来週の為替相場見通し:『ドル円は約32年ぶり高値圏へ急騰。来週は節目150円が射程圏内』(10/15朝)

ドル円は9/22に記録した直近安値140.35をボトムに反発に転じると、週末にかけて、1990年8月以来、約32年2ヵ月ぶり高値となる148.87まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は約32年ぶり高値圏へ急騰。来週は節目150円が射程圏内』(10/15朝)

『ドル円は約32年ぶり高値圏へ急騰。来週は節目150円が射程圏内』

〇今週のドル円、週末にかけ1990年2か月ぶり高値148.87まで急伸
〇黒田総裁のハト派発言、米CPI、PPI等インフレ指標の上ブレ等が背景
〇ユーロドル、ドル全面高の流れに週後半にかけ0.9634まで下落後、0.97台前半で越週
〇ドル円、テクニカルの地合い極めて強く、ファンダメンタルズもドル高円安材料揃う
〇介入警戒感はあるものの、今週3.7円の急伸にも介入なく円売り安心感も
〇一時的ドル安見通しを変更し、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00、(EURUSD):0.9500−0.9900

今週のレビュー(10/10−10/14)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初145.35で寄り付いた後、早々に週間安値145.17まで下落しました。しかし、心理的節目145.00をバックに下げ渋ると、@10/7に発表された米9月雇用統計の良好な結果や、AブレイナードFRB副議長による「金融政策は暫くのあいだ制限的になる」とのタカ派的な発言、B政府・日銀が実弾介入に踏み切った9/22高値145.90を上抜けたことに伴う仕掛け的なドル買い・円売り、C146.00に観測されていたリバースノックアウトオプションのトリガーヒットに伴うオプション勢のストップBUY(ガンマ消失→ストップBUY)、D黒田日銀総裁による「2%の物価目標を持続的・安定的に達成するまで金融緩和を継続する必要がある」とのハト派的な発言、E米9月生産者物価指数(結果8.5%、予想8.4%)の市場予想を上回る結果、Fミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「ドル高で米国のインフレ率が低下するだろう」とのドル高容認発言、

G鈴木財務相による「水準ではなくボラティリティに注目」との円安容認とも受け止められる発言(急騰は認めないがボラティリティを伴わないじり高なら良いとの解釈が可能)、H米9月消費者物価指数(結果8.2%、予想8.1%、※前年比)および米9月消費者物価コア指数(結果6.6%。予想6.5%、※前年比)の市場予想を上回る結果、I上記@Hを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(次回11月FOMCでの75bp利上げを完全に織り込むと共に、一部で100bpの大幅利上げ観測も浮上)、J米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りは2008年10月以来、約14年ぶり高水準となる4.07%へ急上昇)、K米10月ミシガン大消費者信頼感指数(結果59.8、予想59.0)の良好な結果が支援材料となり、週末にかけて、1990年8月以来、約32年2ヵ月ぶり高値となる148.87まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/15午前4時45分現在)では、148.66前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9736で寄り付いた後、@10/7に発表された米9月雇用統計の良好な結果や、AブレイナードFRB副議長による「金融政策は暫くのあいだ制限的になる」とのタカ派的な発言、Bロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク(戦況激化)、Cドイツを巡る政局不透明感(10/9に開催された独ニーダーザクセン州の議会選挙でショルツ首相率いる社会民主党が勝利しつつも連立を組む自由民主党が議会入り出来ず)、Dユーロ圏10月投資家信頼感指数(結果▲38.3、予想▲34.7)の冴えない結果、E欧州株の軟調推移、F米9月生産者物価指数の市場予想を上回る結果、G米9月消費者物価指数の市場予想を上回る結果、H米金利上昇に伴うドル買い圧力や、I資産現金化需要のドル買い圧力(株安→市場心理悪化→リスクアセット下落→米ドル買い)が重石となり、週後半にかけて、週間安値0.9634まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、J株式市場の持ち直し(悪材料出尽くし感→米金利低下→ドイツ株が急落後に急上昇)や、K短期筋のショートカバー、L英トラス政権による大型減税策見直しに関する一部報道(英ポンド上昇→ユーロ連れ高)が支援材料となり、週末にかけて、高値0.9806まで急伸する場面も見られました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、M米10月ミシガン大消費者信頼感指数の良好な結果や、N対主要通貨でのドル買い再開が重石となり、本稿執筆時点(日本時間10/15午前4時45分現在)では、0.9726前後で推移しております。

