ドル円見通し 112円到達の高値警戒感と米長期債利回り低下で上昇幅の3分の1を削る(週報10月第1週)

10月1日に発表された8月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比4.3%上昇となり1991年1月以来凡そ30年ぶりの伸び率となった。

ドル円見通し 112円到達の高値警戒感と米長期債利回り低下で上昇幅の3分の1を削る(週報10月第1週)

ドル円見通し 112円到達の高値警戒感と米長期債利回り低下で上昇幅の3分の1を削る

〇ドル円、9/30に112.07まで上昇後反落、米長期債利回り反落で一時111円割れ
〇米連邦政府債務上限問題の解決めど立たず、18日頃デフォルトリスクも
〇米8月PCE株価指数30年ぶり伸び率、9月ISM製造業指数も強い結果に
〇111.50超え後も111.25以上を維持できれば上向き111.70超えから112円を目指す
〇111.25以下での推移が続けば一段安警戒、110.89を割り込む場合は、110.50、110.10を試すか

【概況】

ドル円は9月23日未明の米FOMC通過後の米長期債利回り上昇を背景に6連騰となり9月30日夜に112.07円まで高値を伸ばしていたが、コロナショック前の2020年2月20日高値112.21円以来の112円台に到達したこと、米長期債利回りが反落に転じたことで30日夜から急落となり、10月1日夜には111円を割り込む110.89円まで安値を切り下げた。週末取引終了時点では111円を回復したが、30日夜高値からは1.18円の円高ドル安となり、9月22日安値109.11円から2.96円の円安ドル高だった上昇幅に対する3分の1押し=111.08円をわずかに割り込んだ。

【米長期債利回りは続落、利回り益確保や米デフォルト懸念での安全資産買い】

ドル円の上昇を支えてきた米長期債利回りが低下している。指標の米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.47%で1日序盤の1.51%から低下した。9月28日に1.56%台へ上昇して8月4日の1.16%以降の高値を更新したが、29日を高止まりしていたものの30日に1.48%台へ低下して10月1日も続落した。2年債利回りは前日比0.01%低下の0.27%で終了したが、9月28日に0.32%を付けて8月4日の0.16%以降の高値を付けた当日から低下に転じ、日足チャートでは4日連続の陰線での下落となっている。
10年債も2年債もFOMC後に一段高した水準にはあるもののいったんピークを付けて低下している印象だ。米連邦政府の債務上限問題が与野党対立で解決のめどが立たず、イエレン米財務長官は債務上限が引き上げられなければ10月18日頃に米国債がデフォルトに陥る可能性があると警告し、格付け会社フィッチ・レーティングスは債務不履行に陥るリスクが高まれば米国が「AAA」格付けから転落する可能性があるとし「支払いができなければ米国債をデフォルト(IDR)もしくは制限的デフォルト(RD)に格下げする」とした。

これまでも何度か同様の債務上限問題は土壇場まで対立を引きずっては結局デフォルトを回避してきた経緯もあるが、債券市場としては短期債利回りが上昇する一方、長期債利回りは格下げリスクを意識しての安全資産買いを優先させて債券高・利回り低下反応となった。1日はNYダウが前日比482.54ドル高と上昇、ナスダック総合指数も118.12ポイント高と上昇しており、通常なら株高による債券売りで利回りが上昇してもよいところであり、米経済指標も総じて強めとなり、米個人消費支出デフレーターも高水準へ上昇したがそれらに対する反応は鈍かった。

【米PCE物価指数は30年ぶりの上昇率】

10月1日に発表された8月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比4.3%上昇となり1991年1月以来凡そ30年ぶりの伸び率となった。4か月連続で4%を超える上昇率となり7月の4.2%からも伸びが加速した。コア指数では前年比3.6%上昇で予想と一致、7月と変わらずだった。前月比はコア指数で0.3%上昇、全体でも0.3%上昇で7月と変わらずだったため、高止まりだが年末にかけて伸びが鈍化してゆく可能性も示唆した。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した9月の米製造業景況指数は61.1で8月の59.9から上昇、市場予想の59.6を上回った。ミシガン大の9月消費者信頼感指数確報値は72.8となり速報の71.0から上方修正され8月の70.3から上昇した。

【短期的な調整安の目途と、より大きな調整安の目途】

【短期的な調整安の目途と、より大きな調整安の目途】

ドル円は9月15日夜安値109.09円と9月22日安値109.11円をダブル底として連騰に入り、9月30日夜高値112.07円まで2.96円の上昇幅となった。この間の上昇幅に対する調整安の目安としては3分の1押しの111.08円を10月1日夜安値110.89円でわずかに割り込んだ状況にある。高値からは1.18円の下落幅だが、111.50円を超えてくれば下げ幅の半値以上の解消となって上昇再開感も強まると思われるが、111円台序盤にとどまって横這い推移となるか安値更新を続ける場合は9月22日からの上昇幅に対する半値押しラインの110.59円、3分の2押しラインの110.10円等が試される可能性がある。
上昇期における調整安規模としては、今年1月6日底からの上昇開始当初においては2月5日高値から2月11日安値への1.36円、2月17日高値から2月23日安値への1.30円、5月3日高値から5月7日安値への1.37円等があり、小規模で短期の調整安なら1円を超えて1.50円を超えない程度にとどまるケースも多い。
しかし、より大きな調整安につかまるケースについても考えておく必要がある。

