ドルの上値が重く下値を試しやすい
〇ドル円、FOMCでのタカ派的金利見通しを受け、一時135.99まで上昇
〇ECB結果受けユーロ円上昇、これに伴いドル円も高値138.19に到達、週末にかけやや戻して引ける
〇金利見通しは前回から0.5%上昇の5.125%、ただし反応は限定的、急速利上げによる景気後退懸念か
〇明日の日銀会合、出口戦略への言及、円高方向への動きには要注意
〇今週は133.50レベルをサポートに137.50レベルをレジスタンス、ドル上値が重い流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は週初こそ前週の強いPPIの影響が残ってのドル買いとなっていましたが、CPIが弱かったことでドル円は137円台後半から一気に134円台後半へと下げる動きを見せました。ただ、翌日のFOMCでPPI寄りなのか、CPI寄りなのかで見方は揃ってはいなかったものの0.5%利上げは完全に織り込み済み、金利見通しに注目が集まってFOMCを迎えました。
FOMCでは利上げ幅は予想通りだったが金利見通しで2023年末の中間値が前回9月の4.625%から0.5%上昇し5.125%となったことで、タカ派的と見られたものの直後の上昇は一時的で思ったほどの反応が無かったというのが大多数の印象であったと思います。しかし翌日の東京市場から欧州市場にかけてはドル買いが強まり、ECB理事会も予想通り0.5%利上げであったものの、コメントがタカ派的であったことからユーロ円が上昇してのドル円の上昇となり、週間高値となる138.18レベルを見た後、週末にかけては調整の売りが広がったという動きです。
先週の一連の金融政策決定会合で年内の一大イベントは終わり、今週後半からは欧米はクリスマスを控えて取引参加者は急速に減っていきます。そうした中で、無いとは思うものの明日の日銀会合で出口戦略について何らかの言及があると思いのほか動く可能性があります。最近では日本のCPIが急速に上がってきたことから、日銀や政府の発言に注目が集まりますが、実際に日銀による検証、政府と日銀の共同声明見直しの可能性など、出口戦略に話をつなげやすい記事が目立ちます。ただ、日銀関連のニュースは動くとすれば円高方向となりますので、警戒すべきは先週の安値を下回る時ということになります。
また、FOMCは思ったよりもタカ派的と捉えられましたが、その後の金利市場の動きは限定的で、FF先物でさえピーク金利の見通しは4.75〜5.00%とFOMCの金利見通しよりも低く、金曜のタカ派発言後も第4四半期には緩和に転じるという見方も変わっていません。参考までに最近のFF先物の2023年3, 6, 9, 12月の推移をご覧ください。
上から3, 6, 9, 12月限ですが、多少の上下はあるものの11月以降はほとんど水準を変えていないことがわかります。これは金利市場の参加者が利上げペースが速かったことによる景気後退リスクが強くFRBが考える以上に2023年後半の引き締めが強まらないと見ていることを示しています。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
ドル円日足チャート
現状は年初来高値から引いたレジスタンスラインとそれに平行に引いたラインとで構成される平行下降チャンネル(ピンク)の中での下げを依然として続けている状況は先週から変わりません。先週と異なるのはレジスタンスラインのかなり近い位置に近づいてきたということで、月曜時点でレジスタンスラインは137.60レベルに位置しています。いっぽうで下限にはかなり距離がありますので、今月安値となった133円台半ばがターゲットとなる水準です。
金利市場の参加者が思いのほかハト派な取引を続けていること、テクニカルにはドルの戻り高値の水準に近づいていることから、今週は133.50レベルをサポートに、137.50レベルをレジスタンスと引き続きドルの上値が重い流れが続く週を考えています。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
12月19日(月)
**:** 日銀会合(〜20日)
17:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:00 ドイツ12月ifo企業景況感
19:00 ユーロ圏10月建設支出
24:00 米国12月NAHB住宅指数
30:45 NZ11月貿易収支
**:** 南アANC新議長選出大会(〜20日)
12月20日(火)
09:00 NZ12月企業信頼感
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
**:** 日銀会合結果発表 ☆
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
16:00 ドイツ11月PPI
18:00 ユーロ圏10月経常収支
22:30 米国11月住宅着工・建築許可件数
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値
12月21日(水)
16:00 ドイツ1月消費者信頼感
24:00 米国12月消費者信頼感
24:00 米国11月中古住宅販売
24:30 週間原油在庫統計
12月22日(木)
16:00 英国7〜9月期GDP改定値 ☆
20:00 トルコ中銀政策金利発表
22:30 米国7〜9月期GDP確報値 ☆
22:30 米国新規失業保険申請数
24:00 米国11月景気先行指数
12月23日(金)
**:** NZ、豪州、英国、米国短縮取引
08:30 本邦11月CPI ☆
08:50 日銀会合(10月)議事要旨公表
16:45 フランス11月PPI
22:30 米国11月個人所得・消費支出 ☆
22:30 米国11月耐久財受注
24:00 米国12月ミシガン大消費者信頼感
24:00 米国11月新築住宅販売
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
12月12日(月)
週明けの東京市場では金曜PPI後のドル買いの流れが続き後場には137.13レベルの高値をつけましたが、東京前場から既に下げに転じていた米金利の動きを見て欧州市場前場までは売りも出て朝方の水準へと押しました。その後は米金利が再び上昇に転じる動きとともにドル買いが強まり、NY後場には137.85レベルの高値をつけ、やや押して引けました。
12月13日(火)
米国CPI発表を前にNY市場までは一時137.97レベルの高値を見たものの137円台後半の高値圏でのもみあいを続けていました。前週金曜のPPIが強かったことからCPIも上振れするかもしれないという警戒感もありましたが、結果は予想よりも弱く7.1%と着実にインフレが低下している数字を見せました。この結果を受けドルは大幅安となり、一時134.69レベルの安値をつけ、引けにかけては135円台半ばを回復しました。
12月14日(水)
ドル円はFOMCを前に小動きが続いていましたが、欧州市場に入りポスト黒田体制で金融政策の検証と見直しが行われるのではとの記事に反応して一時134.51レベルまで円買いが見られました。その後FOMCまで上値の重たい展開での結果待ち。結果は予想通りの0.5%利上げであったものの、金利見通しでは2023年末の中央値が前回の4.625%から5.125%へと0.5%上昇した点はタカ派的と受け止められました。ドル円は135.99レベルまで上昇しましたが、引けにかけては135円台半ばへと押しました。
12月15日(木)
ドル円は前日引け間際のドル買いの動きを受けてドル買いが先行、欧州市場序盤に前日高値を上抜けると一連の欧州の中銀会合に向けてクロス円の買いも目立ちました。ECB理事会まで136円台半ばから後半でのもみあいを挟み、ユーロ円の上昇とともに138.19レベルの高値をつけ、引けにかけてはやや押して引けました。
12月16日(金)
ドル円はFOMC後のドル買いに対して週末を控えての調整のドル売りが続いた1日となりました。東京市場は137円台後半から始まったもののドル円、クロス円ともに円買いが目立ちNY後場には136.29レベルの安値をつけ、やや戻しての週末大引けとなりました。
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