円高からドル安に(週報2016年8月第一週)

先週は週初からそれなりの上下の動きをしながらも週末には一時101円台と月曜高値106.74レベルから5円近い円高の動きを演じることとなりました。

円高からドル安に(週報2016年8月第一週)

円高からドル安に。雇用統計に向け神経質な展開

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値   高値   安値    終値

ドル円  106.28  106.74  101.97   102.03
ユーロ円 116.58  117.15  113.88  113.96
ユーロドル 1.0969 1.1198  1.0952  1.1173
日経平均 16655.81 16821.43 16174.35 16569.27

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月25日(月)

東京市場スタート直後のドル円は、株高と仲値の実需ドル買いオーダーが重なって円安に振れ、一時106.72レベルの高値を付けました。しかしその後、株価はじりじりと水準を下げる中ドル円も失速、NY市場では米株を中心に一段安となったことから引けにかけては105.74レベルまで水準を切り下げ安値圏での引けとなりました。ユーロドルも終日ドル売りの動きが目立ち、引き続き値幅は少ないもののユーロが大台目前まで買い戻され高値圏でのクローズとなりました。

7月26日(火)

東京市場では、FOMCにおいて年内利上げの可能性を示すいっぽう、日銀会合では現状維持であろうとの思惑から株価が下落、その流れからドル円は円高の動きとなり朝から105円割れとなりました。その後もポジション調整から円買いの動きが続き欧州市場序盤には一時103.99レベルの安値を付けました。NY市場では速い動きの調整に加え、政府の経済対策に歩調を合わせ日銀も追加緩和を行う可能性があるとの見方から、105円近くまで値を戻し同水準での引け。いっぽうユーロドルは、ドル円同様にドル売り・ユーロ買いが先行したものの、上値は限定的で1.1030レベルまで買い戻しが入りましたが、引けにかけては1.09台後半に押して引けました。

7月27日(水)

東京前場のドル円は、前日海外市場の動きを受けじり高となっていましたが、昼に経済対策について具体的な数字が発表され、午後に首相が会見を行うとの報道を好感して円安に振れ、さらに財源として50年国債を発行するとの噂も手伝って、株価とともに一気に円安が進行。ドル円は一時106.54レベルの高値を付けましたが、財務省が国債の噂を否定したことで反落し、また経済対策についても事前に言われていた内容と変わらず、ストップオーダーを付けた後は元の水準となりました。FOMCでは当初は全般に経済状況の改善を示す声明からドル買いで反応したものの、その後は利上げを示唆するような文言が見られなかったことから反落しました。

7月28日(木)

東京市場では前日のFOMC以降のドル安の流れを継続、欧州市場序盤にはドル円が104.49レベル、ユーロドルも1.1119レベルまでドルが売られる展開となりました。しかし、その後は調整も入り、ユーロドルは1.10台後半でのもみあい、ドル円も104円台後半でもみあい。ドル円は、NY市場に入り日銀会合における追加緩和思惑から円安となり、105円台半ばまで上昇、その後やや押してのクローズとなりました。

7月29日(金)

東京市場では早朝から荒れ模様、何の材料も無い中で大口のドル売りに一時103円台半ばへ押してのスタートを切りました。その後も日銀金融政策決定会合を前に乱高下する神経質な展開を続けましたが、結果はETF購入額の増額のみと経済対策に併せて追加緩和を予想していた市場参加者をやや失望させる結果に102.70レベルまで下押ししました。欧州市場序盤の戻しも104円台には乗せられず、NY市場に入ってからは予想よりもかなり弱かった米国GDPに反応してドル全面安、ドル円は101.97レベルまで売り込まれ安値圏でのクローズ。ユーロドルも1.1198レベルまで水準を上げ、若干押してのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

8月1日(月)
**:** シドニー市場休場
10:00 中国7月製造業・非製造業PMI
10:15 NY連銀総裁講演
10:45 中国7月MarkIt製造業PMI
16:50 フランス7月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ7月製造業PMI確報値
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI確報値
17:30 英国7月製造業PMI
22:45 米国7月MarkIt製造業PMI確報値
23:00 米国7月ISM製造業景況指数
23:00 米国6月建設支出

8月2日(火)
10:30 豪州6月貿易収支
13:30 豪中銀政策金利発表
17:30 英国7月建設業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI
19:15 (ダラス連銀総裁講演)
21:30 米国6月個人所得・消費支出

