ドル円 年初来最高値更新、パンデミック前の天井を超えて中長期的な上昇感強まる
〇先週のドル円、雇用統計の不冴えに一時111.50まで下落するも反騰し、9日早朝112.25に高値切り上げ
〇米9月雇用統計はNFPは期待外れだが、失業率は1年半ぶり低水準に大幅改善
〇FRB11月会合でのテーパリング開始、来年の利上げ開始見通しに変化なしと市場は判断か
〇ドル円短期的には高値警戒感もあるが、3年半から7年にかけての長期の周期では上昇に発展の可能性も
〇112.50を超えれば113円114円を試す展開に
〇111.50を割り込む場合、111円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は10月8日夜の米雇用統計前に上昇継続期待を先取りして夕刻に111.99円まで上昇し、雇用統計発表前はポジション調整的にやや下げていた。米雇用統計での就業者増加数が予想外に少なかったことで発表直後にいったん売られて111.50円まで下落したが、米連銀の11月会合でのテーパリング開始決定や来年の利上げ開始見通しは変わらないとして米長期債利回りが上昇する中でドル円も反騰入りして深夜に112円を突破、9日早朝には112.25円まで高値を切り上げて9月30日夜高値112.07円を上抜いて週を終えた。
【米9月雇用統計、非農業部門雇用者増加数は期待外れも失業率大幅改善】
米労働省が10月8日に発表した9月の雇用統計では非農業部門就業者数が前月比19万4000人増にとどまり、前月の36万6000人増から鈍化した。2か月連続で前月を下回り市場予想の50万人増に対しては期待外れの数字となった。しかし失業率は市場予想の5.1%を下回り、前月から0.4%も大幅改善した4.8%と1年半ぶりの低水準になった。
FOMCは11月2-3日に次回FOMC(連邦公開市場委員会)を開催する。前回会合で見送られたテーパリング(パンデミック対策としての量的金融緩和政策による資産購入の縮小開始)を決定して年内に開始し、来年は利上げへ向かうというのが規定路線とされているが、今回の雇用統計結果での就業者増加の鈍化によっても流れは変わらないだろうと市場は受け止めて米長期債利回りは一時的に下げたものの早々に上昇再開となった。
【米10年債利回りは8月以降の最高値更新、2年債利回りは5連騰】
10月8日に米10年債利回りは前日比0.05%上昇で1.62%を付けた。1.60%台は6月上旬以来4か月振り。9月23日未明のFOMC後からの上昇により9月28日に1.56%でいったんピークを付けてから10月4日の1.45%まで低下していたが、10月4日当日からの反騰で10月6日には1.57%台に到達、7日から8日へと連騰で8月4日以降の高値を超えた。8月以降は1.38%台に抵抗感があって三角持ち合いの様相で推移していたところから一段高に入り、10月4日への低下を押し目として一段高に入った印象だ。
2年債利回りは0.01%上昇の0.32%となったが9月28日のピークである0.321%を8日高値0.324%で超えて終値ベースでは10月4日から5連騰となり2月5日に付けた0.105%以降の最高値を更新した。
米長期債利回りの上昇と共に独英豪等の主要国の長期債利回りも上昇しており、雇用統計発表後のユーロドル、ポンドドル、豪ドル等の反応は鈍かった。しかしドル円としては日米長期金利差によるドル買い円売りが優勢となって9月30日夜高値を超える一段高のきっかけとなった。
【パンデミック前の2020年2月天井を超えた意味】
ドル円は昨年10月7日の戻り高値から3か月後の1月6日に102.57円で底打ちし、3か月後の3月31日高値でいったん天井を付け、3か月後の7月2日に高値を更新した。現状は7月2日から3か月後となり、3月31日高値と7月2日高値を結ぶ天井ラインまで上昇してきているので3か月毎の転調を踏まえれば短期的には高値警戒感を持ちたいところだが、それよりも中長期的な上昇に発展する可能性を見せていることに目が行く。
9月15日安値109.09円から9月30日高値112.07円まで2.98円の上昇後に10月4日安値110.81円まで1.26円の下落を入れてから一段高している状況は、今年1月6日安値102.57円から2月5日高値105.76円まで3.19円の上昇後に2月10日安値104.40円まで1.36円の下落を入れてから一段高へ進んで急伸していった時にも近い動きとなっている。このため上昇一服で再び直近の高値から1円を超える反落が発生しても10月4日安値110.81円を割り込まずに切り返せば今年2月から3月31日高値へと上昇した時に近い展開を継続する可能性があると考えられる。
週足では2016年12月15日高値を起点とした右肩下がりの下降チャンネルで推移してきたが、7月2日高値時にこの抵抗線をわずかに上抜いてから調整安につかまっていたものの10月8日に高値を更新したことで下降チャンネルの抵抗線突破が再確認される流れとなった。また、下降チャンネル内で繰り返されてきた上昇規模を超えてきている印象が強まっている。月足レベルでは2015年6月天井と2016年6月底を起点とした巨大な三角持ち合いの抵抗線突破とも重なり、3年半から5年周期の上昇及びそれが2セットとなる7年から10年周期の上昇期としての発展も考えられるところだ。
既にパンデミック前の2020年2月20日高値112.21円を超えたことにより、チャート上の上値抵抗は2018年10月4日高値114.54円、2016年12月15日高値118.65円まで切り上がってきている。
パンデミックが落ち着き景気回復による物価上昇がインフレリスクになる中で主要国は金融緩和から引き締めへと舵を切りつつあるが日銀にはその気配は見られない。長期債利回り格差で見れば円の独歩安局面となる可能性もあるところと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、10月8日夜安値111.50円を下値支持線とし、割り込まない範囲では押し目買い有利の展開で高値切り上げが続きやすいとみる。
