ドル高基調継続か、ついに120円台乗せも視界内へ
〇先週のドル円、週末119.40まで値を上げ2016年2月以来高値圏へ
〇16日公表米FOMC、0.25%利上げ実施、全体的にタカ派的内容
〇FRBは年内7回利上げを想定、一方日銀は大規模金融緩和維持、今週もドル高基調継続か
〇今週は米2月新築住宅販売戸数、同耐久財受注、G7首脳会合を予定
〇今週のドル/円予想レンジは117.70-120.20、119.40をめぐる攻防に注目
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドル一段高。週末にかけ高値119.40円を示現、ついに120円台回復も視界内へと捉えられてきた。
前週末、ロシアのペスコフ報道官から4回目の停戦交渉が「14日にも行われる見通し」と伝えられたほか、最終段階に入っていた米国とイランの間接協議が一転、「崩壊の危機に直面している」などと報じられ思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた117.30円前後を週間安値に、緩やかな右肩上がり。大きな調整らしい調整の動きもないまま118.66円など、上方向のテクニカルポイントを次々に突破。結果2円以上も上昇し、週末には週間高値である119.40円まで値を上げている。さすがに大引けにかけては若干値を崩したものの、それでも119円台をキープ。週末NYは119.15円レベルで取引を終え、越週となった。
なお、先週はドル/円以外、いわゆるクロス円も軒並み上値を試す展開。つまり、円は全面安商状で、たとえば豪ドル/円やNZドル/円、カナダ/円、ランド/円などが年初来高値を更新している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ウクライナ情勢」と「日米金融政策」について。
前者は、「ウクライナ北部リウネ州のテレビ塔を空爆」、「南部ザポロジエ原発の敷地内でロシアが弾薬を爆発させている」、「ロシア軍が南部マリウポリで退避中の民間人車列を砲撃した」−−などといった報道が伝えられるなか、前述したように「14日」に4回目の停戦交渉が行われている。2度の延長を経ての協議となったが、結果的にはまとまらず。しかし、英紙FTが「ウクライナ政府が中立化を宣言し、軍隊の制限を受け入れるなら、停戦しロシア軍が撤退する計画」と指摘するなど、一定の進展はあったようだ。実際、ウクライナ側からは「近く停戦すると確信」などといった論調が目立つ反面、ロシア側はそんな楽観的な見通しをおおむね否定するなど、情報がやや錯綜している感じがする。
対して後者は、市場筋の期待が高かった米FOMCの結果が16日に公表され、「0.25%の利上げ」が実施されたうえ、全体的なタカ派な内容に。とくにFOMCメンバーの考えが示された「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」は、今年だけで0.25%の利上げが7回実施されても不思議はないというものになった。また、その後のパウエルFRB議長会見でも「必要に応じて金融引き締めの動きを加速させることもありうる」と述べるなど、予想よりも強気の内容だったとの見方が有力だ。一方、日銀はその翌17日に金融政策決定会合の結果として、「現在の大規模な金融緩和策を維持」すると発表している。
<< 今週の見通し >>
ドル/円は過去2週間だけで4円強、一連のドル高がはじまったとみられる2月24日安値114.40円を起点とすれば5円もの上昇をたどっていることになる。そのあいだ明確な調整らしい調整もない右肩上がり。リスクは間違いなく120円方向で、さらなるドル高の進行には要注意だが、ポジションがかなり偏ってきたことは気掛かりだ。前記したように、これまでの上げ幅からすると、たとえ調整であっても1円を超える振り落としが入ることは十分予想の範囲内。ドルの高値掴みなどにも一応要注意。
先週の米FOMCを受けて、米金融政策は「年内7回の実施もありうる」と指摘される反面、日本は日銀が「現在の大規模な金融緩和策を維持する」と発表している。金利差がすべてでないとはいえ、ドル/円が大きく下落する展開は正直見込みにくいと言わざるを得ない。今週も基本的にはドルが底堅く推移する公算が大きいだろう。そうしたなか、市場でやや懸念され始めているのは本邦要人からの「円安けん制」発言。先週の黒田日銀総裁のコメントを見る限り、まだ容認しているものの、120円を大きく超えるようだとトーンが変わるといった見方も少なくない。
テクニカルに見た場合、ドル/円は中期的なターゲットとされた118.66円を超えると119円台乗せ。2016年2月以来のドル高値圏での推移となっている。ポジションの偏りは気掛かりだが、リスクそのものはほぼ間違いなくドル高方向。なお、そんなドルの上値メドは2015年高値125.86円を起点に、2016年安値99円まで下落したことに対する76.4%戻しにあたる119円半ばで、超えればいよいよ120円台乗せか。軽い青天井と化す可能性も否定できない。
材料的に見た場合、中長期的には、18日に実施された米中首脳会談で米国は改めてロシア支援に対してクギを刺した「中国情勢」、日本を含め世界が正常化へ向けて歩むなか依然として感染者の増加が止まらない中国や韓国の状況が気掛かりな「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」、「エネルギー・穀物相場への懸念」、−−などに注目。
そうしたなか今週は、2月の新築住宅販売戸数や同耐久財受注といった米経済指標が発表されるほか、米国を中心に中銀関係者の講演など発言機会も相次ぐ。また、24日に実施されるG7首脳会合をはじめ、ウクライナ情勢に関するニュースなどにも引き続き要注意だ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、117.70-120.20円。ドル高・円安についてはフィボナッチポイントも近い先週高値119.40円をめぐる攻防にまずは注目。抜ければいよいよ120円台乗せも。
対するドル安・円高方向は、118.40円レベルに弱いサポート。その下だと117.70円にもサポートが存在している。底堅いイメージだが、本格調整が入ればそれでもなかなかのドル下押しか。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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