短期筋が円高見通し放棄(週報7月第三週)

先週は、英国発リスクオフ相場の第2波が継続すると考えていたことから、米国の株高が米国から海外への波及があまり無いのではないかと

短期筋が円高見通し放棄(週報7月第三週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値   高値    安値    終値 
ドル円  100.70  106.32  100.56   104.85
ユーロ円 111.21  118.40  111.14  115.72
ユーロドル 1.1044 1.1165  1.1017  1.1035
日経平均 15375.94 16607.32 15375.94 16497.85

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月11日(月)

週明けの株式市場は、前週末雇用統計後のNY株が大幅高となったこと、週末の参院選で与党が勝ったことによる経済政策期待から大幅高の動きとなりました。前場は株価をよそに動意薄だった為替市場も徐々に円安方向へと動き、これまで上値の重たかった101円台半ばを上抜けると、株価と足並みを揃え円安が進行することとなりました。海外市場に移ってからも流れは変わらず、NY市場でS&Pが史上最高値を更新する中、225先物も夜間取引で16000円の大台に乗せ、ドル円も高値102.89レベルをつけ、クロス円も含め円全面安の展開のまま引けました。

7月12日(火)

2日続けての円独歩安となりました。安倍政権の経済政策に対する期待が大きく、米株が強い地合いの中、日経平均株価は金曜安値から比べ10%ほどの上昇となったことが最大の要因となりました。ドル円は高値が一時104.99レベルと金曜安値から5円もの円安進行。英国新首相も決まり短期的にはブレグジットによるリスクオフ第2幕が早期に幕引きとなったと考える参加者が増えたことも、ポンド売り、円買いの巻き返しが進んだ要因となりました。

7月13日(水)

2日連続で急速に進んだ円安の調整の一日となりました。株価(先物夜間取引)同様に前日のNY市場の高値からじり安の展開となり、一時104円割れとなったもののインターバンク勢を中心に買い遅れていた向きのドル買いも目立ちました。欧州市場では前日高値圏に迫る動きも見られましたが、105円では売りも見られ再び104円割れ。103円台の買いと105円台の売りに挟まれ、大きく動いた後の調整が続きやすい流れが続きました。いっぽうユーロドルは、東京市場では上値が重たかったものの、海外市場に移ってからは買いが目立ち前日高値圏へと上昇。しかし、ユーロドルも1.10台前半の買いと1.11台前半の売りとに挟まれ方向感は出ませんでした。

7月14日(木)

東京市場では円安が進行、株高の動きも手伝って後場には105円台乗せ。その後欧州市場に移ってからも円安の動きは止まらず、105.94レベルの高値を付けました。欧州市場では注目の英中銀MPCが大方の予想に反して現状維持、利下げは8月のMPCを待つこととなりました。この発表を受けてポンドが一時急騰し、その余波からユーロドルも1.1165レベルの高値を付けましたが、混乱は短時間で収束し、NY市場ではドル円は105円台前半、ユーロドルも1.11台前半と動きが出る前の水準に戻しての引けとなりました。

7月15日(金)

週末を前に再びリスクオンの動きからドル円は東京市場前場の内に高値106.32レベルまで上昇、その後は底堅い動きを続けたものの105円台後半で上下を繰り返す流れを続けました。欧州市場に入り、ユーロドルは英中銀MPC関係者から8月緩和のコメントがあったことからポンド売りに引っ張られる形でユーロ売り、NY市場に入り強い米国経済指標も手伝ってドル買い・ユーロ売りの動きが続きました。NY市場引け間際に、トルコでクーデターとのヘッドラインが入り、リスクオフの動きからドル円は104円台半ばへと下押し、ユーロも地政学的なリスクから一段安となり1.1025レベルまで下押ししました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

**:** 東京市場休場
07:45 NZ4〜6月期CPI
17:15 ウィール英中銀MPC委員講演
18:00 スペイン中銀総裁講演
22:00 フランス中銀総裁講演
23:00 米国7月NAHB住宅市場指数
29:00 米国5月対米証券投資

7月19日(火)
**:** IMF世界経済見通し公表
10:30 豪中銀理事会(5日)議事録公表
17:30 英国6月CPI、PPI
18:00 ドイツ7月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏7月ZEW景気期待指数
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:30 米国6月住宅着工件数、建設許可件数

7月20日(水)
17:00 ユーロ圏5月経常収支
17:00 南ア6月CPI
17:30 英国6月失業率
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感速報値
23:30 米国週間原油在庫発表

