来週の為替相場見通し:『ドル円相場は乱高下。日米金融政策格差が市場の焦点』(4/2朝)

ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週初にかけて、約6年7ヵ月ぶり高値となる125.11まで急伸しました

来週の為替相場見通し:『ドル円相場は乱高下。日米金融政策格差が市場の焦点』(4/2朝)

『ドル円相場は乱高下。日米金融政策格差が市場の焦点』

〇ドル円週初121.97から125.11まで急伸、日銀指値オペ実施、ウクライナ情勢好転期待等が背景
〇週後半は利食い売りと当局者等の円安けん制発言、期末のリパトリ観測等に121.28まで急落
〇週末は地政学リスク再燃、雇用統計の堅調に122円台半ばに持ち直す
〇ユーロドル資源価格の低下欧州経済指標の良好な結果に一時1.1185まで急伸
〇ドル円テクニカルの地合い強く、ファンダメンタルズもドル円の買い材料多い
〇反落後も121円台はサポート、上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目か
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):120.50ー124.50、(EURUSD):1.0900−1.1200

今週のレビュー(3/28−4/1)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初121.97で寄り付いた後、@日銀による10年物国債の指し値オペ実施や、A連続指値オペ(3/29から3/31までの連続無制限買い入れ)の通告発表、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(大幅利上げが見込まれる米国と、金融緩和の継続が見込まれる日本のコントラスト)、Cロシア・ウクライナを巡る停戦協議の進展期待(トルコ・イスタンブールでロシアとウクライナの停戦交渉開始)、D上記Cを背景とした株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、E心理的節目123.00、124.00、125.00の大台突破に伴う大規模ストップBUYが支援材料となり、週明け3/28に、2015年8月12日以来、約6年7ヵ月ぶり高値となる125.11まで急伸しました。

しかし、短期間で高騰した反動から利食い売りが優勢となると、F本邦政府・当局者による相次ぐ円安牽制発言(松野官房長官による「最近の円安進行を含め日本経済の動向を注視」や、榊原元財務官による「130円までの円安は問題が生じる」「130円まで円安が進むならば為替介入や利上げでの円安阻止もオプションに入る」、鈴木財務相による「悪い円安にならないようしっかり注視」、神田財務官による「為替の急激な変動は望ましくない」「最近の円安進行含め経済の影響など緊張感もって注視」、岸田文雄首相による「為替の安定は重要であり急速な変動は望ましくない」「米国などと意思疎通を図りつつ適切に対応する」など)や、G本邦年度末に向けてのレパトリ観測、H資源価格の急反落(資源価格下落→インフレ懸念後退→米金利低下→米ドル売りの波及経路と、資源価格下落→本邦貿易赤字拡大懸念後退→円売り圧力後退の波及経路の組み合わせ)、I日経平均株価の下げ幅拡大(リスク回避の円買い再開)、

J米金利低下に伴うドル売り圧力、K米2月PCEコアデフレータ(結果5.4%、予想5.5%、※前年同月比)の市場予想を下回る結果(但し、1983年以来の伸び率を記録)、L月末・四半期末ロンドンフィキシングに絡むドル売りフローが重石となり、週後半にかけて、週間安値121.28まで急落しました。もっとも、心理的節目121.00をバックに下げ渋ると、M日米金融政策格差に着目したドル買い・円売り(日銀は4ー6月期の「中長期債の買い入れ増額」を発表→金融緩和の継続を強調)や、Nロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(有事のドル買い→対ユーロでのドル買い再開→ドル円連れ高)、O米3月雇用統計の堅調な結果(非農業部門雇用者数は市場予想を下回るも前回分と前々回分が上方修正。失業率は低下し、平均時給は上昇→米大幅利上げ観測再燃→米金利上昇→米ドル高)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間4/2午前5時00分現在)では、122.50前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0989で寄り付いた後、早々に週間安値1.0944まで下落しました。しかし、@対円でのユーロ買い圧力(日銀による指し値オペ実施および連続指値オペの通行発表を受けてユーロ円急騰→ユーロドル連れ高)や、Aロシア・ウクライナを巡る停戦期待の高まり(トルコ・イスタンブールで開催された停戦協議で一定の進展あり)、B上記Aを背景としたエネルギー価格の急低下(スタグフレーション懸念後退→欧州経済を巡る過度な悲観論の後退)、C欧州当局者による相次ぐタカ派的な発言(エストニア中銀ミュラー総裁やスロバキア中銀カジミール総裁によるタカ派的な発言)、D上記Cを背景としたECBによる利上げ観測(短期金融市場が複数回の利上げを織り込む動き→欧州債利回り上昇→ユーロ高)、

