来週の為替相場見通し:『ドル高・円安の継続を想定。日米金融政策格差が支援材料』(10/9朝)

ドル円は9/22に記録した直近安値109.12をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約2年5ヵ月ぶり高値となる112.25まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル高・円安の継続を想定。日米金融政策格差が支援材料』(10/9朝)

『ドル高・円安の継続を想定。日米金融政策格差が支援材料』

〇今週のドル円、週明け早々110.82に下落するも、週末にかけて年初来高値112.25まで急伸
〇米国のデフォルト懸念の後退と株価の上昇、米長期金利の急上昇等がサポート
〇注目の米雇用統計はNFPこそ予想に達しなかったものの無難な結果
〇ドル円は結果受け一旦反落後に上値を伸ばし、112円台を示現、約2年5ヵ月ぶり高値圏で越週
〇ユーロドル米長期金利上昇に週央にかけ年初来安値1.1529まで急落、週末にかけ持ち直すも戻り鈍い
〇ドル円、三役好転や強気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て地合い強い
〇ファンダメンタルズもドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつある
〇来週は一昨年の4/24に記録した高値112.41や、心理的節目113.00を試す展開か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):111.25ー113.25、(EURUSD):1.1450−1.1650

今週のレビュー(10/4−10/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初111.04で寄り付いた後、@中国恒大集団を巡るデフォルト懸念の再燃(中国恒大集団傘下の恒大物業集団の売買取引一時停止→デフォルト懸念再燃→リスク回避の円買い圧力)や、A岸田首相による金融所得課税導入への失望感(日経平均株価が急落→リスク回避の円買い圧力)、B米国債のデフォルト懸念(イエレン米財務長官は債務上限が引き上げられなかった場合、10/18頃に米政府の資金が枯渇すると警告)、C米FRBのタカ派メンバーの大幅入れ替えリスク(ダラス連銀カプラン総裁、ボストン連銀ローゼングレン総裁に加えて、クラリダFRB副議長も利益相反の疑い)、D対資源国通貨でのドル売り圧力(WTI原油先物が急伸→資源国通貨急上昇)が重石となり、週明け早々に週間安値110.82まで下落しました。
しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、E米主要経済指標の力強い結果(米9月サービス業PMIや、米9月ISM非製造業指数、米9月ADP雇用統計など)や、

F米債務上限問題に係わる警戒感の後退(共和党トップのマコネル院内総務が債務上限を一時的に停止の上、債務拡大を認める案を提案→民主党トップのシューマー院内総務が12月初めまで債務上限を延長することに合意→米国債のデフォルト懸念後退)、G米長期金利の急上昇(米10年債利回りは週初に記録した1.45%から1.61%へ急上昇。6/4以来の高水準)、H世界的な株価の持ち直し(VIX低下→リスク回避ムード後退→リスク選好の円売り再開)、I米雇用統計をこなした安堵感(非農業部門雇用者数は冴えない結果となるも、前回分の上方修正及び失業率の改善を好感→米FRBによるタカ派スタンスが覆されるほど悪い結果では無いとの見方が台頭→米金利先物市場が来年12月時点の利上げ開始を100%織り込む展開→米ドル買い)が支援材料となり、週末にかけて、年初来高値112.25(一昨年4/25以来、約2年5ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/9午前3時15分現在)では、112.15近辺で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1593で寄り付いた後、@欧州株の底堅い動きや、Aドイツを巡る政局不透明感の後退(第1党の社会民主党が、第3党の緑の党や、第4党の自由民主党と連立政権樹立に向けた予備折衝を開始)、B欧州債利回りの上昇、C対主要通貨でのドル売り圧力(米長期金利低下→米ドル売り)が支援材料となり、週明け早々に週間高値1.1641まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線に続伸を阻まれると、D米長期金利の反転上昇(米10年債利回りが6/4以来となる1.61%へ急上昇)や、

