB副総裁による「50bpずつの利上げを続ける」「50bpの利上げが当面標準となる可能性あり」とのタカ派的な発言、(4)スロバキア中銀カジミール総裁による「リセッションに陥っても短期かつ対処可能」「ECBは安定したペースで引き締める必要性がある」とのタカ派的な発言、(5)エストニア中銀ミュラー総裁による「これまでの利上げでは不十分」とのタカ派的な発言、(6)独債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(7)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0660まで上昇しました。

しかし、1.0660近辺に位置する強力なレジスタンス(直近1週間で4度止められている抵抗帯)をバックに伸び悩むと、(8)米経済指標の良好な結果や、(9)上記8を背景とした米金利の反転上昇、(10)株式市場の冴えない動き(リスク回避のドル買い再開)が重石となり、同日(12/22)海外時間に、週間安値1.0573まで反落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、週末にかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間12/24午前4時20分現在)では、1.0615前後で推移しております。

来週の見通し(12/26−12/30)

<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95をトップに反落に転じると、今週前半(12/20)に約4カ月ぶり安値となる130.60まで急落しました(僅か2ヵ月間で21円超の大暴落劇)。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点では132円台後半で推移しております。ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み下抜けできたこと(市場参加者に意識されていた200日移動平均線も下方ブレイク)や、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の短期下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます(上値余地は限定的。一巡後の反落リスクに要警戒)。目先は8/2に記録した直近安値130.40を試すシナリオが想定されます(ロングINの局面では無く、戻りを丁寧に待って売っていくフェーズが続く見通し)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め休止観測(実質金利上昇に伴う米経済のオーバーキルが警戒される中、FRBは早晩「積極利上げスタンス」を維持できなくなる公算大。事実市場ではドットチャートで示されたパスとは裏腹に来年後半にかけて25bp×2回の利下げを織り込み済み)や、(2)日銀による金融緩和の更なる修正観測(12/20のサプライズYCC見直しに続いて、来年1/18の会合でも何かしらのサプライズが打ち出されるとの見方あり。榊原英資元財務官はブルームバーグとのインタビューで「日銀が次回会合で10年物国債利回りの上限を再度引き上げる可能性がある」と発言)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレード解消の思惑など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

以上(テクニカル面・ファンダメンタルズ面の弱さ)を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米国側で目立った経済イベントが予定されていないため、12/26の黒田日銀総裁講演と、12/28の日銀金融政策決定会合における主な意見(12/19ー12/20分)に注目が集まります。黒田総裁より来年の政策変更を滲ませる踏み込んだ発言が出てくる場合や、日銀金融政策決定会合における主な意見で今回のサプライズ的なYCC見直しに至った経緯や更なる措置の可能性が示される場合などには、ドル円に強い下押し圧力が加わる恐れもあるため、来週も今週同様、ドル円相場のダウンサイドリスクに警戒が必要でしょう(海外勢がクリスマス休暇から続々と戻ってくるため、来年のポジション戦略の仕込みの一環として、円買い圧力が予想以上に強まる可能性あり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):130.50ー134.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535をボトムに反発に転じると、12/15に約半年ぶり高値となる1.0737まで急伸しました。今週は1.0570−1.0660レンジでの上下動に終始しましたが、ローソク足が主要テクニカルポイントの上側に位置していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「21日移動平均線と200日移動平均線のゴールデンクロス」「ダウ理論の短期上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(目先は5/30に記録した1.0788を試すシナリオを想定)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め休止観測(先般明らかとなったドットチャートは予想以上にタカ派的な結果となりましたが、実質金利上昇に伴う米経済のオーバーキルが警戒される中、実際にはドットチャートで示されているほどの利上げは続けられないとの見方が市場コンセンサス)や、(2)ECBによる利上げスタンスの継続方針(先週開催されたECB理事会およびラガルド総裁記者会見は予想外にタカ派的な結果。今週も複数の欧州当局者よりタカ派的な発言あり)、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差縮小を見越したユーロ買い・ドル売り圧力)など、ユーロドル相場の続伸を連想させる材料が増えつつあります。

以上(テクニカル面・ファンダメンタルズ面の強さ)を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。来週は欧米共に目立った経済イベントが予定されていないものの、海外勢がクリスマス休暇から続々と戻ってくるため、来年のポジション戦略の仕込みの一環として、対ドルや対英ポンドでのユーロ買いが強まるシナリオに警戒が必要でしょう(デギンドスECB副総裁は今週「50bpの利上げが当面標準となる可能性あり」と踏み込んだ発言を実施。年末・年始にかけて、欧米金利差縮小を見越したユーロ買い・ドル売りが強まる恐れあり)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0450−1.0850

注:ポイント要約は編集部

『日銀ショックでドル円暴落。ついに開かれた円キャリートレード逆流の扉』

ドル円日足

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