ドル円 年初来高値を再度試しに行く展開
〇先週のドル円、パウエル議長タカ派発言受け引き締め強化を確認、137円台半ばまで上昇
〇週明けの米10年債利回り、金曜水準上抜け3.112%まで上昇、ドル円は138円台半ばに至る
〇9月FOMCでの0.75%利上げ、64%織り込み済み、ピークは12月会合がコンセンサス
〇今週は米雇用統計発表予定、欧州主要国CPI速報値や中国PMIへの注目度高い
〇クリーブランド連銀メスター総裁の講演を注視、一段とタカ派姿勢になっているか
〇今週は137.00レベルをサポートに139.50レベルをレジスタンス、ドルが上値追いをする展開をみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、週初からジャクソンホールにおいてパウエルFRB議長がタカ派な講演を行うとの思惑が広がり、米金利は上昇、為替市場ではドルがやや底堅い値動きを続けたものの様子見の姿勢が強まっている状況でした。
パウエル議長の講演前は136円台後半にいたドル円はパウエル議長が予想通り早期緩和を否定しタカ派な発言を行ったことで137.34円台前半へ上昇したものの講演がわずか8分で終わり材料は出尽くしたとの動きから136円台前半へと急反落、しかし改めてFRBは引き締めスタンスを強化していくとの合意形成により、株式市場は大幅安、ドル円も137円台半ばまで反発して引けました。
パウエル議長の講演を受け10年債利回りが上昇し為替市場はドル高となったものの、金利は24日の水準を超えられず、ドル円も週初の高値圏を超えられなかったため週明けを待ちたいと考える向きも多かったのですが、週明けは早朝から株式市場は続落、ドル円も138円台前半へと急速に上昇しています。背景としては改めてFRBがタカ派スタンスをより強く長期に渡って継続するとの見方が固まり、米金利は金曜の水準を上抜け3.112%まで上昇し、ドル円も週明けで新規の仕掛け買いが入ったと見られ138円台半ばにまで上昇しています。
FF先物の取引状況を見ると、9月FOMCにおける0.75%の利上げ織り込み度は64%となっていますし、ピークは年内12月FOMCで3.75〜4.00%まで上昇し、その状態が2023年9月まで続き、緩和に転じるのは2023年の10月か11月と1年以上先という見方がコンセンサスとなっています。まだ6月に見た4.00〜4.25%という水準は少数派となっているものの、それこそ今後の数字次第では4.00%の大台も出てくる可能性はあるでしょう。
今週は米国雇用統計の発表もありますが、先月の増加で既にコロナ前の非農業部門総雇用者数がピークを超えていますので、多少悪い数字が出たとしても一時的な材料ということになるでしょうから、欧州主要国のCPI速報値や中国のPMIのほうが注目度は高いと見られます。
米国関連では再開するADP全国雇用者数もありますが、あえて取り上げるならば一連のFRB関係者のタカ派発言のスタートとなったクリーブランド連銀メスター総裁の講演が個人的には注目したいと思います。前回は8月3日時点で今回のジャクソンホールにつながるタカ派発言をしていましたので、ジャクソンホール後に一段とタカ派になっているかどうか確認したいところです。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
既に年初来高値とその後の押しとの戻しは全てのターゲットを達成していますので、テクニカルには全戻しとなる139.38レベルまで目立ったレジスタンスもターゲットもありません。いっぽうで下値はパウエル議長講演後に一時的に押した136円台前半と、週明け早朝にギャップアップして始まったため早朝安値137.56レベルが下値の目途となりますが、やや近すぎる感じもします。
どちらも若干上下を広げるイメージで、今週は137.00レベルをサポートに139.50レベルをレジスタンスと、引き続きドルが上値追いをする展開を考えます。なお、最近は上下の振れが大きくなりがちなのですが、その場合でも上記レンジを中心レンジとする流れとします。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月29日(月)
**:** 英国市場休場
10:30 豪州7月小売売上高
16:00 トルコ7月貿易収支
22:00 レーンECB理事講演 ☆
8月30日(火)
**:** トルコ市場休場
08:30 本邦7月失業率・有効求人倍率
10:30 豪州7月住宅建設許可
18:00 ユーロ圏8月消費者信頼感
21:00 ドイツ8月CPI速報値 ☆
21:00 (リッチモンド連銀総裁講演)
22:00 米国6月住宅価格、ケースシラー住宅価格
