2018年高値上抜け直後からの大きめの下げを予想
〇先週のドル円、円独歩安が急速に進行、金融所得課税見直し好感した株高が背景
〇円安進行ペースは急速、2018年高値114.55レベル更新後調整の下げ入るとみる
〇113円に大きめのノックアウト・オプション存在し、実需ドル買い引き起こしたか
〇今週はベージュブック、米国10月製造業・サービス業PMI速報値に注目
〇113.05レベルをサポートに、114.60レベルをレジスタンスという流れか
今週の週間見通し
先週のドル円は、円独歩安が急速に進行した一週間となりました。様々な材料はあったものの月曜の岸田首相による金融課税は来年の税制課税では議論されないという発言を好感し株高。選挙対策ではあるものの株安懸念がひとつ消えたことで株安から切り返す大きなきっかけとなりました。また、先週の雇用統計直後の下げからの急反発、週明けの円一段安という動きの中でテクニカルに重要なレジスタンスを次々と抜けたことも大きな要因となりました。
さらに先週月曜のNY朝方に113円を抜けた際に言われたことですが、113円には大きめのノックアウト・オプションがあったと言われ、これが実需のドル買いを引き起こしたと考えられます。今回のノックアウト・オプションというのは、ドル円が110円以下の時に設定されたであろうドルコール・オプション(ドルを買う権利)のひとつで、オプション・プレミアム(オプション料)を安くするために113円以上に円安が進んだ場合にドルを買う権利がノックアウト(消滅)するというオプションです。
相場が動かない時であれば有効な戦略のひとつですが、今回のように急激に円安が進行すると権利が消滅するため、新たにドル買いを手当てしなくてはならないというパンチを食らいます。金曜の114円にも同じようにノックアウト・オプションが存在した可能性があり、そうであるとすると今後調整で下げ局面があったとしても114円割れの買い、113円割れの買いは実需のドル買いオーダーが控えていると考えられます。
次にテクニカルですが先週月足で見た通り、2020年高値、2019年高値は一気に抜けたことで現在は2018年高値114.55レベルをターゲットにする展開です。金曜には同水準を試す勢いでしたが8銭差で届かずとなりましたが、材料的にも米金利上昇の前倒し思惑が高まり、需給的には実需筋の買い切りが出ていることを考えると、早晩試すことは間違いないでしょう。
ただ気になる点もひとつあります。ここに至るまでの円安進行ペースがかなり早く、10月4日安値110.82レベルから15日高値114.47レベルまで3円65銭もほぼ調整なしに上げてきている点です。また日柄的にも19日±1日は円高に動きやすい時間帯となっていて、2018年高値を更新後に急速に調整の下げが入るのではないかということを考えています。その場合でも、ノックアウト・オプションが最初に出た113円水準が下げの限界点であるとは思っています。
日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
10月に入ってからの円安進行が異常なまでのスピードであることがわかります。テクニカルにターゲットを求めると、先週示した9月安値を起点に9月高値までの上げ、10月安値への押しを考えます。この3点を上昇N波動の各レートとすると、127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが114.58と2018年高値と一致しています。おそらく現在の円安は週前半でいったん終わり、その際の水準も2018年高値からそれほど乖離しないと考えます。
またチャートに示した青の水平線は113.00ですが、ここでノックアウト・オプションが出たと考えると下げても同水準がいいところです。今週は113.05レベルをサポートに、2018年高値をわずかに抜ける114.60レベルをレジスタンスという流れを見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先で正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
10月18日(月)
06:45 NZ7〜9月期CPI ☆
08:01 英国10月住宅価格
11:00 中国7〜9月期GDP ☆
11:00 中国9月鉱工業生産、小売売上高
18:30 クオールズFRB副議長講演
22:15 米国9月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国10月NAHB住宅指数
27:15 (ミネアポリス連銀総裁講演)
10月19日(火)
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
18:00 ユーロ圏8月建設支出
21:00 パネッタECB理事講演
21:05 英中銀総裁講演 ☆
21:30 米国9月住宅着工・建築許可件数
22:00 レーンECB理事講演 ☆
24:00 サンフランシスコ連銀総裁講演
27:50 アトランタ連銀総裁講演
10月20日(水)
08:50 本邦9月貿易収支(通関)
15:00 英国9月CPI ☆
15:00 ドイツ9月PPI
16:00 フランス中銀総裁講演
16:20 エルダーソンECB理事講演
17:00 南ア9月CPI
18:00 ユーロ圏9月CPI ☆
22:40 オーストリア中銀総裁講演
23:30 週間原油在庫統計
24:20 イタリア中銀総裁講演
25:00 シカゴ連銀総裁、アトランタ連銀総裁、(セントルイス連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁講演)
27:00 ベージュブック ☆
10月21日(木)
15:45 フランス10月企業景況感
20:00 トルコ中銀政策金利発表 ☆
21:30 米国10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国9月景気先行指数、中古住宅販売
23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感速報値 ☆
28:00 豪中銀総裁講演
**:** EUサミット(〜22日)
10月22日(金)
08:01 英国10月消費者信頼感
08:30 本邦9月CPI ☆
15:00 英国9月小売売上高
16:15 フランス10月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ10月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国10月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:45 米国10月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 サンフランシスコ連銀総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月11日(月)
円独歩安の一日となりました。金曜に2020年高値を上抜けたドル円は週明け早朝から2019年高嶺も上抜け、NY市場に入ると岸田首相が金融所得課税見直しより前に所得引き上げを優先、来年の税制改正では議論しないと発言、それを受け日経先物上昇、円一段安となり113円乗せとなりました。112円台後半から113円にはストップオーダーがあったことに加え、NY市場が祝日で参加者が少ない中で引けにかけてさらに円安が進行し、113.41レベルの高値をつけ高値圏での引けとなりました。
10月12日(火)
円安の流れが止まらずNY市場序盤には113.79レベルと2018年高値114.55レベルに着実に近づく動きとなりました。東京市場では底堅い動きで始まったものの日経先物が現物引け後に下げる動きとともに113.00レベルまで下押ししましたが下げきれず、欧州市場では株価の回復とともに再び上昇に転じ、弱いドイツの経済指標に反応したユーロ売りとともにドル高が続くこととなりました。
10月13日(水)
ドル円はNY市場までは小動き高値圏でのもみあいを続けました。NY市場に入り発表された米国CPIが予想よりも強かったことから一時的にドル買いが強まり高値を113.81レベルまで切り上げましたがそこまで。その後はユーロドルでのユーロ買い・ドル売りに引っ張られてやや上値の重たい一日となりました。
10月14日(木)
ドル円は強い地合いが続きました。東京市場では株高の動きから円売りが先行したものの前日高値を超えられず東京後場から欧州市場前場までは利食い売りが目立ちました。しかし相変わらず押し目買いが根強く、世界の主要株価指数も全面高となったことで改めて円売りの流れへと戻りNY後場には113.72レベルをつけ高値圏でのクローズとなりました。
10月15日(金)
ドル円は金曜も円安が進行しました。NY市場まで株高によるリスクオンの動きも手伝って、NY市場の朝方には114.47レベルと2018年10月以来となる3年ぶりのドル高・円安レベルとなりました。ただ、2018年高値114.55レベルをトライしきれなかったことミシガン大消費者信頼感が弱かったことから一時的に113.99レベルまで押したものの引けにかけては114円台前半に戻して引けました。
※ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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