ドル円 円安継続も120円を前に足踏み(週報3月第3週)

先週も週初から円安が進行し金曜には高値119.40レベルと月曜安値117.46レベルから約2円の円安となりました。

ドル円 円安継続も120円を前に足踏み(週報3月第3週)

円安継続も120円を前に足踏み

〇ドル円、先週金曜119.40まで上昇、米国0.25%利上げで日米金利差拡大
〇日銀は大規模緩和継続、円安で輸入価格上昇、当局の今後の発言注視
〇今週はFRB関係者ら講演、米3月製造業サービス業PMI速報値公表など予定
〇次の長期ターゲットは119.92、120円の大台今週は超えないとみる
〇今週は118.10レベルをサポートに119.90レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通し

先週も週初から円安が進行し金曜には高値119.40レベルと月曜安値117.46レベルから約2円の円安となりました。材料としてはFOMCと日銀会合と2つの金融政策決定会合を前に、米国の0.25%利上げと日銀の現状維持がコンセンサスとなって日米金利差拡大がドル円の上昇要因となりました。そして先週はクロス円でも円売りが目立ったことで円が最弱通貨という一週間となっていました。

ロシア・ウクライナの停戦協議が長期化しそうなことも継続するドル買い材料ですが、もっとも地政学リスクや景気への影響が大きいユーロが対円でも買いとなったことから上述の通り他のクロス円でも円が弱かったということにつながりました。

日銀会合後の黒田総裁会見ではCPIが高くても大規模緩和を継続し、円安も肯定する発言となりましたが、欧米の中銀のように出口戦略について日銀は真剣に考えているのか疑問です。現在の実効為替レートは1973年の変動相場制移行後もっとも円安となっていて、エネルギー価格をはじめ多くの物が急騰している中で、円安放置は輸入価格上昇となり、国内のインフレに直結します。商品価格が上昇し始めた時期と円安に転換した時期が2021年初と重なっていますが、2021年1月のドル円安値は102.60レベルでしたから、先週のドル円高値119.40まで16.8円、率にして16.4%分は円安による輸入価格の上昇です。

財務省では為替政策のトップである財務官、そして財務相も為替相場を注視すると警戒発言をしていますが、口調を強めて「現在の円安は行き過ぎ」と口先介入をするだけでも輸入価格の上昇を抑えられるはずなのですが、当局も日銀もそれほど円安を気にしていないというよりも故意に輸入価格を上昇させているのではないかと勘繰ってしまいたくなるほどです。

個人的には日本経済のことを考えるといつ円安を牽制する発言の口調が強まってもおかしくは無いと思いますし、おそらくはエコノミストや有力な市場参加者も同様の見方をそろそろしていると思いますので、今週も当局の発言には注意したいところです。

また今週は経済指標よりもFRB関係者、ECB関係者の講演が連日目白押しです。どちらもタカ派的な発言が出やすい地合いのため、発言内容によってドル買い、ユーロ買い(ドル売り)と細かな振れは出てくると思いますが、水準的に120円の大台を超えていくのは今週では無いと見ています。先週の月足チャートで見た通り、2015年高値とその後の安値のフィボナッチ・リトレースメントのターゲットは119.92と120円の大台と重なっていますので、同水準を強く意識したいところです。

いつもの日足チャートもご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

上にある赤い水平線は次の長期ターゲットである119.92です。また下値は先週まで機能していた11月高値と1月高値を結んだレジスタンスラインが今週は118.00レベルへと上がってきます。今週もドルの押し目買いが続きやすい地合いは変わらないのですが、円安ペースがやや速過ぎることもあり、一時的な下げには注意が必要です。118.10レベルをサポートに119.90レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月21日(月)
**:** 東京市場休場
06:45 NZ2月貿易収支
16:00 ドイツ2月PPI ☆
16:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
18:00 フィンランド中銀総裁講演
21:00 (アトランタ連銀総裁講演)
24:30 ドイツ連銀総裁講演 ☆
25:00 パウエルFRB議長講演 ☆

