『ドル高・円安基調の継続を想定。心理的節目120円突破が視野に』
〇今週のドル円、週初117.30まで下落後、週末にかけて一時119.41まで急伸
〇今週開催されたFOMCでのタカ派傾斜観測と、結果としてのタカ派な内容が背景
〇好調な米指標や日銀黒田総裁の記者会見での円安容認姿勢もドル円をサポート
〇ユーロドル1.0900から1.1138のレンジ、週末はウクライナ情勢後退が重石となり1.1050前後で推移
〇ドル円、約6年1ヵ月ぶり高値をつけ、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策格差、地政学リスク長期化等ドル買い円売り材料揃う
〇ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):117.75ー120.75、(EURUSD):1.0875−1.1175
今週のレビュー(3/14−3/18)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初117.34で寄り付いた後、早々に週間安値117.30まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@米FOMCを控えた警戒感(先週発表された米2月消費者物価指数が約40年ぶり高水準を記録したことや、ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクでエネルギー価格が高騰していることなどを受けて、米FOMCが予想以上にタカ派的になるとの思惑)や、Aロシア・ウクライナを巡る停戦期待(株式市場の急反発→リスク選好のクロス円上昇→ドル円連れ高)、B本邦輸入企業による実需のドル買い需要、C米FOMCのタカ派的な結果(予想通り25bpの利上げが決定された他、声明文でセントルイス連銀ブラード総裁が50bpの利上げを主張。更に、ドットチャートで年内計7回の利上げ実施が示唆された他、バランスシートの早期縮小の可能性も示唆)、DパウエルFRB議長によるタカ派的な記者会見(行動加速が適切となれば行動するだろう。バランスシート縮小の発表は早ければ5月になるだろう)、
E上記CDを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りが2019年5月30日以来、約2年10ヵ月ぶり高水準となる2.24%まで急上昇)、F米経済指標の堅調な結果(米2月住宅着工件数、米2月建設許可件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米新規失業保険申請件数は軒並み良好な結果)、G米主要株価指数の堅調推移(リスクオンの円売り圧力)、H黒田BOJ総裁によるハト派的な記者会見(日銀金融政策決定会合後の記者会見で「商品価格の上昇で物価が2%になっても目標達成ではない」「必要なら追加緩和措置を講じる」と発言した他、足元の円安についても「輸出増などを通じて経済全体に恩恵がある」と円安容認姿勢を強調)、
I米当局者による相次ぐタカ派的な発言(ウォラーFRB理事やセントルイス連銀ブラード総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁)などが支援材料となり、週末にかけて、週間高値119.41まで急伸しました(2016年2月3日以来、約6年1ヵ月ぶり高値圏)。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間3/19午前4時00分現在)では119.15前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0943で寄り付いた後、早々に週間安値1.0900まで下落しました。しかし、心理的節目1.0900をバックに下げ渋ると、@ロシア・ウクライナを巡る停戦期待の高まりや、A上記@を背景とした欧州株の堅調推移(地政学的リスクの後退期待→天然ガスや原油などエネルギー価格下落→欧州経済に対する過度な悲観論の後退→欧州株反発)、B短期筋のショートカバー、C欧州債利回りの急上昇(ドイツ10年債利回りは2018年11月15日以来となる0.40%へ急上昇)、
D米FOMCを通過したことに伴う材料出尽くし感、E対英ポンドでのユーロ買い圧力(BOEは今週、政策金利を0.50%から0.75%に予想通り25bp引き上げるも、カンリフ副総裁が金利据え置きを主張していたことや、声明文で金融政策の先行きに関する部分を「追加利上げの可能性が強い」から「追加利上げの可能性がある」へトーンダウンさせたことで英ポンド売りが活発化)、Fオランダ中銀クノット総裁による「年内2回の利上げも排除しない」とのタカ派的な発言、Gイタリア中銀ビスコ総裁による「金融政策を緩やかに正常化することは最も適切」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1138( 3/2以来、約2週間ぶり高値圏)まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、Hロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(プーチン露大統領はショルツ独首相に対して「ウクライナは交渉を長引かせている」と発言)などが重石となり、本稿執筆時点(日本時間3/19午前4時00分現在)では、1.1050前後で推移しております。
来週の見通し(3/21−3/25)
<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約6年1ヵ月ぶり高値となる119.41まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や強気のパーフェクトオーダー、強気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを決定付けるチャート形状となっております。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(地政学的リスクが高まる局面では「有事のドル買い」、地政学的リスクが和らぐ局面では「リスク選好の円売り」が強まることから、いずれのケースにおいてもドル円相場は上昇しやすい)や、Aエネルギー価格高騰に伴う世界的なインフレ懸念(原油や天然ガスの高止まり)、B上記Aを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(今週発表された米FOMCでタカ派的なスタンスが明確化)、
C日銀による金融緩和の長期化観測(今週発表された日銀金融政策決定会合で黒田総裁はハト派的なスタンスを明確化)、D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り圧力)、E本邦貿易赤字拡大に伴う円売り圧力、F輸入企業による実需のドル買い圧力など、ドル高・円安を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はロシア・ウクライナを巡る続報に加えて、ブラックアウト期間明けの米当局者発言に注目が集まります。
アトランタ連銀ボスティック総裁、パウエルFRB議長、ニューヨーク連銀ウイリアムズ総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ウォラーFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁など複数の米当局者発言が予定されているため、来週は利上げペースに加えて、バランスシート圧縮ペースについてのヒントを探る動きが広がりそうです(心理的節目120円の大台越えを試す動きを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):117.75ー120.75
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、3/7にかけて、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.0805まで急落しましたが、今週は一転して買戻し機運が強まり、週後半にかけて1.1138まで持ち直す動きとなりました。但し、上方に21日移動平均線や一目均衡表基準線などのレジスタンスポイントを控えていること、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが成立していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(上値余地は乏しい)と判断できます(事実、ユーロドルは週末にかけて1.10台半ばへ再び反落)。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(地政学的リスクに端を発した「有事のドル買い」)や、Aエネルギー価格高騰に伴う欧州経済への下押し圧力(スタグフレーション懸念の高まり。今週発表されたドイツ3月ZEW景況感調査は予想10.0に対して結果が▲39.3と調査開始以来最大の低下を記録。またドイツZEW研究所は「近い将来のスタグフレーションを予想する」との見解発表)、
B米FRBによるタカ派傾斜観測(今週発表された米FOMCでタカ派的なスタンスが明確化)、C上記ABを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はロシア・ウクライナ情勢を巡る続報に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻後の影響を含んだ3月の経済データ(ユーロ圏3月消費者信頼感指数、ユーロ圏3月製造業PMI速報値、ユーロ圏3月サービス業PMI速報値、ドイツ3月IFO景況感指数など)に注目が集まります。今週発表されたドイツ3月ZEW景況感調査が冴えない結果となったことから、これらの数字も急低下する恐れがあるため、来週はユーロ圏経済の先行き不透明感を改めて織り込む動きが広がりそうです(尚、来週はラガルドECB総裁や、アイルランド中銀マクルーフ総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、デギンドスECB副総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、パネッタECB専務理事、レーンECB専務理事、エンルダーソンECB専務理事など複数のECB当局者発言にも注目)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0875−1.1175
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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