ドル円見通し 125円到達後の調整は一服、新たな円安容認水準を試すか(週報4月第1週)

2021年1月6日安値102.57円を起点とした上昇は1年を超えて3月28日高値125.10円までの上昇幅は22.53円に拡大した。

ドル円見通し 125円到達後の調整は一服、新たな円安容認水準を試すか(週報4月第1週)

125円到達後の調整は一服、新たな円安容認水準を試すか

〇先週のドル円、週初2015年8月来の高値125.10に上昇するも3/31には121.26まで下落、122.49で越週
〇米長期債利回りの連騰一服、125円到達をもっていったん調整安に
〇125円到達後円安けん制発言も出ているが、123円台での指値オペ通告は130円までの円安の可能性示唆
〇主要国中銀が引き締めを強化する中、日本のみ金融緩和継続の場合、悪い円売りエスカレートの可能性も
〇週足は先週長い上ヒゲを残し、今週下落継続の場合弱気サイン、上ヒゲをつぶす上昇に入れるか要注目
〇122円を維持するうちは上向き、4/1高値123.03超えからは124円台を目指す
〇122円割れからは3/31安値121.26試し底割れの場合119円台前半を試すか

【概況】

ドル円は3月28日に125.10円へ上昇、2015年8月以来の125円到達となりアベノミクスから日銀異次元金融緩和による円安期につけた2015年6月5日高値125.84円に迫ったが、125円到達後の高値警戒感と当面の円売り材料出尽くし感及び米10年債利回りがいったん低下したことから調整に入り、3月31日夜には121.26円まで下落して28日高値からは3.84円の円高ドル安となった。その後は下げ渋りからやや持ち直しに入り、4月1日夜の米雇用統計を通過して123.03円へ上昇、31日夜安値からの戻り幅は1.77円となったものの3月28日からの下げ幅に対する半値戻しには一歩届かずに122.49円で週を終えた。

【2015年の黒田ラインに到達】

2021年1月6日安値102.57円を起点とした上昇は1年を超えて3月28日高値125.10円までの上昇幅は22.53円に拡大した。2015年以降では2016年6月24日安値99.04円から同年12月15日高値118.65円まで19.61円の大上昇だったところを超える規模となった。また3月に入ってからの5週間で10円を超える規模の大上昇であり、2016年11月9日安値101.19円から同年12月15日高値への急騰時(トランプ・ラリー)、2014年10月15日安値105.19円から同年12月8日高値121.84円への急騰時(黒田バズーカ第二弾)に匹敵する勢いとなった。

2021年1月底を起点とした円安ドル高は、@パンデミック発生ショックによる当初の不況から景気回復へ進む中で感染再拡大の波が繰り返されたことによるサプライチェーン混乱=人手不足とモノ不足によるインフレ進行、A主要国中銀の金融緩和から金融引き締めへの政策姿勢転換への動きを反映した長期債利回り上昇の本格化と特に米長期債利回り上昇との対比による日米長期金利差の拡大、B原油高騰による日本における輸入インフレと経常収支悪化からの悪い円安の発生、Cそれがロシア・ウクライナ戦争勃発とロシア制裁により一段と過熱した状況を背景としてきた。また米連銀の3月利上げ開始と利上げペース加速姿勢による米長期債利回りの急伸、ウクライナ情勢の混迷により円売りが加速して1月4日高値114.34円と2月10日高値114.33円によるダブルトップラインを超えたことがテクニカル的な円売りドル買いを勢い付けた。

3月28日には日銀が新発10年債利回りの上昇を抑制するために指値オペを実施、さらに29日以降の連続指値オペを通告したことで日銀による円安容認ラインが2015年6月高値を超える可能性も浮上したとして125円に到達したが、米長期債利回りの連騰が一服したこともあり、125円到達をもっていったん調整安に入ったところといえる。
125円到達後は岸田政権による若干の円安けん制発言、財務官による注視発言等も出ているが、123円台到達時点での指値オペ通告を踏まえれば、来年4月の黒田日銀総裁の任期満了までは金融緩和政策とYCC(イールドカーブコントロールによる長期金利上昇抑制)が継続し、125円も壁にはならずに130円を目指す可能性もあるところと思われる。

【米10年債利回り反騰、2年債利回りは2019年3月来高値更新】

3月21日のパウエル米連銀議長による0.50%の利上げもあり得るとの発言から米連銀高官による0.50%利上げを複数回含めた今年の利上げペース加速支持が相次いだ。これを受けて米10年債利回りは3月28日に2.55%へ上昇してパンデミック以降の最高値を更新、その後は材料消化で3月31日の2.30%までいったん低下したが週末の4月1日は前日比0.05%上昇の2.39%へ切り返した。
利上げに敏感となる2年債利回りは4月1日に前日比0.12%上昇して2.46%を付けて2019年3月以降の高値更新となり10年債利回りを上回る逆イールドとなった。

4月1日の米3月雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比43.1万人増となる予想の49.0万人増に届かず2月の75.0万人増(速報の67.8万人増から上方修正)から鈍化したが順調な回復ペースで推移しており、失業率は2月の3.8%から3.6%へ改善した。平均時給は前年比で5.6%上昇となる2月の5.2%上昇から伸びが加速している。
3月31日に発表された2月の個人消費支出(PCE)デフレーターの前年比も6.4%上昇で1月の6.0%から伸びて40年ぶりの高水準、コア指数も5.4%上昇で39年ぶりの高水準となっている。インフレ進行の最大要因でもある原油価格の高騰はNY原油期近が3月7日に130.50ドルへ急伸したところで目先のピークを付けているものの2月後半から一段高した水準を維持しており、ウクライナ情勢及びロシア制裁による国際商品市場の高騰感は先行き不透明なままである。