3月22日(火)
12:30 豪中銀総裁講演
16:20 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:35 フランス中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏1月建設支出
22:00 パネッタECB理事講演
22:15 ラガルドECB総裁講演
23:00 米国3月リッチモンド連銀製造業景況指数
23:35 NY連銀総裁講演 ☆
24:15 カンリフ英中銀副総裁講演 ☆
26:00 レーンECB理事講演 ☆
27:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

3月23日(水)
06:00 クリーブランド連銀総裁講演 ☆
16:00 英国2月CPI ☆
17:00 南ア2月CPI
21:00 パウエルFRB議長講演
21:00 英中銀総裁講演 ☆
21:00 ドイツ連銀総裁講演
23:00 米国2月新築住宅販売
23:30 週間原油在庫統計
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値 ☆
24:30 イタリア中銀総裁講演
24:45 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
28:00 セントルイス連銀総裁講演 ☆

3月24日(木)
08:50 日銀会合議事要旨公表
10:05 セントルイス連銀総裁講演
16:45 フランス3月企業景況感
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 エルダーソンECB理事講演
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国2月耐久財受注
21:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)
**:** 南ア中銀政策金利発表
22:10 ウォラーFRB理事講演 ☆
22:45 米国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:50 (シカゴ連銀総裁講演)
24:00 (アトランタ連銀総裁講演)
**:** EUサミット(〜25日)☆

3月25日(金)
08:30 本邦3月東京区部CPI ☆
09:01 英国3月GFK消費者信頼感 ☆
13:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
16:00 英国2月小売売上高
18:00 ドイツ3月ifo企業景況感 ☆
22:10 ウォラーFRB理事講演
23:00 NY連銀総裁講演
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感
23:00 米国2月住宅販売保留件数
24:30 リッチモンド連銀総裁講演 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月14日(月)
ドル円は前週金曜に続いて円全面安の動きとなりました。16日のFOMCでは0.25%利上げのいっぽうで18日の日銀会合では現状維持となることがコンセンサスとなっていることから今後も日米金利差拡大を考えた買いがかなり入ってきている様子でした。米国10年最利回りも2.147%まで上昇し、2019年6月以来の水準となっていることからNY市場では118.22レベルまで上昇し、高値圏での引けとなりました。

3月15日(火)
ドル円は円安の流れを継続してのスタートとなり、東京朝方に財務相が為替の動きを注視しているとの発言にも動きを止めず、仲値過ぎには118.45レベルの高値をつけました。その後中国株式市場が下げる動きとともに徐々に上値が重くなり、欧州市場序盤には急速に水準を下げ117.70レベルの安値をつけました。海外市場に移ってからは改めて円売りの動きとなり引けにかけては改めて東京高値に近づく動きで引けました。

3月16日(水)
ドル円はFOMCを控えてNY朝方までは118円台前半の狭いレンジでの取引を続けていました。NY市場昼前にFOMCでの利上げとタカ派発言を期待したドル買いが再開し直近高値を上抜け。FOMCでは予想通り0.25%の利上げとなりましたが、金利見通しが年内合計で1.75%と市場参加者の見方に寄せてきたことから直後には119.12レベルまで上昇し、引けにかけては利食いも出て118.70レベルでの引けとなりました。

3月17日(木)
ドル円はFOMCを終えて高値圏でのもみあいを続けていましたが、NY市場昼前にユーロが買われる動きとともにややドル売りが目立つ流れでした。ただ急速な円安が進む中で金曜日銀会合後の黒田日銀総裁会見にも注目が集まり、動きにくい地合いでの引けとなりました。

3月18日(金)
ドル円は金曜も朝からじりじりと円安が進んでいましたが、日銀会合後の黒田総裁会見でも円安を肯定する発言が出たことで円売りへの安心感が広がり、海外市場に移ってからはユーロドル売りの動きも手伝ってNY前場には119.40レベルまで上昇後、やや押しての引けとなりました。

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