来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベントに注目。ドル円は続伸リスクに要警戒』(3/12朝)

ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約5年2ヵ月ぶり高値となる117.36まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『日米金融政策イベントに注目。ドル円は続伸リスクに要警戒』(3/12朝)

『日米金融政策イベントに注目。ドル円は続伸リスクに要警戒』

〇今週のドル円、週末にかけ2017/1/9以来、約5年2ヵ月ぶり高値となる117.36まで急伸
〇ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりとエネルギー価格の急上昇が背景
〇米2月消費者物価指数の伸び率加速を背景とした米FRBのタカ派傾斜観測がトリガーに
〇ユーロドル、週明け早々に1.0805まで下落するも週後半にかけ週間高値1.1121まで急伸
〇欧州連合の大規模な共同債発行検討報道やECB理事会のタカ派的な結果が背景
〇その後ラガルドECB総裁のスタグフレーション警戒発言、米CPIの結果に1.09近辺に反落
〇ドル円、主要テクニカルポイントを軒並み上抜け、強い買いシグナルも点灯、地合い強い
〇ファンダメンタルズも「有事のドル買い」、日米金利差拡大観測等ドル買い円売り要因多い
〇ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想、FOMC、日銀金融政策決定会合に注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):116.00ー119.00、(EURUSD):1.0700−1.1100

今週のレビュー(3/7−3/11)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初114.82で寄り付いた後、早々に週間安値114.79まで下落しました。しかし、一目均衡表雲上限に続落を阻まれると、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(有事のドル買い)や、A上記@を背景としたエネルギー価格の急上昇(天然ガスに加えてニッケル価格も史上最高値を更新。また、「米国および英国がロシアからの原油禁輸を検討している」との報道で原油先物価格も高騰)、B一部通信社による「日銀が3/17ー18の金融政策決定会合で景気判断を引き下げる方向で調整している」とのヘッドライン(金融緩和の長期化観測)、C黒田日銀総裁による「原油や穀物上昇でも景気に悪影響及ぼす金融緩和の縮小や金融引き締めは適当でない」とのハト派発言、

D米2月消費者物価指数の伸び率加速(前年比7.9%と約40年ぶり高水準を記録)、E上記Dを背景とした米FRBのタカ派傾斜観測(3/15ー16に予定されている米FOMCでの大幅利上げ観測再浮上→米10年債利回りは週初に記録した1.66%から週末には2.02%まで急上昇→米ドル独歩高)、Fテクニカル的な地合いの強さ(1/4に記録した直近高値116.36を上方ブレイク→短期筋のみならず中長期筋のストップBUYを誘発)が支援材料となり、週末にかけて、2017年1月9日以来、約5年2ヵ月ぶり高値となる117.36まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間3/12午前6時00分現在)では、117.27前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0953で寄り付いた後、@ロシア・ウクライナを巡る地政学リスクの高まり(ウクライナ南東部の原子力発電所がロシア軍に掌握されたとの一部報道やブリンケン米国務長官による「欧州の同盟国・有志国と協調して、ロシアから原油輸入を禁止する可能性について検討するよう協議している」とのサプライズ表明)や、A上記@を背景としたエネルギー価格の急上昇(原油先物や天然ガス、ニッケル価格などが高騰)、B欧州経済の先行き不透明感(エネルギー価格高騰に伴う欧州経済のスタグフレーション懸念)、Cユーロ圏3月投資家センチメント指数(結果▲7.0、前月+16.6)の急低下が重石となり、週明け早々に、週間安値1.0805(2020年5月以来、約1年9ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。
しかし、心理的節目1.0800をバックに下げ渋ると、D欧州連合が大規模な共同債を発行し、エネルギー価格高騰や防衛費の対応にあてることを検討しているとの一部報道や、E欧州株の堅調推移、Fウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を主張しない意向とのヘッドライン、