Eユーロ圏8月生産者物価指数の予想比鈍化、Fテクニカル的な地合いの弱さ(強い売りシグナルの点灯)、G米経済指標の力強い結果、H欧州経済指標の冴えない結果(ドイツ8月製造業受注やユーロ圏8月小売売上高など)が重石となり、週央にかけて、年初来安値1.1529(昨年7/22以来、約1年3ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/9午前3時15分現在)では、1.1570前後で推移しております。尚、今週発表されたECB理事会議事要旨では、「インフレに対する懸念の強さ」や「資産買い入れ額を巡る大幅縮小協議の検討」が明らかとなりましたが、市場の反応は限定的となりました。

来週の見通し(10/11−10/15)

<ドル円相場>
ドル円は9/22に記録した直近安値109.12をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約2年5ヵ月ぶり高値となる112.25まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線といった主要チャートポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。オシレータ系インジケータのRSIに高値警戒感が出ているものの、安易な逆張り(ショート造成)には注意が必要と考えられます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる早期利上げ観測の高まり(米金利先物市場は来年12月時点の利上げ開始を100%織り込む展開→米10年債利回りは約4ヵ月ぶり高水準となる1.61%へ急上昇)や、A日銀による金融緩和の長期化方針、B上記@Aを背景とした日米金融政策格差(ドル買い・円売り)、Cリスク回避ムードの後退(中国恒大集団を巡るデフォルト懸念の後退や、米債務上限問題を巡る懸念の後退→VIX低下)、D過剰流動性相場逆流リスクの後退(米金利上昇を受けても株式市場が底堅さを維持)、E世界的に広がるインフレ懸念など、ドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は10/13に予定されている米9月消費者物価指数や、10/14の米9月生産者物価指数やFOMC議事要旨、10/15の米9月小売売上高、米10月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米10月ミシガン大消費者信頼感指数、米当局者発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、ブレイナードFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁など)に注目が集まります。米経済指標が力強い結果を示す場合や、米当局者よりタカ派的な見解が示される場合などには、米国による早期利上げを更に織り込む形でドル円にはもう一段強い上昇圧力が加わると予想されます。来週は一昨年の4/24に記録した高値112.41や、心理的節目113.00を試す展開となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):111.25ー113.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/3に記録した約1ヵ月ぶり高値1.1910をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、年初来安値1.1529(昨年7/22以来、約1年3ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線といった主要チャートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。オシレータ系インジケータのRSIに売られ過ぎ感が出ているものの、安易な逆張り(ロング造成)には注意が必要と考えられます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ECBによる金融緩和の長期化観測(※ECBは先月9日に開催された定例理事会でパンデミック緊急購入プログラム=PEPPの買い入れペース縮小を決定しましたが、ラガルドECB総裁は、「今回の決定はテーパリングではなく微調整」であることを強調)や、A米FRBによる利上げ観測(米金利先物市場は2022年12月時点の利上げ実施を100%織り込む状況)、B上記@Aを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(ユーロ売り・ドル買い)、Cドイツを巡る政局不透明感(連立政権を模索する各政党による交渉がスタートするも、進捗状況は不透明)、D資源価格高騰に伴う欧州経済の先行き不透明感など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は10/12に予定されているドイツ10月ZEW景況感指数や、10/13のドイツ9月消費者物価指数、ユーロ圏8月鉱工業生産に加えて、欧州当局者発言(フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、エルダーソンECB専務理事、レーンECB専務理事、オーストリア中銀ホルツマン総裁、イタリア中銀ビスコ総裁など)に注目が集まります。欧州経済指標が不冴な結果となった場合や、欧州当局者よりハト派的な見解(キーワードは「インフレは一時的」「緩和的な金融政策が当面必要」など)が示される場合などには、欧米金融政策格差への連想を通じて、ユーロドルが年初来安値を更新する展開が見込まれることから、来週はダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1450−1.1650

注:ポイント要約は編集部

『ドル高・円安の継続を想定。日米金融政策格差が支援材料』

ドル円日足

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