来週の為替相場見通し:『日米金融政策格差を背景にドル高・円安トレンドが再開』(10/2朝)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初110.69で寄り付いた後、早々に週間安値110.53まで下落しました。

来週の為替相場見通し:『日米金融政策格差を背景にドル高・円安トレンドが再開』(10/2朝)

『日米金融政策格差を背景にドル高・円安トレンドが再開』

〇今週のドル円、週明け早々に110.53まで下落後、週後半にかけ年初来高値112.07まで急伸
〇リスク回避姿勢の後退、米長期金利の上昇にテクニカルの強さも支援
〇週末は利益確定売りに押され、反落して111円近辺まで下げて越週
〇ユーロドル、米長期金利急上昇に独政局不透明感等が加わり一時1.1562まで急落
〇ドル円テクニカルの地合い強く、ファンダメンタルズもドルの上昇要因増える
〇ドル円続伸がメインシナリオ
〇来週の予想レンジ(USDJPY):110.25ー112.25、(EURUSD):1.1500−1.1700

今週のレビュー(9/27−10/1)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初110.69で寄り付いた後、早々に週間安値110.53まで下落しました。しかし、@中国恒大集団を巡るデフォルト懸念の後退(リスク回避の円買いの後退)や、A米早期利上げ観測を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは先週のFOMC直前に記録した1.29%から1.56%へ急上昇)、B黒田日銀総裁による「大規模緩和を継続する」とのハト派的な発言(日米金融政策の方向性の違いに着目したドル買い・円売り)、C本邦新政権樹立への期待感(自民党総裁選で岸田文雄氏が第27代総裁に選出。10/4の臨時国会を経て第100代首相に指名される見通し)、

Dテクニカル的な地合いの強さ(複数の買いシグナルが点灯)が支援材料となり、週後半にかけて、年初来高値112.07(昨年2/21以来、約1年7ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。もっとも、昨年2/21に記録した高値112.19や、昨年2/20に記録した高値112.22をバックに伸び悩むと、E月末ロンドンフィキシングに絡むドル売りフローや、F短期筋の利益確定売り(短期間で進んだドル高・円安の反動)、G米長期金利の急低下(米10年債利回りは1.56%から1.47%へ急低下)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間10/2午前6時00分現在)では、111.05近辺まで値を崩す展開となっております。尚、今週は急ピッチで織り込まれる米早期利上げ観測を背景に、複数の米当局者(パウエルFRB議長、ブレイナードFRB理事、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁)より牽制的な発言(テーパリングのアナウンスを利上げシグナルと捉えるべきではない/利上げの基準はまだ満たしてない/利上げの開始条件はより高いものとなる/利上げ開始はまだ遠い等)が相次ぎましたが、市場の反応は限定的となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1724で寄り付いた後、早々に週間高値1.1728まで上昇しました。しかし、@米早期利上げ観測の高まりを背景とした米長期金利の急上昇や、Aドイツの連立政権樹立を巡る先行き不透明感(9/26に投開票されたドイツの連邦議会選挙で、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟が、中道左派の社会民主党に敗北。但し、第一党の社会民主党も過半数に届かず、連立交渉を巡る先行き不透明感が台頭)、BラガルドECB総裁によるハト派的な発言(インフレ率が一時的に目標をやや上回ることを容認しつつ、緩和的な金融政策が必要とのスタンスを改めて強調)、C上記Bを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(早期利上げを織り込む米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)、

D欧州株の冴えない動き、Eテクニカル的な地合いの弱さ(直近安値の下方ブレイク+一目均衡表三役逆転成立)が重石となり、週後半にかけて、昨年7/23以来、約1年2ヵ月ぶり安値となる1.1562まで急落しました(年初来安値更新)。もっとも、週末にかけては、F米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間10/2午前5時30分現在)では、1.1595近辺まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(10/4−10/8)

<ドル円相場>
ドル円は強力な支持帯として意識されていた「109.10ライン」をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約1年7ヵ月ぶり高値となる112.07まで急伸しました(その後111.00絡みまで反落)。この間、主要チャートポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲下限及び上限など)を全て上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や強気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(2022年の利上げ開始が織り込まれる米国と、緩和脱却の糸口すら掴めていない日本との金融政策格差)や、A中国発のリスク回避ムード後退(中国恒大集団を巡る懸念後退)、B過剰流動性相場逆流リスクの後退(米金利上昇を受けても尚株式市場が底堅さを維持)、C米政府の一時閉鎖リスクの回避(米下院は12/3までの「つなぎ予算案」を賛成多数で可決)など、ドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は10/5に予定されている米9月ISM非製造業景況指数や、10/6の米9月ADP雇用統計、10/8の米9月非農業部門雇用者数、米9月失業率などに注目が集まります。パウエルFRB議長は今週、「米国の雇用はFRBが利上げ着手の条件として掲げる完全雇用の達成には程遠い」と発言しました。また、ブレイナードFRB理事も「米国の雇用はFRBが資産買い入れ削減を開始する基準にまだ少し足りない」と牽制しました。来週発表される米雇用関連指標(含むISM非製造業景況指数の内訳の雇用項目)が力強い結果を示す場合には、米早期テーパリング・米早期利上げ観測を織り込む形でドル円にはもう一段強い上昇圧力(米長期金利上昇→米ドル高)が加わる可能性が想定される為、来週はアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(ポジション調整一巡後の反発リスクに要警戒)。

来週の予想レンジ(USDJPY):110.25ー112.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/3に記録した約1ヵ月ぶり高値1.1910をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1年2ヵ月ぶり安値となる1.1562(昨年7/23以来の安値圏)まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や、弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象づけるチャート形状となっております。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ECBによる金融緩和の長期化観測(※ECBは9/9の定例理事会でパンデミック緊急購入プログラムPEPPの買い入れペース縮小方針を決定しましたが、一方で従来型資産購入プログラムであるAPPの買い入れペースを増額するなど、全体として金融引き締めでは無いことを強調。ラガルドECB総裁も、「今回の決定はテーパリングではなく微調整」と言明)や、Aドイツを巡る政局不透明感(第1党となった社会民主党も過半数に届かなかったことで、10月前半は連立交渉を巡る不確実性が広がる可能性大)、B欧米金融政策の方向性の違い(早期利上げが織り込まれる米国と、金融緩和の長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)、C天然ガスの急上昇(欧州経済の先行き不透明感)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は10/5に予定されているユーロ圏8月生産者物価指数や、米9月ISM非製造業景況指数、10/6に予定されているユーロ圏8月小売売上高、米9月ADP雇用統計、10/8の米9月非農業部門雇用者数、米9月失業率に注目が集まります。欧州経済指標が不冴な結果となった場合や、米国経済指標が力強い結果となった場合などには、欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買いがもう一段強まる可能性がある為、来週もダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(※ドイツの連立交渉を巡っては、緑の党や自由民主党の連立交渉に向けた一挙手一投足に注目が集まりますが、為替マーケットへの影響は限定的と整理)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1500−1.1700

注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策格差を背景にドル高・円安トレンドが再開』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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