『市場の焦点はウクライナ情勢から米金融政策に再びシフト』
〇今週のドル円、ロシア軍がウクライナ周辺から撤収し始めているとの発表に週初115.89まで上昇
〇買い一巡後に伸び悩むと、地政学的リスクの再燃に反落、114.79まで急落し115円前後で越週
〇ユーロドル、地政学リスクの高まりとECBのタカ派姿勢の後退に週初に週間安値1.1279まで下落
〇その後はロシア撤退報道と欧州指標の好調に週央1.1396まで上昇
〇週末にかけてはロシア撤退報道に疑問符がつき地政学リスクが再燃、1.13台前半に下げて越週
〇ドル円、テクニカルには一目均衡表の「雲」の下限、90日線がサポートここからの下落は容易でない
〇リスク回避局面ではドル、円双方が買われるため、一巡後は徐々にドル円が持ち直すシナリオか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):114.00ー116.50、(EURUSD):1.1250−1.1450
今週のレビュー(2/14−2/18)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初115.28で寄り付いた後、@セントルイス連銀ブラード総裁によるタカ派的な発言(7月までに100bpの利上げを支持するスタンス維持→先週末金曜日の火消しは見られず)や、A日銀による「指し値オペ」を通じた上限金利の抑制実施、Bロシア軍がウクライナ周辺から撤収し始めているとのヘッドライン(地政学的リスク後退→株式市場急反発→クロス円上昇→ドル円連れ高)、C米1月生産者物価指数(結果9.7%、予想9.1%)の伸び率加速、D米長期金利の急上昇(米10年債利回りが一時2.06%へ急上昇)が支援材料となり、翌2/15にかけて、週間高値115.89まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、E欧州委員長やNATOより「ロシア軍撤退の明確な証拠はない」との見解が報じられたことや、Fバイデン米大統領による「ロシアがウクライナに侵攻する可能性はかなり高い」との発言、G上記EFを背景とした地政学的リスクの再燃(株式市場下落→リスク回避の円買い圧力)、H米FOMC議事要旨が予想ほどタカ派的ではなかったことに伴う安堵感(米金利低下→米ドル売り)、I米2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(結果16.0、予想20.0、前回23.2)の急低下、J米新規失業保険申請件数(結果24.8万件、予想21.9万件)の冴えない結果、K米長期金利の急低下(米10年債利回りは一時1.94%へ急低下)が重石となり、週末にかけて、週間安値114.79まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間2/19午前3時30分現在)では、115.05前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1344で寄り付いた後、@ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクの高まりや、AラガルドECB総裁による「政策金利を急いで引き上げても過去最高水準にあるインフレ率の抑制にはつながらず経済に打撃を与えるだけである」とのタカ派転換に慎重な発言、B欧州株の全面安、C天然ガス先物価格の急上昇(欧州経済の先行き不安)が重石となり、週明け早々に週間安値1.1279まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Dロシア軍がウクライナ周辺から撤収し始めているとのヘッドラインや、E上記Dを背景とした地政学的リスクの後退(欧州株反発)、Fユーロ圏12月鉱工業生産(結果+1.2%、予想+0.3%、※前月比)の力強い結果、G欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力(独10年債利回りは2018年12月以来の高水準となる0.32%へ急上昇)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.1396まで上昇しました。
もっとも、心理的節目1.1400をバックに伸び悩むと、H欧州委員長やNATOより「ロシア軍撤退の明確な証拠はない」との見解が報じられたことや、Iフォンデアライエン欧州委員長による「ロシアは軍事施設にさらに多くの兵士を追加している」との発言、Jウクライナ東部ドンバス地方の砲撃報道、K地政学的リスク再燃に伴う株式市場の急反落が重石となり、本稿執筆時点(日本時間2/19午前3時30分現在)では、1.1332前後で推移しております。
来週の見通し(2/21−2/25)
<ドル円相場>
ドル円は2/10に記録した直近高値116.35をトップに反落に転じると、今週末金曜日にかけて一時114.79まで急落しました。ウクライナ情勢を巡る地政学的リスクが「リスク回避の円買い」をもたらしたことが背景と考えられます。但し、ダウンサイドには一目均衡表雲下限や90日移動平均線がサポートラインとして意識されている他、強い買いシグナルを示唆するパーフェクトオーダーやダウ理論の上昇トレンドも継続するなど、ここからの更なる下落は容易では無いと考えられます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派スタンスの明確化(セントルイス連銀ブラード総裁は「7月までに100bpの利上げを支持するスタンスを維持」)や、A日銀による金融緩和の長期化スタンス(日銀は指し値オペを実施すると共に、黒田総裁も金融緩和の長期化方針を改めて強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り圧力。円キャリートレードの復活期待)など、ドル高・円安を連想させる材料が揃っています。今週はウクライナ情勢の緊迫化をトリガーに「リスク回避の円買い」が広がりましたが、リスク回避局面では「有事のドル買い」も見込まれることから、円だけが一方的に買われる展開も想定しづらく、一巡後は徐々にドル円が持ち直すシナリオが想定されます(地政学的リスクが緩和されればクロス円上昇→ドル円連れ高の波及経路が見込まれる他、仮に地政学的リスクが継続したとしても、リスク回避の円買い→有事のドル買いへの焦点シフトが生じる可能性あり)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は、2/25に予定されている米1 月 PCE コアデフレータ(FRBが最も重視しているインフレ指標)に注目が集まります。既に発表された米1月消費者物価指数および米1月生産者物価指数は共にインフレ加速が示されているため、PCEコアデフレータも予想比上振れるリスクが警戒されます。また、来週はボウマンFRB理事やアトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、ウォーラーFRB理事など複数の米当局者発言も予定されているため、来週は市場の焦点がウクライナ情勢から米金融政策の先行き(3月50bp利上げがあり得るか否か+早期バランスシート圧縮が起こり得るか否か)に移る一週間となりそうです(米長期金利上昇→米ドル高の波及経路に要警戒)。
来週の予想レンジ(USDJPY):114.00ー116.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、安値1.1279まで急落しました。現在も1.13台半ばで推移するなど、上値の重い展開が続いています。但し、ローソク足が主要チャートポイントを挟んで上下している他、チャートパターン的にも特段売りシグナルが点灯しているわけでも無いため、テクニカル的に見れば、中立状態(上昇トレンドに転換するのか下落トレンドに戻るのか判断がつかない状態)と整理できます。とはいえ、ファンダメンタルズ的に見ると、@ECBによるタカ派転換の思惑(欧州債利回りの上昇)や、A上記@を背景としたユーロショートの解消期待、B欧州経済の回復期待(新型コロナウイルス感染者数のピークアウト。一部の国で行動制限解除の動き)など、ユーロドル相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
今週はウクライナを巡るネガティブサプライズの影響で予想外にユーロ安が進みましたが、地政学的リスク一巡後は再びユーロドルに上昇圧力が加わると考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は2/21のユーロ圏2月PMI速報値や、2/22のドイツ2月IFO景況指数に注目が集まります。市場予想を上回る結果となれば、欧州経済の回復期待→欧州債利回り上昇の経路で、ユーロドルに強い上昇圧力が加わる可能性があるため、来週はユーロドルのアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(ウクライナを巡る地政学的リスク一巡後に反発するシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1250−1.1450
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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