来週の見通し(10/17−10/21)

<ドル円相場>
ドル円は9/22に記録した直近安値140.35(政府・日銀による実弾介入後に記録した安値)をボトムに反発に転じると、週末にかけて、1990年8月以来、約32年2ヵ月ぶり高値となる148.87まで急伸しました。この間、主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」の全てが成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(米9月雇用統計・米9月PPI・米9月CPIが軒並み市場予想を上回ったことで11月FOMC、12月FOMCでの連続75bp利上げを織り込む動き)や、A日銀による金融緩和の継続方針(黒田日銀総裁は米ワシントンで開催された国際金融協会の年次会合で「2%の物価目標を持続的・安定的に達成するまで金融緩和を継続する必要がある」と発言)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力、D米政府・米当局によるドル高容認スタンス(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「ドル高で米国のインフレ率が低下するだろう」との発言)など、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。

政府・日銀による介入警戒感が引き続き上値を抑制する材料として意識されてはいるものの、今週は週初に記録した安値145.17から3.7円急伸しているにも係わらず為替介入が実施されなかったため、鈴木財務相による「水準ではなくボラティリティに注目」との発言や、松野官房長官による「過度な為替変動には適切な対応をとりたい」との発言に対する信頼性が失われつつあります(週に3.7円動いても、鈴木財務相や松野官房長官が言うところの「過度なボラティリティ」や「過度な相場変動」には当たらないことへの不信感→円売り安心感)。以上を踏まえ、当方ではドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします(先週予測した一時的なベア見通しをブル見通しへ再び変更)。

尚、来週は複数の米経済指標(米10月NY連銀製造業景況指数、米9月鉱工業生産、米9月建設許可件数、米9月住宅着工件数、米ベージュブック、米10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米9月中古住宅販売件数、米9月景気先行指数)に加えて、多くの米当局者発言(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、シカゴ連銀エバンス総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、ジェファーソンFRB理事、クックFRB理事、ボウマンFRB理事、NY連銀ウィリアムズ総裁)が予定されるなど、重要イベントが目白押しとなります。

米経済指標の中では、住宅関連指標への注目度が高まっています。足元の住宅ローン金利の高騰を受けて、住宅指標がどのような数字を出してくるのか注意が必要でしょう。また、米当局者発言は、ブラックアウト期間に入る前の最終週となるため、今回の米雇用統計や米CPIの結果を踏まえて、市場に対してどのようなタカ派メッセージを送るのか注目されます。米経済指標が市場予想を上回るサプライズを見せる場合や、米当局者よりタカ派的なコメントが発せられる場合には、ドル円が150.00に向かって急伸する恐れもあるため、来週は政府・日銀による円安牽制・実弾介入を意識しつつも、日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売りが続きそうです(万が一、円買い為替介入が入ったとしても、下がったところが絶好の押し目買い機会になる可能性あり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー151.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、9/28に記録した約20年3ヵ月ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、10/4に一時1.0000(パリティ)まで持ち直しましたが、今週(10/10−10/14)は0.97台を中心としたレンジ相場に終始しました。但し、ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)の下側に位置していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、リスクは依然ダウンサイドと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる積極利上げは欧州経済にとっての強い逆風)や、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク(ロシアによるミサイル攻撃激化)、B上記Aを背景としたエネルギー危機再発懸念、C英財政の先行き不透明感(緊急安定化措置の実施やトラス政権の財政政策軟化期待でひとまず落ち着きを取り戻しているが、英財政を巡る先行き不透明感は引き続き根強く、英ポンド下落→ユーロ連れ安の波及経路に要警戒)、D米FRBによるタカ派傾斜観測(米雇用統計・米CPIが共に市場予想を上回ったことで年内大幅利上げ観測が再浮上)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はECB高官発言(デギンドスECB副総裁、レーンECB専務理事、シュナーベルECB専務理事、パネッタECB専務理事)や、ドイツ10月ZEW景況感調査に加えて、英財政を巡るヘッドラインに注目が集まります。特に市場では英国財政を巡る先行きへの関心が高く、トラス英首相やハント新財務相、英中銀メンバーの一挙手一投足に振らされる神経質な相場展開となりそうです(大規模財政支出計画の全面撤回が示されない限り、英ポンド下落→ユーロ下落の流れは不可避)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9500−0.9900

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は約32年ぶり高値圏へ急騰。来週は節目150円が射程圏内』

ドル円日足

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