8月3日(水)
07:45 NZ4〜6月期失業率
08:50 日銀金融政策決定会合(6月15・16日)議事要旨公表
10:45 中国7月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ7月CPI
16:50 フランス7月サービス業PMI確報値
16:55 ドイツ7月サービス業PMI確報値
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI確報値
17:30 英国7月サービス業PMI
21:15 米国7月ADP全国雇用者数
22:45 米国7月MarkItサービス業PMI確報値
23:00 米国7月ISM非製造業景況指数
23:30 米国週間原油在庫発表

8月4日(木)
19:15 (ダラス連銀総裁講演)
20:00 英中銀MPC結果公表
20:30 米国7月チャレンジャー人員削減予定数
21:00 ドイツ7月CPI速報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国6月製造業受注指数

8月5日(金)
21:30 米国7月雇用統計
21:30 米国6月貿易収支
28:00 米国6月消費者信用残高

今週の週間見通し

先週は最大5円近い円高、各国の金融政策出揃う

先週は週初からそれなりの上下の動きをしながらも週末には一時101円台と月曜高値106.74レベルから5円近い円高の動きを演じることとなりました。FOMCでは緩和的なスタンスを継続と利上げ思惑を遠のかせドル安、日銀会合ではETF購入額の増額はあったものの、金利と国債購入には手を付けなかったことで、いつもと同じく会合後に円買い、そして最後に用より弱かった米国GDPでドル安の動きへのダメ押しとなった一週間でした。

これで、7月の英中銀MPCからスタートした主要4か国(英国、欧週、米国、日本)の金融政策が一通り出そろったことになりますが、英中銀、ECB、FOMCが動かなかったため、本当ならば日銀も見送りたかったところでしょうが、政府の経済対策と足並みを揃えることから株式市場のテコ入れも兼ね、ETF購入額を現状の年間3.3兆円から6兆円へとほぼ倍増させる判断をしたと考えられます。

これまでの手法での追加緩和はそろそろ限界

債券購入もマイナス金利も効果が見えにくい中、比較的わかりやすい部分でETF購入額のみを増額したのでしょうが、既にETFを通して日銀は各社の大口株主となっています。これまでの手法による追加緩和はそろそろ限界となってきている中、切るカードが無くなりつつあることを市場が認識し、少なくとも日銀の足元を見る値動きが毎回の会合後に起きているのが現状です。

英中銀は利下げへ、9月にはECBも追随か。雇用統計はドル売りのきっかけの可能性

今週は英中銀のMPC(4日日本時間20時公表)において緩和(0.50%から0.25%への利下げ)が予想されていますが、先週はFOMC後、そしてGDP後のドル売りの動きでポンドもまた水準を上げてきました。そうした点では、利下げの動きがあればそれをきっかけとしたポンド売り、そして同様に水準を上げているユーロ売りが入る可能性が高まります。ECBも今週の英中銀に続き、9月8日の理事会で追加緩和を行うことが現在の市場のコンセンサスとなっています。また、今週は5日に米国雇用統計の発表がありますが、最近強めの数字が出ていた中で週末のGDPが水を差した格好となりました。雇用統計の数字も強めの数字で無い限り、ドル売りのきっかけとされる可能性があります。

全体としては、ポンドとユーロではそれぞれの通貨売り(ドル買い)、ドル円ではドル売りのバイアスがかかりやすい1週間となると考えらえます。次にテクニカルな面からドル円の動きを見てみましょう。日足チャートに示されている内容と同じですが、ノイズが少ないので次の週足チャートをご覧ください。

              ドル円週足

              ドル円週足

先週も触れましたが、年初来高値からの下降チャンネルにおけるレジスタンス(上側、ピンクの太線)は、引き続きワークして再びチャンネル内に戻してきました。すると、これまでのチャートパターンからはチャンネルの下側を目指しやすい展開にあると考えられます。材料的には、上記の通りドル円は円高に向かいやすく、現状は年初来安値99.00と7月の戻し高値107.49から計算されるフィボナッチ・リトレイスメント61.8%(102.26)〜78.6%(61.8%の平方根、100.83)をターゲットにしている流れと考えられます。

ドル安の流れ警戒 100.80サポート104.00レジスタンス

5月の戻し高値(111.45)を起点に年初来安値までの下げ、その後の7月の戻し高値から計算できるエクスパンションでは更なる円高ターゲットも求められますが、それらは雇用統計を経過して以降に考えることが普通です。ただ先週のように大きな動きや一時的な乱高下もあるかもしれませんので、レートのみあげておくと99.81、97.72といったレートがあることがご覧いただけます。

今週のドル円相場は、ドル安の流れに警戒しつつ100.80レベルをサポートに、104.00レベルをレジスタンスとする流れとします。

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

              ドル円日足

              ドル円日足

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