来週の為替相場見通し:『米株・米金利のダブル上昇でドル独歩高のシナリオ再開』(7/9朝)

ドル円は今週は再び底堅さを取り戻し、節目136円を回復する動きを見せました。

来週の為替相場見通し:『米株・米金利のダブル上昇でドル独歩高のシナリオ再開』(7/9朝)

『米株・米金利のダブル上昇でドル独歩高のシナリオ再開』

〇今週のドル円、週初134.78まで下落するも、21日線に支えられ、週末にかけ136.57まで上昇
〇FOMC議事要旨でのFRBのタカ派姿勢確認等からの米長期金利上昇、株価上昇がドル円を支援
〇週末は安倍元首相銃撃事件からのアベノミクス逆流の思惑が重石となり136円前後で越週
〇ユーロドル、スタグフレーション懸念の燻る中週初の高値1.0463から週末にかけ1.0072まで急落
〇ドル円、今週は底堅さ取り戻す、複数のサポートが下方向にあり、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも、引き続き日米金融政策の方向性の差や米国のドル高容認スタンスがサポート
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週は米6月消費者物価指数、米当局者発言、米6月小売売上高などに注目集まる
〇来週の予想レンジ(USDJPY):134.75ー137.75、(EURUSD):0.9950−1.0350

今週のレビュー(7/4−7/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初135.32で寄り付いた後、早々に週間安値134.78まで下落しました。しかし、7/1安値134.74や21日移動平均線に続落を阻まれると、@バイデン米大統領が今週中にも中国の関税引き下げを発表するとの一部報道や、A米FOMC議事要旨のタカ派的な結果(楽観的な景気見通しを示す一方、インフレについては高インフレ定着に係る大きなリスクがあると指摘)、BウォラーFRB理事による「利上げを前倒しし大幅に引き上げる必要」「7月に75bp、9月にはおそらく50bpの利上げを支持する」とのタカ派的な発言、Cセントルイス連銀ブラード総裁による「FRBはインフレの急上昇に迅速に対処する必要がある」とのタカ派的な発言、D上記ABCを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは7/6に記録した2.73%から7/8には3.09%へ急上昇→米ドル買い)、E日銀による金融緩和の長期化観測(一部メディアより日銀が7/20ー7/21の金融政策決定会合で2022年度のインフレ見通しを引き上げる一方、成長率見通しを引き下げる方向で検討中との観測報道→国内景気下支えを目的とした金融緩和長期化期待→円売り圧力)、

F対ユーロでのドル買い圧力、G米6月ISM非製造業景況指数(結果55.3、予想54.1)の良好な結果、H米6月非農業部門雇用者数(結果37.2万人、予想26.4万人)の良好な結果、I米6月平均時給(結果+5.1%、予想+5.0%)の市場予想を上回る結果、J米主要株価指数の底堅い動き(米経済を巡る過度な悲観論後退→市場心理改善→リスク選好の円売り)などが支援材料となり、週末にかけて、週間高値136.57まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、K週末を控えたポジション調整や、L安倍元首相銃撃事件に端を発したアベノミクス逆流の思惑(金融緩和終了の思惑→株安・円買いへの警戒感)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間7/9午前4時50分現在)では、136.05前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0424で寄り付いた後、@ユーロ圏6月生産者物価指数(結果36.3%、予想37.1%、前回37.2%、※前年比)の伸び率鈍化や、A上記@を背景とした欧州を巡る過度なインフレ懸念の後退、B株式市場の堅調推移(リスク選好のユーロ買い圧力)が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0463まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、Cスロベニア中銀バスレ総裁による「第4四半期(10ー12月期)にさらなる利上げを行う可能性がある」とのタカ派的な発言や、Dドイツ連銀ナーゲル総裁による「ECBはインフレ対応に焦点を当てるべき」「現在想定されている以上の利上げが必要になるかもしれない」とのタカ派的な発言、EデギンドスECB副総裁による「インフレを取り巻くリスクは上向き」とのタカ派的な発言、F上記CDEを背景とした欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは景気への逆風)、

Gロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシアによるウクライナ攻撃激化)、Hエネルギー供給を巡る不安の高まり(エネルギー価格上昇懸念→欧州圏のインフレ加速→ECBによる金融引き締めで景気がオーバーキルされてしまうリスク)、I欧州株の冴えない動き(リスク回避のユーロ売り・ドル買い圧力)、J欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、K米金利上昇に伴うドル買い圧力、L重要チャートポイント下方ブレイクに伴う失望売り(節目1.03、1.02、1.01を相次ぎ下方ブレイク→パリティ割れを狙った仕掛け的なユーロ売りを誘発)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0072(2002年12月以来、約19年7ヵ月ぶり安値)まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、引けにかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間7/9午前4時50分現在)では、1.0178前後で推移しております。