9月30日高値は3月31日高値と7月2日高値を結ぶ右肩上がりの抵抗線に丁度ぶつかったところで失速している。概ね3か月から4か月前後の周期による騰落を考えれば、3月31日高値から3か月後の7月2日に高値を付けたが、そこから9月30日までがほぼ3か月目である。3月31日高値からは4月23日安値まで3.50円の下落幅、7月2日高値からは8月4日安値まで2.94円の下落幅となっており、今回も同様のケースとなる可能性も抱えている点に注意がいる。111.50円を超えて切り返し感が強まれば上昇継続感が優勢となりやすいが、安値更新が続いた後の戻りが鈍くさらに安値更新が続く展開に入る場合は9月30日高値から3円前後の規模の調整安に陥るケースも可能性が高まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、110.50円を下値支持線、111.50円を上値抵抗線とみておく。
(2)111.50円前後ではいったん売られやすいとみるが、111.50円を超えた後も111.25円以上を維持しての推移なら上向きとし、111.70円超えからは上昇再開と仮定して112円台回復を目指す流れとみる。ただし9月30日夜高値112.07円を超えてゆくには週末の米雇用統計を強気で通過する必要があると思われる。
(3)111.25円以下での推移が続く場合は一段安警戒とみる。また111.50円までいったん戻してから30日夜以降の安値を割り込む一段安に入るケースにも注意し、10月1日夜安値割れから続落基調なら110.50円台、さらに110.10円前後を試す流れとみる。ただし、110.10円を割り込んでゆくような下落に発展するには週末の雇用統計を弱気で通過する必要があると思われる。(了)<3日16:50執筆>

【当面の主な予定】

10/4(月)
休場 中国
08:50 (日) 9月 マネタリーベース 前年同月比 (8月 14.9%)
21:00 (英) ラムスデン英中銀副総裁、カーニー前英中銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 0.4%、予想 1.0%)
23:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、会合開会挨拶

10/5(火)
休場 中国
OPECプラス閣僚級会合
07:00 () 9月 マークイット・サービス業PMI確報値 (速報 42.9) 
08:30 (日) 9月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 0.0%、予想 0.2%)
09:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 121.17億豪ドル、予想 100.00億豪ドル)
09:30 (豪) 8月 輸入 前月比 (7月 3.0%)
09:30 (豪) 8月 輸出 前月比 (7月 5.0%)
09:30 (豪) 9月 求人広告件数 前月比 (8月 -2.5%)
10:30 (豪) 8月 小売売上高 確報値 (速報 -1.7%)
12:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)

16:55 (独) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 56.0、予想 56.0)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 56.3、予想 56.3)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 54.6、予想 54.6)
18:00 (欧) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 2.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 12.1%、予想 13.5%)
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -701億ドル、予想 -706億ドル)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
23:00 (米) 9月 ISM非製造業景況指数 (8月 61.7、予想 59.9)

10/6(水)
休場 中国
EU首脳会議
08:30 (日) 黒田日銀総裁、日米財界人会議で講演
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.50%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 3.4%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 24.4%、予想 16.5%)
17:30 (英) 9月 建設業PMI (8月 55.2)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -2.3%、予想 0.9%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 3.1%、予想 0.4%)
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (8月 37.4万人、予想 45.0万人)
22:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

10/7(木)
休場、中国
06:30 (豪) 9月 AiGサービス業PMI (8月 45.6)
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI速報 (7月 104.1、予想 101.9)
14:00 (日) 8月 景気一致指数CI速報 (7月 94.4、予想 91.5)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 1.0%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 5.7%、予想 5.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 36.2万件、予想 34.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 280.2万人、予想 279.0万人)
22:00 (欧) レーンECB理事、講演
22:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
24:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会参加
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 170.0億ドル、予想 180.0億ドル)

10/8(金)
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 0.7%、予想 -1.2%)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調前 (7月 1兆9108億円、予想 1兆4860億円)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調済 (7月 1兆4134億円、予想 1兆1540億円)
08:50 (日) 8月 貿易収支・国際収支ベース (7月 6223億円、予想 -3750億円)
09:30 (豪) 豪中銀半期金融安定報告
10:45 (中) 9月 財新サービス業PMI (8月 46.7)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー現状判断DI (8月 34.7、予想 43.0)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー先行判断DI (8月 43.7、予想 48.5)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 181億ユーロ、予想 150億ユーロ)
15:00 (独) 8月 経常収支 (7月 176億ユーロ、予想 170億ユーロ)

21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 23.5万人、予想 50.0万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 5.2%、予想 5.1%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.6%)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 0.6%、予想 1.2%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 2.0%)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る