来週の為替相場見通し:『逆CPIショックでドル円は歴史的大暴落。来週は米当局者発言に注目』(11/12朝)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初147.15で寄り付いた後、早々に週間高値147.59まで上昇しました。

来週の為替相場見通し:『逆CPIショックでドル円は歴史的大暴落。来週は米当局者発言に注目』(11/12朝)

『逆CPIショックでドル円は歴史的大暴落。来週は米当局者発言に注目』

〇今週のドル円、週初147.59まで上昇後、週末にかけて週間安値138.47まで急落
〇米CPIの市場予想を下回る結果と米長期金利の急低下、FRB関係者のハト派発言等が背景
〇ユーロドル、米長期金利低下等に週末にかけ1.0364まで上値伸ばす
〇ドル円、主要テクニカルポイント下抜け地合い悪化、来週は138.15の「雲」下限の攻防か
〇ファンダメンタルズも、ドル売り円買いを連想させる材料増加
〇来週の予想レンジ(USDJPY):136.50ー140.50、(EURUSD):1.0100−1.0500

今週のレビュー(11/7−11/11)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初147.15で寄り付いた後、早々に週間高値147.59まで上昇しました。しかし、一目均衡表基準線をバックに伸び悩むと、(1)先週末金曜日に発表された米10月失業率の冴えない結果や、(2)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、(3)米中間選挙後のねじれ発生への警戒感(米中間選挙でRedWaveこそ回避されたものの「ねじれ」は不可避→今後は米財政政策を通すことが難しくなる可能性大→ドル売り要因)、(4)黒田日銀総裁による「最近の急速な円安望ましくない」「投機による急速な円安への政府の適切な対処を評価している」「ドル独歩高が続くとの予想は必ずしも正しくないと思う」との円安牽制発言、(5)豪中銀ブロック副総裁による「利上げを中断できる状況に近づきつつある」とのハト派的な発言(世界的な利上げペース鈍化期待)、(6)米10月消費者物価指数(結果+7.7%、予想+7.9%、前回+8.2%)および、米10月消費者物価コア指数(結果+6.3%、予想+6.5%、前回+6.6%)の市場予想を下回る逆サプライズ、

(7)フィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「来月の利上げペースの緩和を予想」「来年のどこかの時点で政策停止を予想」「利上げは4.50%で一時停止することを望む」とのハト派的な発言、(8)ダラス連銀ローガン総裁による「利上げペースの減速が近く適切になる可能性」とのハト派的な発言、(9)ウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチャーであるニック・ティミラオス記者による「10月のインフレレポートはFRBが50ベーシスポイントの利上げに向けて順調に進んでいることを示している」とのハト派的な発言、(10)上記を背景とした米長期金利の急低下(米CPIの逆サプライズ→次回12月FOMCでの利上げ幅が50bpへ縮小されるとの見方が再浮上→米10年債利回りは10/21に記録した4.33%から約1ヵ月ぶり低水準となる3.81%へ急低下)、

(11)世界的な株高とそれに伴うリスク選好のドル売り再開、(12)日本の為替操作国認定見送り(米財務省は半期に一度の為替報告書の中で日本の為替操作国認定見送りを決定→米国が日本の為替介入を黙認)、(13)イエレン米財務長官による「CPIのデータはインフレ圧力の緩和を示唆している」とのハト派的な発言が重石となり、週末にかけて、週間安値138.74(8/31以来、約2ヵ月半ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/12午前2時45分現在)では、138.90前後で推移しております。(編集部注:その後終盤にかけ138.47まで下値拡大)

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9911で寄り付いた後、早々に週間安値0.9899まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)重要イベント(米中間選挙や米10月消費者物価指数)を控えたポジション調整や、(2)英ポンド急伸に伴うユーロ連れ高、(3)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「インフレが明らかにピークに達していない限り、利上げを停止すべきではない」「インフレ率は2023年前期にピークに達する可能性があり、目標値に戻るには2ー3年かかる」とのタカ派的な発言、(4)ユーロ圏11月投資家信頼感指数(結果▲30.9、予想▲35.0)の市場予想を上回る結果、(5)心理的節目1.0000(パリティ)突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売り、(6)ユーロ圏9月小売売上高(結果▲0.6%、予想▲1.1%、※前年比)の市場予想を上回る結果、(7)デギンドスECB副総裁による「量的引き締めは遅かれ早かれ実施されるが2023年には確実に開始される」とのタカ派的な発言、

(8)ドイツ連銀ナーゲル総裁による「例え景気に打撃を与えるとしても、私はECBが金融政策の正常化を推進し続けるよう全力を尽くす」「金融政策の正常化は金利だけではなくバランスシート圧縮も含む」とのタカ派的な発言、(9)ロシア軍によるウクライナ南部ヘルソン州の州都・ヘルソンからの部隊撤退(ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの後退)、(10)欧州圏を巡るエネルギー供給不安の後退、(11)シュナーベルECB理事による「金融政策を停止する時間はない」とのタカ派的な発言、(12)スロベニア中銀バスレ総裁による「来年から量的引き締めを始めるのが適切」「更なる利上げが必要。中立金利を超える必要も」とのタカ派的な発言、