来週の見通し(7/11−7/15)

<ドル円相場>
ドル円は6/29に記録した約23年9ヵ月ぶり高値137.01をトップに反落に転じると、7/1に一時134.74まで下げ幅を広げましたが、今週は再び底堅さを取り戻し、節目136円を回復する動きを見せました。ダウンサイドに複数のサポートポイントが並んでいること(下落局面で押し目買いが出やすいチャート形状)や、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル(一目均衡表三役好転、強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンド)が成立していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「強い」と判断できます(短期的にも中長期的にも上昇トレンド継続中)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測の高まり(注目されたパウエルFRB議長発言、米FOMC議事要旨、ウォラーFRB理事発言、セントルイス連銀ブラード総裁発言の全てにおいて、米景気より米インフレ抑制を重視する構えが強調)や、A日銀による金融緩和の継続姿勢(黒田総裁は市場で燻る緩和修正の思惑にゼロ回答→来年4/8の任期満了まで金融緩和政策を続ける可能性あり)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(米10年債利回りが2.73%から3.09%へ上昇に転じた一方、本邦10年債利回りはレンジ上限の0.25%に張り付く状態→日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C米政府・米当局によるドル高容認スタンス(インフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え→日銀によるドル売り・円買い為替介入のやりづらさ)、D米国経済を巡る過度な悲観論の後退(米6月ISM非製造業景況指数、米6月雇用統計共に良好な結果→米経済のリセッション懸念後退→市場心理改善→株高に伴うリスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場のアップサイドリスクを連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(但し、安倍元首相の死去を背景に一時的にアベノミクス逆流への警戒感が高まる恐れがあるため、本邦金融緩和終了の思惑を通じた、株安・円買いへの波及経路には念のため注意が必要でしょう)。尚、来週は7/11に予定されているNY連銀ウィリアムズ総裁発言、7/12のリッチモンド連銀バーキン総裁発言、7/13の米6月消費者物価指数、ベージュブック、7/14の米6月生産者物価指数、7/15の米7月NY連銀製造業景況指数、米6月小売売上高、米6月鉱工業生産、米7月ミシガン大消費者信頼感指数、アトランタ連銀ボスティック総裁発言など、注目材料が目白押しとなります。

特に米6月消費者物価指数や米当局者発言、米6月小売売上高などへの注目度が高く、仮に米6月消費者物価指数が市場予想を上回る場合や、米当局者よりインフレ抑制への強いコミットが示される場合、米6月小売売上高が力強い結果となる場合などには、米金利上昇に伴うドル買いと、米株上昇に伴うリスク選好の円売りが組み合わさることから、ドル円には強い上昇圧力が加わるものと推察されます。来週は米金利や米株の動きを睨みながらも、6/29に記録した約23年9ヵ月ぶり高値137.01を試すシナリオを想定いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):134.75ー137.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/30に記録した直近高値1.0788をトップに反落に転じると、今週末にかけて、2002年12月以来、約19年7ヵ月ぶり安値となる1.0072まで急落しました。この間、主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線など)を軒並み下抜けした他、日足・週足・月足の全て強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォークなど)が点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます(パリティ=1.0000割れは時間の問題)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、Aエネルギー価格の供給懸念(エネルギー価格に上昇圧力→ユーロ圏のインフレ長期化懸念)、B上記@Aを背景とした欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは欧州経済をオーバーキルしてしまうリスクあり)、C上記Bを背景とした欧州債利回りの急低下(ユーロ売り圧力)、D米FRBによるタカ派傾斜観測(米国と欧州の金融政策格差→米欧名目金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドルの下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(尚、来週は7/12に予定されているドイツ7月ZEW景況感指数、ユーロ圏7月ZEW景況感指数に注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、欧州経済の後退懸念が一段と高まり、欧州債利回り低下に伴うユーロ売りと、株安に伴うリスク回避のドル買いが組み合わさることから、ユーロドルには強い下落圧力が加わるものと推察されます。状況次第では、2002年12月6日以来、約19年7ヵ月ぶりとなるパリティ=1.0000割れが実現する可能性もあり、来週は週を通してユーロドルの下落リスクに注意が必要でしょう)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9950−1.0350

注:ポイント要約は編集部

『米株・米金利のダブル上昇でドル独歩高のシナリオ再開』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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