7月21日(木)
06:00 NZ中銀経済予測公表
10:30 豪州4〜6月期NAB企業信頼感指数
15:45 フランス7月企業景況感
17:30 英国6月小売売上高
**:** 南ア中銀政策金利発表
20:45 ECB理事会結果発表
21:30 ドラギECB総裁記者会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国6月シカゴ連銀全米活動指数
21:30 米国7月フィラデルフィア連銀製造業指数
22:00 米国5月住宅価格指数
23:00 米国6月景気先行指数
23:00 米国6月中古住宅販売件数

7月22日(金)
16:00 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値
22:45 米国7月MarkIt製造業PMI速報値

7月23日(土)
 **:** G20(〜24日)

今週の週間見通し

予想外の速さだったリスクオフの巻き返し

先週は、英国発リスクオフ相場の第2波が継続すると考えていたことから、米国の株高が米国から海外への波及があまり無いのではないかと考えたことで大きく見通しを外す結果となりました。結果としては米国のS&P、そしてNYダウが史上最高値を更新し、日経平均株価も16000円台半ばへと大幅高、為替は金曜東京には一時106円台と前週金曜安値(99.99レベル)から6円以上もの円安進行となりました。

おそらく私も含め、これほど急速に米国株主導の世界的な株高がここまでリスクオフの巻き返しを早期にもたらすとは考えず、特にドル円とクロス円では円買いが進んでいただけにストップオーダーがストップオーダーを呼び込む展開になったと言えそうです。

短期筋円高見通しから撤退

ただ、英国国民投票前の円相場を振り返ると投票前日は104円台半ば、金曜に付けた106.32レベルは6月15日まで遡る水準です。国民投票当日までの下げよりは値幅的には1円ほど少ないものの日数的には短いことを考えると8日金曜から15日金曜までの円安進行がいかに速かったのかということがわかります。形状的にはきれいではないものの、おそらく99円台のダブルボトムを考え、短期筋がいったん円高見通しから撤退という動きであったと言えるでしょう。

そして、金曜のNY引け間際に起こったトルコの軍事クーデターの企てです。週末前で一時は週明けにどうなってしまうのかという展開でしたが、早期に鎮圧されクーデターを企てた軍関係者は拘束、休暇中の大統領も無事と急速に自体は沈静化しました。金曜にはトルコリラが対ドル、対円とも急落する展開でしたが週明けにはかなり値を戻す流れとなりました。ドル円も週明け早朝には一時106円台に乗せる場面も見られたのですが、金曜引け前にヘッドラインが入ってくる前の水準であった105円台半ばがニュートラルであることを考えると、リスクオフで円買いに走った向きのストップで余計な振れが入ったというところです。

ドル円金曜の水準はいったん高値圏?

トルコに関してですが、現状は政治体制的には落ち着きを取り戻しているものの、対外的にはイスラム国の問題を抱えているところに、内部的にも不満分子が少なからずいるという点から、当面は不安材料を抱えることとなり、これまでリスクオンで動いてきた金融市場に対して水を差した格好となりました。今週は材料的にはECB理事会くらいしか大きなイベントはありませんので、株式市場はいまだ強い地合いを継続する可能性がありますが、ドル円相場に関しては先週金曜の水準はいったん高値圏ではなかったかと見ています。

先週の見通しをあまりに大きく外したので、読者の方はそのあたり(ここからの円安は限定的と見ている)を割り引いていただく必要はあるかもしれませんが、テクニカルな観点から考えますので、まずは次の週足チャートをご覧ください。

              ドル円週足

              ドル円週足

ピンクの太いラインは年初来高値と5月高値を結んだレジスタンスラインで、細いラインは同線に平行に引いた下降チャンネルとなっています。長期的なドル安・円高トレンドには変化は無く、現在でもこの下降チャンネルの中でドル円は動いているという前提で考えます。細かい状況を見るために次に日足チャートをご覧ください。

現在、太いレジスタンスラインは107円前半に位置していて、今週末には106円台後半へと水準を下げてきます。そして、その週末の水準は英国国民投票開票直後の高値106.81レベルと一致しています。さらに、5月高値と国民投票後の安値との61.8%戻しも106.68レベルと同じような水準に位置しています。仮に先週金曜高値を上抜けることがあっても、残りの値幅は知れているであろうと考えています。

サポート103.25レベル、レジスタンス106.75レベル

いっぽう先週の動きを見ていると下値もそれなりに底堅そうで、おそらくトルコのクーデターヘッドライン直後の安値が最初のサポートとなり、先々週安値と先週安値の半値押しの水準にあたる103.15レベルがサポートとなっていると考えられます。今週こそ、ドル円相場は上値が限定的と考え、103.25レベルをサポートに、106.75レベルをレジスタンスとする流れとします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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