E欧州株の底堅い動き、F米金利低下に伴うドル売り圧力、GラガルドECB総裁による「ユーロ圏ではスタグフレーションの証拠は見受けられない」との楽観的な発言、H欧州経済指標の良好な結果(ユーロ圏3月経済信頼感指数、同サービス業信頼感指数、同鉱工業信頼感指数など)が支援材料となり、週後半にかけて、3/1以来、約1ヵ月ぶり高値となる1.1185まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、Iロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(ロシア大統領府は「ウクライナとの交渉に急展開はなく、多くの作業が残っている」と発言)や、Jプーチン露大統領による「欧州向け天然ガス供給でルーブルでの代金支払いを要求する」との方針発表、K上記@Aを背景とした欧州経済の先行き不透明感(ECBによる利上げ観測後退→欧州債利回り急低下→ユーロ売り)、

L米雇用統計の良好な結果(米利上げ観測再燃→米金利上昇→米ドル高)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4/2午前5時00分現在)では、1.1050前後で推移しております。尚、4/1に発表されたユーロ圏3月消費者物価指数は前年比+7.5%と市場予想の+6.6%や前月の5.9%を大幅に上回る結果となりましたが、市場の反応は限定的となりました。

来週の見通し(4/4−4/8)

<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週初にかけて、約6年7ヵ月ぶり高値となる125.11まで急伸しました(僅か2ヵ月で11円64銭の急騰劇)。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」が日足・週足・月足で成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(短期間で上昇した反動を受けて125.11示現後に急反落に転じるも、121円台では確りサポートされるなど下値は堅い。あくまで上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目と整理)。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(有事のドル買い圧力)や、A米FRBによるタカ派傾斜観測(米当局者による相次ぐタカ派発言→5月・6月FOMCでの大幅利上げ観測およびバランスシートの早期圧縮期待)、

B日銀による金融緩和の長期化観測(黒田総裁や片岡審議委員など本邦当局者による円安容認発言に加えて、日銀による指し値オペの実施を受けた長期金利の強力な抑制方針)、C上記ABを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り)、D本邦貿易赤字拡大に伴う円売り圧力など、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、市場の関心は、日米金融政策格差に移っているため、来週は4/5の米3月ISM非製造業景況指数や、4/6のFOMC議事要旨に注目が集まります。米3月ISM非製造業景況指数が市場予想を上回る場合や、FOMC議事要旨でバランスシート圧縮について議論されていたことなどが明らかとなれば、米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円には再び強い上昇圧力が加わるものと推察されます(3/28に記録した高値125.11に向けて上昇するシナリオもあり得る)。

ドル円の125円台は2015年6月に当時のオバマ大統領による「ドル高は問題である」とのドル高牽制発言や、黒田総裁による「さらに実質実効為替レートが円安に振れていくということはありそうにない」との円安牽制発言が出てきた日米双方にとっての節目の水準でもあるため、今週は125円台到達後に要人発言への警戒感から急反落に転じる展開となりましたが、今回は当時とは異なり、米国が歴史的なインフレ環境下に置かれているため、インフレを和らげる効果のあるドル高には容認的なスタンスを見せる公算が大きいのではないかと考えられます。円安牽制とドル高牽制のダブルパンチはインパクトが絶大であるものの、円安牽制単体のシングルパンチは「インパクトが弱い」との見方もあるため、ドル円は来週以降、再び上値を試す展開となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):120.50ー124.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は週後半にかけて約1ヵ月ぶり高値1.1185まで上値を伸ばすも、週末にかけて1.10台半ばへ反落する冴えない動きとなりました。上方から一目均衡表の雲が垂れ下がってくることや、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しいと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(ECBによる利上げ観測後退→欧州債利回り低下→ユーロ売り)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(米長期金利上昇→米ドル買い)、C上記ABを背景とした欧米金融政策の方向性の違いなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買い基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は4/4に発表されるユーロ圏2月生産者物価指数に加えて、ロシア・ウクライナを巡るヘッドラインと、それに伴う欧州債利回りおよび、エネルギー価格の動向に注目が集まります。インフレ指標が市場予想を上回る場合には、スタグフレーション懸念の高まりを通じて、ユーロドルには強い下押し圧力が加わるものと推察されます(3月に発表されたユーロ圏PMI、ドイツZEW景況感指数、ドイツIFO景況感指数が軒並み冴えない結果となった一方、4/1に発表されたユーロ圏CPIは急上昇)。

また、ロシア・ウクライナを巡るヘッドラインもユーロドルの重石となり得る他(停戦期待が高まる場面では一時的にユーロ高で反応する可能性が高いものの、金融制裁・経済制裁の解除や、エネルギー価格低下までには相応の時間がかかるとの見方が根強い)、4/10に予定されているフランスの大統領選挙も波乱要因として警戒されます。来週はユーロドル相場のダウンサイドリスクとボラティリティ拡大に注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0900−1.1200

注:ポイント要約は編集部

『ドル円相場は乱高下。日米金融政策格差が市場の焦点』

ドル円日足

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