(2)上値抵抗は当初112.50円前後、超えれば113円台、さらに114円台試しへ向かう流れとみる。9月22日安値から9月30日高値までの上昇幅は2.96円であり、10月4日深夜安値110.81円を起点として同規模の上昇と仮定すれば113.77円、9月30日高値から10月4日深夜安値への下げ幅が1.26円のため、その倍返しとすれば113.33円と計測されるので、113円台中盤が上値目標と思われる。
(3)10月8日安値111.50円を割り込む場合、111円前後への下落を想定する。今年2月から3月にかけての上昇期における調整規模を参考とすれば、10月4日深夜安値110.81円を割り込まないうちは中勢の上昇基調継続となり、押し目形成から次の上昇期へ向かう可能性があると考える。(了)<10日15:50執筆>
【当面の主な予定】
10/11(月)
IMF・世銀の年次総会(10/17までワシントン)
国際金融協会(IIF)年次会合(10/15までオンライン)
休場 米国(コロンブスデー、政府、為替、債券休場、株式、商品は通常取引)
休場 カナダ(感謝祭)、台湾(建国記念日)、韓国(ハングルの日振替)
16:00 (欧) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
21:00 (欧) レーンECB理事、講演
23:45 (欧) エルデルソンECB理事、講演
10/12(火)
IMF世界経済見通し
G20臨時首脳会議(オンライン)、G20貿易相会合(伊ソレント)
07:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、開会挨拶
08:01 (英) 9月 英小売連合(BRC)小売売上高 前年同月比 (8月 1.5%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前月比 (8月 0.0%、予想 0.2%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前年同月比 (8月 5.5%、予想 5.8%)
09:30 (豪) 9月 NAB企業景況感指数 (8月 14)
09:30 (豪) 9月 NAB企業信頼感指数 (8月)
15:00 (英) 9月 失業保険申請件数 前月比 (8月 -5.86万件)
15:00 (英) 9月 失業率 (8月 5.4%)
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.6%、予想 4.5%)
18:00 (独) 10月 ZEW景況感 (9月 26.5、予想 24.0)
18:00 (欧) 10月 ZEW景況感 (9月 31.1)
22:00 (欧) エルデルソンECB理事、講演
23:00 (米) 8月 雇用動態調査(JOLT)
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債、10年債入札
10/13(水)
未 定 (中) 9月 貿易収支・ドル建て (8月 583.4億ドル、予想 472.2億ドル)
未 定 (中) 9月 貿易収支・人民元建て (8月 3763.1億元、予想 3228.2億元)
08:30 (豪) 10月 ウエストパック消費者信頼感指数 (9月 106.2)
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 4.7%、予想 4.3%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 0.9%、予想 1.5%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 11.1%、予想 14.1%)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 0.1%、予想 0.4%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前月比 (7月 1.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前年同月比 (7月 3.8%、予想 3.4%)
15:00 (英) 8月 製造業生産指数 前月比 (7月 0.0%、予想 0.1%)
15:00 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -127.06億ポンド、予想 -119.85億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支・全体 (7月 -31.17億ポンド、予想 -28.00億ポンド)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 4.1%、予想 4.1%)
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 1.5%、予想 -1.6%)
18:00 (欧) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 7.7%、予想 4.7%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 5.3%、予想 5.3%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 4.0%、予想 4.0%)
26:00 (米) 財務省30年債入札
26:00 (世) G20財務相・中央銀行総裁会見
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月21-22日開催分)
29:30 (米) ブレイナードFRB理事、講演
10/14(木)
休場 香港(重陽節)
07:00 (豪) デベル豪中銀副総裁、講演
08:01 (英) 9月 英RICS住宅価格指数 (8月 73、予想 70)
09:00 (豪) 10月 消費者インフレ期待
09:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
09:30 (豪) 9月 新規雇用者数 (8月 -14.63万人、予想 -13.50万人)
09:30 (豪) 9月 失業率 (8月 4.5%、予想 4.8%)
10:30 (中) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 0.8%、予想 0.9%)
10:30 (中) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 9.5%、予想 10.6%)
13:30 (日) 8月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -3.2%)
13:30 (日) 8月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 9.3%)
13:30 (日) 8月 設備稼働率 前月比 (7月 -3.4%)
19:10 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
21:30 (米) 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 0.7%、予想 0.6%)
21:30 (米) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 8.3%、予想 8.7%)
21:30 (米) 9月 生産者物価コア指数 前月比 (8月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 9月 生産者物価コア指数 前年同月比 (8月 6.7%、予想 7.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 32.6万件、予想 32.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 271.4万人、予想 269.6万人)
23:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:40 (英) マン英中銀委員、講演
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会司会
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
10/15(金)
休場 インド(ダシェラ祭)
07:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、討論会参加
13:30 (日) 8月 第三次産業活動指数 前月比 (7月 -0.6%)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調済 (7月 134億ユーロ、予想 142億ユーロ)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調前 (7月 207億ユーロ)
21:30 (米) 10月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (9月 34.3、予想 25.0)
21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.7%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 1.8%、予想 0.5%)
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -0.3%、予想 0.6%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 0.4%、予想 0.6%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.5%、予想 0.6%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (9月 72.8、予想 73.8)
25:20 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.21
東京市場のドルは154円台後半で推移、今晩も要人発言で上下に動く可能性アリ(24/11/21)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、時間外の米10年債利回りも上げ一服となったことでドルは一時154円台を付ける場面も見られた。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.21
ドル円 地政学リスクくすぶるも再びレンジの様相に(11/21夕)
東京市場は一転してドルが弱含み。とくに終盤下げ足を速めている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2021.10.11
続伸期待強い、テクニカルにはドル一段高も(週報10月第2週)
先週のドル/円相場は、ドルが一段高。週間を通して「寄り付き安・大引け高」の様相で、週末NY終値ベースでも112円台をキープするなどドル高値圏だった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2021.10.09
来週の為替相場見通し:『ドル高・円安の継続を想定。日米金融政策格差が支援材料』(10/9朝)
ドル円は9/22に記録した直近安値109.12をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約2年5ヵ月ぶり高値となる112.25まで急伸しました。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。