(13)米10月消費者物価指数および、米10月消費者物価コア指数の伸び率鈍化、(14)米金利急低下に伴うドル売り圧力、(15)世界的な株高とそれに伴うリスク選好のドル売り再開が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0340(8/11以来、約3ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/12午前2時45分現在)では、1.0335前後で推移しております。(編集部注:その後1.0364まで上値拡大)

来週の見通し(11/14−11/18)

<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95(1990年7月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、8/31以来、約2カ月半ぶり安値となる138.74まで急落しました。この間、ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や一目均衡表雲上限)を軒並み下抜けした他、強い下落トレンド入りを示唆する弱気のバンドウォーク(ローソク足がボリンジャーバンド下限に沿って下落し続ける状態)も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を決定付けるチャート形状となりつつあります。来週は138.15近辺に位置する一目均衡表雲下限を下抜けられるか否かに注目が集まりそうです。同水準の下方ブレイクに成功できれば、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転が点灯するため、地合いの悪化に拍車がかかると考えられます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米利上げペースの鈍化期待(逆CPIショックを受けて米利上げペースの鈍化期待が再浮上→次回12月FOMCで利上げ幅を50bpに鈍化させる確率が85.4%へ急上昇。また、来年2月FOMCで利上げ幅を25bpに鈍化させる確率も52.1%へ急上昇)や、(2)それに伴う米長期金利の急低下と米ドル指数の大幅下落(米10年債利回りが10/6以来、約1ヵ月ぶり低水準となる3.81%まで急低下した他、ドル指数も8/18以来、約3ヵ月ぶり低水準となる106.40まで急低下)、(3)米議会のねじれ発生に伴う緊縮財政開始懸念(ドル売り要因)、(4)黒田日銀総裁によるタカ派転換の思惑(黒田総裁は11/2の衆院財務金融委員会での答弁の中で、「将来的に2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になればその前段階でイールドカーブコントロールを柔軟化していくことは一つのオプションとしてあり得る」と発言)、

(5)米政府・当局による円買い介入容認観測(米財務省による半期に一度の為替報告書の中で日本の為替操作国認定が見送られたことに対する安堵感)など、ドル売り・円買いを連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(円キャリートレードの逆流に警戒)。

尚、来週は米当局者発言に注目が集まります。週初のブレイナードFRB副議長講演に始まり、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁発言や、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁発言、クックFRB理事発言、ウォラーFRB理事発言、セントルイス連銀ブラード総裁発言、ボウマンFRB理事発言、ジェファーソンFRB理事発言、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁発言など、複数の米当局者発言が予定されており、今週発表された米CPI鈍化に対してどのような評価を下すのか?米金融政策の先行きに対してどのような示唆を滲ませるのか?に注目が集まります。米利上げペースの更なる鈍化を示唆する発言が出てくる場合には、米金利低下→米ドル売りの経路でドル円にはもう一段強い下落圧力が加わる恐れもあるため、来週はダウンサイドリスクに注意を要する一週間となりそうです。また、上記以外にもトランプ前大統領が11/15に重大な発表をすると発言しているため、同氏の発言にも警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):136.50ー140.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、8/12以来、約3カ月ぶり高値となる1.0340まで急伸しました。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイント(一目均衡表基準線や転換線、一目均衡表雲上下限、21日移動平均線や90日移動平均線、心理的節目パリティ)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や強気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を決定づけるチャート形状となりつつあります。目先は1.04台前半に位置する200日移動平均線を試すシナリオが想定されます。同水準突破に成功できれば、約1年半に亘って続いてきた中長期下落トレンドの終焉が意識されるため、ユーロ買いに拍車がかかる展開に注意が必要でしょう。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米利上げペースの鈍化期待(逆CPIショックを受けて米利上げペースの鈍化期待が再浮上)や、(2)欧州当局者による相次ぐタカ派発言、(3)上記を背景とした欧米名目金利差の縮小期待(利上げペース鈍化が織り込まれる米国と、利上げペースを維持する欧州との金融政策の方向性の違い)、(4)欧州圏を巡るエネルギー供給不安の幾分後退(比較的暖かい冬が到来していることや、代替エネルギーを用いて対処できるとの期待感)など、ユーロドル相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方ではユーロドルの相場見通しを、「ベア」から「ブル」に変更いたします。尚、来週は、欧州当局者発言(パネッタ ECB 専務理事、デギンドスECB副総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ラガルドECB総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、オランダ中銀クノット総裁)や、ドイツ11月ZEW期待指数、ユーロ圏7−9月期GDP改定値に加えて、英国の秋季財政報告書の発表などに注目が集まりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0100−1.0500

注:ポイント要約は編集部

『逆CPIショックでドル円は歴史的大暴落。来週は米当局者発言に注目』

ドル円日足

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