景気回復が続けばサプライチェーンは一層混乱し、ロシア原油以外の原油調達、ロシア及びウクライナからの穀物・飼料・肥料・非鉄金属等の供給削減で争奪戦となれば昨年来の世界的なインフレも収まりがつかず、主要国中銀による引き締め強化、利上げペース加速は免れないだろう。その際に金融緩和にこだわり輸入インフレと経常収支悪化を招く状況が続けば悪い円売りが一段とエスカレートする可能性もある状況と思われる。

【ドル円週足の長い上ヒゲと当面のポイント】

【ドル円週足の長い上ヒゲと当面のポイント】

ドル円は3月28日高値からの調整安により、週足チャートでは長い上ヒゲを付けた。上ヒゲの幅は2.61円ある。長い上ヒゲを残したまま翌週に下落するようだと、いわゆる「塔婆」型の弱気サインとなり当面の高値を出し切って調整局面が長引く可能性が出てくるが、翌週から上ヒゲのレンジをつぶす上昇に入れば上ヒゲによる上値抵抗感が後退して上昇に弾みがつくことも考えられる。
長いヒゲとしては2015年8月24日への急落時、2019年1月3日の一時的な急落時、2020年3月9日のパンデミック発生初期の一時的急落時等に匹敵するので、まずは上ヒゲをつぶす上昇に入れるかどうかを見定めたいところだ。

短期的には3月28日高値から3月31日深夜安値までの下落幅に対する半値戻しをクリアして上昇期に入れるか、3月31日深夜安値を割り込んでもう一段安を試してから出直りの機会を伺うか、試されるところだ。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、122円を下値支持線、4月1日夜高値123.03円を上値抵抗線とする。
(2)122円以上を維持するか、一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、123.03円超えからは124円台回復を目指す流れとみる。124円台後半から125円に迫るところでは戻り売りも出やすいとみるが、米長期債利回り上昇で日銀のYCC政策変わらずなら3月28日高値を超えてゆく流れを作りやすいとみる。

(3)122円割れから続落の場合は3月31日深夜安値121.26円試しとし、底割れの場合は4月1日夜への上昇幅の倍返しとなる119.49円、3月28日高値から3月31日深夜安値への下げ幅と同規模の二段下げとして119.19円等、119円台前半を試す流れを想定する。米長期債利回りの上昇が一服する場合や日本政府等による円安けん制発言に影響される場合、または3月29日にロシアとウクライナの停戦協議進展報道からドル安となった影響で円も買い戻された時のように停戦合意への期待が強まる場合はこのケースと考えるが、中長期的な円安ドル高基調が継続するなら120円以下は買い拾われる水準と考える。

【当面の主な予定】

4/4(月)
休場、中国、台湾
08:50 (日) 3月 マネタリーベース 前年同月比 (2月 7.6%)
10:30 (豪) 3月 求人広告件数 前月比 (2月 8.4%)
15:00 (独) 2月 貿易収支 (1月 35億ユーロ、予想 101億ユーロ)
18:05 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
23:00 (米) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 1.4%、予想 -0.6%)
23:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演

4/5(火)
休場、中国、香港、台湾
08:00 (豪) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 57.4)
08:30 (日) 2月 全世帯消費支出 前年同月比 (1月 6.9%、予想 2.7%)
13:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
16:55 (独) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 55.0、予想 55.0)
17:00 (欧) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 54.8、予想 54.8)
17:30 (英) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 61.0、予想 61.0)
21:30 (米) 2月 貿易収支 (1月 -897億ドル、予想 -885億ドル)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 58.9、予想 58.9)
23:00 (米) 3月 ISM非製造業景況指数 (2月 56.5、予想 58.4)
23:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ブレイナード連銀理事、討論会参加
27:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加

4/6(水)
休場、タイ
NATO外相会議(4/7まで)
10:45 (中) 3月 財新サービス業PMI (2月 50.2、予想 49.8)
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 1.8%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前年同月比 (1月 7.3%、予想 5.8%)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 5.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 30.6%、予想 31.7%)
19:45 (欧) レーンECB理事、講演
22:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

4/7(木)
10:30 (豪) 2月 貿易収支 (1月 128.91億豪ドル、予想 117.00億豪ドル)
14:30 (日) 野口日銀審議委員、会見
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI速報値 (1月 102.5、予想 100.8)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI速報値 (1月 95.6、予想 95.5)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 2.7%、予想 0.3%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 1.8%、予想 3.7%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.2%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 7.8%、予想 4.9%)
20:30 (欧) 欧州中銀理事会議事要旨
21:15 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 20.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 130.7万人、予想 130.1万人)
22:00 () ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
27:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント参加
28:00 (米) 2月 消費者信用残高 前月比 (1月 68.4億ドル、予想 170.0億ドル)
29:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

4/8(金)
08:50 (日) 2月 経常収支・季調前 (1月 -1兆1887億円、予想 1兆4499億円)
08:50 (日) 2月 経常収支・季調済 (1月 1917億円、予想 2748億円)
08:50 (日) 2月 貿易収支・国際収支ベース (1月 -1兆6043億円、予想 -2044億円)
14:00 (日) 3月 消費者態度指数・一般世帯 (2月 35.3、予想 36.8)
15:00 (日) 3月 景気ウオッチャー現状判断DI (2月 37.7、予想 45.0)
15:00 (日) 3月 景気ウオッチャー先行判断DI (2月 44.4、予想 47.5)
23:00 (米) 2月 卸売売上高 前月比 (1月 4.0%)


注:ポイント要約は編集部

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