Gロシア・ウクライナ・トルコの3者外相会談への期待感や、HECB理事会のタカ派的な結果(パンデミック緊急購入プログラム=PEPPを今月末で終了させる計画を確認した他、中長期的なインフレ見通しが弱まることはないとの予想が裏付けられれば資産購入プログラム=APPも第3四半期に終了する方向性を示唆)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1121まで急伸しました。もっとも、3/3に記録した直近高値1.1125をバックに伸び悩むと、IラガルドECB総裁によるハト派的な発言(スタグフレーション懸念への警戒を示唆。2022年のGDP見通しを4.2%から3.7%に下方修正した他、インフレ見通しを3.2%から5.1%に上方修正)や、J米2月消費者物価指数の伸び率加速(約40年ぶり高水準→米金利上昇→米ドル高)、Kロシア・ウクライナ・トルコの3者外相会談の不冴な結果(進展見られず→失望売り)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間3/12午前6時00分現在)では、1.0911前後で推移しております。

来週の見通し(3/14−3/18)

<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約5年2ヵ月ぶり高値となる117.36まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準、21日移動平均線や雲上限など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダー、強気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを決定付けるチャート形状となっております。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(地政学的リスクに端を発したリスクオフは、「リスク回避の円買い」よりも「有事のドル買い」で反応しやすい)や、Aエネルギー価格高騰に伴う世界的なインフレ懸念(原油や天然ガスなどが高騰)、B上記Aを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(米政権は景気下支えよりもインフレ抑制を優先→米FRBに対する利上げ圧力)、C日銀による金融緩和の長期化観測(黒田日銀総裁は今週、「原油や穀物上昇でも景気に悪影響及ぼす金融緩和の縮小や金融引き締めは適当でない」と発言)、D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り)、E本邦貿易赤字拡大に伴う円売り圧力など、ドル高・円安を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は3/15−16に予定されている米FOMC(連邦公開市場委員会)や、3/17−18の日銀金融政策決定会合に注目が集まります。前者については、25bpの利上げ実施が市場コンセンサスとなっているものの、足元のエネルギー価格高騰を踏まえて、サプライズ的な50bp利上げに踏み切るケースや、次回5月FOMCでの連続利上げの可能性を示唆するケース、ドットチャートでタカ派色を強めるケース(利上げ見通しやインフレ見通しを大幅に引き上げる可能性)も想定されるため、米長期金利上昇→米ドル高の波及経路が意識されます。一方、日銀金融政策決定会合は引き続き金融緩和の長期化を強調してくる公算が大きく(事実今週は一部メディアより「日銀が3/17ー18の金融政策決定会合で景気判断を引き下げる方向で調整している」とのヘッドラインあり)、結果として来週は日米金融政策格を背景に、ドル円に強い上昇圧力が加わる一週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):116.00ー119.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.0805まで急落しました(週後半にかけて一時1.11台まで持ち直す場面も見られましたが結局1.0900前後まで反落するなど上値は重たい)。この間、ローソク足が主要チャートポイント(90日移動平均線や21日移動平均線、一目均衡表雲上限や雲下限、一目均衡表転換線や基準線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(地政学的リスクに端を発した「有事のドル買い」)や、Aエネルギー価格高騰に伴う欧州経済への下押し圧力(スタグフレーション懸念→ラガルドECB総裁も警戒感を滲ませる言及)、B米FRBによるタカ派傾斜観測、C上記ABを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は3/15−16の米FOMCに加えて、3/15のドイツ3月ZEW景況感指数に注目が集まります。米FOMCがタカ派的な決断を示す場合や、欧州経済指標が不冴な結果となる場合などには、欧米金融政策格差に着目したユーロ売り・ドル買いが強まる公算が大きく、来週はユーロドル相場のダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(欧米金融政策の方向性の違いや、エネルギー価格高騰に伴う欧州圏のスタグフレーション懸念を背景に、通貨オプション市場では引き続きユーロドルのパリティ=1.00割れを織り込む動きが継続中)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1100

注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策イベントに注目。ドル円は続伸リスクに要警戒』

ドル円日足

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