23:00 米国8月消費者信頼感 ☆
24:00 NY連銀総裁講演 ☆
25:00 オーストリア・ベルギー・ギリシャ中銀総裁講演
8月31日(水)
07:45 NZ7月住宅建設許可
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 中国8月製造業PMI ☆
15:45 フランス7月PPI
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値 ☆
16:00 トルコ4〜6月期GDP
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値 ☆
21:00 南ア7月貿易収支
21:00 クリーブランド連銀総裁講演 ☆
21:15 米国8月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 米国8月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
23:30 週間原油在庫統計
9月1日(木)
07:30 (アトランタ連銀総裁講演)
10:45 中国8月製造業PMI ☆
16:00 トルコ8月製造業PMI
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
18:00 ユーロ圏7月失業率
19:30 ポルトガル中銀総裁講演
20:30 米国8月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国4〜6月期労働生産性改定値
22:45 米国8月製造業PMI
23:00 米国8月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国7月建設支出
9月2日(金)
15:00 ドイツ7月貿易収支
18:00 ユーロ圏7月PPI ☆
21:30 米国8月雇用統計 ☆
23:00 米国7月製造業新規受注
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月22日(月)
週明けのドル円は前場に米国10年債利回りが3%の大台乗せとなったことから昼前には137.43レベルまで高値を伸ばしましたが、後場には金利低下とともにドル円も売られ欧州市場前場には136.69レベルの安値をつけました。その後はユーロドルがパリティ割れ後もじり安の展開を続ける中でドル円も改めてドル買いの動きとなり、NY昼前には137.65レベルと東京高値を上抜け、そのまま高値圏でもみあいのまま引けました。
8月23日(火)
ドル円は東京朝方に137.71レベルと前日高値を更新してからは利食いの売りも見られNY市場までは高値圏でのもみあいを続けていました。NY市場に入り発表された経済指標が予想よりも弱かったことをきっかけに米金利が低下に転じ、NY昼前には135.81レベルの安値をつけ、引けにかけては米金利とともに136円台後半へと戻して引けました。
8月24日(水)
ドル円は前日急落後の戻しが東京時間は継続、じり安の流れを辿り欧州前場には136.17レベルの安値をつけました。しかし金曜のジャクソンホールに向けての押し目買いを考える向きも多くNY前場には137.24レベルまで戻し、そのまま高値圏での引けとなりました。
8月25日(木)
東京市場のドル円は仲値前後に実需のドル売りが出たことからドル売りが先行し、その後もNY市場までじり安の展開が続きました。NY朝方に136.32レベルの安値をつけたものの、GDP改定値がマイナス成長ではあるものの予想よりも強く136.95レベルまで反発、引けにかけては再びドル売りの動きとなり136円台半ばに押して引けました。
8月26日(金)
東京市場ではジャクソンホールを前に米金利が上昇する動きに連れてドル買いの動きが続きましたが、欧州市場ではユーロ買い・ドル売りの動きに押されてドル円もじり安となりました。NY市場に入りパウエル議長講演前に136.70レベルだったドル円は講演で早期緩和を否定したことで137.34レベルまで上昇、30分の講演予定が8分で終わり材料出尽くしで136.23レベルへと急落と荒っぽい動きの後、引けにかけては再びドル高となり137.53レベルまで上伸し高値引けとなりました。
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先週のドル/円相場はドルが小幅に続伸。7月22日以来の高値圏まで値を上げ、週末NYも137円半ばのドル高値で取引を終えている。
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